著者
三浦 要
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

古代ギリシア快楽主義の検討を通じ,特に,原子論者デモクリトスの快楽主義が一般的解釈に反し倫理的理論として肯定的に評価できること,同じ快楽主義のキュレネ派との相違点が顕著であるエピクロスの規範的倫理学説が,個人の閉じた生での幸福の実現を目標にしているかぎりで公的倫理の基礎を与えない点で限界を有すること,そして,快楽と人間とが親和的であるという快楽主義的洞察が真理であるからには,快楽主義が個人倫理の源泉を考える上で依然として有効性をもっていることを考察した。
著者
樋口 善博 村上 尚 谷井 秀治
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

アストログリアのモデル細胞として培養型C6ラットグリア細胞腫株を用い、このGSHの枯渇下によるアポトーシスの過程で、本研究では不飽和脂肪酸とくにアラキドン酸のアポトーシスに及ぼす影響を調べた。ラットグリア細胞腫はグルタミン酸で細胞内GSHを枯渇誘導すると、細胞内活性酸素が増え、かつ脂質メディエーターであるアラキドン酸からの12-リポオキシゲナーゼ代謝過酸化物を含む脂質のラジカル連鎖反応による過酸化が増大することで細胞膜強度が低下し、同時にアポトーシス関連酵素の失活もしくは減少を来たした。染色体DNAでは、細胞内活性酸素OHラジカルによってグアニン塩基が水酸化反応を受け酸化反応による8-hydroxy-2-deoxyguanosine(8-OH-dG)産生の増加が認められた。一方でDNAの酸化反応を引き起こしながらネクローシス様の細胞死を誘導増進することが明らかになった。紫外線による細胞死誘導において、アラキドン酸またはその過酸化物がどのような役割をしているかを、グルタチオン(GSH)枯渇による細胞死誘導の過程で観察された染色体DNAの断片化及び特定の細胞内生理活性物質の変動を調べ、比較検討した。初期段階で活性酸素非依存性の巨大DNA断片化を引き起こし、カスパーゼの活性化を伴うアポトーシスと考えられ、アラキドン酸はDNA断片化を増長させながら紫外線照射による細胞死を促進し、アラキドン酸またはその過酸化物によってその細胞死の一部はNAD,ATPの枯渇を伴うネクローシスに転換されるものと示唆された。これらのGSH枯渇誘導及び紫外線誘導細胞死の実験結果より、グリア細胞腫におけるGSH枯渇誘導での細胞死は、つまり活性酸素関与の場合のその機構はネクローシスであり、活性酸素非依存の場合はアポトーシスによる機構が働くと示唆された。
著者
上田 正行
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学文学部論集 文学科篇 (ISSN:02856530)
巻号頁・発行日
no.13, pp.p1-31, 1993-03

金沢大学文学部
著者
西村 誠次
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

【目的】末梢神経損傷を伴う外傷手で,示指各関節の屈曲あるいは伸展による各関節トルク値を算出し,示指屈曲・伸展運動における手内筋の関与を検討した.【対象】末梢神経損傷を伴う外傷手4例8手(年齢23.8±4.8歳)の示指を対象に健側手と対照させた.症例1と2は手内筋の回復が見られない手内筋マイナス群で,症例3と4は回復が見られる手内筋プラス群とした.【方法】4枚の歪みゲージ(日本電気三栄社製,N11-FA-10-120-11)を用いた自作の指押し力測定器具で指押し力を測定し,各々の関節からの距離との積によって各関節トルク値を算出した.各々測定は3回おこない最大値を記録した.【結果と考察】屈曲トルク値は,手内筋マイナス群ではDIPで最も大きく,PIPとMPはDIPの約1/3であった.PIPのトルク値が減少したのは,虫様筋の麻痺により深指屈筋の収縮力が有効に作用しなかったためと考えられたが,その機序は解明できなかった.またMPトルク値の減少はMPの屈筋群である第1背側骨間筋の麻痺によるものとも考えられる.伸展トルク値は,健側では,MP(IP伸展位),MP(IP屈曲位),PIP,DIPの順で大きく,患側では,MP(IP屈曲位),MP(IP伸展位),PIP,DIPの順であり,健側ではMPのIP伸展位が,患側ではMPのIP屈曲位が最も大きい値を示した.MP伸展力は指伸筋で作られるが,健側のIP伸展位では虫様筋が収縮しFDP腱を遠位方向に引き,FDPによる拮抗作用を減少させることでIP伸展位が大きい値を示したと考える.一方,患側では虫様筋が収縮しないため,PIP関節の肢位によってFDPによる拮抗作用は減少せず,IPI屈曲位で指伸筋は他動的に伸張され,その分収縮力が有効にMPに作用し大きい値で測定されたと考える.すなわち,手内筋の麻痺によってPIP,MP関節の屈曲力と伸展力はともに減少することが示唆された.
著者
拝 みどり
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学文化人類学研究室調査実習報告書
巻号頁・発行日
no.1997, pp.154-161, 1997-07-01

金沢大学文学部文化人類学研究室
著者
松川 元美 Matsukawa Motomi
出版者
金沢大学
雑誌
博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査結果の要旨/金沢大学大学院自然科学研究科
巻号頁・発行日
vol.平成11年6月, pp.418-422, 1999-06-01

取得学位:博士(薬学),学位授与番号:博乙第185号,学位授与年月日:平成11年3月25日,学位授与年:1999
著者
新田 哲夫 下地 理則
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、福井県安島方言に見られる特異な重子音の研究、および風位語彙の体系について重点的に取り扱った。重子音については、その共時的・通時的な現象に関して、(1) 安島方言と標準語の対応関係を明らかにし(2) 重子音の歴史的な変化を推定し(3) 琉球宮古方言との類似性を指摘し、琉球語の歴史研究に寄与することを述べたまた、風位語彙については、「風の移ろい」という概念を導入することにより、風位語彙の内容を詳しく具現化できることを明らかにした。
著者
小倉 明夫 Ogura Akio
出版者
金沢大学
雑誌
博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査結果の要旨/金沢大学大学院医薬保健学総合研究科(保健学専攻)
巻号頁・発行日
no.平成22年5月, pp.7, 2010-05-01

取得学位 : 博士(保健学), 学位授与番号 : 医博甲第2101号 , 学位授与年月日 : 平成22年3月23日, 学位授与大学 : 金沢大学, 審査結果の報告日 : 平成22年2月12日
著者
坂田 明子
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

● 研究目的リトドリン塩酸塩の添付文書には、新生児低血糖症が重要な基本的注意及び副作用として記載されているが、頻度などの詳細は不明である。そこで、リトドリン母体投与後の新生児低血糖症発現状況について調査し、リトドリン投与量・投与期間・投与中止後から分娩までの期間などとの関連性を検討した。● 研究方法母体にリトドリン持続点滴投与を受け投与中止後1週間以内に分娩となった新生児を対象とし、電子カルテを用いて調査を行った。児は正期産(37週以降)・後期早産(36週以降に限る)の正常新生児とし、出生時体重2000g未満の例は出生直後から点滴開始となるため対象から除外した。● 研究成果2013年8月~2016年7月の3年間で調査を行った。リトドリン投与群の新生児低血糖症発現率は61.5%、非投与群の低血糖症発現率は8.2%であり、母体リトドリン投与により新生児低血糖症の発現率が明らかに高くなった。リトドリン投与群の新生児低血糖症発現群における投与中止後から分娩までの期間は平均4.3時間(標準偏差7.61)、リトドリン投与群の低血糖症非発現群では平均37.7時間(標準偏差46.00)であり、有意な差が認められた。低血糖症発現群の67.2%が投与中止後から分娩まで3時間以内であった。リトドリン投与中止後から分娩までの期間が新生児低血糖症発現に関与していることから、計画的にリトドリン持続点滴投与を中止することにより新生児低血糖症を回避できる可能性を示唆した。また、リトドリン投与中止後から分娩までの期間により新生児低血糖症発現のリスクが予見でき、確実な予防対策を講じることができると考えられた。
著者
鳥居 和代
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、1950~60年代の戦後日本の漁業地域において、家庭や地域を巻き込んだ学校内外にわたる生活指導がどのように展開されたのかを明らかにすることにある。2019年度は、次のような調査研究を行った。第一に、前年度に引き続き、東京大学教育学部図書室において、教育学者の大田堯や千葉県教育研究所が関与した、千葉県房総半島の最南端に位置する漁村における1950年代初頭の教育計画に関する報告書等を調査した。第二に、上記漁村の小学校を事例として、1950年代初頭における標準語教育と方言教育の実践について調査研究を行った。千葉県の館山市立博物館本館所蔵の学校日誌を閲覧するとともに、館山市立図書館において、安房地方の漁村の歴史や方言に関する諸資料を収集した。また、当該時期に収録された安房地方の方言音声資料を入手した。第三に、千葉県の銚子市公正図書館において、銚子の方言に関する郷土史料や、1960年代に漁村の小学校でことばなおしの実践に携わった元教員に関する資料を収集した。とくに、第一と第二の調査研究によって、次のことが明らかになった。すなわち、(1)1950年代初頭の漁村の一小学校では、大田堯らの関与によって、標準語教育の見直しと方言の尊重ということばの実践の深化がみられたこと、(2)当小学校ではやがて標準語か方言かの二項対立を超えて、浜者(漁民)と岡者(漁民以外)との階層的な差異や、それに基づく子ども間の「劣等感」と「優越感」とを解消していくための人間関係づくりの視座が獲得されたこと、(3)その意味において、ことばの指導から生活指導の次元へと向かう実践の方向性が確認できることである。本成果は、教育史学会第63回大会において発表した。
著者
中村 直行 Nakamura Naoyuki
出版者
金沢大学
雑誌
博士論文本文Full
巻号頁・発行日
2006-03-25

金沢大学社会環境科学研究科博士論文, 72p.
著者
遠藤 優
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

ホログラフィと画像処理を組み合わせた計測技術(DH: Digital Holography)では,画像処理が複雑化・多様化し,その開発に要するコストの増大が問題となっている.本研究では,DHシステムにおける画像処理を最適化問題として統一的に扱う手法を提案し,スケーラブルかつ高性能なホログラム画像処理フレームワークの構築を目指す.また開発したフレームワークを様々なDHシステムに応用し,その有用性を実証する.
著者
江森 一郎 竹松 幸香
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学教育学部紀要. 人文科学・社会科学編 (ISSN:02882523)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.1-17, 1997-02

幕末の下級武士の間には、儒学や武道などの武士が当然習得すべきとされた分野の他に、さまざまな伝統文化の習得が広く普及していた。加賀藩の場合とくにこの傾向が顕著だったと思われ、謡曲をはじめ、生け花、茶道、笛、算術、囲碁、将棋なども広く普及していた。この論文ではこの度入手した加賀藩与力・中村豫卿の日記の弘化・嘉永年間(1844~53)の部分を主として使い、中村豫卿を中心とした学習・教育や趣味活動の実態の概要を紹介する。
著者
中村 裕之
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

全身振動の暴露を受ける作業環境で働く妊娠中の女性労働者は、その全身振動により流産をはじめとする正常妊娠の障害が生じることが疫学的調査や症例検討により指摘されてはいるが、その発現機序についてはほとんど知られていない。そこで、全身振動による正常妊娠への障害を実験的に証明し、またその際生じる子宮血流量の減少がいかなる内分泌的機序によるかを明らかにするために、ラットに振動数8Hz、振動加速度10m/s^2の全身振動を90分間負荷した結果、全身振動暴露を施したラットでは暴露による子宮血流量の有意な減少を認めた。アンギオテンシンII(AII)前投与のラット子宮血流量は振動暴露を受けない群では増加を認めたが、振動暴露群ではその減少が観察された。コルチコステロンの値は振動負荷後に増加を認め、この増加はAII投与によってまったく影響を受けなかった。AII前投与の有無にかかわらず、対照群と全身振動暴露群の間にエストラジオールの有意な変化はなかった。全身振動負荷によるプロゲステロンの減少を認めたが、AII投与後には、全身振動の影響は認められなかった。AII投与の有無にかかわらず、振動群のプロスタグランジンE_2(PGE_2)は対照群に比べ減少を示した。プロスタグランジンF_2alphaについては、AII投与の有無にかかわらず、全身振動の影響が認められなかった。これらの結果から、全身振動によって子宮血流量が減少し、また妊娠黄体への機能障害を惹起するという正常妊娠への障害が実験的に証明された。この子宮血流量の減少は、主に全身振動の有する情動ストレスとして作用によるPGE_2への制御を介して生じると考えられた。