- 著者
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門脇 大
- 出版者
- 神戸大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2017-04-01
2017年度は、「近世怪異文芸を学問・思想・宗教との関係から捉え直し、通史的な読解を行うことにより、従来とは異なる視座から文学史・文化史の再編を行う」という本研究の主目的に沿って、2本の論文を公表した。以下に、公表した2点の研究実績を記す。1)「心学「鬼の相」をめぐって」(鈴木健一ほか編『江戸の学問と文藝世界』、森話社、2018年、pp.273―296)を執筆した。18世紀中頃に興った石門心学の中に表象される「鬼の相」に関する考察を通して、18・19世紀における心学伝播の一端と化物の教訓的な役割を明らかにした。心学資料の中に散見される「鬼の相」に関して、「鬼の相」と題された絵像と、関連する道歌を具体的に検証した。そして、心学の「鬼の相」と、その元となったと考えられる大津絵の「鬼の念仏」との関係を考察した。両者の比較を通して、18・19世紀の大衆的な教養の広がりを具体的に明らかにした。2)「怪火の究明」(堤邦彦・鈴木堅弘編『俗化する宗教表象と明治時代』、三弥井書店、2018年、pp.131―156)を執筆した。「怪火・火の化物」に関する言説を検証して、18・19世紀における怪異認識の変遷の一端を明らかにした。まず、18世紀中期における「怪火・火の化物」の一般的な認識を当時の百科事典をはじめとした諸資料によって整理した。そして、18世紀以降に出版された怪異現象を理知的に説く弁惑物に認められる関連記事を検証した。さらに、明治期以降の教訓書に散見される「怪火・火の化物」に関する記事を具体的に読み解いた。これらの検証によって、前近代から近代へという時代の変節期における怪異認識の変遷の一端を具体的に明らかにした。上記の1)、2)に加えて、刊行には至らなかったものの、18・19世紀を中心とした近世怪談と、その周辺分野(心学、在地伝承など)に関する基礎研究を行った。