著者
緒方 秀教
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、科学技術計算におけるポテンシャル問題の数値解法である代用電荷法および双極子法の理論・実験的研究を目的とする。代用電荷法は仮想点電荷のポテンシャルの重ね合わせで解を近似する方法であり、点電荷の代わりに仮想電気双極子のポテンシャルを用いると双極子法を得る。双極子法について双極子配置の仕方に特に研究の重点を置き、円周の等分点を等角写像で写した点に双極子を置く方法がよいことを数値実験により示した。また、代用電荷法・双極子法の複素解析関数近似の応用も行い、理論・実験両面からこの解析関数近似が良い精度を達成することを示した。さらに、関連研究として、佐藤超函数論に基づく数値積分の研究も行った。
著者
山本 野人 中村 健一
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、力学系の研究のための精度保証ツールを開発するため、☆既存の精度保証の技法を再点検してさまざまなテクニックを取り込むこと☆手法の統合や計算効率向上のための新しい理論・技術をつくり出すことを目指し、以下のような研究開発を行った。常微分方程式初期値問題の精度保証法としては、Taylor展開とその打ち切り誤差の評価に基づく方法(Lohner法・TM法など)が主流となっている。これらは時間分割点の上での関数値の包み込みに主眼をおき、時間ステップの進行に伴う特殊な累積誤差(Wrapping Effect)の軽減のために様々な技法が展開されている。これに対し、偏微分方程式の精度保証法である中尾理論を用いても常微分方程式の精度保証を行うことができる。そこで、1)初期値問題に対しstepwiseに中尾理論を適用した場合のWrapping Effectの軽減法2)初期値問題に対し考えている時間範囲の全体に中尾理論を適用した場合に現れる大きなシステムの取扱い3)初期値問題の解の最終時刻における値を包み込むため、境界値問題に対する中尾理論を利用した方法について研究を行い、これらについて3つの海外での国際研究集会をはじめとする複数の国際学会、およびいくつかの国内の研究集会で発表した。研究業績リストには主なもののみを記す。
著者
安部 文紀
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2018-03-23

学術論文の投稿や検索に特化した Web サービスの台頭によって, 論文を大量に入手できるようになった. これに伴い, 「論文を読むべきかどうか判断する機会」と, 概要を思い出すために「論文を読み返す機会」が増えた. 一般的にこのような機会には論文のタイトルやアブストラクトが読まれるが, タイトルとアブストラクトよりも短く, かつ印象に残りやすい文章が論文に付与されていれば, 「論文を読むべきか判断する手間」と「概要を思い出す手間」が軽減することが期待される. そこで本研究では, 論文をタイトルとアブストラクトよりも少ない文章量で, かつ印象に残りやすく要約するために, 古来より親しまれてきた俳句や川柳のような 575 の持つ音韻的読みやすさを付与した要約文が望ましいと考え, 学術論文の新たな要約手段として 575 形式のキャッチフレーズで論文を表現する「575 自動生成手法」を提案する. 575 自動生成手法は, 「特徴語抽出」と「575 候補生成」, 候補絞り込みのための「合議制スコアリング」の 3 つのモジュールから構成される. 特徴語抽出では, 入力する論文における単語の出現頻度に加えて, 論文の持つ意味を加味した単語スコアリングによって特徴語を決定する. 575 候補生成では, ソフトウェア工学関連の学会論文集から人手で作成した 575 を基に, 575 テンプレートを作成し, 特徴語を当てはめることで 575 候補を生成する. 合議制スコアリングでは, 人手で 575 を作成する工程で得た知見を反映させた評価指標によって 575 候補をスコアリングし, 最終的な出力を決定する. 評価実験では, 575 自動生成手法を学術論文に適用したときに自動生成された 575 (論文 575) を用いて, 論文タイトルと比較するユーザスタディを行った結果, タイトルよりも少ない文章量で論文概要を表現できることを確認した. また, 論文 575 から受ける印象を人手生成の 575 と比較したところ, 手製のものより劣る結果となった. そのため, 人間の印象に残りやすい論文 575 を生成する手法の探求を今後の課題とする.
著者
井手 輝二 Teruji Ide
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2016-06-24

近年,無線通信システムにおいては,通信速度の高速化が図られている.第1及び第2世代移動通信システムでは音声通信が中心であったが,第3世代では数Mbpsまで高速化した.現在では第3世代と第4世代が混在しており最大100Mbps程度の高速化が実現している.第5世代移動通信システムが実用化すると想定される2020年頃には第3世代,第4世代,第5世代などの各システムが混在していると予想される.低IF方式受信機は,低IFで増幅度をある程度必要とするようなやや低速のデータ伝送の用途に対応するための狭帯域システムに適している.自営無線システムなどでは,今後も狭帯域システムが使用される場合があるため,低IF方式受信機の使用される用途が存在すると考えられる.zero-IFと低IF方式はハードウエア構成が同じであるため,ソフトウエア無線やコグニティブ無線のようにマルチバンドやマルチシステム対応で適用システムを切り替えるときに,ソフトウエアでzero-IFと低IF方式のどちらかの方式を切り替えることが必要な用途に適している.上記各システムが混在している場合において,周波数帯あるいは広帯域(高速データ伝送)/狭帯域(低速データ伝送)をソフトウエアで切り替えることが容易に可能である.本論文は,低IF方式の受信機において必須の課題であるイメージ信号の抑圧比を向上させるために,位相偏差補償処理及び振幅偏差補償処理をディジタル信号処理により実現する厚生及び処理方式の実現について述べている.位相偏差補償処理及び振幅偏差補償処理については受信機に入力した信号によりブラインド的に位相偏差と振幅偏差を検出して補償する方式と,パイロット信号を位相偏差と振幅偏差を生じるアナログデバイスに入力して,位相偏差と振幅偏差を検出して補償を行う方式に分けられる.補償する方法はフィードバック方式及びフィードフォワード方式,位相偏差と振幅偏差を直接検出して補償する方法と逆行列演算で補償する方法,収束アルゴリズムによる方法等がある.本論文では,収束アルゴリズム等は使用せず演算処理を少なくする方法としてブラインド的に1次の制御ループでフィードバック形式による補償方式,パイロット方式で逆行列でフィードフォワード形式により補償する方法を提案し,その解析及び性能評価を行う.第2章では,従来のイメージ信号抑圧方式を解析して,低IF受信機における位相・振幅偏差のイメージ信号抑圧特性への影響を示し,従来方式の問題点を明らかにする.さらに,提案方式の受信機の構成を検討して示す.第3章では,上記ブラインド的にフィードバック形式により1次の制御ループで補償する方法について,実用的な処理で位相・振幅偏差を検出して補償が出来る事の理論的根拠を示し,提案方式の構成において有効性を評価するために計算機シミュレーション及び実験によりイメージ信号抑圧比(IRR:Image Rejection Ratio)が向上することを確認して,その特性の評価解析を行う.さらに提案方法を実用的なFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の処理に対応するために,固定小数点演算の影響があっても実用的な入力信号範囲(入力信号の振幅の現象又は量子化ビット数の減少)で所要の60dBのIRRが可能であることナラビニ処理負荷を軽減するための近似処理による誤差(劣化)を評価解析する.また,収束時間(時定数)・入力信号の帯域幅と精度(分散)の関係及び2信号特性(希望波とイメージ波)についてもシミュレーション及び実験結果について考察して解析を行う.第4章では,上記パイロット信号を使用してフィードフォワード形式で逆行列演算による補償方式について提案を行い,理論的根拠を示し,提案方式の方法において有効性を評価するために第3章の制御ループによる方法と同様に計算機シミュレーションによりイメージ周波数信号抑圧比が向上することを検証して提案手法の評価解析を行う.パイロット方式では,温度変化等により位相及び振幅偏差が変化した場合においても補償が可能となるように受信信号とパイロット信号を合成して補償する方法の提案方式においてデータを平均する必要があるがその平均するデータ数・受信信号(妨害波)の帯域とIRRとの関係をシミュレーションで確認して解析を行う.第5章では,第3章及び第4章における提案方式であるブラインド方式及びパイロット方式についての比較を行い,通信システムに対する適用性を評価解析する.第6章は結論であり,第2章から第4章までの成果を要約する.
著者
鈴木 和樹
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2019-03-25

本研究では,少林寺拳法における逆突きを題材として,学習支援に用いることを想定した熟練度評価モデルの構築を目指した. まず,計測実験で得られた参加者のデータに対して,事前に熟練者7 名に対して行った調査アンケートで,少林寺拳法において重要とされる指標について調べた.その結果,複数の熟練者が指摘する注目すべき重要な指標を選別した.その後,未経験者群と経験者群,熟練者群の3 つのグループの被験者を対象に,加速度センサーを体に装着させモーションキャプチャも併用して逆突きの計測実験を行った.事前調査の指標に着目して分析を行った結果,全ての指標において未経験者群と経験者群・熟練者群の間で有意な差を確認した.また,一部の指標においては,経験者群と熟練者群の間でも有意な差を確認した.この結果から,経験者が熟練者になるうえで注意を払うべき指標を推定した. 次に,実験によって未経験者群と経験者群・熟練者群の間で有意な差がみられた指標を用いて熟練度評価モデルを提案した.提案した評価モデルは,正規分布の性質を利用して経験者群の平均値を用いて経験者の平均値に近いほど高い点数を,遠いほど低い点数を算出するようにした.この熟練度評価モデルによって正しく参加者の熟練度を評価できるかを検証するために,6 名の熟練度の異なる参加者について熟練者の主観評価との比較実験を行った.結果として,構築した評価モデルは参加者の熟練度が上がるにつれて高い点数を付けることを確認した.また,熟練者の主観評価との平均二乗誤差平方根(RMSE)を算出した結果,熟練者3 人中2 人の評価との誤差が0.9 であり,最も大きな誤差でも2.1 であった.スピアマンの順位相関係数も,各熟練者との間で0.7 以上の強い相関が見られた.このことから,提案の評価モデルが熟練者の主観評価に近い評価を行える可能性を確認し,本研究で用いた熟練度評価モデルの提案手法の有効性が示唆された.
著者
大野 宏 Hiroshi Ohno
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2009-03-24

Although the number of crimes in Japan has decreased since 2003, it is over2,000,000 per year now. In the U.S. and Europe, theoretical studies mainly fromthe aspect of crime-prevention have been proceeding. For example, the crimeprevention through environmental design (CPTED)theory, the crime opportunitytheory, the broken windows theory and other theories were published.On the other hand, security companies have promoted research anddevelopment of alarm systems including various sensors in order to detect anintruder into an office or home. However crime cannot be absolutely avoided inadvance even now.In this paper, shoplifters’ behavior analysis and shoplifting detection are studied.First, reports published by public institutions are surveyed. Second,crime-prevention theories are studied. Third, retired policepersons andplain-clothes security agents against shoplifting were interviewed. Fourth, theexisting measures against shoplifting are surveyed, and their effects andproblems are showed.The existing measures against shoplifting face many problems, and a drasticsolution to shoplifting is required seriously. Therefore, the feasibility of thesystem which effectively identifies shoplifters by itself is studied in this paper.Specifically, the method for identifying shoplifters by using visitors’ behaviorhistories, sales records and camera images is formulated.The following two systems related to visitors’ behavior histories are studied inthis paper. 1) Image processing system using general-purpose cameras 2) IR sensor array systemThe system of 1) had been implemented in a real retail store for 6 months, andvisitors’ behavior histories were checked manually. As a result, the capture ratewas approximately 90 %. Using this system, residence time when purchasing orshoplifting has been measured.In case of 2), behavioral records are measured by the voltage data detected fromthe IR sensor array. The experiment shows that sensors should be fixed on aceiling by bus arrangement. Specifically, up to about 10 sensors can beconnected in a bus line, and the interval between sensors should beapproximately 50 cm.The technique to analyze all recorded image has been applied to the seriouscrime such as homicide. A result of research shows that the method formulatedin this paper is well practicable. If the method formulated here is used, it is mucheasier to check security camera images every day, and undiscovered shopliftingmay be founded. The time for checking security camera images is between 17minutes and 33 minutes per day on the assumption of the following conditions.1) Residence time when purchasing or shoplifting: 10 seconds2) Passing time in front of one commercial product: 1 second3) The number of visitors: 2,000 per dayUsing the method formulated here, employee pilferage which has been missedcan be detected by analyzing whole data recorded all through the day. If a facerecognition system is integrated to the method formulated here, a salesclerk canbe alerted that a shoplifter comes to the shop. Also, if the system detectingshoplifting by behavior pattern matching is put into practice in the future, it willbe possible to detect shoplifting without shoplifters’ criminal records.
著者
大野 宏
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2009

Although the number of crimes in Japan has decreased since 2003, it is over2,000,000 per year now. In the U.S. and Europe, theoretical studies mainly fromthe aspect of crime-prevention have been proceeding. For example, the crimeprevention through environmental design (CPTED)theory, the crime opportunitytheory, the broken windows theory and other theories were published.On the other hand, security companies have promoted research anddevelopment of alarm systems including various sensors in order to detect anintruder into an office or home. However crime cannot be absolutely avoided inadvance even now.In this paper, shoplifters’ behavior analysis and shoplifting detection are studied.First, reports published by public institutions are surveyed. Second,crime-prevention theories are studied. Third, retired policepersons andplain-clothes security agents against shoplifting were interviewed. Fourth, theexisting measures against shoplifting are surveyed, and their effects andproblems are showed.The existing measures against shoplifting face many problems, and a drasticsolution to shoplifting is required seriously. Therefore, the feasibility of thesystem which effectively identifies shoplifters by itself is studied in this paper.Specifically, the method for identifying shoplifters by using visitors’ behaviorhistories, sales records and camera images is formulated.The following two systems related to visitors’ behavior histories are studied inthis paper. 1) Image processing system using general-purpose cameras 2) IR sensor array systemThe system of 1) had been implemented in a real retail store for 6 months, andvisitors’ behavior histories were checked manually. As a result, the capture ratewas approximately 90 %. Using this system, residence time when purchasing orshoplifting has been measured.In case of 2), behavioral records are measured by the voltage data detected fromthe IR sensor array. The experiment shows that sensors should be fixed on aceiling by bus arrangement. Specifically, up to about 10 sensors can beconnected in a bus line, and the interval between sensors should beapproximately 50 cm.The technique to analyze all recorded image has been applied to the seriouscrime such as homicide. A result of research shows that the method formulatedin this paper is well practicable. If the method formulated here is used, it is mucheasier to check security camera images every day, and undiscovered shopliftingmay be founded. The time for checking security camera images is between 17minutes and 33 minutes per day on the assumption of the following conditions.1) Residence time when purchasing or shoplifting: 10 seconds2) Passing time in front of one commercial product: 1 second3) The number of visitors: 2,000 per dayUsing the method formulated here, employee pilferage which has been missedcan be detected by analyzing whole data recorded all through the day. If a facerecognition system is integrated to the method formulated here, a salesclerk canbe alerted that a shoplifter comes to the shop. Also, if the system detectingshoplifting by behavior pattern matching is put into practice in the future, it willbe possible to detect shoplifting without shoplifters’ criminal records.
著者
笹倉 理子 赤澤 紀子 吉田 史明 鈴木 勝
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.61-67, 2019-02-01

“High School Student Global School” conducted by Three National Universities in Western Tokyo is an interdisciplinary sciences-humanities program for senior high school students to build global talent that integrates both sciences and humanities. This report presents the educational program implemented thus far by the University of Electro-Communications in High School Student Global School.
著者
蜂須 拓 Taku Hachisu
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2015-03-25

物体に触れた際の体験を再現する触覚インタラクションの設計・開発はバーチャルリアリティの体験の質を向上する手段として注目されている.一方で,視聴覚と比較して触覚研究の歴史は浅く,質の高い触覚インタラクションの設計・開発は発展途上であるといえる.触覚インタラクションの設計・開発のアプローチに現象を忠実に再現する写実的なアプローチがある.しかし,写実的な触覚インタラクションは現象の再現性は高いものの,現実に起こりうる体験しか表現できない.また,視聴覚と比較して触覚から得られる情報は不明瞭であり,感覚統合において劣位に扱われてしまう.以上から,現象の再現性が必ずしも必要なく,幅広い表現や体験の明瞭さが重要であるエンタテインメント等での触覚インタラクションの応用を考えた際,写実的なアプローチとは別のアプローチが必要であるといえる.これに対し,著者は漫画やアニメーションで用いられる誇張表現の概念を触覚インタラクションの設計・開発に適用することを考えた.漫画やアニメーションでは現実を基に大げさに描くという誇張表現を用いて,視聴者に非現実的ではあるがもっともらしいという印象(本論文では実感性と定義)を与える.本論文は誇張表現の概念を触覚インタラクションの設計・開発に適用することで,再現性は高くないが実感性に優れた触覚インタラクションを設計・開発することを目的とする.これにより,触覚インタラクションの表現の幅の拡張,および分かりやすく実感性のあるも体験の実現を期待する.また,設計・開発した触覚インタラクションを総括することで誇張表現に基づいた触覚インタラクションの実感性を向上させるための要件を明らかにする.本論文では,まず誇張表現の論理構造を見いだし,3つの論理モデルを設定する.次に,3つのモデルを基に8つの触覚インタラクションの設計・開発に関する研究について述べる.各研究では,個別の研究背景および目的について述べ,触覚インタラクションを実装し,目的に則した評価によって個々の有効性を検証する.そして,設計・開発した触覚インタラクションおよびモデルを総括し,実感性を向上させるための要件を明らかにする.本論文は全6章から構成され,内容の要旨は以下のとおりである.第1章では,まず触覚インタラクションが注目されるようになった背景について述べ,写実的アプローチの限界について指摘する.次に,漫画やアニメーションに見られる誇張表現について述べ,本論文の目的として「誇張表現に基づいた触覚インタラクションの設計・開発」および「誇張表現に基づいた触覚インタラクションの実感性を向上するための要件を明らかにすること」を設定する.そして,誇張表現の論理的な分類を行い,触覚インタラクションの設計・開発の指針とするための3つのモデル(代替モデル,変調モデル,重畳モデル)を見いだす.代替モデルでは,感覚Aを別の感覚Bに置換して提示する.変調モデルでは,感覚Aに操作kを加えて変調し提示する.重畳モデルでは,感覚Aに別の感覚Bを提示して重畳する.第2章では,本論文で扱う触覚について定義する.触覚に関する基礎的な生理学的,心理学的知見に関して述べ,次章以降で述べる触覚インタラクションの設計・開発において必要な知見を共有する.第3章では,代替モデルに基づいた2つの触覚インタラクションの設計・開発について述べる.1つ目は肘部の屈伸運動に伴ってロータリスイッチを回した時に生じる周期的な触覚フィードバック(カチカチ感)を提示するカチカチ感提示装置の設計・開発である.本装置によって視覚的運動知覚が困難な状況において触覚的運動知覚を拡張することでユーザの身体姿勢の制御の向上を試みる.2つ目は視覚から材質感を提示する手法VisualVibrationの設計・開発である.本手法では,現実では聴覚・触覚で感じられる高周波数振動を視覚で感じられるように変調して疑似触覚提示を行う.本手法のケーススタディとして物体を叩いた時に生じる振動を取り上げ,視覚的な振動提示による材質感提示を試みる.第4章では,変調モデルに基づいた3つの触覚インタラクションの設計・開発について述べる.1つ目は叩き動作に対して振動提示することでタッチスクリーンが異なる材質になったかのような体験を提供するHaCHIStick&HACHIStackの設計・開発である.本システムは時間応答性に優れており,叩いた瞬間に振動提示が可能である.そのため,ユーザにとっては叩いた対象の材質が変わったように感じられる.2つ目は歯磨き音を変調して提示することで歯磨きの快感および達成感を増強する拡張歯ブラシの設計・開発である.羊皮紙錯覚(手を擦った際に生じる音の高周波成分を強調すると手のひらが乾いた紙のように感じられる)を利用して汚れている,美化されているといった歯の状態を疑似的に再現し,歯磨きの体験を拡張する.3つ目は徳利を傾けた際に内容液の流出によるトクトクという振動(トクトク感)提示の設計・開発である.実際に徳利から液体が流出する際に生じる振動を計測,モデリングし,実際に液体を注ぐことなくトクトク感を再現する.実験的に構築した振動モデルをもとに,粘性感および残量感を再現する.第5章では,重畳モデルに基づいた3つの触覚インタラクションの設計・開発について述べる.1つ目は前章で述べたトクトク感を実際のペットボトルで液体を注ぐ動作に重畳するトクトク感重畳の設計・開発である.トクトク感重畳による注がれる液体の量の錯誤効果を示し,飲食体験の触覚的演出の可能性を示す.2つ目は関節部の屈伸運動に伴って振動を提示することで関節が異なる材質になったかのような体験を提供するJointonationの設計・開発である.本システムによって,サイエンスフィクションに登場するゴム人間やロボットに視聴覚に加え触覚的にも変身したかのような体験を提供する.3つ目はタッチスクリーン上でのユーザの動作に対して引力提示を行う装置VacuumTouchの設計・開発である.本装置は引力提示によってタッチスクリーン上に摩擦感を重畳する.これにより例えばタッチスクリーン上に擬似的な引っかかりをつくりだし,ユーザの操作の補助を行う.第6章では,3つの誇張表現の論理モデルおよび8つの触覚インタラクションに関する研究を総括する.各々の研究を再評価し,課題を整理することで誇張表現に基づいた触覚インタラクションの実感性向上のための要件を明らかにする.そして,本論文の成果を基に誇張表現に基づいた触覚インタラクションの設計・開発に関する研究の今後の展望について論じる.
著者
河村 暁子 Akiko Kohmura
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2006-03-23

設計・試作したアンテナの動作解明や,不要な電磁波放射源の特定及び評価・対策のために,金属線上の電流分布を推定する技術が求められている.このような電流分布推定の要求は,例えば付属回路の動作不良のような実用の過程で起こる問題によるものであり,計算における理想状態のシミュレーションだけでは解決できず,測定による検討が欠かせない.しかしながら,金属線にセンサなどを接触させれば本来の振る舞いを妨げることとなるため,直接的に測定することが難しい.本論文では,近傍磁界の測定結果からアンテナがある一定周波数で励振された場合の電流分布の振幅と位相あるいは実数部と虚数部(複素電流分布)を推定するための手法を提案し,具体的な検討をシミュレーション計算と測定により行い,推定法の有効性を確かめることを目的としている.本論文で用いる複素電流分布推定法の基本原理は,% 方程式より導かれる微小電流要素がつくる近傍電磁界の式に基づく.対象とする電流を,均一な電流分布を持つ微小セグメントの集まりとすれば,近傍磁界はそれぞれのセグメントがつくる磁界の和として表わされ,電流とその近傍磁界は連立- 次方程式の形で関係付けられる.よって,近傍磁界の振幅と位相の分布を測定すれば,電流と磁界の関係式を解くことで複素電流分布を推定できる.この推定法では,電流と磁界の関係式の逆問題を安定に解くために,できるだけ誤差の少ない磁界データを適用することが重要となる.そこで,近傍磁界測定のための磁界センサとして,シールデッドループ構造の. 出力磁界プローブを新たに導入する.この微小ループプローブは,ループ面内でほぼ無指向性であることから,電流分布推定の目的に適している.さらに,このプローブの計測用アンテナとしての特性である磁界複素アンテナ係数"" % ' & ( # の新しい決定法を提案する.磁界複素アンテナ係数は,到来磁界とアンテナの出力の比であり,この係数を正しく決定することは,磁界を適切に測定し正確な電流分布を推定するために重要である.提案する方法は,プローブ全体の等価回路表現に基づき,ループ部の実効長を計算し,出力ポートの反射係数を測定することにより,簡単にアンテナ係数を決定できる.電流分布推定を実際に行うにあたり,検討の第- 段階として単純な構造の線状ダイポールアンテナのアンテナエレメント上に存在する電流を対象とした推定について述べる.特性を決定したシールデッドループ構造の. 出力磁界プローブを用いて近傍磁界の測定を行い,複素電流分布を推定した.近傍磁界の測定に際し,プローブは対象とする電流に影響を及ぼさず,かつ十分な感度の出力を得られる位置で走査する必要がある.その適切な走査位置や間隔を,プローブ形状を考慮し実効長の定義より磁界分布を求めるシミュレーション計算により検討し決定した.推定した電流分布に対し,分布の形状だけでなく絶対的な値を含めた妥当性の確認を,モーメント法による理論的な電流分布(理論電流分布)との比較より行った.このとき,近傍磁界の測定にネットワークアナライザを用い,ダイポールアンテナの励振電圧を理論電流分布と等しい条件で比較できるようにする手法を開発した.比較の結果,本論文で提案した電流分布推定法が,複素電流分布の実数部・虚数部の形状のみならず絶対的な値まで推定できることを確認した.さらに,複素電流分布推定法の妥当性を確認できたことをふまえ,ダイポールアンテナの給電線路の外導体上に漏洩する電流の推定を行った.これより,本推定法が漏洩電流のような微弱な電流に対しても適用可能で,アンテナの動作解明や不要電磁波の放射源の特定に有効であることを明らかにした.最後に,本推定手法の対象を. 次元的に分布する電流に拡張するための検討を,. エレメント八木アンテナを対象に行った.近傍磁界測定において微小ループ構造の磁界プローブに多方向から合成された磁界が到来しても,ループを垂直に貫く方向の磁界成分のみが測定されることを考慮すれば,本推定手法が適用可能であり,各エレメント上の複素電流分布を求められることを示した.この結果は,プリントアンテナなどを対象とする一般的な. 次元電流分布推定の基礎となり得るものである.
著者
小久保 啓弘 Akihiro Kokubo
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2013-03-25

2012年の7月に首都大の水口らによりBi4O4S3に電子ドープをすることにより、超伝導状態が発現されることが発見された。この物質はBiS2層を持つ層状構造を有しており、その後同様にBiS2層を持つ物質、REO1-xFxBiS2(RE=La,Ce,Pr,Nd)などの物質も超伝導になることが発見された(TcはLaにおいて最大10.6K)。このことからBiS2層が超伝導の本質である可能性が高い。銅酸化物や鉄系超伝導に続く、層状超伝導体の新しいファミリーの発見であることから注目を集めている。2次元性が高いという点においては銅酸化物や鉄系超伝導と似ており、非従来型超伝導メカニズムの可能性にも興味が持たれるが、発見されて日が浅いこともあり、超伝導発現機構に関しては様々な議論がなされているが、結論は出ていない。BiS2層が超伝導の本質にどのように関わっているか調べるため、本研究では結晶構造が単純でTcの高いLaO1-xFxBiS2に着目した。第一原理バンド計算からバンド構造を求め、最局在Wannier関数を用いてBiS2層の6p軌道とSの3p軌道を考慮した2次元4軌道有効模型と、Sの効果を有効的に取り込んだ2次元2軌道模型を構築した。それぞれの模型に対して乱雑位相近似(RPA)を適用し、バンドフィリングを変えつつ磁気感受率及び超伝導ギャップを計算した。結果としては、バンドフィリングを増やしていくとフェルミ面の形が変化し、ネスティングベクトルが変化する(図1)。それに伴い磁気揺らぎが変化しTcが最大となるx=0.5において強い強磁性的な揺らぎが発達することがわかった。超伝導ギャップに関しては拡張s波、dx2-y2波、dxy波の3種類の対称性を想定し計算を行い、これらの対称性に対する線形Eliashberg方程式の固有値λの値を求め比較した(図2)。これより、どのバンドフィリングにおいても拡張s波とd波の値が同程度の大きさを持っており、競合していることがわかった。複数の対称性の虚号は、Tcを下げる要因となっている可能性があると考えられる。
著者
上野 友稔
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.55-59, 2015-02-27

The University of Electro-Communications, by using the discovery service "Summon" of ProQuest, started to provide "Global Material Search (Beta)" from April 2014. By using the "Global Material Search (Beta)", users can search academic materials including books, journals, electric journals, databases, and so on at our university. In this paper, we introduce the history and features of the "Global Material Search (Beta)". In addition, we discuss a development to be able to search by integrating the paper materials and electronic materials, such as books and journals, and two suggestions about the academic search system, such as the service improvement by visualization of subscription information of the electronic resources and the search improvement of the introduction of personalized search.
著者
田中 晃平
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2014-02-05

卓球ボールは半径2cmと小さく, 質量2.7gと軽量である. また, ボールとラケットラバーとの摩擦が大きいのでボールに回転をかけやすい. ほかの球技に比べて競技中の無次元速度(Re?1.0×?10?^5)は低く, 無次元回転数(SP?2)が大きくなるのが特徴である. そのため, Re数, SP, 回転軸が空気力(抵抗と揚力)に大きく影響し, 重力を凌駕して飛翔軌道を変化させる. 一般にトップスピンボール(ドライブ)には鉛直下向きの, バックスピンボール(カット)には鉛直上向きのマグナス力が働くことが知られている. 一方, Tanedaの水槽実験ではマグナス力の方向が逆転する「負のマグナス効果」が観測されるパラメーター領域の存在が示された. Tanedaの提唱した「負のマグナス効果」の領域はRe=5.0×?10?^4まで広がっている. 卓球競技中に「負のマグナス効果」が発生するとなると, 競技者による球種の選択に重大な影響を及ぼす可能性が生じる. スポーツ流体力学の観点からも低Re 数領域での「負のマグナス効果」の詳細が注目される. 本論文では, Re 数, SP, 回転軸が空力に及ぼす影響を調査するため, 3ローター式発射装置により発射された卓球ボールの飛翔軌道を, 高速度ビデオカメラを用いて撮影し, 卓球ボールの抗力係数C_D , 揚力係数C_LZを計測した. Nittaku社製の卓球ボール(真球)を試験球とし, 卓球競技で想定されるRe 数とSP領域で, C_D, C_LZ のRe 数依存性, SP 依存性, 回転軸依存性を調査した. バックスピンする卓球ボールに対する2.0×?10?^4?Re?9.0×?10?^4 のSP 依存性を測定した結果, C_LZ<0となる領域はなかったが, Re=9.0×?10?^4ではSP=0.5でC_LZ?0となることを確認した. 卓球競技で想定されるRe 数領域で「負のマグナス効果」が発生しないが, C_LZ はSP の単調な増加関数でないことを見い出した. また, SPを固定してRe 数依存性を調べた. SP=0.5の場合, C_D, C_LZ ともにRe 数が増加するにつれて減少した. SP=1.0 の場合, Re 数が増加するにつれてC_D は減少し, C_LZ は増加した. 次に回転軸を水平面内の様々な角度に設定した. SP=0.34,θ=0°,30°,45°,90° におけるRe 数依存性は, C_D はほぼ一定で, C_LZ はRe 数が増加するにつれて減少した. また, Re=3.0×?10?^4,5.0×?10?^4におけるC_D, C_LZ の回転軸θ 依存性を測定した結果, C_D はほぼ一定で, C_LZ は回転軸が0°から傾くにつれて緩やかに増加し, 45°?θ?60°付近から一定となった. 以上のように, 飛翔実験では「負のマグナス効果」は発生せず, Tanedaの水槽実験や小西らの風洞実験結果とは一致しなかった. 逆に小西らの風洞実験結果から準定常性を仮定して飛翔軌道を求めてみても, 本実験結果は再現できないことがわかり, 現象の非定常性の重要性が示唆される結果となった.
著者
姜 銀来 横井 浩史
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

障碍者にも容易に使えて安定的なsEMG(表面筋電図)信号を計測できる計測法は、sEMGを制御信号とする福祉機器の実用化のための重要な課題である.本研究は、材料科学と電子工学と情報工学との複合領域的なアプローチで実用性の高いsEMG計測・解析法を開発する.H29年度は,電極の材料において,導電性カーボンブラックを混入したシリコンゴムを用いた、柔軟な筋電電極を開発と基本性能の評価を行った.カーボンブラックの濃度を変えることで、筋電電極の導電性を調整し、導電性と計測された信号のSN比との関係を調べた.電極の導電性が高いほど良いことではなく、最適濃度が2~3%の間になることが分かった.また,金メッキ線と導電性シリコンをハイブリッドした電極を開発し,より安定的な筋電信号計測を実現した.筋電信号計測回路において,信号源インピーダンスの影響を調べるために、小型インピーダンス計測装置を開発し、筋電とインピーダンスとの同時計測を実現した.信号源インピーダンスに基づいた電極配置の探索、及び筋電信号の評価が可能となった.また,インピーダンスと筋電信号との両方を利用したマルチモーダルな識別方法の構築も可能となった.筋電信号の解析において,筋電信号の経時的変化に対応するために群知能を利用した新しい筋電識別法を構築した.筋電義手の制御に想定される7動作(安静,握り,開き,掌屈,背屈,手首の回内,回外)を用いた評価実験を行た結果,パラメータの最適化により,筋電義手を制御するための筋電信号を高精度で識別できることが確認された.
著者
佐々木 豊史 宮崎 浩一
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.21-32, 2005-01-31

In this article, we examine whether bad news on a company impacts on the correlations betweenthe equity return of the company and those of other companies based on the Japanese equity datain 1997, when some of major financial institutions bankrupted. We define "contagion" or "exclusion" as a significant increase or decrease, respectively, in the correlation after the announcement of thebad news. Our major findings are (1) whether the effect of the bad news is "contagion" or "exclusion" basically depends upon the nature of the bad news, (2) heteroskedasticity in thecorrelation has some influence on the identification of the bad news effect and it is important toadjust the heteroskedasticity in the correlation to correctly identify the effect.
著者
斉藤 昭
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2017年度の目標として(1)より単一モードに近い放射パターンを有するアンテナの開発継続、(2) 受信メカニズムの解析 (3)集中定数素子を用いたOAMモード次数の制御の3点を挙げた。(1)のモード単一性改善に関しては、電流分布をフーリエ展開した展開係数を単一にする検討を行った。この展開係数は、OAM各次数に関する自己インピーダンスの絶対値の逆数に比例することから、自己インピーダンス虚部が0となるようにすることで単一に近づくが、さらに実部も低下させると一層単一性が改善する。4素子ループアンテナアレイに5mm間隔で近接して反射板を設けた構成を解析し、所望のOAMモードと他のモードの放射電力比が27dB以上とほぼ単一モードとなることを、下記(2)の項目で開発した解析プログラムを用いて示した。また、この1対の4素子アレイを送信・受信に用い、通信距離3cmで所望のモードの通過が他モード(干渉波)と比べ、シミュレーションで28dB以上、実測でも19dB以上大きいことを確認した。(2)の受信メカニズムの解析に関しては、ループアレイ間の通過特性を次数ごとに解析できる、一般化Z行列の手法を用いて解析した。数値計算ソフトMathematica上にこの解析プログラムを作成した。また一般化Z行列の解析から、OAM多重度はループ半径が同じでも2つの自由度があることを導出し、数値計算でループ半径数の2倍のOAM多重度が実現できることを解明した。(3)の集中定数素子を用いたOAMモード次数制御に関しては、ループアンテナ内に容量を複数配置した構成をシミュレーションで検討した。容量を最適化することで、異なるループ半径で通過が大きくできた。しかし、容量がなく同じループ半径間の通過と比べると通過量が小さく性能が劣った。来年度は、性能とループ半径制御性の両面を勘案し有用性を判断する。
著者
三浦 清美
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.21-47, 2016-02-01

Apocryphas are, in biblical literature, works outside accepted canon of the scripture. They arrived in medieval Russia through Slavonic translation of Byzantine literature. The author in this bulletin provides the translations and the commentary of following five medieval slavonic apocryphas. Their outlines are as follows:(1) A Story of Akir the wise: Akir, an able minister and counsellor of Assyrian Empire, had been plotted by his nephew and sentenced to death by his king. However, a friend of Akir gave him shelter in his own house. In absence of Akir an Egyptian pharaoh gave hard problems to the Assyrian king and threatened to send troops if Assyrians could not solve them. The Akir's friend confessed to their king that Akir was alive and Akir, who was then forgiven, solved the pharaoh's problems. Akir took revenge on his nephew. The minister Akir was mentioned in "the Book of Tobit" of the Old Testament.(2) An Eriphery's Story of twelve Fridays: Friday is a special day for Christians because Jesus Christ was crucified on Friday. This story explains why and how in a calendar twelve special Fridays should be venerated.(3) A Story of Melchizedek: Melchizedek, "a king of justice" in Hebrew, is an enigmatic character in Holy Scripture. This story describes how Melchizedek was born and hidden in the background of Holy Scripture.(4) An Aphroditian's Story: The episode of the arrival of three magi is popular theme of the New Testament. This story is based on that episode of the Holy Scripture, and describes how in the East, that is, in Persia three wise men came to be sent to Bethlehem to celebrate the birth of Jesus Christ. (5) A Story on the King Abgal: Abgal, a king of Edessa in Osroena kingdom, was suffering from leprosy, and wished Jesus Christ to come to Edessa to realize a miracle. Jesus, instead of himself coming, sent him a towel, with which Jesus wiped his face and in which the shape of his face was left. This was believed in the Christian world to be the first icon of the Savior. This story is the incarnation of the idea on icons "acheiropoietos = made not by human hands".