著者
泉 貞有 上森 知彦 今村 寿宏 平塚 徳彦 加治 浩三 松延 知哉 河野 勤 鬼塚 俊宏 畑中 均 神宮司 誠也 岩本 幸英
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.53-56, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
5

マッサージ後に発症した成人環軸椎回旋位固定(成人AARF)の1例を経験したので報告する.症例は37歳女性,喘息・アトピーの既往歴あり.初診時,後頚部痛を認めたが斜頚は存在せず,Xp・MRI精査するも有意な病変は無かった.初診後,整骨院で2日間,後頚部の愛護的マッサージを受けた.翌朝から斜頚を自覚し改善せず.2ヶ月後,斜頚を主訴に再診.Xp・CTにてFielding分類type 1のAARFを認めた.AARF以外は身体所見・臨床検査データ等も正常だった.入院後,頚椎持続介達牽引を施行.斜頚出現3ヶ月後,鎮静下に徒手整復を行った.オルソカラー固定するも1日で再脱臼した為,再整復しHalo vest固定を8週間施行した.現在,整復後2年が経過するもAARFの再発は認めない.成人AARFは非常に稀で,マッサージ後の発症例は報告がない.また,整復までに3ヶ月を要した慢性例であったが保存治療が可能であった.
著者
大石 正信 中島 康晴 岡崎 賢 福士 純一 久保 祐介 播广谷 勝三 松本 嘉寛 林田 光正 岡田 誠司 小山田 亜希子 岩本 幸英
出版者
日本関節病学会
雑誌
日本関節病学会誌 (ISSN:18832873)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.475-480, 2016 (Released:2017-12-15)
参考文献数
12

Ankylosing spondylitis (AS) is a chronic inflammatory disorder characterized by bone formation, syndesmophytes, and ankylosis of the sacroiliac joints and spine. Recently, tumor necrosis factor inhibitors such as infliximab and adalimumab have been shown to be efficacious for AS. However, patients with AS often suffer from arthralgia and problems related to ankylosis of the spine due to the delay in the diagnosis of AS. Those patients often benefit from surgical treatments. We have treated total of 72 patients with AS in our hospital. Among them 32 operations were performed on total of 19 patients. Total hip arthroplasties were the most performed surgical procedure. Surgeries for spinal fractures and spinal deformity have also been performed.
著者
上原 慎平 岡崎 賢 佐々木 大 岩本 幸英
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.271-273, 2014-03-25 (Released:2014-07-01)
参考文献数
8

比較的まれな,膝十字靭帯にムコイド変性を認めた2症例を経験した.症例(1):51歳男性.誘引なく可動域制限を伴う左膝痛が出現した.診察上,関節水腫を認めた.MRIで前十字靱帯(ACL)は膨化し,T2強調画像で高信号変化を認めたが,連続性は保たれていた.鏡視ではACLは肥厚し内部に黄色粘液貯留を認めた.掻把を行い症状改善した.症例(2):48歳男性.家の掃除後から可動域制限を伴う左膝痛が出現した.診察上,関節水腫を認めた.MRIで後十字靱帯(PCL)は肥厚し,T2強調画像で高信号変化を認めたが,連続性は保たれていた.内部に黄色粘液貯留を認めた.掻把を行い症状改善した.病理診断はムコイド変性だった.ACL,PCLのムコイド変性は部分断裂と誤診されることがあり.注意が必要である.
著者
加藤 浩 神宮司 誠也 高杉 紳一郎 岩本 幸英 吉村 理 新小田 幸一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.178-184, 2002 (Released:2018-09-25)
参考文献数
24
被引用文献数
4

本研究の目的は,股関節疾患患者の中殿筋を対象に,従来の静的表面筋電図周波数解析に加え,新たに歩行時の動的表面筋電図周波数解析を行い,その結果を筋組織学的レベルから検証することである。当院で手術を受けた股関節疾患患者11症例を対象とした。手術直前に100・50%MVCにおける等尺性股関節外転運動を行わせ,中殿筋筋腹部を電極部位とした静的な表面筋電図測定を行った。又,10m自由歩行を行わせ,動的な表面筋電図測定を行った。そして,wavelet変換を用いた静的・動的表面筋電図周波数解析を行った。手術中に中殿筋筋生検を行いATPase染色による筋線維のタイプ分類(typeI及びtypeII)を行った。さらに画像解析ソフトによる筋線維横断面の形態計測を行った。50%MVC時のパワースペクトルとtypeII線維数の間には,正の相関が認められた。また,歩行時の立脚期初期のパワースペクトル変化は,typeII線維の線維径とtypeII線維横断面の総面積比率が関与していた。wavelet変換を用いた静的・動的周波数解析は,筋線維組成比やtypeII線維の萎縮といった組織学特徴を推測する有効な手段になりうるものと思われた。
著者
福田 里香 出口 純子 井元 淳 豊永 敏宏 岩本 幸英
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.167-175, 2019-12-01 (Released:2020-02-06)
参考文献数
31

【目的】男性単身世帯者が簡便に実施できる「野菜摂取量増加」と「食事量を腹八分目にする」に重点をおいた介入プログラムを作成・実践し,野菜摂取量や体組成に変化があるか否か検証した。【方法】研究デザインは,単群の前後比較試験とした。2企業で働く単身世帯の健常男性16名(42.4±5.4歳)を対象とした。介入期間は12週間で,初回に前述2項目を実施するための行動目標を対象者が設定し,行動目標実行度を10段階評価で4回聴取した。それぞれの企業の会議室にて,各企業4,5人のグループで30分程度の調理実演を2回実施した。評価項目として食事調査は半定量食事摂取頻度調査を用いてエネルギーおよび食品群別摂取量(1,000 kcalあたりで表示)を算出した。また身体活動量,体組成,内臓脂肪面積および皮下脂肪面積の測定を行なった。各項目について介入前後で比較検討を行なった。【結果】行動目標実行度は,「今よりも野菜の摂取量を増やす」では上昇傾向に,「食事量を腹八分目にする」では下降傾向であった。介入前後でエネルギー摂取量に有意な差は認められなかったが,緑黄色野菜とその他の野菜の摂取量は有意に増加した。また,体脂肪率は減少傾向にあり,骨格筋率,上腕筋肉率,体幹筋肉率が有意に増加した。【結論】対象者が自ら決定した行動目標実行度の聴取や手軽で簡単な調理を実演することで行動変容が促され,野菜摂取量は増加し,体組成に変化がもたらされた。
著者
中川 剛 糸川 高史 中島 康晴 山本 卓明 馬渡 太郎 本村 悟朗 大石 正信 秋山 美緒 岩本 幸英
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.217-219, 2013-03-25 (Released:2013-06-11)
参考文献数
12

人工股関節全置換術(THA)後の脱臼は最も頻度の高い合併症の一つであり,多くの因子の関与が報告されている.そのうち,骨頭径は最も大きなインプラント因子であることとされている.32mm骨頭径の脱臼予防効果を明らかにする目的で,1998年以降の初回THA症例で1年以上経過観察し得た923症例1033関節の脱臼率を調査した.各骨頭径における脱臼率は22mm:194関節中9関節(4.6%),26mm:717関節中15関節(2.09%),32mm:110関節中0関節(0%)であり,Pearson単変量解析にて3群間に有意差を認めた.32mm径骨頭は有意にTHA後脱臼を減少させた.
著者
宮岡 健 中島 康晴 保科 隆之 松田 秀一 窪田 秀明 岩本 幸英
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.229-233, 2012

【目的】BCG骨関節炎の3例を報告する.【症例1】1歳7カ月の女児 生後4カ月でのBCGワクチン接種後13カ月で右膝の腫脹,疼痛を生じた.右大腿骨遠位に骨端線をまたぐ骨透亮像が存在し,生検を施行.抗酸菌培養およびMultiplex PCR法にてBCG Tokyo株が同定された.化学療法に抵抗性あったため,病巣掻爬術を施行した.【症例2】10カ月の男児 ワクチン接種後6カ月で右膝関節炎発症.2回の掻爬術後にPCRにて同定された.化学療法にて治癒した.【症例3】1歳6カ月の男児 ワクチン接種後13カ月で右足関節に腫脹,疼痛出現.右距骨骨髄炎を疑い,病巣掻爬術施行.抗酸菌培養およびPCRにて診断され,術後化学療法にて治癒した.【考察】BCG骨関節炎はワクチン接種後に発生する稀な病態であるが,小児の骨関節炎では鑑別診断に挙げる必要があり,抗酸菌培養およびPCR法が診断の決め手となる.
著者
岩本 幸英
出版者
Japanese Society for Joint Diseases
雑誌
日本リウマチ・関節外科学会雑誌 (ISSN:02873214)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.89-98, 1998-10-31 (Released:2010-10-07)
参考文献数
32

The process of bone metastasis consists of several distinct but essential events: escape from the original site, dissemination through blood vessels, and growth at a bone. Tumor cells cross basement membranes as they initially invade vascular beds during the dissemination. The inva sion of tumor cells through basement membranes involves three distinct events: attachment of the tumor cells to the basement membrane, secretion of MMPs by tumor cells which causes degradation of the adjacent basement membrane, and migration of the cells into the target tissue. Bone metastases are frequently associated with osteolysis, which leads to pathologic frac tures and hypercalcemia, while metastasis from prostatic carcinoma usually shows osteosclerotic changes. Cancer cells promote osteolysis by activating osteoclasts through a variety of chemical mediators secreted by cancer cells themselves or by monocytes. The risk of pathological frac ture is high if lytic metastasis involves cortical destruction.When skeletal metastasis is suspected following a roentgenogram, we suggest that a bone scintigram be performed primarily in order to identify whether the lesion is single or multiple. Patients with multiple skeletal metastases usually do not undergo surgery. Instead, radiation or chemotherapy is indicated. Surgery for skeletal metastasis does not necessarily affect the life expectancies of patients. However, if dramatic improvement in the quality of patients' lives can be expected, surgery for long bone metastasis or spinal metastasis is indicated.For patients with long bone metastasis, we prefer to carry out resection with a wide margin before a pathological fracture occurs, since the fracture carries the risk of disseminating tumor cells. Reconstruction after the resection of long bone involving metastasis may be best achieved by prosthetic replacement. The spine is the most common site of skeletal metastasis, irrespective of the primary tumor. When patients with spinal metastasis are expected to survive longer than six months, and neurological deficits become evident in addition to back pain, decompression followed by posterior stabilization is indicated.
著者
藤井 陽生 播广谷 勝三 小早川 和 松本 嘉寛 川口 謙一 林田 光正 岩本 幸英
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.58-61, 2017-03-25 (Released:2017-05-01)
参考文献数
10

思春期特発性側弯症患者の発見理由を調査した.【対象と方法】2008年から2015年に当院を受診した259例(女性236例,男性23例,平均13.7歳)の発見理由,主カーブCobb角,初期治療を調査した.【結果】発見理由は学校検診(S群)115例(44.4%),家族・本人(F群)79例(30.5%),病院・医院(H群)65例(25.1%)であった.発見時年齢は各々平均12.9歳,13.1歳,13.7歳であり,S群は,H群よりも年齢が低かった.3群間の性差に有意差はなかった.主カーブは各々平均36.8°,40.4°,36.0°で,有意差はなかったが,40°以上の患者の割合はF群に比べてS群,H群で低い傾向にあった.3群間で初期治療に相関はなかったが,S群およびH群は,F群よりも手術率が低い傾向にあった.【考察】学校検診のあり方や早期発見方法について検討の余地があると考えられた.
著者
加藤 浩 神宮司 誠也 岩本 幸英 新小田 幸一 吉村 理
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.426-432, 2004-12-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
11
被引用文献数
4

本研究の目的は股関節疾患患者の歩行時における骨盤の動揺性について,中殿筋の動的EMG周波数特性(MPFR),筋組織形態,最大外転筋力からその関連性を検討することである。手術治療目的で入院した股関節疾患患者13症例と健常者10例を対象とした。手術直前に等尺性の最大外転筋力の計測,次に中殿筋筋腹部に電極,上前腸骨棘に反射マーカーをそれぞれ貼付し,10 m自由歩行を行わせた時の表面筋電図計測(wavelet周波数解析)と,三次元動作解析装置を用いた骨盤傾斜角,骨盤回旋角,骨盤側方移動距離の計測を行った。手術中に中殿筋筋生検を行いATPase染色による筋線維タイプの分類を行った。さらに画像解析ソフトによりtype I,type II線維の筋線維径の計測を行った。結果,MPFRとtype II筋線維径,日整会歩行能力点数の間には正の相関関係が認められた。骨盤傾斜角,骨盤回旋角は健常群と比較して有意に正常から逸脱していた。重回帰分析の結果,前額面での骨盤傾斜角に関して,量的側面から外転筋力,質的側面からMPFRがその規定因子として重要であることが示され,MPFRは前額面での正常からの逸脱をより強く反映するパラメータであることが示された。
著者
上島 隆秀 高杉 紳一郎 河野 一郎 岩本 幸英
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.5, 2007

【はじめに】<BR> 中高齢者を対象に,介護予防や健康増進を目的とした数多くのプログラムが全国で実施されている.内容としては転倒予防や認知症予防を目的とした運動,音楽,舞踊などが多い.フラもその一つであるが,昨年の映画公開をきっかけにフラに対する注目度が上がっている.ハワイの伝統文化であるフラは,見た目の優雅さとは裏腹に想像以上に下肢筋活動を伴う運動である.今回,M市のフィットネス施設において,フラ教室参加者の身体運動能力測定および健康関連QOL評価を実施し,その介入効果について検討したので報告する.<BR>【方法】<BR> 対象はM市の一般住民でフィットネス施設のフラ教室に参加した女性11名(平均年齢67.6歳)であった.全ての対象者に対して教室開始前と終了後に,ファンクショナルリーチ(以下 FR),開眼片脚立ち時間,長座体前屈,10m最大歩行速度,膝伸展筋力,握力の測定および健康関連QOL評価を実施した.長座体前屈は竹井機器工業社製デジタル長座体前屈計,膝伸展筋力は日本メディックス社製徒手筋力測定器MICROFET2を使用した.健康関連QOL評価はSF-36日本語版を使用した.評価項目は,身体機能,日常役割機能(身体),体の痛み,全体的健康感,活力,社会生活機能,日常役割機能(精神),心の健康である.そして,各測定・評価項目についてフラ教室参加前後の値を比較検討した.なお,統計学的検定には対応のあるt検定を用い,有意水準は危険率5%未満とした.<BR>フラ教室は,熟練した講師の指導下で毎回1時間,週1回の頻度で2ヶ月間実施された.なお,事前に十分な説明を行い対象者の同意を得た上で測定および評価を実施した.<BR>【結果】<BR> 教室参加前に比べ参加後では,FR(38.3→41.3cm),長座体前屈(34.9→37.6cm),膝伸展筋力(22.7→24.6kg)において有意な向上が認められた.また,健康関連QOLでは,身体機能(74.5→89.1)および活力(64.5→80.9)において有意な向上が認められた.<BR>【考察】<BR> 今回, FR,長座体前屈,膝伸展筋力において有意な改善を認めた要因として,ダンス中における頻回な骨盤傾斜・回旋及び膝軽度屈曲位でのステップによるものではないかと考えられた.<BR>また,健康関連QOLにおいても改善効果が認められたことから,フラを継続することでQOLや生活機能の改善が期待できる.高齢者の生活機能低下予防は,介護予防の観点からも重要であるが,楽しみながら身体を動かすだけで生きがいにもつながればそれに勝るものはないであろう.<BR>今後は,他の運動との比較も行ってゆきたいと考える.<BR>【文献】<BR> 1)伊藤彩子:フラダンスのはじめ.WAVE出版,2004.
著者
上島 隆秀 高杉 紳一郎 河野 一郎 禰占 哲郎 高橋 みゆき 河村 吉章 岩本 幸英
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】総務省発表によれば,2013年9月15日時点の人口推計で,65歳以上の高齢者が総人口の25%に達した。今後,高齢者人口の増加とともに,介護予防対策は多様なニーズに応えるべく,その多様化が求められてくると予想される。介護予防対策として,リハビリテーションの重要性も認識されているが,継続のための仕組みやモチベーションを高める工夫が不十分である現状は否めない。一方,家庭用ゲーム機の本格的な普及から30年が経過し,ゲームは,シリアスゲームやゲーミフィケーションとして今後,医療・介護分野においてもますます身近になるものと考えられる。今回,デイサービスセンターに導入されたリハビリ用ゲーム機の活用効果について報告する。【方法】対象はY市のKデイサービスセンター利用者のうち,ゲーム機を継続的に利用した群(ゲーム群)15名(男性1名,女性14名,平均年齢85.3±5.8歳)およびゲーム機を全く利用しなかった群(非ゲーム群)96名(男性20名,女性76名,年齢85.0±6.4歳)である。この両群を対象に体力測定を行い,ゲーム機活用効果について検討した。使用したゲーム機は,主に高齢者の運動機能向上を目的として開発されたものであり,上肢の筋力・敏捷性向上を目的とした「ハンマーフロッグ」「ワニワニパニック」,下肢の筋力・敏捷性向上を目的とした「ドキドキへび退治2」,目と手の協調性向上を目的とした「ポンポンタッチ」である。両群とも通常のデイサービスプログラムを行っており,ゲーム群ではさらに,自らの意思で選択したゲームも行っていた。測定項目は,握力,Functional Reach(FR),開眼片脚立ち(片脚立ち),光刺激に対する反応時間(反応時間),3mTimed Up and Go Test(TUG),ステッピング(ステッピング)であった。そして,体力測定により得られた結果から,開始時と7カ月後のデータを対応のあるt検定にて比較検討した。【倫理的配慮,説明と同意】対象者および家族には,当該デイサービスセンターにて文書による説明を行い,同意を得ている。【結果】両群の開眼片脚立ちにおいて,開始時と7カ月後の比較で改善傾向が認められた。ゲーム群4.9秒→8.2秒(P=0.084),非ゲーム群4.6秒→8.3秒(P=0.059)。ゲーム群における3mTUGにおいて,開始時と7カ月後の比較で改善傾向が認められた。12.3秒→10.4秒(P=0.073)。【考察】今回,ゲーム群,非ゲーム群ともに有意な改善を示した測定項目は認められなかった。我々は,第39回日本理学療法学術大会において,「デイサービス利用者のゲーム機による身体機能改善効果」について研究し,その結果,ゲーム群においてFR,長座体前屈の有意な改善を認めたことを報告しているが,この研究では,有意な改善が認められるまで1年を要している。一方,本研究は,まだ8カ月を経過した時点であり,今後,より明確な結果が出る可能性がある。現在,ゲームの総合得点および実施回数を積算した数値を基にした評価を開始しており,ゲーム回数の多寡による影響についても分析する予定である。ゲーム群の対象者に対する聞き取りでは,リハビリのため,楽しいから,負けたくないという声が挙がっている。ここに継続のための仕組みやモチベーションを高める工夫へのヒントが隠されていると考えられる。非ゲーム群の対象者では,少なくとも一度はゲーム機を体験していたが,ゲームに関心がないなどの理由で,ゲームを行っていなかった。ゲームに限らず,多様な選択肢を提示することで,ICF(国際生活機能分類)が提唱する社会参加を促す一助となることが期待される。【理学療法学研究としての意義】今後,医療・介護分野においてもロボットやその他の支援機器導入が進むことが予想されるが,その際に重要となるのは利用者に合った機器選択である。適切かつ様々な選択肢を提供できる環境づくりは,多様化するニーズに対応できる理学療法を行う上での参考となることが期待される。
著者
松延 知哉 前川 啓 福島 俊 河野 勤 鬼塚 俊宏 今村 寿宏 畑中 均 加治 浩三 神宮司 誠也 岩本 幸英
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.190-193, 2019-03-25 (Released:2019-05-16)
参考文献数
6

【はじめに】癌化学療法施行を目的として,当科では悪性骨軟部腫瘍患者に対して橈側皮静脈カットダウン法による埋め込み型中心静脈ポートシステム(CVポート)造設を行っており,その成績を後ろ向きに検討した.【対象と方法】2016/4~2017/12に同法によりCVポートが造設された15例を対象とした.平均年齢46歳であった.手術室使用時間,手術時間,局所麻酔使用量,抜去の有無などを調査した.【結果】手術室占有時間98.5分,手術時間49.5分,局所麻酔使用量10.3 mlであった.1例で血栓形成のためにCVポート抜去を行った.1例で橈側皮静脈欠損により,予定側と反対側に造設した.【考察】橈側皮静脈カットダウン法は動脈誤穿刺や気胸などの合併症がなく,安全に行えると考えられたが,橈側皮静脈欠損などのanomalyも報告されており,造設前にエコーで確認する必要がある.【結語】橈側皮静脈カットダウン法によるCVポート造設は,悪性骨軟部腫瘍患者に対して,整形外科医が安全に行える手技と思われた.
著者
上島 隆秀 高杉 紳一郎 河野 一郎 禰占 哲郎 高橋 みゆき 河村 吉章 岩本 幸英
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1281, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】総務省発表によれば,2013年9月15日時点の人口推計で,65歳以上の高齢者が総人口の25%に達した。今後,高齢者人口の増加とともに,介護予防対策は多様なニーズに応えるべく,その多様化が求められてくると予想される。介護予防対策として,リハビリテーションの重要性も認識されているが,継続のための仕組みやモチベーションを高める工夫が不十分である現状は否めない。一方,家庭用ゲーム機の本格的な普及から30年が経過し,ゲームは,シリアスゲームやゲーミフィケーションとして今後,医療・介護分野においてもますます身近になるものと考えられる。今回,デイサービスセンターに導入されたリハビリ用ゲーム機の活用効果について報告する。【方法】対象はY市のKデイサービスセンター利用者のうち,ゲーム機を継続的に利用した群(ゲーム群)15名(男性1名,女性14名,平均年齢85.3±5.8歳)およびゲーム機を全く利用しなかった群(非ゲーム群)96名(男性20名,女性76名,年齢85.0±6.4歳)である。この両群を対象に体力測定を行い,ゲーム機活用効果について検討した。使用したゲーム機は,主に高齢者の運動機能向上を目的として開発されたものであり,上肢の筋力・敏捷性向上を目的とした「ハンマーフロッグ」「ワニワニパニック」,下肢の筋力・敏捷性向上を目的とした「ドキドキへび退治2」,目と手の協調性向上を目的とした「ポンポンタッチ」である。両群とも通常のデイサービスプログラムを行っており,ゲーム群ではさらに,自らの意思で選択したゲームも行っていた。測定項目は,握力,Functional Reach(FR),開眼片脚立ち(片脚立ち),光刺激に対する反応時間(反応時間),3mTimed Up and Go Test(TUG),ステッピング(ステッピング)であった。そして,体力測定により得られた結果から,開始時と7カ月後のデータを対応のあるt検定にて比較検討した。【倫理的配慮,説明と同意】対象者および家族には,当該デイサービスセンターにて文書による説明を行い,同意を得ている。【結果】両群の開眼片脚立ちにおいて,開始時と7カ月後の比較で改善傾向が認められた。ゲーム群4.9秒→8.2秒(P=0.084),非ゲーム群4.6秒→8.3秒(P=0.059)。ゲーム群における3mTUGにおいて,開始時と7カ月後の比較で改善傾向が認められた。12.3秒→10.4秒(P=0.073)。【考察】今回,ゲーム群,非ゲーム群ともに有意な改善を示した測定項目は認められなかった。我々は,第39回日本理学療法学術大会において,「デイサービス利用者のゲーム機による身体機能改善効果」について研究し,その結果,ゲーム群においてFR,長座体前屈の有意な改善を認めたことを報告しているが,この研究では,有意な改善が認められるまで1年を要している。一方,本研究は,まだ8カ月を経過した時点であり,今後,より明確な結果が出る可能性がある。現在,ゲームの総合得点および実施回数を積算した数値を基にした評価を開始しており,ゲーム回数の多寡による影響についても分析する予定である。ゲーム群の対象者に対する聞き取りでは,リハビリのため,楽しいから,負けたくないという声が挙がっている。ここに継続のための仕組みやモチベーションを高める工夫へのヒントが隠されていると考えられる。非ゲーム群の対象者では,少なくとも一度はゲーム機を体験していたが,ゲームに関心がないなどの理由で,ゲームを行っていなかった。ゲームに限らず,多様な選択肢を提示することで,ICF(国際生活機能分類)が提唱する社会参加を促す一助となることが期待される。【理学療法学研究としての意義】今後,医療・介護分野においてもロボットやその他の支援機器導入が進むことが予想されるが,その際に重要となるのは利用者に合った機器選択である。適切かつ様々な選択肢を提供できる環境づくりは,多様化するニーズに対応できる理学療法を行う上での参考となることが期待される。
著者
迫田 礼子 山下 謙一郎 林田 光正 岩本 幸英 山崎 亮 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.180-183, 2017 (Released:2017-04-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2 7

症例は64歳男性である.1998年に頭部を打撲し慢性硬膜下血腫を来した既往がある.2000年から頭痛,ふらつき,聴力低下が出現し緩徐に増悪した.2011年,他院精査で血性髄液を認め,MRIでT2/T2*強調画像にて脳・脊髄表面に沿った低信号病変を認めた.脳表ヘモジデリン沈着症と診断されるも出血源は不明で,止血剤も無効であった.2015年当科受診時,水平性注視方向性眼振,両側高度感音性難聴,四肢・体幹失調を認め,MRIではCISS法にてTh2~3レベル硬膜前面に欠損を認めた.硬膜欠損に対して硬膜欠損閉鎖術を行ったところ,血性髄液の改善を認め,術後頭痛,失調の改善を認めた.
著者
上島 隆秀 高杉 紳一郎 河野 一郎 禰占 哲郎 岩本 幸英 河村 吉章 小野 雄次郎 山下 正 渡辺 睦 林山 直樹
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1086-E1086, 2007

【目的】我々は株式会社ナムコ(以下,ナムコ)と共同で,高齢者でも安全かつ容易に下肢・体幹筋トレーニングが可能なゲーム機「ドキドキへび退治RT」(以下,へび踏み)を開発した。今回,ゲームプレイ中の脳血流変化を測定し,ゲームによる脳機能活性化について検討したので報告する。<BR>【方法】被験者は健常成人男性8名(平均年齢38.8歳)であった。脳血流変化は,前頭前野における酸素化ヘモグロビン(以下,oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン,総ヘモグロビンの初期値からの変化量を,近赤外分光法にて測定した。測定機器は島津製作所製OMM-2001で,測定用プローブを前頭部に装着した。解析は,oxy-Hbの最大値および最小値から脳血流変動値を算出し,その値について比較検討した。実施したタスクは,「ワニワニパニックRT」(ナムコ製,以下ワニ叩き),「へび踏み」及び下肢筋力増強運動(以下,下肢筋トレ)とした。測定肢位は,「ワニ叩き」では立位,「へび踏み」及び下肢筋トレでは椅坐位であった。測定時間は,タスク実施60秒,タスク実施前に安静20秒,タスク実施後に安静40秒の計120秒とした。下肢筋トレは,重錘負荷による膝伸展運動であり,頭位の変化による影響を最小限にするため,被験者にはいずれのタスクにおいても可能な限り頭を動かさないように指示した。なお,被験者には事前に十分な説明を行い,同意を得た上で測定を実施した。<BR>【結果】前頭前野における脳血流変化は,個人差が大きく一般化できる特徴は見いだせなかったが,下肢筋トレに比べゲームにおいて,より大きな脳血流変化を生じる傾向が認められた。また,ゲーム経験の程度により,被験者間の特徴の違いも認められた。<BR>【考察】従来の業務用ゲーム機の多くは主に上肢を使うものがほとんどであるが,「へび踏み」は開発当初より下肢・体幹筋の活発な活動を狙っている。介護予防対策の一つとして,腸腰筋や前脛骨筋の強化が重要であるが,「へび踏み」は,楽しみながらこれらの筋肉をトレーニングすることが可能である。前頭前野は意欲や感情の中枢とされ,前頭前野の活性化は認知症予防対策としても注目されている。今回,脳血流変化に個人差が認められたことから,一律にゲーム機を使用するのではなく,個別対応としてゲーム機選択を行うのがよいのではないかと考える。<BR>【まとめ】ナムコと共同で開発したゲーム機の効果について,脳血流変化の観点から検討した。今後,本ゲーム機使用による介入効果についても研究を進めたい。
著者
河野 一郎 禰占 哲郎 上島 隆秀 高杉 紳一郎 岩本 幸英 岡田 修司 根岸 玲子 鈴木 理司 河村 吉章 石井 櫻子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.E0271-E0271, 2004

【目的】老人福祉施設では、利用者の増加に伴いそのニーズも多様化しており、独自のサービスを工夫し提供している。その一環としてゲームセンター用の業務用ゲーム機を導入している施設もある。ゲーム機には、楽しく夢中になることで自発的に身体を動かす効果が期待されているが、その身体機能改善効果の科学的検証はほとんどなされていない。今回、デイサービス利用者に対するゲーム機導入の有用性について検討した。<BR>【方法】対象は青森県八戸市のCデイサービス利用者のうち、痴呆を有する者を除き、ゲーム機導入時から1年間継続してデイサービスを利用した者27名であり、ゲーム機を継続的に使用した群(ゲーム機群)8名(男2名、女6名、年齢79.1±5.5歳)およびゲーム機を使用しなかった群(未使用群)19名(男1名、女18名、年齢79.4±6.6歳)に分類した。<BR> 両群とも各種体操や集団レクレーション等、一般的なデイサービスのプログラムを受けており、ゲーム機群ではこれに加え各人が自由選択したゲームを週1から3回行った。なおゲーム機群のすべての対象者は右手でゲームを操作していた。<BR> 使用したゲーム機は、namco社製 "ワニワニパニック"(ワニ叩き)、"ドドンガドン"(ボーリング)、"プロップサイクル"(自転車)、"ジャンケン倶楽部"(階段昇降)であった。<BR> 導入前および導入後2ヶ月毎に体力測定を行い、2群を比較検討した。体力測定の項目は、光刺激に対する反応時間(反応時間)、長座体前屈、Functional Reach(FR)、膝伸展筋力(両側)、握力(両側)、10m最大努力歩行(歩行速度)であった。<BR> 統計学的検討は、まずTwo-way ANOVAを行い、次に各群で、導入前と導入後の各月をそれぞれ対応のあるt検定にて比較検討した。<BR>【結果】ANOVAでは、すべての項目において両群間に有意差は認められなかった。しかし、t検定では、導入前に比べて複数の測定月で有意差を認めた。その項目は、ゲーム機群でFR、長座体前屈、左手握力、未使用群で反応時間、両手の握力であった。このうち両群とも握力は低下傾向で、他の項目は改善傾向であった。<BR>【考察】"ワニワニパニック"では出現するワニに対して前下方にハンマーを振り下ろす動作が、"ドドンガドン"では前方の目標物に対してボールを押し出す動作が要求されるため、前方への重心移動を反映するFRと前方への柔軟性を含む長座体前屈で改善傾向があったものと考えられる。また、握力についてゲーム機群の右手のみが有意な低下を示さなかったことは、ハンマーやボールを握ることで握力が維持されたものと考えられる。<BR> 楽しみながら行うアクティビティは内発的動機付けを促し、長期継続の効果が期待できる。今後は症例数を増やしゲーム機使用の効果をさらに明確にすると共に、心理面の評価も加味した研究を実施していく予定である。
著者
加藤 浩 神宮司 誠也 高杉 紳一郎 岩本 幸英 吉村 理 新小田 幸一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.178-184, 2002
参考文献数
24
被引用文献数
6

本研究の目的は,股関節疾患患者の中殿筋を対象に,従来の静的表面筋電図周波数解析に加え,新たに歩行時の動的表面筋電図周波数解析を行い,その結果を筋組織学的レベルから検証することである。当院で手術を受けた股関節疾患患者11症例を対象とした。手術直前に100・50%MVCにおける等尺性股関節外転運動を行わせ,中殿筋筋腹部を電極部位とした静的な表面筋電図測定を行った。又,10m自由歩行を行わせ,動的な表面筋電図測定を行った。そして,wavelet変換を用いた静的・動的表面筋電図周波数解析を行った。手術中に中殿筋筋生検を行いATPase染色による筋線維のタイプ分類(typeI及びtypeII)を行った。さらに画像解析ソフトによる筋線維横断面の形態計測を行った。50%MVC時のパワースペクトルとtypeII線維数の間には,正の相関が認められた。また,歩行時の立脚期初期のパワースペクトル変化は,typeII線維の線維径とtypeII線維横断面の総面積比率が関与していた。wavelet変換を用いた静的・動的周波数解析は,筋線維組成比やtypeII線維の萎縮といった組織学特徴を推測する有効な手段になりうるものと思われた。
著者
足達 永 岡崎 賢 崎村 陸 水内 秀城 濱井 敏 田代 泰隆 岩本 幸英
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.450-452, 2013-09-25

今回我々は術前・術後のアライメント変化と脛骨側の骨切り量・インサートサイズとの関連を評価し,骨切除量の術前予測が可能かどうかについて検討した.対象は2005年から2011年までに単顆型人工膝関節置換術(UKA)を行った.37例40膝(男性:8例9膝,女性:29例31膝)を対象とした.平均年齢は70.1歳,疾患は変形性膝関節症25例26膝,大腿骨顆部骨壊死12例14膝であった.FTAの変化量と術後の関節面上昇量には有意差があり,平均5°未満で3.5mm(-3.5mm~4.9mm),5°以上で5.2mm(5.1mm~12.5mm)であった.FTAの矯正量と脛骨関節面の上昇量は有意な相関関係にあり,術中の脛骨骨切除量の予測が可能であると考えられた.