著者
木下 直俊
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.19-34, 2022 (Released:2022-01-31)
参考文献数
14

2021年2月7日、レニン・モレノ大統領の任期満了に伴う大統領選挙が行われた。1979年の民政移管後で最多の16名が立候補した。いずれの候補者も当選に要する票を得られなかったため、ラファエル・コレア元大統領を後ろ盾とするアンドレス・アラウス候補(左派)と、元銀行家で実業家のギジェルモ・ラッソ候補(右派)の上位2名が4月11日の決選投票に進んだ。その結果、ラッソ候補が事前予想を覆し勝利を収めた。その勝因については、コレア体制への忌避感から無効票を投じた有権者が多かったこと、コロナ禍の選挙戦でラッソ陣営がSNSを巧みに活用したことなどがあげられる。5月24日に発足したラッソ政権は、ワクチン接種の促進を最優先課題に据えた新型コロナ対策が奏功し、国民からの評価は高く好調な滑り出しをきった。今後の政策課題は経済再建に向けた諸改革へと移るが、国会は与野党の対立が先鋭化し機能不全の状態に陥る可能性もあり、審議は難航が予想される。安定した政権運営がいつまで続くか予断を許さない。
著者
安倍 誠
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
アジア経済 (ISSN:00022942)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.2-22, 2023-06-15 (Released:2023-06-29)
参考文献数
36

本稿は,韓国鉄鋼業が急速に発展を遂げた要因の一つとして,韓国最初の銑鋼一貫製鉄所である浦項製鉄所の建設における日本企業からの技術協力の効果的な学習に着目し,韓国企業がどのように製鉄所建設というエンジニアリング・プロジェクトにかかわる技術を学習していったのか,その学習のプロセスを明らかにすることを目的とする。浦項製鉄所の第1期建設では日本企業が製鉄所の基本設計から設備の詳細設計と供給,建設工事,そして操業に至るまで包括的な協力を行った。しかし,あくまでも建設の主体は韓国企業のポスコであり,ポスコの技術担当者が計画段階から建設のすべての過程に主体的に参加して技術学習の機会を得た。とくに同じ技術担当者が計画当初から継続してエンジニアリング・プロジェクトの特定分野を担当することによって,技術を効果的に学習した。このことは,ポスコがその後,独力で製鉄所を建設できるまで技術能力を高める,大きな足がかりになったと考えられる。