著者
宮井 浩志 小野 雅之
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農業経済 (ISSN:02860473)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.7-15, 2008-03

ミカン農業は、農業基本法農政の選択的拡大によって、政策的に拡大が計られた作目であり、1962年に97万tであった温州みかん(以下では温州みかんを単にミカンと呼ぶ)収穫量は、ピーク時の1972年には353万tにまで達した。しかし、過剰生産による価格暴落が発生して以降、ミカン農業は縮小後退期に入り、2000年代に入ってからは概ね100万t強の水準で推移している状況にある。現在のミカン産地間競争は、主産地間では糖酸度評価による品質保証を行うブランド競争に変化しつつあり、こうした変化に対応する産地の展開方向を、ここでは「主産地型」と呼ぶ。このようにミカン農業は、光センサーの登場と普及を背景に、競争環境が変化したことから再編期にあると考えられ、産地や農家側はこれら変化への対応を迫られている状況にある。主産地とミカン出荷の時期をずらすことで、市場での競合を回避する産地の対応に着目し、福岡県八女地域を事例に「早出し」対応の実態を、JAふくおか八女に出荷するA農家の経営と出荷・販売対応から分析し、「早出し」対応の意義を明らかにすることを本稿の課題とする。
著者
永合 位行
出版者
神戸大学
雑誌
國民經濟雜誌 (ISSN:03873129)
巻号頁・発行日
vol.211, no.2, pp.27-42, 2015-02
著者
的崎 尚 PARK Jung-ha PARK Jung-Ha
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

ヒトにおいては皮膚ケラチフサイトで約1ヶ月、赤血球で約3ケ月、骨細胞で約10年、脳神経細胞で数10年の寿命があると言われているが、最終分化後の個々の細胞の寿命がどのようにして決定されるかについては明らかとなっていない。本研究では、細胞寿命を決定する分子基盤の解明を目指し、特に、生体内でのターンオーバーが早く、この解析の糸口となり得ると考えられるマウス腸上皮細胞を研究対象として解析を進めている。平成24年度までの解析では・マウス回腸の腸上皮細胞はクリプトと呼ばれる領域で分裂した後に腸絨毛の先端まで移動し、分裂後約3-4日で消失していくことを確認すると同時に、これらの過程は腸内細菌によって制御される可能性を見出していた。そこで平成25年度は無菌マウスに腸内細菌を経口投与し、腸内細菌が腸上皮細胞のターンオーバーに与える影響について観察を行った。その結果、腸内細菌を投与したマウスでは無菌マウスと比べて腸上皮細胞の分裂数が増え、移動が速くなることが確認できた。また腸上皮細胞の三次元培養(オルガノイド培養)を行い、腸内細菌の構成成分や代謝物が腸上皮細胞にどのような影響を与えるかについて解析を行ったところ、腸内細菌の代謝物が腸上皮細胞の分裂に寄与している可能性を見出した。現在、どのような分子メカニズムで腸内細菌の代謝物が腸上皮細胞の分裂を制御しているのかについても解析を進めるとともに、マウスに腸内細菌の代謝物を与えた場合に腸上皮細胞のターンオーバーにどのような影響が出るかについても解析を進めている。
著者
高橋 路子 高橋 裕
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

私たちは新規アディポカインとしてケマリンを同定した。ケマリンはChemR23のリガンドで炎症を制御するケモカインでもあることが明らかにされている。一方アディポカインとしての代謝調節作用もあり、代謝と炎症を結びつける因子として注目を集めている。ノックアウト(KO)マウスの解析から、ケマリンが膵β細胞におけるグルコース依存性インスリン分泌、肝臓、筋組織におけるインスリン感受性、脂肪組織における炎症を調節することにより糖代謝において重要な役割を果たしていること、さらに日本人糖尿病患者において血中濃度が低下しており、ヒトにおいても糖尿病発症に関連している可能性を報告してきた。本研究では主にケマリンKOマウスを用いて代謝と炎症の調節機構を解明するとともに、患者検体を用いて炎症性疾患における脂質メディエーターとの関連および炎症の収束機転におけるケマリンの役割を明らかにすることを目的とする。ケマリンの受容体であるChemR23を共通の受容体としているレゾルビンE1をはじめとする脂質メディエーター等を神戸大学質量分析総合センターの液体クロマトグラフ質量分析システム(Sciex 6500Qtrap)や脂肪酸の分離に優れた極性の高いカラム(SIGMA-ALDRICH SP2560カラム)を実装したガスクロマトグラフ質量分析装置(島津製作所QP2010Ultra)を用いて測定、解析している。その結果、ノックアウトマウスの血中、白色脂肪組織中には炎症性のプロスタグランジンD2とE2が上昇し、白色脂肪組織において抗炎症性のレゾルビンD1が低下していることが明らかとなった。現在はヒトにおいてもケマリンの代謝、炎症性疾患における脂質メディエーターとの関連および炎症の収束機転におけるケマリンの役割について解明をすすめている。
著者
吉良 八郎 石田 陽博 畑 武志
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.301-318, 1975
被引用文献数
3

In Japan, about two thirds of its land are the mountain districts, and its topographic and geological features are inevitable to erosion and collapse. The land is a zone frequented by typhoons with erosive dangerous rainfall. Thus the erosion rate is more than four times of the world average, and the production of sediment and its runoff are very important problems. When a group of dams for flood control and water utilization is constructed across sand-drifting river for the development of a river basin, the phase of the river channel will change so as to be in a new state of equilibrium. At the upper stream of dam sites sedimantation occurs due to the change in the state of river flow. The sedimention has some advantages, but it is essentially a loss to the flood control and water utilization owing to the reduction of storage capacity. It also causes rapid increase of interior flooding by the aggradation of river bed and the rise of groundwater level. On the other hand, at the downstream of dam sites degradation of river bed occurs due to the scouring or sorting caused by the variation of river flow, or by the kinetic energy of flow. In this way river bed approaches the final equilibrium gradient, and its final profile has a static equilibrium bed slope on which the tractive force is identical with the critical tractive force. Studies on the mechanism of sedimentation, such as the rate of sediment inflow and sediment distribution, are necessary to solve the sediment problem in order to establish a sedimentation policy. Observations on the state of sedimentation are a prerequisite. Observation data of sedimentation at 354 dam sites including electric-power dams, irrigation dams, water supply dams, flood control dams and multiple purposes dams are collected here in 1971,and the respective features are analyzed. Data are obtained as the sediment accumulation at many dams in the country. Thus the sediment indices in Japan, such as original storage capacity C(m^3), amount of total sediment Q_s(m^3), total rate of sediment accumulation R_s=100(Q_s/C) in percent, mean annual sediment accumulation r_s=R_s/Y in percent, specific sediment accumulation q_s=Q_s/FY(m^3/(km)^2,year), and time in years since the completion of the dam Y in years, are survayed macroscopically and quantitatively. And the features of respective reservoir are investigated. By studying in detail the sediment indices on the basis of the sediment accumulations at dams, the variation of characteristics can be estimated for respective regions, river systems or years.
著者
水野 雅史
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

レンチナンによる抗炎症機構を明らかにすることを目的として研究を行った。レンチナン経口投与したDSS腸炎モデルにおいて、Dectin-1KOマウスでは抗炎症効果は認められなかった。さらに野生型マウス腸上皮細胞のTNFR1発現量は減少したのに対して、Dectin-1KO マウスでは減少は認められなかった。以上の結果から、レンチナンの炎症抑制効果は、Dectin-1を介して認識され、最終的にTNFR1 mRNA発現量を制御することによって抗炎症効果を誘導している可能性が示唆された。
著者
齋藤 政彦 山田 泰彦 太田 泰広 望月 拓郎 吉岡 康太 野海 正俊 野呂 正行 小池 達也 稲場 道明 森 重文 向井 茂 岩崎 克則 金子 昌信 原岡 喜重 並河 良典 石井 亮 藤野 修 細野 忍 松下 大介 阿部 健 入谷 寛 戸田 幸伸 中島 啓 中村 郁 谷口 隆 小野 薫 ラスマン ウェイン 三井 健太郎 佐野 太郎
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

不分岐な不確定特異点を持つ接続のモジュライ空間の構成,リーマン・ヒルベルト対応の研究により,対応するモノドロミー保存変形の幾何学を確立した.また,混合ツイスターD加群の理論の整備,可積分系の幾何学的研究において種々の成果を得た.高次元代数幾何学においては,端末的3次元射影多様体のある種の端収縮射の分類や, コンパクトケーラー多様体の標準環の有限生成性などの基本的結果のほか,モジュライ理論,シンプレクテック多様体に関する種々の成果を得た.量子コホモロジーの数学的定式化や,ミラー対称性の数学的理解についても大きな成果を得た.また,代数多様体の層の導来圏に関する研究においても種々の成果を得た.
著者
齋藤 政彦
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

稲場道明と確定特異点のスペクトル型を固定した安定放物接続のモジュライ空間を、非特異シンプレクテック代数多様体として構成し、その次元公式を各特異点の留数行列の固有値の重複度で書き表した。また対応するモノドロミー保存変形の方程式のパンルヴェ性を示した。 S.Szaboと接続およびHiggs束に対する見かけの特異点理論を開発し、モジュライ空間の詳細な構造を記述する方法を開発した。光明新と共同で射影直線上の階数2、5点の確定特異点を持つ接続のモジュライ空間の詳細な記述をした。上記のモジュライ空間の詳細な記述を用いて、幾何学的ラングランズ対応をフーリエ・向井変換として実現するという研究を進めている。
著者
福田 敬太郎
出版者
神戸大学
雑誌
國民經濟雜誌 (ISSN:03873129)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.421-423, 1932-09
著者
三木原 浩史
出版者
神戸大学
雑誌
国際文化学研究 : 神戸大学国際文化学部紀要 (ISSN:13405217)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.41-58, 2005-09

"Mon Emouvant Amour", c'est une chanson avec les paroles et la musique de Charles Aznavour. Il l'a chante parlant par gestes fascinants, c'est-a-dire avec la langue des mains, au theatre de l'Olympia a Paris en 1980 et a eu un tres grand succes. Voila l'histoire : Un brave homme sympathique aime une jeune fille qui est tres jolie, mais sourde-muette. Il lit dans ses regards et ses sourires interpretant ce qu'elle veut dire par ses mains. Quand elle lui murmure de bout des doigts : "je t'aime", il est tout a fait emu, mais quant a lui, il n'a aucun moyen de parler a son aimee; elle lui semble tout etrangere, malgre qu'elle soit tout pres de lui. Alors il se decide a apprendre a son tour le langage des mains. Us reussissent tous les deux a jouer une pantomime. C'est ainsi que leurs deux coeurs se fondent en un seul. Quel miracle ! Ce miracle de pantomime evoque en nous l'opera "La Muette de Portici" (1829, livret de Eugene Scribes) mis en musique par Daniel-Francois-Esprit Aubert. Que l'heroine, fille de pecheur de Portici, est muette, cela a un effet important, agite, touche et gagne le coeur comme "Mon Emouvant Amour". Or, Charles Aznavour, auteur-compositeur-interprete, est ne a Paris en 1924. il est fils d'Armeniens emigres de Turquie. C'est pouquoi il l'a ecrit sur la musique de G.Garvarentz "Ils sont tombes" a la memoire des Armeniens massacres.
著者
三枝 康宏 水野 耕作
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

骨軟骨移植の動物実験として、日本白色家兎を用いた関節軟骨損傷のモデルを作成し、肋軟骨のみの移植(軟骨移植)と肋骨肋軟骨連結部の移植(骨付き軟骨移植)を行った。移植後3、6、12、24、36、48週で摘出し、ヘマトキシリン-エオジン染色、サフラニン-O染色およびI型、II型コラーゲンの染色を行い、両者を比較検討した。移植後48週において、肋軟骨移植では移植軟骨表面は糜爛、不整等がみられ、間質にも亀裂を生じており、軟骨細胞が広範に壊死、消失している部分もあった。またI型コラーゲンに染色するなど関節軟骨とは異なる性状を示した。これに対し、肋骨肋軟骨連結部移植では移植後48週までの長期に亙って軟骨表面は糜爛等が少なく平滑であり、間質の亀裂や軟骨細胞の壊死もほとんど認めなかった。またII型コラーゲンにも染色性があり、関節軟骨により近い性状と思われた。肋骨肋軟骨連結部移植では軟骨部分を薄くすることが可能であり、また肋骨部分と海綿骨との間で移植後早期に骨癒合し血行の速やかな再開が期待できるため、軟骨表面の糜爛や間質の亀裂、細胞壊死等の変性所見が少なく、良好に生着していると考えられた。また肋軟骨は硝子軟骨でありながら関節軟骨と異なりI型コラーゲンが主成分であるが、肋骨近傍ではII型コラーゲンにも染色されることからより関節軟骨に近いと思われ、この点でも関節軟骨損傷に対する移植材料として有利であると考えられた。臨床的には軟骨欠損が比較的狭く、損傷が軟骨下骨にまで及ぶ離断性骨軟骨炎や特発性内顆骨壊死、骨軟骨骨折等の治療に応用が可能と思われた。
著者
鹿野 清次郎
出版者
神戸大学
雑誌
經濟學商業學國民經濟雜誌
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.693-700, 1908-06
著者
谷川 裕稔
出版者
神戸大学
雑誌
研究論叢 (ISSN:09197664)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.95-101, 1995-10
著者
齋藤 健司
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

1 現行のフランスにおけるスポーツ基本法である1984年7月16日の法律について解説付きの逐条訳を行った論文を公表した。また,同論文の解説において1984年以降のスポーツ基本法の改正の歴史的な展開を次の通り示した。1985年1月3日の法律第85-10号による改正,1987年12月7日の法律第87-979号による改正,1992年7月13日の法律第92-652号による改正,1993年12月6日の法律第93-1282号による改正,1994年8月8日の法律第94-679号による改正,1995年1月21日の法律第95-73号による改正。2 フランススポーツ基本法のスポーツ法体系における位置について,論文「フランススポーツ法典の構成」の中で示し,スポーツ基本法が基礎となりフランスのスポーツ法体系および各種の関係する制度が発展していることを明らかにした。3 特にスポーツ保険法制度の指導的判例であり,スポーツ基本法のスポーツ保険理論の展開の前提となった1989年10月24日の破棄院判決を判例研究した。また,スポーツ基本法におけるスポーツ保険制度の歴史的な形成の過程を明らかにし,論文を公表した。4 特にスポーツ指導者資格制度に関する法の歴史的発展の過程を明らかにし,論文を公表した。5 スポーツ連盟の公役務および公権力の特権を行使することによる制裁に関わる指導的な判例研究を行い,論文を公表する。6 スポーツに関する特別な法律が誕生する1940年以前において,1907年から1920年に国会に提出された体育を義務化する法律案が存在し,これらが1940年のスポーツ組織に関する法律に与えた影響を検討し,論文を公表する。7 今後は,これまで行ってきた研究成果を踏まえて,フランスにおけるスポーツ基本法の成立と展開に関する歴史的な過程をまとめ,平成11年度以降に論文としてまとめる予定である。
著者
山根 隆宏
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要 (ISSN:18822851)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.29-38, 2009-09

本稿の目的は,高機能広汎性発達障害児をもつ親の適応に関する研究を概観し,親の適応過程を考察することと,適応に関連する要因の整理をおこなうこと,今後の研究の課題を考察することであった。本稿の構成は,まず障害受容研究のいつくかの理論的枠組みから,高機能広汎性発達障害児の親の適応を捉える上での問題点について論じた。続いて,親の適応に関する問題として,確定診断を得ることの難しさ,障害認識・障害受容の難しさ,養育における高いストレス,抑うつなどの精神的健康上の問題の観点から整理をおこなった。さらに,親の適応に関連する要因として,診断告知の要因,子どもの要因,親の個人内要因,家族・社会的要因,家族のライフステージの5 つの観点が重要であると考えられた。今後の課題として,子どもの障害に対する認識と感情のズレにともなう親の複雑な葛藤を詳細に検討すること,親の適応過程に影響を与える促進要因と阻害要因を特定すること,子どもの診断告知から青年期に至るまでの長期的な視点で親の適応過程を捉えることの必要性が考えられた。