著者
高橋 和文 黒川 隆志 磨井 祥夫
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.189-200, 2005-03-10

本研究では, 100m疾走中の速度変化を表す2つの指標を提案し, その有用性を明らかにすることを目的とした.1つの指標は, Furusawa et al.の理論式からの偏倚の程度を距離で示す累積速度偏差である.もう1つの指標である累積速度偏差率は, 最高速度発現後からゴールまでの速度低下の総量を同区間の理論値に対する割合として定義した.1)累積速度偏差の有用性を判断するために, 5m区間ごとの値を算出し, 速度変化の時系列に沿った分析を行った.その結果, スタートから5m地点までの累積速度偏差は, 反応時間を含めたスタート技術に関与すると考えられる高値を示した.次の5-10m区間では, 累積速度偏差は全区間中で最も低値を示し, 30m地点に至るまで増加傾向を示した.しかし, その後の30-35m区間では, 累積速度偏差は前区間と同値を示し, 次の35-40m区間では, 前区間より低値を示した.また, 最高速度発現後(40m以降)の累積速度偏差は, 80m地点に至るまでの上に凸な曲線的増加と80-100m区間の直線的増加を示した.これらのことから, 累積速度偏差は, 100m走中の速度変化の過程を客観的に区分することのできる指標であることが示された.2)累積速度偏差率の有用性を判断するために, 目的変数として100m走タイム, 説明変数として最高速度, 最高速度の到達時間, 速度逓減率, 累積速度偏差率を用いた重回帰分析を行った.その結果, 多重共線性が無く, 有意な予測値を示した説明変数は, 「最高速度と累積速度偏差率」の組み合わせだけであった.この結果から, 累積速度偏差率は速度逓減率に比べて, 速度低下を説明できるより有効な指標であることが示唆された.
著者
杉本 政繁 水野 忠文
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.177-184, 1975-12-10

ルキアーノス(120〜190A.D.)の『アナカルシス』を検討した結果, 次の3点が明らかになった. I. 彼は競技の目標を, (1)市民および国家の自由, (2)安寧, (3)栄誉, (4)先祖伝来の祝祭の喜び, (5)一族の繁栄といった伝統的な精神的遺産に求め, また競技者像を, (1)男らしい勇気, (2)身体美, (3)最高の身体的状態, (4)栄誉, (5)勝利への不屈の意志, (6)敢闘の精神をもったものと捉えている. したがって, これらは倫理的教育的競技観といえる. II. 国家防衛者の教育方法に関しては, 魂の教育と体育を重視し, 具体的な資質としては, (1)軽快で強靭な身体を持つこと, (2)勇気があること, (3)優秀な人間であること, の3点を挙げているので, これらはプラトーンの国家篇における防衛者の把握の仕方と類似したものといえる. III. 競技見学に関しては, 青年の魂をふるいたたせることによって, 競技への動機づけになると把えているとみられる. 以上の3点は, 体育思想史的に有意義なものと考える.
著者
渡邉 信晃 榎本 靖士 大山 卞 圭悟 宮下 憲 尾懸 貢 勝田 茂
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.405-419, 2003-07-10
被引用文献数
4

本研究は,スプリント走時の下肢の動作および関節トルク発揮と等速性最大筋力との関係を明らかにし,スプリント走のトレーニングを考える上での基礎資料を得ることを目的とした。本研究から得られた知見は以下の通りである。(1)疾走速度と疾走時の下肢の動作および関節トルクとの間で有意な相関関係が認められたのは,支持期の膝関節最大伸展速度(負の相関),回復期の股関節屈曲トルクおよび伸展トルク(正の相関),支持期の膝関節伸展トルクおよび足関節底屈トルク(正の相関)であった。(2)疾走時の下肢関節トルクと下肢の等速性最大筋力との間でいくつかの有意な相関関係が認められたが,,中でもパフォーマンスに影響すると考えられる関係は,回復期の股関節進展トルクと短縮性股関節屈曲筋力(30,180および300deg/s),回復期の膝関節屈曲トルクと膝関節屈曲筋力(短縮性:180deg/s,伸張性:30,180および300deg/s),支持期の足関節底屈トルクと短縮性底屈筋力(180および300deg/s)であった。特に,支持期の膝関節および足関節では,等速性最大筋力が大きいことで支持期の関節トルクを介して関節の角度変位を小さくし,効率的なキック動作を引き出している可能性が示唆された。(3)疾走速度と下肢の等速性最大筋力との間で有意な正の相関関係が認められたのは,股関節屈曲筋力(短縮性:30,180および300deg/s,伸張性:30deg/s),短縮性股関節伸展筋力(180deg/s),短縮性および伸張性膝関節屈曲筋力(180deg/s),短縮性膝関節伸展筋力(180deg/s)であった。以上の結果から,回復期の股関節や,支持期の膝関節および足関節における関節トルクの発揮と,それに引き続き生じる動作には,等速性最大筋力が大きく関わっていることが明らかとなった。従って,スプリント走のパフォーマンス向上において,回復期の股関節や,支持期の膝関節および足関節動作は,それぞれの間接での等速性最大筋力のトレーニングによって改善される可能性が示唆された。
著者
勝田 茂 七五三木 聡 池田 賢 天貝 均 大野 敦也
出版者
社団法人日本体育学会
雑誌
体育學研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.39-51, 1991-06-01
被引用文献数
5

To investigate the inflences of training intensity on bone development in growing rats, young (4-wk-old) Wistar strain were subjected treadmill running 1 h/day, 5 days/wk for 8 wk with a variety speed: 30 m/min (T30 group),40 m/min (T40 group),50 m/min (T50 group). The results be summarized as follows: 1) In the distal femoral epiphysis, longitudinal growth rate of T30 and T40 groups were significantly higher than C (sedentary age-matched controls) and T50 groups, respectively, and the calculated rate of cartilage cell production of T50 group was the lowest among all 4 groups. 2) No difference in bone mineral content (BMC) of femoral mid-shaft was found between any of the groups, but the BMC/body weight was significantly higher in all T groups than C group. Moreover, BMC/body weight increased with the speed of runnning except for T50 group which was suspected to result in converse bending of femur while running, compared with T30 and T40 groups, in connection with the different contraction styles of muscle groups attached on femur. On the basis of these findings, we concluded that physical training may underlie the various effects, such as acceleration, non-influence and/or inhibition, respoding to exercise intensity, on the bone development.