著者
小松崎 俊彦
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,騒音の存在する自由音場において,高指向性スピーカを利用して局所的に騒音を低減し,無指向型スピーカでの場合のように,周辺空間に余分な音の増大を招くことなく静音化を実現する能動騒音制御システムの開発を目的とする.本年度は,前年度に検討したパラメトリックスピーカの指向性,および干渉音場の実験結果を踏まえて,それらを数値的に予測する理論モデルを構築し,さらに,必要な空間だけを局所的に静音化する能動騒音制御システムの実証実験を行った.まず,数値的検討については,パラメトリックアレイに関する理論モデルに基づき,波動方程式による数値計算モデルを構築した.生成される音圧の空間分布および騒音源との干渉音場特性について数値的に予測し,実験結果との定性的な一致を得た.本モデルによって,音波の高指向性をある程度再現可能であることが示されたが,実測値ほどの高指向性の再現は困難であった.これは計算過程を簡略化するための近似が主な要因であると考えられる。さらに,以上の結果を踏まえて,騒音源を模した無指向型スピーカから制御対象音を出力し,パラメトリックスピーカを制御音源として,目標点に設置したマイクロホンにおける音圧値を最小にするように制御音を生成可能なシステムを構築した.パラメトリックスピーカの再生音が非線形効果によるものであることを考慮して,非線形特性を同定可能なニューラルネットワークを採用した.周期的騒音の発生を想定した制御実験を行い,干渉音場計測により周辺音場への影響などについて調べた.制御音源として無指向型スピーカを用いた場合と比較して,目標点周辺への影響が少ない制御が可能であることが実験的に示された.
著者
狩野 方伸 少作 隆子 田端 俊英
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2001

マリファナの活性成分であるΔ9-テトラヒドロカンナビノールは、中枢神経系に広く分布するCB1カンナビノイド受容体を介して作用を発現する。CB1受容体に対する内因性のリガンド(内因性カンナビノイド、以下eCBと略す)の候補として、アナンダミドと2-アラキドノイルグリセロールがある。CB1は中枢ニューロンのシナプス前線維に局在し、その活性化によって伝達物質放出の減少が起こる。しかし、本研究開始時点で、eCBがどのような刺激によって生成され、どのような生理機能を果たすかという最も重要な点についてはほとんど明らかにされていなかった。本研究では、eCBのシナプス伝達における役割を主として電気生理学的手法を用いて調べ、以下の結果を得た。海馬神経細胞および小脳プルキンエ細胞において、シナプス後細胞の脱分極と細胞内Ca^<2+>濃度上昇によりeCBが放出され、逆行性に抑制性および興奮性シナプス終末のCB1受容体に作用して伝達物質放出の一過性減少がおこることを明らかにした。また、グループI代謝型グルタミン酸受容体や、M_1及びM_3ムスカリニックアセチルコリン受容体などのGq結合型受容体の活性化によってeCB放出が起こり、逆行性にCB1受容体に作用して伝達物質放出の一過性減少がおこることを発見した。さらに、海馬培養細胞において、単独ではeCB放出を起こさない程度の弱いM_1/M_3受容体の活性化と弱い脱分極を同時に与えると、eCBが効率よく産生された。これは、海馬神経細胞に存在するフォスフォリパーゼCβ1(PLCβ1)の酵素活性が、M_1/M_3受容体の活性化と細胞内Ca^<2+>の両方に依存することが原因である。したがって、PLCβ1はコリナージック入力(シナプス前活動)と細胞内Ca^<2+>濃度上昇(シナプス後神経活動)の同期性検出分子として機能することが明らかになった。
著者
堀 晄
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学考古学紀要 (ISSN:09192573)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.54-57, 2008-03-26
著者
森安 孝夫
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学文学部論集. 史学科篇 (ISSN:02856522)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.A1-A85g, 1984-03-15
被引用文献数
1
著者
笹川 寿之 浜 祐子 GIGA-HAMA Yuko
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)のHPV16が子宮頚癌の発生を誘発することが明らかになっている。したがって、HPV16に対して有効な免疫を誘導することが感染防止や将来の癌発生防止に有効であると考えられている。米国のグループがHPV16型L1蛋白を酵母で発現させて作成したウイルス様粒子(VLP)をワクチンとして人に免疫したところ、100%その感染は抑えられたと報じられた。このワクチンは注射ワクチンで、精製したウイルス様粒子を計3回の注射を行っている。効果はみとめられたが、このワクチンは単価が高く、また、低開発国など医療設備が充実していない地域において、このワクチンの保存や注射そのものが難しいなどの問題点がある。そこで、安価で経口投与出来るワクチンの開発が期待されている。最近、我々はHPV16型様粒子を産生する酵母を経口投与した後にごく少量のVLPを鼻粘膜に投与することで、HPV16型特異的な抗体が誘導されることを発見した。本研究では、この研究を発展させ、HPV16型感染の防御のみならず、HPV16型特異的なキラーT細胞を誘導し、治療を目的としたワクチンの作成を試みた。S.pombeの発現ベクターにHPV16L1-E7(L1を短くしたC-末に全長のE7を導入したもの)を組み込んで発現させたところ、57kD,63kD,67kDの蛋白発現に成功した。このHPV16L1-E7を発現する酵母を凍結乾燥させ、マウスに食べさせたところ、HPV16様粒子(VLP)に反応することを確認した。このことから、この融合蛋白がL1だけで構成される粒子と同じような粒子を形成し、それによって抗体産生が誘導されることが示唆された。E7に対するキラーT細胞が誘導されているかどうかについて今後検討する予定であり、もしこれが誘導されれば、予防的かつ治療的ワクチンとして有望となる可能性がある。
著者
中村 裕之 人見 嘉哲 神林 康弘 日比野 由利
出版者
金沢大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

リポソームカプセルのリン脂質2重層にNKT細胞活性化物質「α-GalCer」を挿入し、スギ花粉T細胞エピトープを封入し、CTLエピトープを表面に結合することによってリポソームワクチンを構築した。インフルエンザウイルス感染およびスギ花粉症モデルマウスを対象に、リポソームワクチンを6日間、予防的に投与し、IFV抗体価を指標として検討した結果、新しいインフルエンザウイルスワクチンの有効性が証明された。
著者
鳥居 和之 奥田 由法 久保 善司 川村 満紀
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

「泰平橋」(平成12年8月撤去)の解体では,PC・T桁の一般図及び配筋図(PC鋼線,スターラップ筋,横締め構造など)を完成するとともに「泰平橋」で使用したコンクリート及びPC鋼線(直径5nmのピアノ線)の品質を調べた.その後,平成12年10月に(株)ピー・エス七尾工場(現(株)ピーエス三菱)にて,PC桁の曲げ及びせん断載荷試験を公開試験として実施し,50年が経過したPC・T桁の耐荷力及び変形性能を明らかにした.次に「長生橋」(平成13年8月撤去)の解体では,「泰平橋」と同様にPCスラブ桁の一般図および配筋図を完成するとともに,「長生橋」で使用したコンクリート及びPC鋼線(直径3mmのピアノ線)の品質を「泰平橋」と比較検討した.その後,'平成13年10月に(株)ピーエス七尾工場(現(株)ピーエス三菱)にて,PC桁本体及び合成桁の曲げ及びせん断載荷試験を公開試験として実施した.「長生橋」は移設検討委員会(座長:金沢大学工学部川村満紀教授)が設置され,復元の方法および移設の場所が検討された,移設検討委員会の方針に従って,平成14年4月に建設当時の欄干や電気灯などを復元し,「長生橋」は七尾市の希望の丘公園に移設された.また,「泰平橋」,「長生橋」に関する調査資料を整理し,歴史的価値の高い両橋梁の記録を冊子としてまとめるとともに,平成14年11月に特別講演会「コンクリートは本当に丈夫で長持ちか」を主催し,「泰平橋」,「長生橋」の調査結果を多くの土木関係者に報告した.さらに,解体調査の記録を2本のビデオ(金沢大学工学部編集,(株)ピーエス三菱編集)にまとめた.
著者
安藤 敏夫 内橋 貴之 福森 義宏 福間 剛士 古寺 哲幸 紺野 宏記 ウオング リチャード 村上 聡 小椋 光 豊島 陽子 神取 秀樹
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

三つの課題に取り組んだ。課題1では、既に確立した高速AFMを利用して多様な蛋白質系で起こる動的プロセスを観察し、機能メカニズムに迫るとともに、従来技術では困難な天然変性蛋白質の構造解析が高速AFMで可能であることを実証した。課題2では、振動を起こさずに広域を高速走査する技術やイメージング中に試料を操作可能なインターラクティブ高速AFMを開発し、その有効性を実証した。また、カンチレバー走査方式の高速AFMと蛍光顕微鏡との複合機を開発し、蛍光像と高速AFM像の同時取得を実現した。課題3では、非接触観察可能な走査型イオン伝導顕微鏡の高速化に向け要素技術を開発し、約100倍の高速化に成功した。
著者
森 雅秀 永ノ尾 信悟 高島 淳 冨島 義幸 原田 正俊 山部 能宜 松本 郁代 鷹巣 純 矢口 直道 西本 陽一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、アジアにおける仏教儀礼の形成と展開、変容をテーマに、さまざまな領域の研究者による共同研究の形式で進められた。参加した研究者はインド学、仏教学、歴史学、人類学、美術史、建築史、宗教学等の分野で、多角的な視点から研究をおこなった。そのための枠組みとして王権論、表象論、空間論、技術論、身体論という5つの研究領域を設定した。とくに顕著な研究成果として灌頂に関する論文集があげられる。代表的な仏教儀礼のひとつである灌頂を取り上げ、その全体像を示すことに成功し、儀礼研究の新たな水平を開いた。また研究の総括として、儀礼と視覚イメージとの関係についての国際シンポジウムを開催した。
著者
前島 隆司
出版者
金沢大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

視床下部及びモノアミン・コリン作動性神経系により形成される睡眠・覚醒制御システムについて、個々の神経系を結ぶ入出力回路の作動機序と機能的役割の解明をめざし、錐体オプシンを用いた光遺伝学的手法を導入し実験を行なった。マウスをモデル動物とし、視床下部オレキシン神経及び縫線核セロトニン神経の神経活動を光遺伝学的に操作し、睡眠・覚醒状態の変化を観察する実験系の立ち上げを行なった。長波長型及び短波長型錐体オプシンをそれぞれ励起波長の重ならない蛍光タンパク質eGFP及びmCherryで標識し、Cre-loxP部位組み換え反応により発現されるようアデノ随伴ウイルスベクターにクローニングした。実験には細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現する遺伝子改変マウスを用い、オレキシン神経及びセロトニン神経への遺伝子導入のため、それぞれOrexin-Creマウスの視床下部外側野とSERT-Creマウスの背内側縫線核内にウイルスベクターを投与した。いずれの錐体オプシンもセロトニン神経特異的に発現し、最適波長の光照射により過分極応答を誘発させることをそれぞれ組織学及び電気生理学的手法により確認した。また視床下部においては一部非特異的発現が認められたが、オレキシン細胞においても錐体オプシンの活性化により過分極応答が誘導された。次に、脳波・筋電計測下の生体マウスにおいて、錐体オプシンを導入した神経核に対し光ファイバーを通して直接光照射を行ない、睡眠・覚醒状態の変化を観察する実験システムを構築した。予備的ながら光照射期間において睡眠・覚醒状態の変化を観察した。今後実験系の修正を適時行いつつ実験を重ね、厳密な対照実験との比較から慎重に結論を導出したい。錐体オプシンを用いた光遺伝学的手法は神経回路の機能的役割を解明するための一助となると期待される。
著者
上條 勇
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

オーストリア第一共和国の歴史で重要な役割を果たしたオットー・バウアーとオーストロ・マルクス主義について、主としてSPOリンツ綱領(1926年)と翌年に生じた7月15日事件について詳細に調べ、その研究発表を行った。そして、バウアー達が、マルクス主義の教条主義に捉われてかたくなに妥協を拒んだとか日常的な改良活動を軽視したとかいう影響力のある評価に対して史実にそくして批判をおこなった。
著者
鳥谷 真佐子
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、1.研究力向上を導く戦略策定のための研究力分析指標提案、2.研究戦略策定・実施プロセスモデル提示を試み、大学における研究戦略策定・実施方法を体系化することにある。研究力分析に関わる組織、研究力分析を研究戦略に活かすプロセス、研究戦略実施に関する調査を行った。参考としてイギリスの研究評価制度の調査を行ったが、イギリスでは指標を用いた評価はピアレビューを行う際の参考としてのみ用いられていることが明らかになった。指標による評価は、被評価側の偏った行動を誘起しやすいため、自機関の分析のための指標利用と、研究機関への資金配分のための指標利用は、厳密に区別する必要がある。