- 著者
-
下地 理則
- 出版者
- 日本言語学会
- 雑誌
- 言語研究 (ISSN:00243914)
- 巻号頁・発行日
- vol.154, pp.85-121, 2018 (Released:2019-06-04)
- 参考文献数
- 47
本稿の目的は,琉球諸語における焦点助詞(du, ga)による焦点標示の方言差(バリエーション)を記述するとともに,そのバリエーションに関して,可能なパターンを記述でき,不可能なパターンを予測できるモデルを提示することである。扱った方言は15方言であり,北琉球語から喜界島方言(佐手久,小野津),奄美大島方言(瀬戸内,湯湾),徳之島方言(伊仙),沖永良部島方言(国頭),沖縄本島方言(与那原)の7方言,南琉球語から宮古方言(伊良部島長浜,宮古島保良,多良間島),八重山方言(石垣島真栄里,黒島,鳩間島,西表島船浮),与那国方言の8方言である。本稿では,焦点タイプ(WH焦点vs. WH応答焦点vs.対比焦点)と焦点ドメイン(項焦点vs.述語焦点)の2つの変数で方言差を記述し,琉球諸語の焦点標示に関して,通方言的に以下の2つの階層を提案する。(1)焦点タイプの階層:対比 > WH応答 > WH(2)焦点ドメインの階層:項 > 述語琉球諸語の焦点標示に関して,この焦点階層(Focus-Marking Hierarchies)を用いることで,「階層のある地点で焦点標示が可能なら,その左側でも焦点標示可能である」と一般化できることを論じる。