著者
山口 正晃
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

半索動物と棘皮動物は歩帯動物クレードの姉妹群で、三体腔性の幼生を共有する。半索動物は幼生プランを引きつぐ。一方、棘皮動物は成体原基の中で五放射体制をつくり、稚虫へと変態する。半索動物外胚葉の前後軸にそったパターン化を制御する遺伝子のウニ相同遺伝子を単離し、比較発現解析した。ウニ成体原基の外胚葉で発現するのは、ギボシムシの襟外胚葉相同遺伝子のみで、その発現は放射水管を覆う歩帯外胚葉領域に制限されていた。棘皮動物は、共通祖先から吻と胴を失い、襟からの放射状突起伸長によって進化したことを提唱する。一方、Hox複合体の共線的発現は、棘皮動物の前後軸は成体の口-肛門軸であることを示唆する。
著者
河原 昌美
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

研究目的:抗がん剤によって引き起こされる吃逆は、重症度は持続期間で患者のQOLを低下させることから、吃逆を引き起こす抗がん剤の種類と発現頻度および要因を明らかにし、化学療法施行患者への予防に役立てることを目的とした。研究方法:インタビューフォームから承認時および市販後の吃逆頻度が1%以上と報告されているオキサリプラチン、パクリタキセル、ビノレルビン、ドセタキセル、イリノテカン、ゲムシタビンの6薬剤を選択した。2008年4月から2009年9月の間に金沢大学附属病院で、上記6薬剤が投与された619名の入院患者を対象とし、性別、年齢、がん種、併用薬、吃逆の状態等を診療録から調査した。研究は、倫理委員会の許可を得て実施した。研究成果:調査薬剤すべてにおいて実際に報告されているよりも高頻度で吃逆が発現していた。吃逆の発現には、男性、ステロイドおよび5-HT3受容体拮抗薬の併用が関連していた。また、プラチナ系抗がん剤を併用すると、単剤投与に比べて吃逆の頻度は上昇した。一方、ステロイド投与量、抗がん剤の投与量、がんの臨床病期は影響をおよぼさなかった。吃逆の治療には、クロルプロマジン、リスペリドンが効果的であることがわかった。本調査結果をもとに、吃逆発現の可能性が高い患者に対して説明文書を作成して注意を促すこととした。また、医師に対しては、吃逆の可能性が高い患者であることを知らせ、早めに治療薬を処方するよう伝えることですみやかな対処が可能と考えられた。
著者
松本 勲 小田 誠 渡邊 剛 田村 昌也
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ナノテクノロジーを応用して作成したキトサンナノ繊維チューブ(C-tube)による胸腔内自律神経再生効果について検討した。ビーグル犬を使用し、交感神経および横隔神経を切断し、神経の断端をそれぞれC-tubeの両端に縫合した。いずれの犬も合併症なく生存した。術後1年でC-tube内で神経が連結しており、神経障害症状が回復する犬もいた。C-tubeは交感神経および横隔神経の形態的再生を促し、神経機能の一部を再生させることを確認した。
著者
早川 和一 鈴木 信雄 細井 信造
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

水試料中のPAH,NPAH類を対象にHPLC/蛍光検出法,HPLC/化学発光検出法を用いた超高感度分析法を開発し,前者を用いて日本海及び周辺海域のPAH汚染の現状を明らかにした。また,PAH水酸化体とPAHキノン体の酵母two-hybrid法を用いた内分泌かく乱作用とキンギョ鱗培養システムに及ぼす影響に関連があり,作用を示す化合物との間に構造活性相関があることを明らかにした。
著者
早川 和一 鈴木 信雄 大嶋 雄治
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

重油汚染による魚の奇形発生の機構を調べるために、様々なバイオアッセイ系を用いて解析した。その結果、毒物の本体は、水酸化した多環芳香族炭化水素類であり、メダカの胚発生において致死作用があり、ウロコの骨芽細胞及び破骨細胞の活性に影響を与えた。さらに解毒タンパク質の候補になり得る物質を見出すことができた。
著者
長谷川 卓 中村 英人 黒田 潤一郎 守屋 和佳
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

C4植物は700万年前頃に顕在化した被子植物で,通常の光合成回路の前段にCO2濃縮回路を持ち効率的な炭素固定を行う.この形質の成立過程は謎に包まれているが,「白亜紀中期の約1億年以上も前のオーストラリア南西~南極大陸にかけてがC4植物誕生の場である」という仮説を立て,これを検証する.炭素循環の大きな攪乱期の前後の試料から有機分析を進め,分子レベルの炭素同位体比分析など先進的手法も取り入れる.どの時代でどの環境激変と連動してC4植物が誕生・進化したかを明らかにし,その時代の環境背景を更に詳しく理解していく.C4植物のみに由来する有機分子の発見を期待している.
著者
宮田 佳樹 吉田 邦夫 中村 俊夫 南 雅代 堀内 晶子 久保 謙哉 北野 博司 上條 信彦 遠部 慎 村本 周三 リチャード エバーシェッド
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

①土器付着炭化物の炭素年代測定や安定同位体分析による食性解析法,②土器残存有機物組成や分解生成物を同定するバイオマーカー分析,③土器から抽出した炭素数16,18の直鎖状飽和脂肪酸の炭素同位体比を現生生物と直接比較することにより,起源物質を推定する手法,これら三つの手法(①,②,③)を法補的に組み合わせることにより,土器付着炭化物と土器胎土吸着物を用いて,土器で調理された食材を復元することができた。つまり,新しい縄文土器を用いた古食性研究手法を確立した。
著者
尾田 十八 山崎 光悦 坂本 二郎 北山 哲士 酒井 忍 金井 亮 李 鵬 李 鵬
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,自然・生態系と調和した新しい材料,構造,機器,システム等の創生法を,生物に学ぶことによって確立することを目的としている.その方法は多様な生物の中で,特異性を有する生物にまず注目する.本研究では動物の例として繰返し衝撃負荷に耐える「キツツキ」を,植物の例としては,軽量であるが不燃性を示す「桐材」に注目した.そしてこれらの特性がどのようなメカニズムによって生じているのかを,主として力学的視点より明らかにした.これらの結果と,代表者らがすでに行って来ている竹や卵殻の構造・組織分析結果を含め,新しい構造設計および材料設計法の基本原理を提示した.
著者
新田 哲夫 木部 暢子 久保 智之
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究期間を通じて、福岡県宗像市鐘崎から移住し、閉鎖的な社会を保ってきた輪島市海士町の「言語の島」の様子について、海士町のルーツ問題、アスペクト形式「ヨル」、語末母音と助詞の母音融合、アクセント体系、人称詞等について、考察を行った。移住と言語の関係について、ルーツの側の言語がどんどん変化していく一方で、移住先の言語がむしろ古形を保存する興味深い現象が見られた。その一方で能登方言の特徴を取り込みながら、閉鎖的な社会の中で独自の変化を遂げた特徴の存在も明らかになった。
著者
守屋 以智雄
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学文学部地理学報告 (ISSN:0289789X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.137-152, 1997-03-18

The geomorphology and evolutions of 20 Quaternary volcanoes in Italy have been studied. The Quaternary volcanoes are divided into 5 types - 11 stratovolcanoes, 4 caldera volcanoes (Vulsini, Latera, Sabatini,
著者
重原 一慶
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

咽頭と尿路のHPV感染の疫学調査では、尿道炎男性患者213例を対象に咽頭うがい液と尿検体を採取し、HPV検出率を検討した。HPV検出率は、咽頭18.3%、尿検体22.1%であった。次に、一般男性における尿路性器HPV感染率についての疫学調査では、823例の一般健常者を対象、亀頭擦過検体および尿検体HPV陽性率は、亀頭22.8%、尿5.8%であり、尿路に比較し亀頭のHPV感染率が高かった。最後に、80例のMSM患者(HIV陽性率93%)における肛門・尿路HPV感染の疫学調査では、HPV検出率は肛門検体88.7%、尿検体48.0%であった。男性においてもHPV感染は蔓延していると考えられた。
著者
中島 正 千木 昌人
出版者
金沢大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究では,アシルシランシリルエノールエーテル(I)とアセタール類との反応による3-アルコキシアシルシラン誘導体の立体選択的生成と,これを利用する3または4連続不斉中心の選択的構築法について検討した。カルボニル基のα位にメチレン基を有するアシルシランをエノール化させ,生じたエノラートを塩化シランで捕捉してIを良好な収率で得た。エノール化剤としてのLDAの使用はZおよびE-Iの混合物を,ホスホニウムジイリドではE-Iを立体選択的に得た。E-またはZ-Iとアルデヒドジメチルアセタール類のアルドール反応ではいずれのIからも2,3-anti-3-メトキシ-1-シリル-1-アルカノン(II)が優先的に生じた。また,エーテル炭素置換基がフェニル及び直鎖アルキル基のIとベンズアルデヒドアセタールとの反応で最も高い立体選択性(d.e=92-96%)が認められた。E-Iとd,1-フエニルプロピオンアルデヒドジメチルアセタールアルドールとの反応では,3連続不斉中心を有する2,3-syn-3,4-syn-3-メトキシアシルシラン(V)が高立体選択的に生成し,3,4位炭素の相対配置とともに2,3位炭素のそれも規制されることが明らかとなった。IIおよびVにアルキルまたはフェニルリチウムを反応させ,対応する3および4連続不斉中心を持つ3-メトキシ-1-シリル-1-アルカノール(IIIおよびVI)を定量的かつ高ジアステレオ選択的に得た(d.e=80-99%)。IIIおよびVIのフッ素アニオン試薬による脱シリルプロトン化は,2,3位炭素間の相対立体配置に関係なく,定量的かつ立体特異的に進み対応する1,2-anti-3-メトキシ-1-アルカノール(IVおよびVII)を生じた(d.e=>99%)。
著者
稗貫 俊文
出版者
金沢大学
雑誌
金沢法学 (ISSN:0451324X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.185-216, 2006-03

北海道大学大学院法学研究科