著者
椎木 栄一 平田 健司 鎌田 敬子 関 寿大
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.35-39, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
10

原因が異なる低緊張型の反張膝(2症例3膝)に対してRHK(NexGenRHK. Zimmer, Warsow, in USA)を使用してのTKAを行った.従来のRHKの臨床成績は厳しい結果であるが,現在のmodernRHKとなってからの比較的良好な中期成績も報告されている3).また,反張膝に対するTKAの成績は決して良好ではなく10)長期成績は不明だが,物理的に反張を抑えるhinge機能を有する人工関節は有効と思われた.今回1例については術後6年でインプラントのhinge部分の破損で再置換術を要した.2症例の経過についてと文献も踏まえ検討を行ったので報告する.
著者
藤井 康成 小倉 雅 奥脇 透 酒匂 崇
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.648-651, 1998-03-25
参考文献数
7

We report one case who presented with suprascapular nerve paralysis caused by a ganglion.<br>The patient is a 20 year-old male, and a high-level athlete. He complained of pain and weakness of his right shoulder, and presented with marked atrophy of infraspinatus muscle. MRI and ultrasonography showed a cystic legion in supraspinatus fossa. We treated with a puncture of the ganglion safely under ultrasonography.<br>Eight months after puncture he has no signs of relapse and has returned to full sporting function.<br>In this study we show that ultrasonography is a useful method for diagnosis and treatment of suprascapular nerve paralysis caused by a ganglion.
著者
佐々木 誠人 永芳 郁文 吉武 明人 本山 達男 川嶌 眞人
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.914-916, 1999-09-25
参考文献数
4
被引用文献数
1

We studied the pathological diagnosis of the synovium of the subacromial bursa of 30 patients with shoulder impingement syndrome without rotator cuff tear. The diagnosis consisted of three types, i. e. chronic synovitis (73.3%), degeneration (16.7%) and fibrosis (20%). The results of a group with friction finding observed arthroscopically at the undersurface of the coracoacromial arch were more or less the same as one of another group without the finding. In deciding the surgical indication to the shoulder impingement syndrome of intact rotator cuff tear, clinical findings are very important.
著者
船越 雄誠 安里 英樹 金城 英雄 高江洲 美香 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.780-784, 2011-09-25 (Released:2011-12-09)
参考文献数
10

Over head activityのスポーツ選手において棘下筋萎縮を生じることがある.保存的治療で一時的に改善したがプレー復帰後再発し,関節鏡視下手術によりスポーツ復帰した症例を経験したので報告する.15歳男性.高校バレーボール選手.スパイクを打つ際の右肩痛と右肩後面の脱力感,易疲労感を主訴に受診した.初診時,棘下筋萎縮及び肩甲骨下制位を認めた.MRI上ガングリオン等占拠性病変は認めなかったが著明な棘下筋萎縮を認めたため,スパイク動作による肩甲上神経の絞扼と判断した.右側でのスパイク禁止および肩甲骨下制筋群のストレッチを施行した.3カ月後,右肩痛は消失し棘下筋萎縮が改善したため右側でのスパイクを許可した.復帰後4カ月で症状が再発し,MRIで棘下筋萎縮の悪化を認めたため手術を施行した.鏡視下に上肩甲横靱帯を切離し,肩甲上神経を剥離した.術後1カ月で完全復帰し,術後5カ月のMRIで棘下筋萎縮は改善し症状なく元の競技レベルに復帰している.
著者
北村 歳男 武田 浩志
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.670-672, 2013-09-25
参考文献数
2

16歳野球の投球よる広背筋筋腹の皮下断裂を経験した.投球中に肩甲骨外側に痛みと腫瘤が出現し,大円筋断裂との鑑別において検査の工夫が必要であった.MRIでは筋の範囲が大きいため情報が少なく,むしろ筋腹断裂の特定には電気刺激による腫瘤の反応やエコーが有効であった.エコーは特に治療の経過判定にも有効であった.治療は保存療法で患部圧迫により断裂離開部が縮小したことで1カ月間圧迫治療を行った.組織修復と滑走が良好であることをエコーで確認の後2カ月半後にスポーツに復帰した.
著者
喜友名 翼 安里 英樹 比嘉 勝一郎 新垣 寛 知念 弘 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.326-329, 2014

高齢者でBankart病変を伴わず肩関節前方脱臼を生じ,腱板広範囲断裂を認めた2例について報告する.症例1,79歳,女性.転倒し右肩関節を脱臼し,近医で整復後,就寝中に再脱臼した.MRIでBankart病変は認めなかったが腱板広範囲断裂を認めた.受傷後3ヵ月で自動挙上が不能であったため手術を施行した.鏡視にてBankart病変は認めず,腱板広範囲断裂を認め,腱板の一次修復が困難であったため,棘下筋移行術を施行した.術後12ヵ月で,自動可動域は屈曲/外転/外旋/内旋:140°/150°/60°/Th12,JSS-SISは術前16点が62点,JOA scoreは術前8点が81点に改善し,再脱臼を認めない.症例2,73歳,女性.転倒し右肩関節を脱臼し,近医で整復後,外固定が行われた.MRIでBankart病変は認めず,腱板広範囲断裂を認めたため当院に紹介された.腋窩神経領域の麻痺は認めなかったが,受傷後12週においても自動挙上が不能であったため,鏡視下腱板修復術を施行した.術後12ヵ月で,自動可動域は屈曲/外転/外旋/内旋:140°/150°/60°/L1,JSS-SISは術前16点が67点,JOA scoreは術前15点が81点に改善し,再脱臼を認めない.腱板の再建・修復を行うことで再脱臼を防止し,肩関節機能は改善した.
著者
桑野 洋輔 古市 格 井上 拓馬 小河 賢司 秋山 隆行 渡邉 航之助 荒木 貴士
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.572-576, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
12
被引用文献数
2

【はじめに】頚椎外傷後に咽頭後間隙血腫を生じ,保存的治療で軽快した5例を経験したので報告する.【症例】年齢は47~89歳(平均63.8歳).男性4例,女性1例.交通外傷によるものが3例,転落外傷によるものが2例であった.全例に頚椎骨折を認め,1例は頚髄損傷を合併していた.抗血小板薬を常用しているものが1例あった.咽頭後間隙の最大値は11~37mmであった.2例に気管挿管を必要とし,1例は受傷後3時間で気道閉塞症状が出現したため行い,1例は予防的に行った.抜管までには12~14日間を要した.3例は気管挿管を施行せずに自然軽快した.【考察】咽頭後間隙血腫は遅発性に気道閉塞を引き起こし致命的となることもあるため,その可能性を念頭に置いた治療が必要である.
著者
古賀 唯礼 本多 弘一 後藤 昌史 中村 秀裕 久米 慎一郎 志波 直人 大川 孝浩
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.540-543, 2019
被引用文献数
1

<p>〈目的〉拘縮肩に対するサイレントマニピュレーション(SM)の治療成績を検討した.〈対象と方法〉拘縮肩症例26肩(平均年齢57.5歳)に対し,皆川らの方法に準じSMを施行し,経時的に評価した.〈結果〉術前/術後6ヵ月後の各平均値は,屈曲:109±25.4°/148±12.2°(P<0.0001),外転:96±38.8°/152.9±23.9°(P<0.0001),外旋:26.4±14.3°/43.8±18.7°(P<0.0001),内旋:L5±3.3/Th11±2.7椎体(P<0.0001)といずれも改善を認めた.またJOAスコア:40.9±9.6/65.6±9.6(P<0.0001),UCLAスコア:15.9±3.9/27.3±5.5(P<0.0001),およびVisual analogue scale(VAS)はVAS rest:26.3±33.8/5.1±10.9(P=0.0123),VAS night:38.1±33.6/4.7±8.9(P=0.0007),VAS motion:67.5±24.7/17±15(P<0.0001)といずれも改善した.〈結語〉SMは拘縮肩に対して有効な治療法と思われる.</p>
著者
片江 祐二 島田 佳宏 松本 康二郎 近藤 秀臣 森 俊陽 西田 茂喜 山下 信行 山元 英崇
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.185-188, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
14

【症例】77歳,女性.主訴:なし.現病歴:約2ヵ月前当院呼吸器外科で肺腫瘍を疑われた.PET-CTで左大腿骨に集積を認め,骨転移を疑われ当科紹介受診となった.肺腫瘍は生検で炎症性病変であり,大腿骨CTでは異常を認めなかったため,大腿部の骨生検は行わなかった.初診5ヵ月後のMRIで大腿骨の病変の増大を認め,腰椎MRIでは年齢の割には脂肪髄が少なかった.内科受診し,血液検査でM蛋白,尿中Bence Jones(以下BJ)蛋白は検出されなかったが,κ/λFLC比の異常を認め,γ-グロブリンは低値だった.胸骨生検を行い,病理診断と臨床像を合わせて非分泌型多発性骨髄腫と診断された.現在,血液内科で薬物治療中である.【考察】非分泌型多発性骨髄腫は多発性骨髄腫の数%の稀な疾患である.血清M蛋白や尿中BJ蛋白は検出されず,診断確定までに時間を要することが多い.原発不明の多発性骨病変があり,MRIで年齢の割に脂肪髄の減少をみたときは骨髄腫を考え,非分泌型も念頭に置くべきである.
著者
古賀 唯礼 本多 弘一 後藤 昌史 中村 秀裕 久米 慎一郎 志波 直人 大川 孝浩
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.540-543, 2019-09-25 (Released:2019-12-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1

〈目的〉拘縮肩に対するサイレントマニピュレーション(SM)の治療成績を検討した.〈対象と方法〉拘縮肩症例26肩(平均年齢57.5歳)に対し,皆川らの方法に準じSMを施行し,経時的に評価した.〈結果〉術前/術後6ヵ月後の各平均値は,屈曲:109±25.4°/148±12.2°(P<0.0001),外転:96±38.8°/152.9±23.9°(P<0.0001),外旋:26.4±14.3°/43.8±18.7°(P<0.0001),内旋:L5±3.3/Th11±2.7椎体(P<0.0001)といずれも改善を認めた.またJOAスコア:40.9±9.6/65.6±9.6(P<0.0001),UCLAスコア:15.9±3.9/27.3±5.5(P<0.0001),およびVisual analogue scale(VAS)はVAS rest:26.3±33.8/5.1±10.9(P=0.0123),VAS night:38.1±33.6/4.7±8.9(P=0.0007),VAS motion:67.5±24.7/17±15(P<0.0001)といずれも改善した.〈結語〉SMは拘縮肩に対して有効な治療法と思われる.
著者
比嘉 淳 勢理客 久 濱崎 直人 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.507-511, 2003 (Released:2005-02-18)
参考文献数
6

Many hemiplegic patients suffer from subluxation of the shoulder joint and show severe damage to rotator cuff and humerus. There were 12 hemiplegic patients with pain and subluxation of the shoulder. Application of triangular sling did not prevent subluxation. Radiological examination revealed some flexion and abduction (45 degrees abduction in the scapular plane) reduced not only subluxation but also pain in 11 patients. Pain remained in one patient whose shoulder was not reduced by flexion and abduction. The use of pillow, slings or other ways to keep the shoulder in some flexion and abduction was effective in reducing the subluxated shoulder joint.
著者
李 容承 松浦 恒明 進 訓央 兼川 雄次 谷口 秀将
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.40-42, 2016-03-25 (Released:2016-05-16)
参考文献数
12

3例と症例数は少ないが,肩関節前方脱臼に対して上腕近位部を外側に水平移動させることで上腕骨頭が関節窩の前縁を越えるようにして整復することができた.本法は,脱臼時の肢位のまま整復するため,侵襲が少ないと言える.多くの場合,救急外来における肩関節前方脱臼の整復法の第一選択は前方挙上法で,第二選択がStimson法やヒポクラテス法であるが,Stimson法は腹臥位・長い整復時間を要するし,ヒポクラテス法は骨折や腋窩神経損傷を起こす恐れがある.第一選択の前方挙上法で整復できない場合,第二選択として本法を試すことは有意義かもしれない.
著者
萩原 博嗣
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.126-128, 2014-03-25 (Released:2014-07-01)
参考文献数
5

注射による大腿四頭筋拘縮症は乳幼時期に頻回に受けた筋肉内注射が原因であり,本邦で1973年以来大量発生が報告された.近年の新たな発症は無いと思われるが,診断されないままに経過していた1例を治療する機会があったので報告する.症例:44才 女性.主訴:歩容異状,走行困難 乳児期に近医でγ―グロブリン筋注を両大腿部に10回以上受けた.幼時期から歩容異常があったが原因不明と言われ,走ることを避けていた.最近インターネットで調べて自己診断し,当科を受診した.所見:正座は可能.腹臥位で大腿直筋の短縮を評価する指標である「尻上がり角度」は右50°,左40°で,歩容異状が見られた.歩容改善の希望が強く手術を行なった.手術は左右別に2回行なった.大腿前面を6cm切開し大腿筋膜と腸脛靱帯を横切,大腿直筋を2段にずらして完全切離した.術後は3日間股関節伸展,膝屈曲位で仰臥した後に筋ストレッチと筋力訓練を行ない,症状は消失した.
著者
松延 知哉 前川 啓 福島 俊 河野 勤 鬼塚 俊宏 今村 寿宏 畑中 均 加治 浩三 神宮司 誠也 岩本 幸英
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.190-193, 2019-03-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
6

【はじめに】癌化学療法施行を目的として,当科では悪性骨軟部腫瘍患者に対して橈側皮静脈カットダウン法による埋め込み型中心静脈ポートシステム(CVポート)造設を行っており,その成績を後ろ向きに検討した.【対象と方法】2016/4~2017/12に同法によりCVポートが造設された15例を対象とした.平均年齢46歳であった.手術室使用時間,手術時間,局所麻酔使用量,抜去の有無などを調査した.【結果】手術室占有時間98.5分,手術時間49.5分,局所麻酔使用量10.3 mlであった.1例で血栓形成のためにCVポート抜去を行った.1例で橈側皮静脈欠損により,予定側と反対側に造設した.【考察】橈側皮静脈カットダウン法は動脈誤穿刺や気胸などの合併症がなく,安全に行えると考えられたが,橈側皮静脈欠損などのanomalyも報告されており,造設前にエコーで確認する必要がある.【結語】橈側皮静脈カットダウン法によるCVポート造設は,悪性骨軟部腫瘍患者に対して,整形外科医が安全に行える手技と思われた.
著者
今井 さくら 島尻 郁夫 比嘉 勝一郎 親富祖 徹 島袋 孝尚 金城 英雄 金谷 文則 金城 幸雄 宮平 誉丸 大城 義竹
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.563-566, 2019

<p>頚椎特発性硬膜外血腫は初診時片麻痺で発症する場合があり,脳梗塞と誤診され抗血栓療法が行われると麻痺が悪化することがある.また脊椎手術の患者の高齢化に伴い,抗凝固薬や抗血小板薬を内服している患者が増加しており,周術期の休薬の是非や休薬期間が解決すべき課題となっている.今回初診時脳梗塞と誤診され抗血栓療法により麻痺が悪化した1例と,抗血小板薬の休薬により術後脳梗塞を発症した1例を経験したので報告する.【症例1】80歳男性.突然後頚部痛が出現し救急搬送,右半身麻痺を認め,TIAが疑われヘパリン点滴治療が開始された.麻痺は徐々に増悪し,頚椎MRIで頚椎硬膜外血腫を認めた.緊急手術により術後麻痺は改善した.【症例2】84歳男性.後頚部痛と左半身麻痺を認め救急搬送,頚椎特発性硬膜外血腫と診断した.緊急手術により麻痺は改善傾向であったが,術後4日目に意識レベル低下と右半身麻痺を認め,頭部MRIで広範囲脳梗塞を認めた.</p>
著者
山川 慶 野原 博和 宮里 剛成 島袋 孝尚 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.574-577, 2019

<p>我々は比較的稀なガス含有腰椎椎間板ヘルニアの1手術例を経験した.症例は54歳男性で主訴は右臀部から下肢への放散痛である.CTでL4/5椎間板及びL5椎体レベルの脊柱管内やや右側にガス像を認め,MRIでL5椎体レベルにT1,T2,STIRで境界明瞭な低信号の腫瘤を認めた.以上からガス含有腰椎椎間板ヘルニアと診断し手術を行った.術中所見で右L5神経根の肩口から腋窩部にかけてガス含有椎間板ヘルニアを認めた.L5神経根は圧排され緊張が強く可動性がほとんど見られなかった.硬膜とヘルニア腫瘤の癒着を剥離している際に「パン」と破裂音とともにヘルニア腫瘤が縮小.縮小した腫瘤はピースバイピースで摘出した.病理組織像は硝子化をともなった線維結合組織であった.術後12日目のCTではL4/5椎間板腔,脊柱管内にガス像を認めたが3カ月目ではほとんど消失していた.現在右下肢痛無く経過している.</p>
著者
石原 昌人 仲宗根 哲 平良 啓之 山中 理菜 親川 知 松田 英敏 東 千夏 神谷 武志 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.620-623, 2019

<p>人工股関節置換術(THA)後の腸腰筋インピンジメントに対して腱切離を行い改善した1例を報告する.【症例】62歳女性.左変形性股関節症に対し左THAが行われた.術後より左股関節自動屈曲時の鼠径部痛を認めていた.歩行は可能であり鎮痛薬内服で経過観察を行っていたが,症状の改善がなく術後6ヵ月時に当院を紹介され受診した.左股関節の自動屈曲は疼痛のため不能で,血液検査で炎症反応上昇はなく,単純X線像でTHAのゆるみは見られなかったが,カップの前方突出を認め,腸腰筋インピンジメントと診断した.キシロカインテストで疼痛は消失し術後8ヵ月で手術を行った.腸腰筋は緊張しカップの前縁とのインピンジメントを認め腸腰筋腱切離を行った.術当日より疼痛は改善し術後3日目に独歩で退院した.術後2ヵ月でADL制限なく職場復帰した.腸腰筋インピンジメントの観血的治療として腱切離は低侵襲で有効な治療法と思われた.</p>
著者
冨田 哲也 岡田 貴充 松本 嘉寛 遠藤 誠 薛 宇孝 中島 康晴
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.177-180, 2019-03-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
15

【目的】悪性骨軟部腫瘍の不適切切除例に対する追加手術は高侵襲となり,特に上肢では追加広範切除による機能損失が大きい.当科で追加治療を施行した上肢の不適切切除例について検討した.【対象】2011~2017年に当科紹介された上肢発生骨軟部腫瘍815例のうち不適切切除例と判断された9例を対象とした.【結果】男性7例,女性2例,平均年齢69.3歳であった.全例が浅在性軟部腫瘍であり,病理診断は粘液線維肉腫6例,隆起性皮膚線維肉腫,骨外性Ewing肉腫,CIC遺伝子再構成肉腫各1例であった.初回術前にMRIを施行されたのは3例のみで,生検は全例未施行であった.初回手術時の手技上の問題点として横皮切,被膜損傷や掻爬による腫瘍播種などがあった.当院での追加手術7例のうち4例で再建を要した.【考察】上肢発生軟部腫瘍では,浅在性腫瘍であっても一期的な切除生検は適応を限定して施行することが望ましいと思われた.
著者
坂本 圭 福元 哲也 平井 奉博 橋本 伸朗 前田 智 中馬 東彦 松下 任彦 酒本 高志
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.161-164, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
10

壊死性筋膜炎は進行すると死亡に至る重篤な感染症であり,死亡率は32.2%と高く,早期の治療が必要である4).壊死性筋膜炎の診断で緊急に切断術を施行した3症例を経験したので報告する.
著者
本山 達男 尾川 貴洋 田村 裕昭 古江 幸博 永芳 郁文 川嶌 眞之 佐々木 聡明 渡邊 裕介 小杉 健二 川嶌 眞人
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.254-257, 2015-03-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
7

膝外傷後の痛みで,単純X線で異常なくてもMRIで骨挫傷を認めることが散見される.靭帯損傷を伴わない骨挫傷単独例を,受傷機転,骨挫傷部位,疼痛が消失した時期,スポーツ復帰で検討した.対象と方法)対象は2011年11月より2013年12月まで,MRIで膝の骨挫傷単独例と診断し当院で加療を行った13例,13膝で平均年齢は19.6歳(13-36歳),男性10例,女性3例で,後ろ向きに調査を行った.結果)受傷機転はスポーツ中のもの6例,交通事故5例,子供のバットが当たったもの1例,不明1例であった.受傷部位は大腿骨内側顆10膝,大腿骨外側顆2膝,脛骨内側顆4膝,膝蓋骨1膝であった.疼痛の消失時期は受傷後より約3-7週で平均4.2週であった.考察)膝の単独の骨挫傷は診断にはMRIが必須で,予後は良好であるが,骨の外傷であり歩行時痛が消失するのは3週以上かかることが多く,スポーツ復帰は5週以上要した.