- 著者
-
澤田 一彦
- 出版者
- 滋賀大学
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2011
3D映像や組み立て自在の粒子模型を活用し,いかにすれば科学的思考力を高めさせることができるのかを実践で明らかにし,その有効性を検証することを研究の目的とした。3Dは,映像に現実味を持たせることに長けている。3Dによる資料提示は,一度に多くの生徒に注目させる必要があり,以下の点で偏光方式が適していた。●偏光による3Dは,アナグリフ方式と異なり,生徒の色盲・色弱に配慮する必要がない。●偏光による3Dは,片眼の生徒には2Dとなり,新たな差別を生まない。●コンテンツの投影・作成は,安価,簡単に導入できる。自作のマジックテープによる組立て自在な発泡スチロール球は,友だちと考えを交流ながら体験的に理解させることに長けている。従来のものと比較して,次のような利点があった。●みんなからよく見えることは,討論に適している。●価数にあたるマジックテープで組立てることにより,実在の物質を生徒が容易に作成できる。これらの教材を単発的に使用せず,次の点に留意して授業を設計し,関心・意欲を喚起する学びの誘い,生徒の考えを揺さぶる言葉がけ,驚きのある体験のしかけ,明らかにしたことを確かにする場面を構成した。●生徒の持っている知識,概念,イメージの誤謬,半わかりを明らかにして,生徒の科学的思考を高める。●予想や考察をモデルや文章でかかせて,生徒の科学的思考を高める。●的確な指示,考える観点を絞らせるような具体的な発問をして,生徒の科学的思考を高める。●生徒が考えを交流したり,練りあう場を設けたりして,生徒の科学的思考を高める。●学習内容を焦点化して,授業のねらいを明確にして,生徒の科学的思考を高める。成果と課題をまとめるにあたって,授業者による観察と質問紙調査を行った結果,図や文章では表現しづらい粒子概念の定着が図られ,発展的な内容に関して好奇心を満足させている生徒の変容が明らかになった。