著者
斉藤 通貴
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.56-61, 1999-02-01
被引用文献数
2

本論文では図書館の効果的な戦略を考えるに当たって, マーケティング戦略の視点を導入し, 非営利組織のマーケティング, マーケティング戦略プロセス, サービス・マーケティング, 消費者情報処理行動の研究成果を援用することを試みた。図書館運営におけるマーケティングの有用性は, 顧客満足の視座からそれぞれの業務をとらえ, 戦略的発想を得ることであると考える。市場, 公衆, 製品ミックス, 接客員へのエンパワーメント, 関係性のマネジメント, データベース・マーケティング, 顧客分類と情報提供などの議論を通じて, いかにして図書館のミッションを有効かつ効率的に達成するかが議論される。
著者
郡司 ペギオ幸夫
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.244-248, 2007-05-01

Floridiの情報実在論から出発して,認識論的構造実在(SLMS-シェーマ)に見出される存在論的寄与の意義を考察し,進化・変化を含意する実在として,その描像の可能性を述べる。存在論的寄与とは,対象・認識間の齟齬を,理論内部に,抽象レベルとモデル間の齟齬として持ちこんだものである。ここではその齟齬が決して解消されないことをもって,情報単位の解体・内省が導かれるという点を論じ,生化学サイクルの観察・モデル化の事例を用いて,情報実在論が本質的に階層間齟齬を内在する動的階層構造であることを明らかにしている。
著者
鈴木 正紀
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.364-369, 2002-07-01

IFLA「図書館/情報教育プログラムのためのガイドライン2000」を翻訳し,1976年に出された「図書館学校の基準」との若干の比較を行った。両者は四半世紀のあいだを経ており,その間の図書館をめぐる技術的環境変化,高等教育機関のおかれた社会的環境の変化によって,教育内容は大きく変化していることが見て取れる。
著者
西沢 康
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.361-366, 2003-07-01

1999年(平成11年)11月,記事索引とマイクロフィルムからデジタル化した紙面イメージを一体化させたCD-ROM「明治の読売新聞」を,読売新聞社が発売した。新聞界でも初の事業である。「明治」編から8年。「大正」「昭和」戦前I・IIを完成させて現在,「戦後復興編」として1960年(昭和35年)までの「戦後」編第一弾が進行中だ。媒体も大学,公共図書館を中心に「貴重な資料」との評価をいただいている。索引と紙面イメージが絡み合ったからこそ,関係者から迎え入れられたといえる。デジタル化と索引編集について,これまでの制作過程を紹介する。
著者
角家 永 木下 和彦
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.237-241, 2008-05-01

iGoogleは,Googleのホームページを自分の好みに合わせて自由にカスタマイズできるサービスである。iGoogleは,このサービスに組み込むサービス(ガジェット)をユーザーが自由に作成・公開できる点に特徴がある。iGoogleガジェットは,HTML,XMLとjavascriptの基本的な知識があれば誰でも作ることができるが,本稿ではHTMLの知識だけでもガジェットの作成ができるように留意し,Webページの一部やOPAC検索窓をガジェット化する方法について解説する。
著者
小島 恵美子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.410-415, 2011-10-01

日本医師会医学図書館は,国立情報学研究所の相互利用システム(NACSIS-ILL)における図書館間相互貸借(ILL)複写依頼の最多利用館の1つである。2007年度から2010年度のILL複写依頼を集計した結果,利用者におけるインターネットの普及が影響を与えていることが示されていた。オープン・アクセスの文献などインターネット上の文献利用が要因と考えられる複写件数の減少が認められる一方で,電子化,オープン・アクセス化されていない文献の申し込みが増加傾向にあった。利用者自身による入手が困難な文献情報を,複写サービスやILL複写依頼のなかで発見して提供することが,今後は重要になると考える。
著者
小出 いずみ 栗田 淳子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.863-869, 1990-12-01

外国人による日本研究は近年ジャパン・スペシャリストといわれる専門家だけのものではなくなり,日本語ができなくても日本を調査・研究の対象に含める人が増え,裾野が広がった。日本に関する外国語の文献を収集している国際文化会館図書室では日本研究者をはじめ,その他の研究者にさまざまなサービスを提供している。情報提供のパターンには,情報そのものの提供,情報アクセスの手段形成,情報アクセスの障壁を取り除く活動の3種類がみられ,全体として英語圏の日本研究の日本におけるレファレンス部門の役割を果たしている。日本情報の国際的流通をよくするために海外で日本情報を扱える仲介者を増やす,国内の情報流通基盤の整備,国内の日本情報の拠点機関の充実が必要である。
著者
松邑 勝治 植松 利晃 國岡 崇生 治部 眞里 堀内 美穂 山田 直史 坂内 悟 齋藤 隆行
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.336-342, 2011-09-01

独立行政法人科学技術振興機構(JST)が提供するJ-GLOBALは,産学連携や研究課題立案における課題探索(抽出)において業種を超えた情報収集や,新たな発想を支援するサービスである。JSTは,J-GLOBALを介してJST内外のさまざまな専門的なサービス等と連携し,質の高い科学技術情報をより効果的に流通させることで,わが国のイノベーション創出に貢献することを目指している。本稿ではJ-GLOBALが実現している"統合検索"機能を中心に,サービスの現状,今後の展望について紹介する。
著者
酒見 佳世
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.436-441, 2008-09-01

2007年9月から2008年2月までの半年間,カナダのトロント大学図書館において研修を受ける機会を得た。本稿ではトロント大学のメインライブラリーであるRobarts Libraryと,貴重書図書館であるThomas Fisher Rare Book Libraryの目録担当での経験を元に,トロントと慶應義塾大学メディアセンターにおける目録作業とを比較しつつ,現在の目録を取り巻く状況と今後の方向性について述べる。
著者
井上 如
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.978-985, 1993-11-01

図書館間での相互利用が展開する三段階過程,「相互貸借」,「コンソーシャム」,「ネットワーク」は,方向性を持った三段階の図書館業務,すなわち「収集」,「整理」,「利用」と呼応しながら進化している。すなわち,「相互貸借」は「利用」の共同化であり,「コンソーシャム」は「利用」のみならず「整理」をも含む共同化であり,「ネットワーク」は更に「収集」までを含む図書館業務の全過程の共同化である。第二段階が第一段階からevolveするのに対し,第三段階への進化は第二段階に内因があるのではなく,技術の進歩など環境変化に左右される。従って,図書館にとって第二段階と第三段階との間には越え難い溝がある。それを,「所有とアクセス」の矛盾,「単館」の論理と「群館」の論理の矛盾として提示した。次いで種々のコピー概念をオリジナルとの対応から整理し,その結果を博物館,美術館をも含む相互利用にあてはめて,貸借を基本とする博物館/美術館に対し,図書館では複写が基本である理由を,図書館が保有する刊本のduplicateという性質に求め,更にこの性質が,利用者にとっては,読みとは無関係に刊本の疑似所有を可能ならしめ,図書館にとっては,相互利用の三段階を貫くことによって,越え難いとした溝を重層化によって埋める可能性をはらむものであることを述べた。
著者
安藤 友張
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.115-119, 2004-03-01
被引用文献数
1

学術情報流通メディアとしてのレビューの意義と機能を考察するために,英米と比較しながら,日本における図書館情報学及び教育学分野のレビュー誌をめぐる現状をあきらかにした。 日本の当該分野において,レビューが低調である要因や背景として,以下の点を指摘した。(1)学界のコミュニティの規模が小さい。(2)研究業績としてのレビューに対する評価が低い。(3)レビューの機能と概念に対する研究者の捉え方が狭い。
著者
長谷川 秀記
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.261-265, 2006-06-01

電子書籍は,携帯電話での読書の伸びなどもあり,普及段階に入ったといえる。また,紙の本からアニメ・映画・ゲーム・キャラクター商品などへ展開するクロスメディアの動きも活発である。クロスメディアの時代においては,複雑な権利関係が発生し,著作権や関連権利の調整に大きな注意が払われなくてはいけない。電子書籍はコピーや通信による頒布が簡単である。したがって,著作権管理システム(DRM)による不正コピー防止策が必要だと言われ,DRMを採用した電子書籍フォーマットも登場している。しかし,実際に流通している電子書籍の大部分では読者の利便を優先し,ゆるやかな著作権管理しか行われていない。今後より使い勝手のよいDRMの登場が期待される。
著者
山崎 千恵 天野 絵里子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.75-80, 2010-02-01

資料保存環境整備部会の活動を中心に,京都大学の図書館における資料保存活動について具体的に報告する。資料保存環境整備部会は,「資料保存環境の点検調査と基準・指針の提示」「資料保存に関する情報の提供と支援(ウェブサイト,職員研修等)」「資料の劣化対策」をその使命とし,2007年に設置され,各種研修や情報の共有化,啓発活動を行っている。部会が設置された背景として,職員が自発的に始めた資料保存ワークショップの活動や,海外での貴重な研修体験を紹介しながら,最後に,専門的な知識や予算が少なくても「できることから」始めることが資料の保存にとって重要であることを提言する。
著者
稲葉 洋子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.486-491, 2009-10-01

近年,国立大学図書館では所属する大学の理念や目標・計画のもと,図書館も一部局として成果を上げ,かつ利用者への多様なサービス活動を展開していくことが求められている。だが,運営に関わる予算が厳しくなってきている現在では,図書館職員一人ひとりが企画をし,予算を獲得する能力が必要とされてきている。本稿では,国立大学法人化以降,国立大学図書館職員が置かれている状況と,その中でどのように自らスキルアップをして能力を高めていけばよいのか,現場から提案していく。
著者
林 賢紀 松山 龍彦 新元 公寛
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.96-102, 2006-03-01

本報告はOCLCと米国議会図書館が中心に開発,運用しているオンラインレファレンスネットワークシステムQuestionPointの概要,機能,導入事例,今後の展望をのべる。農林水産研究情報センターでの導入事例では,レファレンスサービスのネットワークを通しての全国展開に加え,レファレンスの受理と回答を通じた国際的なレファレンスサービスの事例についても紹介する。国際基督教大学図書館での導入事例では,外国製システムの日本語の扱いに関する問題点と自館のサービス体制の中での問題についても論じている。
著者
長山 泰介
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, 2007-11-01
著者
及川 光博
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.589-595, 2004-11-01
参考文献数
11

Visualization (視覚化)は,膨大かつ多変量なデータを探索的に分析していく上で効果的な意思決定の手段として活用が進んでいる。ここでは米メリーランド大学のShneidermanとAhlbergらによって提唱されたVisual Information Seekingの概念と創薬研究等への適用事例について紹介していく。Visual Information Seekingは主として次の三つの概念で構成される。(1) Dynamic Queries, (2) Tight-Coupling, (3) Starfield Display。適用例については, Visual Information Seekingのコンセプトを実装したソフトウェアであるSpotfire^[○!R] DecisionSite^<TM> を取り上げる。
著者
渡邊 隆弘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.434-440, 2011-11-01

図書館目録の集中機能を保障する典拠コントロールは,書誌コントロールの枠組みの見直しをはかる近年の議論の中でも,今後維持・強化していくべき機能としてとらえられている。また,次世代のウェブとして研究開発が続く「セマンティックウェブ」において,意味情報の共有を実現する「オントロジー」が重要な要素技術となっており,これには目録における典拠コントロールと相通じるところがある。本稿では,典拠コントロールの今日的位置づけ,名称典拠,主題典拠(および統制語彙)それぞれの最近の動向について整理するとともに,オントロジーについて典拠コントロールとの関わりも含めて述べる。