著者
宇佐美 眞
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.27-30, 1998-01-01

大学図書館と関わってきた個人利用者としての立場から, 大学図書館がどのような意味で市民に閉鎖的であるか, これまで図書館と関わった経緯をまとめながら, 私見を述べた. また, 学外者に対し, 多くの大学図書館が公開されていると言われながら, 個人利用者にとっては, その実態には不満足なものがある. その理由を分析してみた. そして,その解決に向けての方策を提示した.
著者
堀 渡
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.397-403, 2015-09-01

公共図書館で資料請求に応える予約サービスは,各館の蔵書蓄積と円滑な図書館間相互貸借がそれを支えている。現在,全国の県立図書館には県内蔵書を一括検索できる横断検索サイトが整備され,他館の所蔵調査が容易になっている。書庫の有限性からどの館でも除籍を日常化していかざるを得ない。除籍か保存かの判断に,他館蔵書を調べ,地域内の希少資料は互いに残し,提供のためタイトル維持を図る考えがある。県内の希少タイトルを集約し残そうとする幾つかの県立図書館の実践に注目したい。東京都多摩地域には市町村立図書館の中にそれをすすめる提案があり,支援するNPO法人の活動がある。NPO法人が研究してきた共同保存図書館の意義と可能性について。
著者
小川 晋平
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.416-420, 2011-10-01

電子ジャーナル時代におけるILLについて,大阪大学附属図書館生命科学図書館のこれまでのILL受付件数の推移から今後の課題を述べる。最初にこの20余年間の受付件数の増減の経緯と特長を示す。さらには,今後の電子ジャーナル購読規模縮減があった後,冊子体のない図書館でのILLによる効率的な文献情報提供には,電子媒体での新たな文献情報提供システムと文献情報と文献所在情報が統合的に検索可能なシステムの開発と運用が必要なことを述べる。
著者
浜田 雅美
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.193-200, 2013-05-01
参考文献数
10

医学中央雑誌刊行会は,国内の医学および関連領域の文献データベースを医中誌Webにて提供している。データ内容は,(1)書誌事項,(2)抄録,(3)索引データに大別される。索引データを付与することで,特定の主題について記述された文献が,効率的に検索される。索引作成は,専門のインデクサーが1つ1つの文献に目を通し,主題となる概念を抽出し,それを適切な索引語に置き換えて付与することにより行われる。索引やシソーラスを理解することはそれほど容易でないことから,医中誌Webではシソーラスを意識しなくとも,それが検索に活かされるような機能の充実も図ってきた。しかし,索引データの意味を知って頂くことで,検索の多様性は広がるものと考える。この索引データについて「医学用語シソーラス」を中心に,米国国立医学図書館が発行するシソーラス「Medical Subject Headings」(MeSH)との比較に焦点をあてて述べる。
著者
藤江 昌嗣
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.517-522, 2008-10-01

日本初の図書館PFI事業「桑名市立中央図書館」を取り上げ,PFIによる図書館経営としての評価を試みた。BOT方式という施設建設後も,所有権を移さず管理・運営を図書館専門サービスのノウハウを持つ企業に任せる方法を選択している点,また,事前に行政の要求水準を実現するべくデザイン-いわゆるデザイン・イン-していった特殊な例として桑名市立図書館の経営は評価できる。財務情報を共有し,図書館を含む複合施設全体のパフォーマンスとリスクを明らかにするとともにリスクを最小化する具体策を講じ,地域のコアとなる図書館を継続的,安定的に「経営」するという高い意識での精緻な分析が今後とも大変重要なものとなる。
著者
瀬戸口 誠
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.316-321, 2009-07-01

大学図書館および図書館員がどのように関わっていくべきかという観点から,情報リテラシー教育におけるアプローチの意味について検討する。情報リテラシー教育におけるアプローチを,スキル志向と利用者志向という2つのアプローチに分けて,(1)情報リテラシーを捉える視点の所在,(2)前提事項,(3)学習成果という観点からそれぞれの特徴を抽出する。今後の情報リテラシー教育を構想するに当たって,両アプローチを組み合わせることで,図書館員と教員の連携に対して有効な視座を提示することを指摘する。
著者
依田 紀久
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.90-95, 2006-03-01
被引用文献数
2

レファレンス協同データベース事業は,全国の図書館で行われているレファレンスサービスの記録や,そこで蓄積された調べ方に関する情報などをデータベース化し,図書館におけるレファレンス業務や,一般の人々の情報検索に役立てることを目的とする協同事業である。本稿ではまず,この事業の概要と現況を解説する。その上で,事業を通じて見て取れる参加館のレファレンスサービスの変化を,具体的に紹介する。最後に,今後のデジタルレファレンスサービスの課題について私見を述べる。
著者
五十嵐 大悟
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.200-205, 2015-05-01

成長産業として捉えられている「コンテンツ」を地域振興に活用しようという動きが見られるが,本論ではコンテンツの語彙を精確に定義し,かつそれに包含され得ない生の体験を,エクスペリエンスという語を以って定義することで,健全な議論の基礎を構築する。更に情報の社会的性質を示し俯瞰的に論じる。その上で筆者が学術的フィールドワーク及び,アニメーション製作の実務経験を元に,コンテンツを用いる地域振興においてはコンテンツとエクスペリエンスの双方の視点から実践,研究する必要性とアイディアを示す。本論は,地域における情報のハブを構築する実務にてプラクティカルに活用できる知見の提供を行う。
著者
中村 陽一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.395-400, 2014-10-01

本稿では,社会デザインからみた図書館を考察するため,まず,社会デザインのなかでのコミュニティデザインの可能性を探り,そこで行われている「つながりを編み直すワーク,活かすワーク」について,事例とともに考えた。続いて,社会デザインとしての事業取り組みモデルを紹介した後,コミュニティデザインの変容から「サードプレイス」としての場の可能性に言及し,公共ホール・劇場を例にとった。そのうえで,最後にソーシャル・インクルージョン,サスティナビリティ,ソーシャル・キャピタルという3つのキーワードと「野生の社会デザイン」の必要について述べた。
著者
杉本 まゆ子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.164-168, 2015-04-01

宮内庁書陵部図書寮文庫の保存と公開に関しての紹介と今後の課題について述べた。図書寮文庫は,大宝律令で定められた図書寮を淵源とし,直接的には1884年に設けられた図書寮を受ける部署である。まず,天皇・皇族の御蔵書を核に,公家や武家の所持していた本,学者の蔵書などが加わって形成された広範な蔵書群の特徴を述べた。また保存の核となる修補係・出納係について,原態を留めることに注力し,状況を悪くしないための綿密な防黴防虫作業を紹介した。最後に2013年に開始した書陵部所蔵資料目録・画像公開システムの紹介とともに,今後の公開の鍵となるデジタル画像の公開方法について,現状思うことを述べた。
著者
鈴木 尊紘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.233-237, 2007-05-01

図書館情報学と哲学の接点の一つは,図書館等のアーカイブ機能に関して倫理的な検討を行うことにあることを提示する。幾人かの図書館情報学研究者は,図書館が権力性を持ち,コミュニティー・文化・イデオロギー等を形成する力能を有することを指摘している。そうした認識を,ミシェル・フーコーや彼の哲学に大きく影響を受けたメディオロジーは共有しつつ,アーカイブという営為の権力性に自覚的であるための倫理学を提唱していることを説明する。各国国立図書館およびGoogle Book Search等が世界規模のデジタル・アーカイブを構築しつつある現在,こうした倫理学の存立は不可欠であるという主張を行う。
著者
鈴木 ゆかり 関 美分
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.25-31, 2006-01-01

限られた人員構成の中, マニュアルを使って短時間で引継ぎを行い, 確実に成果を出していくことを私たちは求められている。しかし, それを可能にしているところはどれぐらいあるのだろうか。なぜうまくマニュアルを活用できないのか。そして, マニュアルを活用していく際, 多くの人が見過ごしている点は何なのか。新任者の能力向上に大きな影響を与えるのは直接OJTを行う指導者だといっても過言ではない。そこで指導する側の心構えについて再確認をし, マニュアルについては具体的な事例を用い, 活きたマニュアルにするためのコツと, 確実に成果を出すための効果的な引継ぎ方法について伝えていきたい。
著者
渡辺 智暁
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.64-69, 2011-02-01
被引用文献数
2

本稿ではウィキペディアを使う上で重要となるメディア・リテラシーを論じている。具体的には, ウィキペディアの運営・品質管理体制や方針, 参加者の動機, 利害関係者の動機や影響力などを解説し, ウィキペディアの特定の項目の信頼性を見積もる上でそれらがどのように手がかりとなるかを論じる。また, ウィキペディアの信頼性・品質に関する既存の調査の傾向に触れつつ, 限界を指摘する。他の資料との併用が有益であること, ウィキペディアは他の資料への入口としても有用性を増しつつあることを述べる。最後に, 中長期的な視点に立つと, ウィキペディアへの貢献も, 信頼性の問題への有意義な解決方法であり, 直接的な貢献の他にも多様な間接的貢献法があることを説明する。
著者
谷口 祥一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.482-488, 2010-12-01

メタデータについて,特に最近の重要トピックを取り上げ解説する。(1)RDFaを用いたメタデータの公開とサーチエンジンによる活用,(2)Linked DataとLinking Open Dataによるメタデータ公開,(3)国立図書館などによるRDF,SKOSを用いたメタデータ公開,(4)その他を取り上げる。併せて,ダブリンコアの現在の状況について解説を加え,いっそうの構造化,セマンティックWebへの志向性を確認する。最後に,セマンティックWebとメタデータの関係,RDKF,RDFスキーマ,OWLなどの位置づけを整理し論じる。
著者
久永 茂人 高久 真一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.140-145, 2014-04-01

国立国会図書館では多数のマンガ単行本(コミックス)やマンガ雑誌を所蔵している。マンガ雑誌を中心とした所蔵および利用状況について踏まえたうえで,マンガの破損の実例とその補修方法について事例報告する。当館で所蔵しているマンガ雑誌は約1200誌である。利用冊数が多い雑誌の上位15誌に,マンガ雑誌は6誌が入っている。マンガ単行本は,分類による抽出が十分にできないためリスト化が困難である。作りが簡易であること,材料の質がよくないこと,利用が多いことから当館ではマンガの破損が問題となっている。破損したマンガ単行本は,主に無線綴じの綴じ直しの手法で補修している。破損したマンガ雑誌は,再製本したり破れたページを和紙で補修している。
著者
工藤 卓哉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.418-423, 2015-10-01

今日,世界的な先進企業が,日々生成される膨大なデータのなかから「金鉱」を見つけ出そうと躍起になっている。日本でも数年前から「ビッグデータ」や「データサイエンス」という言葉が流布してはいるものの,国内ではいまだバズワードの域を出たとは言いがたい。データ活用が,デジタル化社会の将来を見越したビジネスモデルの再構築にまで到達するケースがいまだ限られているからだ。そこで本稿では,日米を拠点にさまざまなデータ分析案件に携わる筆者の視点から,デジタル化社会におけるデータ活用のキーポイントを先端事例を交えながら論じていく。