著者
鈴木 正紀
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.146-153, 2011-04-01
被引用文献数
1

大学図書館員の持続的成長に必要な要件について検討を行った。以下の3点に言及した。(1)どういった知識や技能が必要か,(2)それらをどういった方法で学んでいくか,(3)成長を可能とするための基本的態度。(1)については,LIPERの大学図書館班による知見とその構造的把握に資するCILIPによるBody of Professional Knowledgeおよび国立大学図書館協会人材委員会による「コンピテンシー・モデル」をとりあげた。(2)については,(i)外部の情報を積極的に取り込むこと,(ii)仕事に関連した資格取得,(iii)大学院での研究,(iv)そして身近なところでできる日常的努力の方法等について触れた。(3)については,仕事に対するビジョンを持つことと,人とのゆるいつながりを維持することの重要性を指摘した。
著者
小島 浩之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.42-48, 2010-02-01

資料保存を指す言葉にプリザベーション,コンサベーションがあり,これらは,戦略や戦術などと近似する意思や方向性の決定を伴う概念である。本稿では資料保存における意思決定プロセスに着目し,日本の図書館における資料保存について分析し,その留意点や問題点の整理を試みる。まず種々の保存に関する理論的枠組みのうち,主要なものをとりあげてこれらが現在の資料保存の枠組みに与えた影響の大きさを考察する。その後,実際の保存計画の立案や保存対策のおける意思決定プロセスに焦点を絞り,資料保存の理論的枠組みがどのように利用されているかを概観する。

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著者
島地 章雄
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.249-250, 1986-05-01
著者
前田 朗
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.615-620, 2008-12-01

東京大学情報基盤センターが主催する「図書系職員のためのアプリケーション開発講習会」は,各受講生が企画・開発した図書館関連アプリケーションをWeb上で試行公開している。っまり,職員の学習の場に留まらず,新しい利用者向けサービスや業務効率化のツールを内製によりローコストで提供する場としても機能している。講習会成果のうち,情報のファインダビリティ向上を実現するサービスには「東大版LibX」「東京大学OPACウィジェット」「My UT Article Search」「東京大学OPAC Plus"言選Web"」などがある。大学図書館において,ローコストでも実現可能なファインダビリティ向上の機会は多く,取り組みの意義がある。
著者
菊池 信彦
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.156-163, 2015-04-01

本稿では,西洋史学にとっての「古典籍」の一つ,ヨーロッパにおける中世写本をテーマに,その「最前線」としてのデジタル化と公開の現状を論じた。ここでは,ヨーロッパにおける資料デジタル化等の統計調査プロジェクトであるENUMERATEの成果や,Europeanaをはじめとする各種のオンラインデータベースからデジタル化写本の公開点数を確認した。さらに,デジタル化の「その先」にある,写本画像の利用実態を知るべく,「研究」「教育」「広報」の3つの観点から,様々なデジタルヒューマニティーズのプロジェクトを論じた。
著者
後藤 嘉宏
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.364-371, 2012-09-01
参考文献数
43

東日本大震災はソーシャルメディア等新しいメディアの活躍の目立った災害であるとされる。他方,正常化の偏見仮説やオルポート&ポストマンの流言の公式等,災害情報学の従来の知見が当て嵌まる事例が多かったが,そのことへの新聞等での言及は少ない。これは新しいメディアに注目が集まったためであろう。その点から考えると,情報技術の進展が人々の意識や行動を変えるわけではないといえる。他方,インターネット革命が,相互監視的な情報環境に身を晒すことに馴れさせる等,我々の意識を根底から変える可能性そのものは否定できない。これは個人の自律性の確保の面で問題はあるが,防災の面からいうとメリットも大きい。今回の震災はソーシャルメディアと既存メディアの連携が注目された災害といわれるが,非常時と平時とをいかに分けるか,さらに連携のなかでどう棲み分けていくかという課題が前面に出た災害であるといえよう。
著者
田邊 稔
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.230-237, 2014-06-01

今まさにシステムライブラリアンというポジションを目指している人や現在図書館のシステムを担当している人,現状スキルはないが将来システムに携わってみたい人が,これから何を学び,どのように行動し,次のステージに向けて準備すればよいのか。筆者の26年のシステム屋としてのキャリアと,そのうち13年のシステムライブラリアン経験を踏まえて,勝ち残れるスキルおよびキャリアとは何か?を掘り下げ,徹底的に自分と向き合い,成功を引き寄せる方法を模索する。
著者
坂口 貴弘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.384-389, 2010-09-01
被引用文献数
1

アーカイブズ界では対象資料の独自性を踏まえつつ,図書館界の書誌コントロールに相当する領域を発展させるべく,各種の方法論や標準類が開発されてきた。本稿ではまず,記述に関する標準としてISAD(G)やDACS,EAD等について解説する。次に編成に関して,組織ベースの編成と機能ベースの編成を取り上げ,それぞれに関連する標準としてISAAR(CPF)とISDFに言及する。さらに電子記録のメタデータ付与に関する課題を指摘し,その標準化の取り組みのうちISO23081とMoReqについて扱う。アーカイブズの編成・記述をめぐる近年の動きには,図書館界の議論との共通点を多く見出すことができる。
著者
藤本 徹
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.502-507, 2012-12-01

本稿では,「サービスとしてのゲーム」を一つの切り口として,ゲームの要素や枠組み,そしてその社会的利用における考え方を論した。ゲームの社会的利用に関連する概念を検討し,「サービスとしてのゲーム」の観点から,ゲーム産業におけるゲームのサービス化や情報サービス産業におけるサービスのゲーム化といった異なる角度から考察した。その上で,情報サービスにおいてゲームの要素を取り入れるアプローチを3つのレベルに整理して,それぞれの特徴について図書館におけるサービス開発の文脈で例示しながら,今後このような取り組みに向かう際に考慮すべき課題を検討した。
著者
山本 順一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.60-65, 2012-02-01

政府の場合,保有する機密情報や法令上非公開とされている情報を除き,国民に公開すべきものであり,その一部は灰色文献を構成してきた。また,学術情報についても,たとえば,博士論文は一般市民には近づきがたく,グレーな情報にとどまってきた。民間の企業や団体が保有する価値ある情報が,灰色文献として,一部でひそかに活用されてきたこともある。従来は,このような小規模潜行出版による紙媒体資料としての限界から,灰色文献として取り扱われてきたものが,最近ではその少なくない部分がデジタル化され,インターネット上で利用できるようになった。本稿は,日本法の枠内で,紙媒体からオンラインのデジタルコンテンツに変貌しつつある'灰色文献'を法的に検討しようとする。
著者
湯浅 俊彦
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.322-327, 2013-08-01

日本の出版流通における書店の位置を概観し,学術出版の流通に起きた変化と書誌情報・物流情報のデジタル化という前史から,今日の電子出版ビジネスと書店の関係を考察した。そこで明らかになったのは物流を伴わない出版流通において,既存のリアル書店が主要なプレイヤーにはなりえないということである。しかし,リアル書店の良さはその空間演出にある。アマゾンのようなオンライン書店の登場によってこれまで当たり前であった普通の書店が「リアル書店」と呼ばれ,その価値が改めて見直されたように,電子出版の進展によって「紙の本」の価値は相対化されながらも,消えることはないだろう。
著者
関根 千佳
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.372-377, 2009-08-01

図書館の役割とは,市民に情報を提供することである。社会を構成する市民の中には,年令や能力,背景などの環境において,多様なニーズを持つ人々が増えてきている。日本は2009年現在,イタリアを抜いて世界で最も高齢化の進んだ国となった。加齢が進み,視覚や運動機能などに制限のある市民の増大と,ITの進展で新たな読書環境が出現する中で,その「読書」を支援する体制やサービスは,どのようなものが求められているのだろうか?本稿では,特に米国における図書サービスを中心に,読書障害(Print Disability)への対応について,デジタル化が進む図書館サービスの将来像をユニバーサルデザインの観点から論じる。
著者
赤間 亮
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.181-186, 2015-04-01

立命館大学アート・リサーチセンターにおけるデジタル・アーカイブ事業では,デジタル化技術やデータベース開発を独自に行って来た。徹底した公開ポリシーを掲げて所蔵品を公開する一方,国内の自治体や大学,個人の所蔵品のデジタル・アーカイブを実施してきた。その後,海外に展開し,欧米の博物館所蔵の日本美術品・文化財を対象として,急速に進んでいる。現在は,古典籍に重点が移っているが,これはバンジーシステムの開発により,高速化が実現されたからである。また,現地の若手研究者とのコラボレーションと教育的効果を組込んだARC国際モデルが定着し,小さな組織ながらグローバルな展開が可能となっている。
著者
三津石 智巳 外崎 みゆき 河村 俊太郎 中塚 寛幸 愛宕 翔太 岡本 真 清田 陽司
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.508-513, 2012-12-01
参考文献数
11

Ref.Masterとは,国立国会図書館が提供するレファレンス協同データベースを活用して開発された,レファレンススキル向上のためのツールである。ゲーム感覚で遊びながらレファレンススキルを学習することができる。また一方で,Ref.Masterは人が遊んだ副産物として,計算機では困難な処理がなされるゲーム「GWAP(Game with a Purpose)」のアプローチを利用することで,レファレンス協同データベースに登録されているデータの品質向上に貢献することも企図している。本稿では,利用者のモチベーションを保ち継続的に学習を続けてもらうためのゲームと,新たなデータ生成という別の目的を持つゲームであるという2つの側面をもつRef.Masterの開発背景や機能のほか,運用から得られた知見についても述べる。
著者
木村 英司
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1006-1013, 1993-11-01

公共図書館が,住民から多様な資料需要に的確に応えるためには,中核館としての県立図書館と市町村立図書館が,有機的な機能協力をすることによって,ひとつの資料提供システムを確立することが大切である。滋賀県立図書館では従来からの協力車による市町村立図書館への巡回活動に加えて,全県的な保存図書館活動を展開するために資料保存センター機能を備えることになった。市町村立図書館における除籍資料で県立図書館未所蔵のものは,新たに県立図書館の資料として受け入れられ県内の市町村立図書館で共同利用できるようになった。平成4年度は約6,000点が受け入れられた。
著者
笈入 建志
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.328-334, 2013-08-01

今は小規模かつ個人経営の小売店舗は書店に限らず減少し,一方でコンビニエンスストアやチェーン店,大資本による大型店舗やショッピングセンターなどが目立つ時代である。個人経営の書店が生き残っていくためには何が必要なのか。現在行っている仕事を整理しなおし,それぞれ将来性や重要度をもう一度検討する。接客,仕入れ,商品開発,販売促進,PR,イベントなどの各分野に含まれる仕事の,どれを最重要と位置付けて力を注ぐのか。新しい時代の書店がここから生まれる。
著者
山本 毅雄
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.254-259, 2008-05-01
被引用文献数
1

1975年6月,日本最初の実用規模オンライン情報検索サービスTOOL-IRが,東大大型計算機センターで開始された。ソフトウェアは著者らのチームによる自作で,初期には海外から輸入したデータベース(最初はChemical Abstracts ServiceのCA Condensatesのみ,同年度内にCambridge UniversityのCrystallographic Data, INSPECのComputer and Control Abstracts)が加わった。利用者は全国の大学・短大・高専・研究所などの研究者(教師および大学院生)で,毎年の実利用者は致百人(最盛期は千教百人), 20年以上利用された。TOOL-IRサービスは,ヒューマン・インターフェースを重視した対話型(CUI)ソフトウェアをもち,語尾一致検索,質問ライブラリ,利用者によるデータベース作成支援ソフトウェア(PDB),サービス提供者と利用者間の電子メール交信のどの特色があった。また,国産計算機上で音響カプラー端末(いわゆる電話端末)を利用できるようにした最初のシステムでもあった。このプロジェクトの発想,研究・開発,データベースの輸入,サービスの略史について述べる。
著者
川嶋 斉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.188-194, 2014-05-01

近年では国立情報学研究所や,カーリル,国立国会図書館などから,公共図書館でも活用できそうなWeb APIの提供が開始されている。このようなWeb APIを取り入れ,自館のWebサイトと他のサイトの連携を図ることによって,Web-OPAC設置以後,長く停滞してきた公共図書館のWebサービスを変えられる可能性がある。本稿では野田市立図書館を例に,JavaScript上でのWeb APIの利用方法と,公共図書館サービスでAPIがどのように活用されているかを紹介する。また,野田市立図書館がWeb APIを取り入れるようになった経緯について触れ,そのきっかけとなったゆうき図書館「新着雑誌記事速報」でも使われている,Google Feed APIを,JavaScriptでWeb API活用の入り口として紹介する。
著者
富川 直毅
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.41-50, 1996-01-01

情報処理振興事業協会では,来たるべき電子図書館時代に求められる情報処理技術, コンピュータネットワーク技術などの基本的な問題を検討するため,パイロット電子図書館プロジェクトを実施している。本稿では,本プロジェクトの概要,および構築した電子図書館システムの構成および機能の概要について説明する。