著者
安藤 馨
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

第一に、当為言明一般について、認知主義に基盤を置く型の混合的表出主義としての実在論的表出主義の説得性を擁護した。第二に、法的言明の意味論について、命令法の意味論的内容としての命法規範についての言明とする、実在論的表出主義による説明を与えた。第三に、ロナルド・ドゥウォーキンが法実証主義に対して提出してきた「理論的不同意問題」が、ハートの法実証主義の非認知主義に基盤を置く型の混合的表出主義の意味論的問題そのものであることを明らかにし、実在論的表出主義がこの問題を回避するための有力な理論的選択肢であることを明らかにした。
著者
安藤 馨
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

第一に、法的言明について真理性を発話者・評価者へと二重に相対化する型の意味論的相対主義の適用可能性を検討した。その結果、法実証主義的な規約主義と適合的な外見にもかかわらず、不同意の存在が説明できないという古典的難点が必ずしも克服されないことから、固有の理論的長所が意外に乏しいことが明らかとなった。第二に、法的判断と判断主体の行為者性(agency)の問題を検討した。行為者の単位については、方法論的個人主義の再検討を通じて団体の実在を認めつつ、その構成員と全体の間の義務の相克について明らかにした。また、命令説から制裁説までの法モデルのスペクトラムと法的主体の行為者性の内在的連関を明らかにした。
著者
水谷 一雄
出版者
神戸大学
巻号頁・発行日
1955

博士論文
著者
菊池 誠 岡本 賢吾 岡田 光弘 三好 博之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

現代の数学の哲学には (1) 数学の算術および集合論への還元,(2) 一階論理上での集合論の公理化,(3) 一階論理による証明概念の形式化,(4) チューリング機械による計算可能性の特徴付けという[四つの原理]がある.本研究はこの[四つの原理]と現代の[標準的数学観]の関係,[四つの原理]とそれらの相互の関係をに検討することで,数学の哲学の新たな展開と,計算・推論・情報の概念の哲学的解明を目指すものである.2018年度中には以下の活動を行った.(1) 2018年9月3日から9月6日まで神戸大学六甲台第二キャンパス内工学研究科において「数学基礎論サマースクール(テーマ:証明論,特に算術の無矛盾性証明)」を開催した.(2) 2018年9月18日から20日まで神戸大学瀧川記念会館において「Symposium on Advances in Mathematical Logic 2018(竹内外史追悼シンポジウム)」を会した.(3) 日本科学哲学会2018年度大会においてワークショップ「計算の哲学:推論および物理的現象との関係の再考に向けて」を開催した.(4) 共立数学文献を読む会において講演「幾何学の基礎に関するフレーゲ・ヒルベルト論争について」を菊池誠が行なった.これらの活動の結果として,以下の成果を得た.(1) 竹内の証明論と集合論の哲学の特徴について分析を行い20世紀の数学基礎論についての議論の枠組みの詳細を定めた.(2) フレーゲ以前の論理学,フレーゲ,ヒルベルトの量化と含意についての考え方の共通点と相違点の分析の重要性を明らかにした..(4) 量子論理の基本的な性質についての議論を進めた.(5) 不完全性定理と有限の立場についての分析を行なった.
著者
窪薗 晴夫 田窪 行則 郡司 隆男 坂本 勉 久保 智之 馬塚 れい子 広瀬 友紀
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

主に日本語のプロソディー構造を特に統語構造・意味構造・情報構造とのインターフェースという観点から分析し、日本語諸方言におけるアクセントとイントネーションの構造、それらのプロソディー構造と統語構造、意味構造との関係を明らかにした。これらの成果は諸学会、研究会および年度末の公開ワークショップにて発表し、また研究成果報告書(冊子体およびPDF)に報告した。
著者
中野 常男 橋本 武久 清水 泰洋 杉田 武志 三光寺 由実子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,不正会計・財務に関連する歴史的事件を取り上げ,それぞれの事件が持つ歴史的意義を分析した。対象となる国,時代はイギリス(南海泡沫事件,東インド会社),オランダ(チューリップ狂事件),フランス(ミシシッピ会社事件),アメリカ(公益事業会社規制)と様々で,それぞれ歴史的重大性を持つ事件である。それぞれの事件において会計の持つ役割は決して主導的なものではないが,不正会計の事件においては会計の持つ道具性が強調されたことを明らかとした。
著者
大橋 完太郎
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は現代感性論としての「ポスト・ノスタルジー」を考察するに当たって以下の3点からのアプローチを採用する。A. 近代から現代に至る「ノスタルジー」概念と芸術との関係B. 記憶と表象・イメージの構造、およびフィクションの構造に関する理論的検討C. 消費社会における大衆文化と記憶の関わりを説明する北米文化理論の検討現代までのノスタルジーの諸相を明らかにし(アプローチA)、フィクション的な仕組みに基づく記憶の様態を理論化し(同B)、さらにそれが現代社会においてさまざまな意匠となって集合的記憶を強化する仕組みを解析する(同C)。こうしてポスト・ノスタルジーにおける「記憶の動員」効果を明らかにする。
著者
林 祥介 高木 征弘 榎本 剛 はしもと じょーじ 杉本 憲彦 今村 剛 堀之内 武 三好 建正 石渡 正樹
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2019-06-26

世界初の本格金星気象撮像探査機「あかつき」の軌道投入以前、金星大気の観測は断片的であり、数値モデルには仮定が多く、スーパーローテーション(四日循環)の存在に象徴される金星大気の循環構造はほとんど未知であった。本研究では、我々が開発を進めてきた地球シミュレータ上の金星大気大循環モデル(AFES-Venus)を元に金星大気データ同化システム(ALEDAS-V)を構成し、「あかつき」観測と矛盾せず力学的に辻褄のあった金星大気循環場の生成を試みる。金星大気中の未知な擾乱を同定し、その分布と角運動量輸送、物質輸送と雲構造などを明らかにしスーパーローテーションにいたる金星大気大循環の構造を解明する。
著者
飯島 一誠 野津 寛大 庄野 朱美
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、その大半が40歳までに腎不全にいたるAlport症候群男性患者を対象として、アンチセンス核酸によるエクソンスキッピングを利用して、重症型変異を軽症型変異に修復することを目指す世界で初めての分子治療法開発の基礎となる研究である。アンチセンス核酸によりエクソンスキッピングを誘導できることを患者の培養細胞レベル及び患者と同じ変異を持つモデルマウスで確認することができ、今後、ヒトへの応用に発展させる予定である。
著者
川井 浩史
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

褐藻アミジグサ目内における強酸蓄積種の分布を明らかにするとともに,イオンクロマトグラフィーを用いた細胞内無機イオンのうち陽イオン(ナトリウム,アンモニウム,カリウム,マグネシウム,カルシウム),陰イオン(塩素,硝酸,亜硝酸,臭素,硫酸)を対象に濃度の解析を試みた,その結旺,アミジグサ目の種は,硫酸イオン濃度と細胞内pHの値から大きく以下の3つのタイプに分類された:1)硫酸イオン非蓄積型(細胞抽出液は強酸性を示さず,海水と同程度の硫酸イオン濃度を蓄積する種);2)強酸性硫酸イオン蓄積型(細胞抽出液は強酸性を示し,高濃度の硫酸イオンを蓄積する種);3)非強酸性硫酸イオン蓄積型(細胞抽出液は強酸性を示さず,高濃度の硫酸イオンおよびマグネシウムイオンを蓄積する種).このことは硫酸イオンが高濃度含まれていても,それに見合う水素イオン以外の陽イオンが含まれていれば細胞内が強酸化しないことを示している.また,強酸性硫酸イオン蓄積型のヘラヤハズには,細胞内pHおよび硫酸の蓄積裏に季節的な変動性は観察されなかったが,非強酸性硫酸イオン蓄積型のアミジグサには,硫酸マグネシウム蓄積裏に季節的な変動性が観察された.結論として,アミジグサ目の多くの種が本来,硫酸イオンを高濃度蓄積する能力を持っているが,一部の種のみが硫酸イオンと同時に水素イオンを高濃度蓄積することで強酸性を示すものと考えられる.また,葉緑体に含まれるrbcL遺伝子の分子系統学的解析においても,強酸性種または硫酸蓄積種が単一のグレードをなすことはなく,同様の硫酸イオン蓄積が目内で一度だけ進化したとされるウルシグサ目の場合とは対照的な結果が得られた.
著者
岸田 雅雄
出版者
神戸大学
雑誌
神戸法学雑誌 (ISSN:04522400)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.p1-19, 1979-06
著者
谷口 隆晴
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では,ハミルトン偏微分方程式に対するエネルギー保存型数値解法を導出する新たなフレームワークを提案した.提案したフレームワークでは,エネルギー保存型数値解法は方程式を定めるラグランジアンの時間対称性から導出される.この方法は既存の方法と比べ,様々な対称性を用いることで他の保存量を保存する数値解法を導出できるなど,応用範囲が広い.また,このフレームワークの拘束をもつ系への拡張や,局所保存則を保った数値解法の導出法の創出,離散微分形式の理論との連携なども行った.
著者
井口 元三 高橋 裕
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

自己免疫性下垂体疾患の患者を集積して、抗PIT-1抗体症候群で一例の男性症例と、世界で初めての女性症例一例を加え、合計5症例を報告した。また、IgG4関連下垂体炎が、IgG4関連自己免疫性膵炎症例の5%に合併することを明らかにした。抗PIT-1抗体症候群患者の全例に胸腺腫瘍を新たに見出し、胸腺腫瘍細胞中にPIT-1タンパクが異所性に発現していることが原因であることを証明した(Sci Rep.2017)。この事から、自己免疫性下垂体疾患の原因として。腫瘍随伴症候群のメカニズムが関与する「胸腺腫関連自己免疫性下垂体疾患」という全く新しい概念を提唱した。