著者
早川 正士
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1-2, pp.1-9, 2005-01-31

There have been accumulated a lot of evidences on the presences of electromagnetic phenomenaassociated with earthquakes. This report reviews these seismo-electromagnetic phenomena takingplace not only in the lithosphere, but also in the atmosphere and ionosphere. Observational resultsand also theoretical hypotheses are presented, and we finally suggest the importance of a newscience field, " Lithosphere-atmosphere-ionosphre coupling" .
著者
飯野 希 Nozomu Iino
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2013-03-24

ヒトの速度知覚は,刺激パターンの様々な要因(1)輝度コントラスト,(2)空間周波数,(3)形状などに影響を受ける.すなわち,パターンの速度が物理的に等しくても,知覚量としては異なることがある.この差は錯視量と呼ばれる.これらの視覚特性や要因を再現・説明するために,さまざまな視覚細胞特性や計算論的仮定などを導入した数理モデルが提案されてきた.本研究では,ヒトの視覚細胞特性や計算論的仮定を考慮・導入していない工学的画像処理アルゴリズムでも基本的な知覚特性が再現・説明できることを示す.具体的には時空間微分算法と呼ばれる手法の入出力特性を測定・分析・数理的考察を行い,上記(1)(2)(3)の視覚特性が再現・説明できることを示す.このような工学的観点から考察を行うことで,視覚特性の要因について新たな解釈を与えることを目的とする.具体的な手法としては,MATLABによるシミュレーションにより,上記の視覚特性の再現・説明を試みた.シミュレーションを行った結果,工学的画像処理アルゴリズムでも上記(1)(2)(3)の特性が再現できることを示した.さらに数理的な考察を行い,細胞ノイズ・生体ノイズなどのノイズが速度推定に影響を与え,結果として視覚特性が現れることを示した.また,刺激の形状や,物理的運動方向を定めることで,どの程度の錯視量が生じるか数式上で求められることを示した.これは,刺激の形状によって,錯視量が最大となる運動方向や,錯視が生じない運動方向を計算論的に定められることを意味している.この研究により,工学的観点から視覚特性が再現できることがわかり,視覚特性の要因についても新たな解釈,工学的考察の可能性を与えた.
著者
渡辺 亮 Ryo Watanabe
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2017-03-24

人間の皮膚感覚は,皮膚の機械的変形を伝える触覚(本論文では機械的変形を伝える感覚を狭義の触覚とする),温度感覚,痛覚等によって構成されている.このうち触覚については近年,バーチャルリアリティ(VR)等,さまざまな分野への応用もなされている.しかし温度提示の応用は,VRにおける皮膚感覚の一要素としての温度感覚の提示や,保温等による快適性の向上に限定され,いまだ発展途上の研究分野といえる.一方で温度提示は機械的な駆動部を必要とせず,また振動提示等と比べて低コスト,低エネルギーであるため,全身への情報提示に向いている可能性がある.これらのメリットを持ちながら応用が行われない理由として,これまでの温度提示が「温度そのものの知覚」に主眼をおいていたことが挙げられる.しかし,温度提示によってもたらされるものは温度そのものの知覚に限らない.温度感覚は温度の情報を伝達するのみならず,時としてほかの感覚を生起し,さらには人間の運動を誘発する.例えば痛み,痒みの感覚は必ずしも温度提示と不可分の感覚ではないが,伝達する神経は温度を伝達する神経と共通し,実際には温度感覚と不可分の関係にある.また近年の研究では,人間が物体を把持する力の調節に温度感覚が寄与することが示唆されている.このような温度感覚の運動および感覚に与える作用を考えれば,上述した振動等の触刺激提示に対する利点を活用することができるであろう.本論文は単純な温度情報の伝達にとどまらない,温度感覚がもたらす運動・感覚作用に注目し,特に医療福祉分野における応用を提案する.本論文ではこうした温度感覚が身体に与える作用を「純粋に感覚的なもの」,「身体運動に影響を与えるもの」の2つに分類した.温度感覚の身体作用については限定的にしか知られていないが,上記の分類それぞれについて「温度感覚による痛みの生起」と「温度感覚による運動調整」が挙げられる.「純粋に感覚的なもの」として挙げた温度感覚提示が痛みの感覚を生起する現象に着目すると,痒みの鎮静(鎮痒)への応用可能性がある.温度感覚はAδ線維とC線維によって伝達され,同じくAδ,C線維により伝達される痛み,痒みとも密接な関係をもつ.痒みは乾皮症や腎不全,糖尿病等様々な病気の症状として知られるが,なかでも日本国内に約35万人の患者を抱えるアトピー性皮膚炎は非常に重大な問題となっている.現在一般的な痒みの治療法は少なからず副作用の危険性を持つ.特に,アトピー性皮膚炎の治療薬として最も一般的なステロイド薬には多くの重篤な副作用が報告されている.この他の痒みを抑制する方法に,患部を掻きむしる,患部に痛みを与える等がある.いずれも鎮痒効果があることは検証されているが,皮膚を損傷し症状を悪化させる危険性が大きく,治療に用いることは難しいとされる.これに対して本論文では温度錯覚現象Thermal grill illusion(TGI)を用いた鎮痒を提案した.TGIは温冷2つの温度感覚提示によって痛みを生じる現象であり,皮膚を損壊せず痛みを提示することが可能であることから,副作用のない鎮痒手法になる可能性がある.ローラー型の温冷刺激部が皮膚上を回転することで時空間的に交互に温冷刺激を提示し,TGIを生起させるという手法を提案し,複数回の鎮痒デバイスの試作および鎮痒効果の実験を行い,一定の鎮痒効果を有するという結果を得た.またローラーを用いずにTGIを生じさせるために,温度感覚が触覚提示部位に転移する現象であるThermal Referral(TR)を用いる手法を検討し,TRによって転移した温度提示部にTGIが生じることを発見した.さらにTRが全身に適用できることを示した(第4章).「身体運動に影響を与えるもの」として挙げた温度感覚と把持力調節機能の関係に着目すると,温度感覚検査への応用可能性がある.近年の温度感覚研究では温度感覚の脱出した患者の把持動作に異常がみられることから,Aδ,C線維が伝達する温度感覚が運動機能に関与する可能性が示唆されていた.この知見は人間の温度知覚を,主観的な回答に依らない把持力の変化という客観的な形で表すことができる可能性が大きいことを示している.これまで温度知覚能力を計測する際には,患者の主観的な回答に頼る場合が多く,明確にその能力を計ることが困難であった.無意識的な運動調節が温度の知覚サインとなるのであれば,検診やリハビリの現場で温度,痛みを評価する際の指標としての運用が期待できる.本論文ではより直接的な温度提示と把持力調節の関係を探るため,物体の表面温度を動的に変化させることが可能なキューブ型のマニピュランダムを開発した.被験者が拇指,示指で装置を把持した際の,表面温度の変化に伴う把持力の推移を記録した.温度変化と把持力の関係性を検討したところ,物体表面の温度が増加すると把持力が減少するという関係性を認めた.健常者におけるこのような変化が温度覚由来の調節であることを確かめる目的で,温度感覚が脱失しているCIPA患者4名に同様の課題を行わせたところ,温度変化と把持力変化の間には関連性を認めなかった.また,実験を行った健常者は温度の変化を知覚した一方で把持力が変化したことを認識していなかったことから,温度の変化に伴う把持力調節は無意識的な調節であることが示唆された.これらの結果により,提案手法,デバイスが温度知覚能力の検査に応用可能であることを示した.次に把持動作についてみられた運動調節が姿勢や状況に依存しないものであるか検証を行った.手掌部における実験では温度と加重の推移に関連はみられなかった.これは把持動作に,「把持した物体を落さない」という明確な目的があるのに対し,手掌部の実験の場合明確な目的がなく加重調節の必要がなかったためと考えた.そこで立位という明確な姿勢調整の必要性を持つ条件を用いたが,温度変化と重心の推移の関係は不明確であった.しかし人間が立位姿勢をとるときの自然な重心動揺が実験条件に近いことから,周期をより大きく変更した実験を行った.その結果,温度変化時にわずかではあるが重心の偏りが生じることが示唆された(第5章).以上のように,本論文は温度感覚のもたらす「温度そのものの知覚」以外の身体作用に注目し,特に医療福祉分野における応用を提案した.温度感覚によって痛覚を生起するという現象を鎮痒に利用できること,温度感覚によって運動調整が生じるという現象を温度知覚機能検査に利用できることを示した.
著者
大坐畠 智 中川 令 山本 嶺
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究では、コンピュータネットワークで用いられているルータのStore-and-Forward転送において輻輳時に起きるキュー遅延をなくすアーキテクチャ、制御を明らかにする。ルータにキャッシュをすることができる情報指向ネットワーク(ICN)を用い、輻輳時には、ルータのインターフェースからパケットをキャッシュに退避することで、常にキューにはパケットがたまらない状況にして遅延が起きないアーキテクチャを明らかにする。さらに、通信(コンテンツ)に優先度をつけ、キューの待ち時間が全くないコンテンツと、キャッシュにコンテンツ一時退避されるコンテンツの間で優先制御を行う仕組みを明らかにする。
著者
見ル野 雄大
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2021-03-25

近年、食品工場全体の自動化が進んでいるが、弁当の生産ラインは未だに大量の人員が必要である。本研究では、深層学習を用いたバラ積み食材のピッキング操作の実現を目指す。ランダムにバラ積みされた食材を撮影したRGB画像に対して、ある一方向から把持が可能な領域を正解ラベルとして与える。物体認識手法のひとつであるセマンティックセグメンテーションを行い、適切な把持領域を学習させる。こうして訓練したネットワークに回転したバラ積み画像を入力し、一方向だけではなく多方向からの識別結果を得る。こうして集まった多方向からの把持候補点のうち、ネットワークが最も強く反応した一点を把持点として選択し、保存する。このような認識手法を組み込み、ただ一つに選定された把持点をロボットアームとその手先に取り付けたトングによって把持しに向かうアルゴリズムを構築した。実験として、対象の食材で学習させたネットワークを用いて、最初に球形の食材としてから揚げを採用し本手法を適用した。次に平たい食材としてレンコンの天ぷらを採用し本手法を適用し、それぞれの食材について手法の有用性を検討した。結果、訓練に使用したから揚げの把持はクレーンゲーム機のように上から掴み上げる動作でバラ積みピッキングを5ケース全てで完遂出来た。レンコンの天ぷらの把持は横からすくい上げる動作を追加することでバラ積みピッキングを10ケース中5ケースで完遂出来た。
著者
渋谷 峻
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2019-03-25

本研究では,仮想物理世界で動作する機械式論理回路を改良し,安定して動作する「歩く論理回路」を実装した.また,論理回路が無数にある環境の中で,回路同士が自然に組み上がる様子を観測し,将来人工生命モデルとして利用できることを提案する. 既存の人工生命の研究では,コンピュータ上に仮想環境を構築し,その中で生命モデルを動作させる手法が取られている.環境を複雑に定義したり,生命モデルを動かす人工知能(AI)を実装することで,複雑なシミュレーションを可能にしている.しかしAI部分は仮想環境の外で予め定義されているため,想定されない環境になった際に適合することは期待できない.しかし生命はそのような進化を実現している.仮にAIそのものを仮想環境内で実装すれば,そのような環境の変化に対応できる人工生命モデルを構築出来る可能性がある. 一方で分子ロボティクスの分野では,分子を使って自己組織化や論理回路が作成されている.未来には体内に入る微細なロボットの実現が期待されるが,例えばDNAを使った反応は遅く複雑な回路を実装する上での問題点を議論するには実験環境が不十分である.仮想空間で実験出来れば,ロボット構築へ向けた技術的課題を先に検討出来る可能性がある. 「歩く論理回路」の先行研究では,仮想物理世界で機械的に動作する論理回路に足パーツを取り付けることで移動可能な回路を実装した.しかし,動作が不安定であり,センサー等の機能は実現出来ていなかった.本研究で実装した歩く回路は,NAND/AND の出力を持った二種類のゲートのみを複数個組み合わせることで,歩くだけでなくセンサー機能も実現している.障害物に衝突すると後退することが出来る.本研究の歩く回路は先行研究のものより安定しており200倍以上高速に動作する. また,磁石のように引き付け合う力を加えることで,環境内で自動的にリングオシレーターのような回路が組みあがることを観測した.今後大規模な環境で評価できれば,動き回るような回路が自然に出来上がり,環境内で進化する回路が生まれてくる可能性もある.本提案は,ほぼ同じ二種類のゲートのみで構成されているため,分子ロボティクスのように自己組織化してロボットを構築するという目的に有効であると考えられる.
著者
岡澤 太志 Taishi Okazawa
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2013-03-25

本研究では,量子通信路のノイズに関する順序について二つの観点で研究を行った.量子通信路とは,入出力系が量子系であるような通信路であり,量子状態を量子状態に変換する通信路である.また,本研究で扱ったノイズに関する順序とは,二つの通信路が与えられたとき,一方の通信路が他方の通信路にさらにノイズを付加した通信路となる関係(degraded order)である.最初に,二つの量子通信路が任意に与えられたと,degraded order の関係が満たされているかどうかを判定する順序判定アルゴリズムを開発した.本論文では,一方の量子通信路に付加的なノイズの量子通信路が加わる状況を考え,付加的なノイズの量子通信路を変えていくことで合成した量子通信路が他方の量子通信路に一致するかどうかを最急降下法により調べた.提案アルゴリズムによる最急降下法では,まずコスト関数を定義し,コスト関数を0に近づけていくように量子通信路を更新していく.その際,量子通信路の定義より,完全正値性,トレース保存の条件を満たしながら量子通信路を更新していく必要がある.完全正値性は,提案アルゴリズムに Kraus 表現を用いたことにより満たされる.トレース保存条件は,Lagrange乗数法により制約条件付きのコスト関数最小化を行うことで満たされるようにした.次に,量子通信路の順序と量子相互情報量の関係について数値実験を行った.量子相互情報量は,量子通信路と入力系の量子状態(密度作用素)が与えられると計算できる.量子相互情報量の単調性より,二つの量子通信路が degraded order の関係を満たすならば,任意の密度作用素について量子相互情報量の大小関係が成り立つ.本論文では,この命題の逆が成立するかどうかをノイズを持つ量子通信路の典型例であるPauli通信路で調べた.その結果,反例として量子相互情報量の大小関係は成り立つが,二つの量子通信路が degraded order の関係を満たさない例を多数見つけた.
著者
酒井 邦秀 ハウザー エリック 金子 克己
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

幼児用の絵本からはじめる英語多読及びその朗読CD による多聴授業により、学生は学校英語を忘れてゼロから英語を英語のまま吸収し始め、一人一人が自分に合った内容とレベルの素材を選んで読み、聞く自律した学習者となった。また、一人一人の多読多聴状況を授業中に教師が英語で質問し、学生がそれに英語で答えることにより、extensive speakingの効果も確認された。また、英語による学生同士のbook talk と、それを書く事により、extensive writingの成果も確認できた。