著者
阿部 重夫
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.8-14, 2015-01-01

月刊誌FACTAは調査報道を目的として創刊8年余,100号を超えた。インターネットの普及で新聞や雑誌など紙メディアが退潮するなかで,報道の使命はスクープを純化すること,すなわち官僚機構や企業組織に依存する「御用聞きメディア」から脱出し,独自にニュースを創出することにあると考えた。しかし,憲法21条で保証されている「表現の自由」に基づく「知る権利」は,インターネットを基盤とした検索エンジンやSNS(交流サイト)の勃興で個人情報がビッグデータの源として日常的に広範囲に収集されている時代に,もはや時代遅れの理念でしかない。現に欧州などでは「知られない権利」論が台頭,調査報道の根幹を揺るがしかねなくなってきた。その二律背反にどう理論武装するか。
著者
荻 昌朗
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.18, no.7, pp.191-198, 1968-07-15
被引用文献数
1

新しい情報メディアとして,映画フィルムの果たす役割は次第に高まりつつある。本論は,フィルムの機能を伝達と記録に分析し,前者に対応するものとして劇映画・教育映画など一般公開用のフィルムを,後者に対応するものとして研究用・編集素材用のフィルムなど特定利用者向けのフィルムを考えた。フィルムの整理方法として,前者には図書館学的方法が適用されているが,後者にはその性格上ドクメンテーション的手法が妥当なことを論じ,言語情報に対する映像情報の特性,映像の言語表現に伴なう情報量の減少と情報質の歪,その解決のとしてバターンマッチングの手法を追求している。実例として,NHK-TVのフィルムライブラリー(東京)の例を簡単に紹介し,最後に,フィルムのIRの機械化について,言語検索と映像検索の両面から検討するべきことを提言している。
著者
斉藤 孝
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.670-677, 1998-12-01

情報リンクとは, 情報と情報を結び付けるもの, また必要な情報に辿り着くための結びつきのことである。情報リンクをかなり広い意味でとらえると図書目録, 索引, 参考調査, 情報検索など情報管理そのものにまで話題が拡散してしまう。そこで, 本稿では情報リンクの技術的側面に的を絞り, その集大成ともいえるハイパーテキストについて触れた。
著者
兵藤 健志
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.15-21, 2014-01-01

本稿では,ACRLが2000年に発表し,また,2014年に改訂を予定している『高等教育のための情報リテラシー能力基準』を軸として米国の高等教育における情報リテラシーのこれまでの定義や最新の議論を概観する。併せて,情報リテラシーの展開に学術コミュニケーションという新たな視点をもたらした2013年のACRLによる白書『学術コミュニケーションと情報リテラシーの交点:変わりゆく情報環境へ向けて戦略的協同を創造する』を紹介する。
著者
森石 みどり
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.386-391, 2015-09-01

米国の大学図書館では,拡大するアクティブ・ラーニング・スペースを確保する手段の一つとして,シェアード・プリントが進められている。電子リソースの普及により利用の少なくなった冊子体資料を,共有の蔵書として保存する取り組みである。本稿ではシェアード・プリントについて,用語の整理やシェアード・ストレージとの比較を通じ,その特徴を示す。また,複数のシェアード・プリント・プログラムに共通する運用ポリシーをまとめ,日本におけるシェアード・プリント実施の必要性や,実施の際に検討すべき点を考察する。
著者
藤垣 裕子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.102-108, 2004-03-01

レビュー誌とは,すでに出版された学術情報を再考し,批評し,回顧し,概説を与える(統合して評価する)雑誌を指す。レビュー誌にとりあげられることによって,もとの学術情報は再考され,全体における位置づけを得る。それでは,「もとの学術情報が再考され,全体における位置づけを得る」とは何を意味するのだろうか。この問いを考えるために,本稿では次の2つの考察を行った。まず,もとの学術情報とは何かという問いについて,知識生産論,ジャーナル共同体論の側面から考察した。続いて,もとの学術情報が再考され,全体における位置づけを変えることの意味について,引用論をもとに考察した。これらの2つの方向からの考察をもとに,レビューとは何を意味するかを再考した。
著者
岡本 真
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.306-311, 2014-08-01
被引用文献数
1

インターネットを利用した新しい資金調達の仕組みであるクラウドファンディングの動向について,代表的サービスの一つであるREADYFOR?の運営経験に基づいて解説する。特に日本におけるクラウドファンディングの仕組みやREADYFOR?における事例に基づく資金調達に成功する秘訣を説く。
著者
木下 和彦 川瀬 直人 大田原 章雄
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.214-220, 2008-05-01

本稿では,インターネット上で公開・配布されているソフトウェアを活用する上で,基本的に知っておきたい事柄について概略を説明する。ソフトウェアにはフリーソフトやシェアウェアのほかに,フリーソフトウェアやオープンソースソフトウェアと呼ばれる類のものがあることを整理し,こうしたソフトウェアを探す場合には,Vectorや窓の杜といったソフトウェアの提供サイトを利用するとよいことを述べる。さらにソフトウェアのダウンロードやインストール方法について,特に初心者がつまづきやすい点について説明し,最後に利用上の注意について,特に職場で使用する場合に気をつけたいことについて触れる。
著者
大井 雄一 宇佐見 和哉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.409-413, 2010-10-01

現代のストレス社会のなか,労働者は様々なストレスに曝され,うつ病をはじめとした精神疾患のために休業を余儀なくされる労働者が増加し社会問題となっているが,図書館員にとってもそれは例外ではない。労働者において精神疾患の発症を予防するためには,ストレスというものの捉え方および対処の仕方について積極的に考え,マネジメントすることが必須となる。労働者のストレスを考える上では,職業上のストレスのみならず,職場外でのストレスや個人のストレス対処能力などさまざまな要素が関連している。これらに対してストレスモデルを用いながら,多角的な視野をもってストレスマネジメントを行うことが疾病予防につながっていく。
著者
K
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.406-407, 1982-08-01
著者
松永 敦夫 石川 浩
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.265-270, 2014-07-01

今日,主要国特許庁から特許公報の全文がデータベースとして提供されている。このデータベースを自らサーチし,また必要に応じ審査経過情報にもアクセスして,誰もが関連する特許情報を取得することが可能になっている。特許情報の科学技術情報としての利用促進は,特許制度の要である。しかしながら,特許明細書は,出願人が特定の意図をもって技術情報を開示するものであり,また,玉石混交であることから,その利用には注意を要する。特許情報の利用者は,特許制度を良く知り,また技術分野毎の戦略のパターンを知って,特許情報を評価することが重要である。小論では医薬品に関する特許情報の評価や利用例を中心に紹介する。
著者
中島 幸子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.470-474, 2013-11-01

国立国会図書館(以下,NDL)では2012年8月〜9月に,科学技術分野の学協会を対象に,学会誌・論文誌,会議資料の刊行及びNDLへの納本状況について調査するため,アンケートを実施した。その回答から,学協会出版物は従来の冊子体での発行のほかに,CD-ROM,オンライン提供等,多様な形態で発行されていることが判明した。また,会議録の納本状況が良くないことがわかり,会議資料の収集強化に向けて,納本制度の広報等を一層進めていく必要性を認識した。さらに,NDLでは2013年7月からオンライン資料の収集を開始したが,当面の納入義務対象に含まれない学会誌・論文誌と会議資料が多いことも判明した。
著者
栗山 正光
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.461-466, 2004-09-01
被引用文献数
2

OAIS参照モデルは,デジタル情報の長期保存システム構築に関する有力な指針であり,国際標準規格ともなっている。本稿では,保存のためのメタデータに焦点を絞り,0AIS参照モデルに示された情報パッケージの概念と,それに基づいて行われているメタデータの枠組み規定の実際について論じる。OAIS参照モデルは,デジタル情報の保存活動を行っている諸機関で広く認知されているものの,それぞれが規定する実際の保存メタデータの枠組みは,0AISの情報パッケージの構成とはかなり異なった形でなされているのが実状である。個々のニーズと相互運用性・再利用性とのバランスが今後の課題となる。
著者
高原 良文
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.621-628, 2008-12-01

丸善は,1960年代から70年代における学術情報流通の大きな転換期にあって,外国雑誌や洋書など印刷媒体の進化を伴う学術情報流通の多様化と市場環境の変化に対応すべく,1970年代中頃に情報産業への進出を図る。ロッキード社との提携に向けられた丸善の積極策が奏功し,1977年わが国に世界最大規模のオンライン情報検索システムDIALOGを導入する。本稿では,DIALOG導入に至った経緯,DIALOG日本センターとしてのMASISセンターの役割,情報検索サービスの普及活動,MARUNETの構築と通信回線事情,データベース作成機関との連携強化など30年前のオンライン草創期から1980年代の発展期を振り返る。