著者
牧野 誠一
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 = Journal of the Society of Humanities (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
no.99, pp.111-129, 2016-02

わが国において,知的障害のある人が高等支援学校を卒業した後に,学べる機関は極めて少ない。知的障害者を公式に受け入れる公認の大学はない。しかし,知的障害者の中には学ぶ機会を求めている人たちは大勢存在する。その人たちの希望をかなえるべく,細々とではあるが学ぶ場を工夫して生み出し,運営を続けてきた学校や組織などがある。本論では,そうした工夫によって生み出された後期中等教育卒業後の学びの場である「オープンカレッジ」「特別支援学校専攻科」「学びの作業所」についての現状を分析し,これから知的障害のある人にとって豊かに学ぶ場がどのように準備されることが望ましいのかを展望した。論文
著者
大竹 文雄 犬飼 佳吾 千田 亮吉
出版者
札幌学院大学総合研究所
巻号頁・発行日
2020-03-05

開催:札幌学院大学総合研究所シンポジウム 開催日:2019-11-02 会場:札幌学院大学B館1階 B101教室
著者
碓井 和弘
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学経営論集 = Sapporo Gakuin University Review of Business Administration (ISSN:18841589)
巻号頁・発行日
no.5, pp.43-52, 2013-03

伝統ある商業教育機関のシンボルには翼や杖,蛇がしばしば使われている。嚆矢は一橋大学である。それは,ギリシア神話のヘルメス,あるいはローマ神話のメルクリウスにまつわるものであり,ヨーロッパで繁栄していたベルギーに存在する商業学校のものを移入したのであった。ヘルメスは,豊穣神であるとともに,商業,盗み,雄弁,競技,道路,旅人の守護神でもあり,その最大の特徴は,コミュニケーション能力の高さと狡猾さである。しかし狡猾である商業には,不信感が付きまとう。商業が社会に存立する根拠が問われるのは,その商業への不信感が背景にある。M.ホールの「取引総数最小化の原理」は,取引においては人が移動する,と前提すれば理にかなっているように見えるが,情報技術の革新は状況を一変させた。この情報技術の革新は,マーケティングにも影響を与えている。『コトラーのマーケティング3.0』は,「参加」「グローバル化のパラドックス」「クリエイティブ社会」の3つを,時代を読み解くキーワードとしている。このマーケティングの変化を学ぶことは,商業教育の象徴と現代性を追求することにも繋がると考えた。
著者
小出 良幸
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
no.94, pp.1-27, 2013-11

本質的属性に基づく自然分類が岩石の理想的な分類である。岩石の分類にかかわる課題を整理し,岩石に自然分類が適用できるかを検討した。岩石の分類は,火成岩,変成岩,堆積岩の3つ成因がもっとも本質的である。変成岩と堆積岩では,自然分類に基づいた岩石名の適用は可能になっているが,火成岩では人為分類の導入が不可欠となっている。火成岩の人為分類の定義の整理と,体系的な導入が重要な課題となる。Various problems in the classification of rocks and systematics of nomenclature are discussed in this paper. Rocks should be ideally categorized by the natural classification based on some essential attributes. It is checked whether the natural classifica論文Article
著者
久保田 義弘
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学経済論集 = Sapporo Gakuin University Review of Economics (ISSN:18848974)
巻号頁・発行日
no.6, pp.59-82, 2013-10

本稿で取りあげる北部アイルランドとスコットランド北西部で活動したダル・リアダ王国は,6世紀の初めに建国し,アイダーン王(Áedán mac Gabráin)(在位574年?-608年)の支配下のときに,その周辺国との戦いによる勝利によって,その領土を発展・拡充し,その最盛期に至した。しかし,603年頃のDegsastanの戦いにおいて,その王はノーサンブリア王国のエゼルフリス王(AEthelfrith)(在位593年-616年)に敗れ,その後,彼の勢力は衰え,同時にダル・リアダ王国の力も衰えた。さらに,彼の後継者は,周辺国との戦いに敗北するのみならず,内部抗争(ケネル・ガブラーン家とケネル・コンガル家の王家の抗争)を繰り返し,その勢力は一層衰退した。また,637年のMag Rath(ダウン州のMoira)の戦いの後,北アイルランドのダル・リアダ王国は滅ぼされ,同時に,スコットランドのダル・リアダ王国はその政情も不安定化し,ノーザンブリア王国に従属し,さらに,685年にノーザンブリア王国がピクト王国の王ブリィディ(ブルード)3世(在位671年-693年)に敗北し,730年頃にはその王国は,オエンガス1世のピクト王国の支配下に入り(従属し),その王国の上王(大君子権)がピクト王に支配に入った。最後に,ピクトとダル・リアダの融和に果たしたキリスト教の役割を調べる。第1節では,伝説のダル・リアダ王国と実在のダル・リアダ王国について,伝説のファーガス・モーによるダル・リアダ王国の建国とケネル・ガブラーンとケネル・コンガルそして,アイダーン王の全盛期その後のその勢力の陰りとその衰退,第2節では,ダル・リアダ王国の内部抗争とノーザンブリアおよびピクト王国への従属を概観し,第3節ではダル・リアダ王国とキリスト教の関係を説明する。
著者
玉山 和夫
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学経営論集 = Sapporo Gakuin University Review of Business Administration (ISSN:18841589)
巻号頁・発行日
no.9, pp.1-14, 2016-02-15

本稿では,日本の企業の低収益性に改めて焦点をあてて,その原因をマクロ的・社会心理学的=行動経済学的に指摘する。そもそも投資家は,自身への分け前の原資たる純資産(一株当純資産:BPS)の増大をもって株主への最大の見返りと判断するはずである。もう一歩踏み込めば,配当で支払われた分も含めたもともとの純資産(配当内部留保BPS)の増大が望ましい。日本のBPS は1955年を1とすると2013年には14.49にしかなっていない。配当内部留保BPS でも40.59である。この間名目GDP は1から57.37に増大していたのに,である。アメリカではこれらは,26.41,79.06,39.10であった。アメリカでは名目GDP の伸びよりも,配当内部留保BPS の伸びが大きいのである。一方,株式リターンは日米ともに配当内部留保BPS の増加と整合的である。昨今日本でも話題になっている株主還元とは,煎じ詰めれば株式リターンの向上である。であるからには戦術的な手段を議論する以前に,総合的な純資産である配当内部留保BPS の増大を図ることが,株主への正しい報い方ということである。実際株主還元に言及する論者たちも,配当の増加や自社株買いといった狭義の株主還元に解を求めることには批判的である。かといって株主に報いるためには何が必要であるかということについては,「しっかり儲けましょう」と言う以外具体的な話はあまり聞かない。本稿では日本のBPS および配当内部留保BPS が,経済の全般的な成果に比しても極めて貧弱であることの要因を,日本の低い資本分配率,高すぎる設備投資,それに伴う資本市場から過剰調達に求める。経営の安定の名のもとに,リスクを取った経営よりは既存事業の存続のために過大な投資を続け,そのつけを資本市場に負わせてきたのである。また,日本の投資家もリスクを取ることを嫌い,こうした「安定経営」に資金をつぎ込んできたのである。しかもこの状況は日本の社会心理学的構造に由来していると思われる以上,その転換は難しいが,結局はグローバルな株主から信頼される企業と,そうでない企業の二極化が進むことになるだろう。
著者
久保田 義弘
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学経済論集 : Sapporo Gakuin University Review of Economics (ISSN:18848974)
巻号頁・発行日
no.7, pp.41-83, 2014-03-10

本稿(スコットランド王国の周辺国のノーザンブリア)では,5世紀から11世後半までのノーザンブリア
著者
奥谷 浩一
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
no.96, pp.77-99, 2014-10

アクセル・ホネットはいわゆるフランクフルト学派の第三世代にぞくすると評されるドイツの哲学者・社会学者である。その彼が『物化』を公刊した。この著作の意図は、マルクスによって創始されルカーチによって継承された物象化論に今一度アクチュアリティを与えようとするところにあるが、それはかなり特異な「物化」論でもある。その大きな特徴は、ルカーチの理論の読み換えを行い、彼独自の「承認」という概念を用いてこれを「物化」論に適用し、「物化」を「承認の忘却」として理解することである。しかし、こうした特異な「物化」論は、マルクスとルカーチによって定式化された物象化論から資本主義的商品交換社会という視点を排除し、本来社会的次元で生ずるはずの個々人どうしの「相互承認」の概念内容をも変更して、個人と環境世界との間の、しかも認知以前の「承認」へと拡大するとともに、個人的・人間学的な次元で読み換えようとするものであり、きわめて問題の多いものである。そしてそれは、その強引と思える読み換えと鍵となる概念内容の拡大によって、本来の物象化論がもつ社会批判としての意義を解消しかねないように思われる。本論文では、こうした観点から、マルクスとルカーチの物象化論に立ち帰ってまずその基本的思想を確認し、この準備作業から見えてくる、ホネットの「物化」と「承認」の理論がもつ問題点を分析する。論文
著者
土居 直史
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学経済論集 (ISSN:18848974)
巻号頁・発行日
no.6, pp.25-39, 2013-10

本稿では,1988-1993年度に実施された日本の牛肉輸入割当撤廃(牛肉自由化)について,その牛肉価格への影響を事後的に検証する。同時期の品質および需要変化をコントロールした上で,貿易政策変更による牛肉価格変化を推計する。分析の結果,牛肉自由化は輸入牛価格を50%以上引き下げた一方,国産牛価格へ統計的に有意な影響を与えていなかったことが明らかになった。特に,国産牛肉の中でも高品質の種(和牛)については,貿易政策変更からほとんど影響を受けていなかったと推計された。論文
著者
丸小 拓将 佐藤 和洋
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
社会情報 (ISSN:0917673X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.139-155, 2013-03

われわれは「社会情報学(Socio-Informatics)」を「社会学と情報学の各々を要素として考え,それぞれがやり取りされている場,あるいは環境について科学的に学問するもの」と考え,それを検証するべく,授業科目実態調査とシステム設計を行った.本稿では「出席管理システムSGU-AMS」の設計・開発とその試験運用について論ずる.「出席管理システムSGU-AMS」の設計・開発に際しては,比較的簡単な操作による処理の実現を検討し,GUI部分ではレスポンシブWebデザインを採用した.本学社会情報学部が開設する三つの授業科目で行った試験運用では,多くの学生が短時間に処理操作を終えており,きわめて自然に本システムを使用していた.これにより本システムの有用性は確かめられたと考える.しかし,未実装の機能があったり,他の課題が残されていたりし,提示した「社会情報学」に関する十分な科学的な実証研究が行えたとは言い難い.今後は残された課題への検討・考察を加え,「社会情報学とは何か」という問いを追い続けていきたい.試論