著者
山崎 古都子 田中 宏子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、日本の住宅の長寿化と、減災を促進することである。本論では生活実務に内在するジェンダー性が、住宅管理行動の減衰と技術低下の傾向を生み、それが住宅の長寿化の阻害要因であることを検証した。また、居住者には根強い建て替え意識があることが減災に対する無関心を生んでいることを明らかにした。従って、住宅の長寿命化、減災両側面から住宅の管理責任意識を発揚する必要がある。そのために本研究では、地域と、学校が連携して居住者を育てる減災教育カリキュラムを開発した。
著者
辻 延浩 佐藤 尚武 宮崎 総一郎 大川 匡子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小学校の系統的な睡眠学習カリキュラムを構築することを目指して, 教材を開発するとともに, 睡眠学習プログラムを作成して実践化を試み, その有効性について検討した。さらに, 開発した睡眠学習教材をデジタルコンテンツ化し, 学校園の授業や校内研究会等で活用できるようにすることを目的とした。得られた結果の大要は以下のとおりである。(1) 現行の小学校体育科の保健領域(3~6年生)の指導内容に沿って睡眠の科学的知見を位置づけ, 発達段階をふまえた系統的な睡眠学習教材を作成した。睡眠学習における児童の評価は, 3年生と4年生では, 授業の楽しさ, 内容の理解度,生活への活用度,教具の適切度ついてほぼ全員から「大いにある」または「まあまあある」の評価が得られた。5年生と6年生では, 中学年に比べて「あまりない」あるいは「まったくない」とする児童の数が多少増えているものの, 多くの児童から高い評価が得られた。授業者および授業観察者の評価では, 提示した資料の説明の仕方でいくつかの改善点が指摘されたが, いずれの学年の授業においても, 児童が睡眠の科学的知見を通して, 自分の睡眠生活を見直したり, 再発見したりしていたことが高く評価された。これらの結果から, 開発した教材およびプログラムは, 児童に睡眠の大切さに気づかせるとともに, 睡眠に関する知識を深めることができると考えられた。(2) Web教材は, 「睡眠科学の基礎」, 「健やかな体をつくる睡眠6か条」, 「快眠に向けて補足6か条」で構成させた。Web教材に対して質問紙調査(5段階評価)を実施した結果, 画像等に関わる項目の平均得点は3.9~4.3の範囲にあり, 内容等に関わる項目の平均得点は3.8~4.5の範囲にあった。Web教材の改善に向けては56件の具体的な指摘を受けた。これらをふまえて, リンクのはり方, 図の色調, 図中の文字, カット図の挿入について改善を加えた。
著者
板倉 安正 稲葉 宏幸 澤田 豊明
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、毎年多くの被害を出している土砂災害を軽減・防止するために音響法と映像法を組み合わせた新しい監視システムの開発を目指して、その可能性を検討し実用化への見通しを着けることである。3年間の研究を通して次の点を明らかにすることができた。(1)音響法としては、土砂移動に伴って発生する地中振動をマイクロフォン型音響センサによって捉える方式を提案し、これが他の振動センサに比べてS/N比が優れていることを明らかにした。さらに、これをオイル浸タイプにすると検知範囲が約2倍向上することを示し、その改良に努めた。(2)映像法としては、土石流のビデオ映像から市販のMPEGソフトを用いて画像の動ベクトルを抽出し、その変化の大きさから土石流の近接を知る方式を提案した。同じビデオ映像に計算機対話型空間フィルタ速度計測法を適用して土石流の流下速度を計測することに成功した。また、他の画像処理法として時空間勾配空間法や相関法を適用して、土石流表面速度の2次元速度ベクトルの推定にも成功し、精度の点で相関法の方が優れていることを示した。(3)音響法と映像法を組み合わせることによって、濃霧や豪雨で見えにくくなった映像法を音響法が補い、また、音響法では実体が明確でない点を映像法が補うという利点を生かすことができると期待される。実際の土石流によってこの利点を確認するまでには至らなかったが、具体的なシステムを提案することによって次の研究を展望することができた。(4)これらの成果を、海外調査結果と併せて、2001年11月スイスベルン市郊外のスイス国立水理・地理調査所で開催された土石流モニタリング技術のワークショップで発表して評価を得るとともに、これからの研究の見通しを得ることができた。
著者
平井 肇
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

国境を越えてスポーツに参加する人々について、競技種目や競技レベル、参加の形態、場所などの多様なケースや角度から分析し、彼らの行動や経験が身体文化の伝播や授業、普及にどのような影響を及ぼすのかについて検討した。その結果、スポーツのグローバル化が人々のスポーツとのつきあい方をより多面的で多様なものにしていること、スポーツのグローバル化にみられる現象や問題、課題は、他の文化や社会制度と共通する点が多々あることが明らかになった。
著者
藤田 保幸 砂川 有里子 田野村 忠温 松木 正恵 中畠 孝幸 山崎 誠 三井 正孝(三ツ井 正孝) 江口 正
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、研究代表者らがこれまでに『現代語複合辞用例集』などの形で積み上げてきた複合辞についての記述研究をふまえ、そうしたそれまでの成果を理論的にもまた個別形式の記述においても深めていくことを意図して企画したものであり、補助金の交付期間中にも、(1)複合辞についての従来の研究を見直して、問題点を明らかにするとともに、(2)複合辞各形式についての各論的記述を深める、という点を中心に研究が進められた。まず、第一点の従来の研究の見直しと問題点の明確化という点については、研究代表者藤田により、本研究の初年度に「複合辞の記述研究の展望と現在」と題する研究発表が行われ、現段階の問題点が総括されたほか、研究分担者松木により複合辞研究史についての一連の論文が発表され、学説史の総括が試みられた。第二点の各論的記述の深化については、研究期間内にかなりの成果を上げることができた。具体的に取り上げられた形式は、格助詞的複合辞(もしくは副助詞的複合辞)としては、「について」「において」「をめぐって」「に限って」「によって」(「によっては」との比較を中心に)、接続助詞的複合辞では「として」「からには」「ばかりか」「くせに」「につれて」「にしたがって」「うえで」「こともあって」「ことだし」、助動詞的複合辞としては、「どころではない」などで、それぞれについて各論的研究論文が公にされ、個々の形式の意味・用法に関する詳細な知見が得られた。そのほか、複合辞に関連して、複合辞と助詞「は」の関わりやコピュラ・形式名詞、韓国語・中国語との複合辞的形式の対照などについても研究が進められ、それぞれその成果は論文として公にされた(上記には、研究協力者による研究成果をも含む)。これまでの複合辞研究を記述的に一段深化させるという点で、本研究は相応の成果を上げることができたものと考える。
著者
岸本 実
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、環境についての客観的知識を提供する環境諸科学を総合するのみならず、環境倫理、風景、アメニティなどの環境についての主体的な意味を総合する、風土を中心概念とする環境教育力リキュラムにおいて、子どもの学習評価はいかにあるべきかを明らかにすることであった。客観的な知識および論理的な思考だけでなく、主体的で個性的な意味づけの多様性の評価方法として、ポートフォリオ評価法を手がかりとした。研究方法として、具体的な風土教材を開発した。これまで、琵琶湖を対象にした教材を引き続き研究するとともに、あらたに、中国内モンゴル自治区の草原の砂漠化をテーマとした環境教材の開発を行った。砂漠化の原因としては、過放牧、過開墾、乱伐という三つが原因とされるが、それらが清代、清末から中華民国、中華人民共和国における人民公社による大規模のうち開発、そして生産請負制の導入という歴史的な経緯の中でどのように関連しながら砂漠化の要因を形成してきたかを分析する教材を作成した。さらにそうした歴史をふまえて、今日的な環境政策である生態移民をどのように受け止めるのかをロールプレイを通して主体的に学ぶ生態移民ロールプレイの開発を行った。さらに、風土概念を社会科カリキュラムとその教育評価にどのように位置づけるのかを検討するために、アイルランドの公民政治カリキュラムにおけるスチュワードシップの概念とその教材と評価方法に注目した。
著者
久保 英也 酒井 泰弘 前田 祐治
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

大数の法則で事故率を安定させその平均値から保険料を計算するという伝統的な保険料の算出方法ではなく、モンテカルロ・シミュレーションにより、保険市場と資本市場の狭間にある生命保険の買取制度の取引価格やキャプティブ保険会社の損害保険料、ファイナイトの保険料などを算出することができた。保険機能のすべてを資本市場が代替することはないが、資本市場が保険リスクを引受けることで保険市場自体も拡大する分野がある。ただし、生命保険の資本市場化は人の命を市場で売買することでもあり、その倫理性の担保が求められる。
著者
宮田 仁 井上 毅 三宮 真智子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,小学生,中学生,高校生を対象として,論理的思考力を育成する考え方学習を取り入れたWebベースの情報安全教育学習教材を開発し,学習者用ワークシート,教師用ガイドブックを作成することである。指導項目の中から,(1)著作権の尊重,(2)個人情報の保護,(3)ネットワーク利用上のエチケット,(4)セキュリティの遵守,(5)サイバーセイフティに関するWeb教材を開発した。小学校12校,中学校10校,高等学校5校で開発したweb教材の授業実践を行った結果,本Web教材の有効性が認められた。
著者
谷口 伸一 山崎 一眞
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究はエコ・ミュージアム(Eco-Museum)の本来の定義に基づき、以下の課題について実践的に研究する。(1)エコ・ミュージアム・マスタープランの設計手法を提案する。(2)ユビキタス技術を応用してエコ・ミュージアムに対応した学習型観光システムを研究開発する。(1)の研究に関しては、(1)彦根をテストベッドとするエコ・ミュージアムの形成、(2)エコ・ミュージアムの重要要素"elder"に相当する「語り部」の発掘と育成モデルの提案、(3)文化遺産の保護活動に関する方法論の提案からなる。(1)では彦根旧城下町地区の歴史遺産の特性や分布状況から6つのサテライトからなる「彦根エコ・ミュージアム」を提案した。(2)では「それぞれの彦根物語」と題した市民研究会を開催して、歴史、文化、自然、建築、観光などの分野から「語り部」を発掘した。本研究会は平成21度末で72回を数えるに至った。(3)では文化遺産としての価値が高い芹橋地区足軽屋敷の存続に向けて「彦根古民家再生トラスト」を立ち上げ、売却に出された足軽辻番所を地域住民が主体となって募金活動を行い買い上げた。この市民活動が行政を動かすことになり、彦根市が再生することになった。これらの研究は都市計画論と地域デザイン論に基づいて実践しており、エコ・ミュージアム・マスタープランの設計手法として提示できたと考える。詳細を「びわ湖世界の地域デザイン」として刊行した。(2)の研究に関しては、(1)QRコードに代わる当該地点の情報取得技術の開発、(2)コンテンツデータベースの構造化設計技法の確立、(3)観光者が発見や連想から学習する観光の仕組みづくりの実証研究を進めてきた。(1)ではおサイフケータイ(R)の普及が8割を超えているため3者間通信を利用した情報取得装置「ユビキタスみちしるべ」を開発し操作性を向上させた。さらにPICマイコンで制御し、太陽電池駆動のための省電力化を図るとともにSDメモリに記録された音声ガイダンスを実現した。なお、文字、画像、音声、動画などのマルチメディア情報の配信は携帯電話の通信機能を活用した。(2)ではデータベースの設計技法である実体-関連モデルとオブジェクト指向モデルの応用により、学芸員のような高度な知識がなくても観光魅力の概念拡張を含めて構造化設計ができる技法を提案した。(3)ではエコ・ミュージアムに定義される「発見の小径」を学習しながら散策できる「ケータイまち遊び検定」システムを作成した。さらに、携帯電話のGPS機能とカメラ機能により観光者の気づきや疑問をその場で撮影してWebサーバに送信し、それらを集約してGoogleの地図に重ね合わせる「ケータイまち遊びマイニング」も完成させた。これらのシステムにより物見遊山の観光から、点である観光魅力を深く理解し、さらにそれらを線としてつなぎ合せて文脈とする学習型観光が提案できた。
著者
大嶋 彰 新関 伸也 神林 恒道 梅澤 啓一 松岡 宏明 泉谷 淑夫 赤木 里香子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

全国小・中学校の図画工作及び美術科における鑑賞学習の実態調査を行い、その結果を集計して『図画工作科・美術科における鑑賞学習指導についての調査報告書』を作成した。それによって、現在の学校における美術教育の問題点、指導者の鑑賞学習に対する意識、鑑賞学習の内容・方法・評価、教員養成における大学教育カリキュラムの現状と問題点が明らかになった。また、アンケートの「自由記述」では、教師の授業に対する様々な悩みや本音を読み取ることができ、理論と実践のすき間を埋める基本的な資料となった。以上の報告書をもとにして、研究分担者が各自の課題に基づき研究を進め、各学会において発表や投稿論文としてまとめることができた。その様々な研究は、図画工作や美術における鑑賞学習のカリキュラム作成をする上で必要とされる学校教育の側面はもとより、生涯学習や幼児教育、書道教育などの広い視点から進められた。また、日本の鑑賞教育だけではなく東アジアにおける鑑賞教育の実情把握と研究交流の視点から、韓国の研究者を招き「鑑賞」を中心に据えたシンポジウムを開催した。そこでは、日本の鑑賞教育の歴史的経緯や学校教育の実態などを報告しながら、両国に共通する課題や相違点を明らかにすることができた。一方、鑑賞学習のカリキュラムモデル開発のために、小・中学校を中心に鑑賞学習の事例収集及び分析を行い、それに基づきカリキュラムモデルの構造化を試みた。そのモデル化は、鑑賞学習の実践事例数をさらに増やした上で分析を行い、妥当性を検証する必要がある。今後の研究課題として、鑑賞学習を通して育てるべき能力や「総合的な学習」や「特色ある学校づくり」と結びついた具体的な学校教育における「鑑賞学習のカリキュラムモデル」の開発が必要である。
著者
谷田 博幸
出版者
滋賀大学
雑誌
しがだい:滋賀大学広報誌
巻号頁・発行日
no.第30号, pp.35-35, 2009-07 (Released:2009-08-27)