著者
猪飼 維斗 Masato Ikai
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2017-03-24

今日,コンピュータの進歩によって様々な場面でシミュレーションを用いた検証や予測が生かされている.シミュレーションは対象の解明,理解,予測などの目的で用いられる. シミュレーションにおけるモデルは,対象に対する理解を目に見える形で実現したものである. 従来,このモデルの実現はプログラムなどを用いて構築されてきた.シミュレーションの目的を達するためにはモデルの理解・共有性が必要とされ,それらを実現するためにグラフィカルなモデル構築を可能とするシミュレーションシステムが提案されてきた. モデルの構築は,モデル化対象への理解を自然言語などをもちいて表現した概念モデルを,プログラムや専用のスクリプトなどで記述し,実際に動作することのできる実装レベルのモデルで実現していく作業となる. 既存のシミュレーションシステムではモデルを作成するユーザが,システムが与えた枠組みに合わせて概念モデルを細分化,詳細化していく必要があった.そのため,モデル作成者は対象に対する理解とは別にシミュレーション手法への十分な知識や技術が要求されていた. そこで本研究ではシミュレーション手法に対して熟達していないユーザがモデルを作成する際に,自分の持つ知見や経験則を,容易にモデルへと落としこめるようなシステムとして「User-Friendly Simulator for Open Modeling」を開発することにした.モデルをホワイトボックスに作成することでモデルの理解や共有をしやすくし,また部分モデルをメタ的に管理する構造によって各モデルの把握を容易にする. さらに,ユーザにとってモデルの作成が容易であるかどうかを比較するための基準として,モデル作成時の思考時間に着目し,他の従来のシミュレーションシステムと比較検討を行った. 従来,シミュレーションシステム間での比較は, ・各システムがどのようなモデルを実現できる機能を持っているか ・どのようなモデルがどれくらいの速度で動作するかといった機能面での比較が行われていた. これに対しユーザビリティの側面からも評価を行うことで,モデルを作成するユーザがより適切なシミュレーションシステムを選択する助けとなるであろう. 第1 章では,本研究の背景や目的などについて説明すると共に,本論文の構成について概説する. 第2 章では,マルチエージェント型シミュレーションシステムの概略と本研究で提案するシステムについて述べる. マルチエージェント型シミュレーションには様々なシステムがあり,汎用に用いることができるものであっても,モデル作成のための方法論や,実装に用いられる言語などによってその特性が異なる.代表的な汎用シミュレーションシステムについて触れ,それぞれの特徴を述べるとともに,本研究で提案するシステムの意義について述べる. 第3 章では,本研究で提案したシミュレーションシステムがどのようにしてユーザのモデル作成を支援するのかを解説し,システムを構成する各機能とユーザのモデル作成への影響について述べる. ・モデル作成者の経験則をモデルに取り込むFuzzy 推論の採用 ・ホワイトボックスな実装レベルのモデル構造 ・シームレスな上下分離構造 の3 つの機能によって,ユーザのモデル作成を支援する. モデルを構成する最小単位のプロセッサにFuzzy 推論を可能とするFIU を採用することで,言語真理値を用いた自然言語やヒューリスティックのスムーズなモデル化を実現した. CBRFはFIU によって記述されるグラフィカルなモデルで,従来概念モデルだけであったグラフィカルなモデル構築を実際に動作するレベルでも行うことを可能としている.ここで用いられているプロセッサは2 つの入力から1 つの出力を得るものであり,これを多段階に連ねる構造は,一般的な人間の判断構造を表現することに適していると思われる.また,CBRFを部分モデルとして管理するPWCとCBRFという二重のインスタンス構造によって,モデル作成者が任意の段階で実装レベルのモデルを構築・管理することを可能としている. 第4 章では,本研究で提案したシミュレーションシステムでの具体的なモデル作成について議論する.さらに第3 章で述べたモデル作成の容易さについて,実現例をもとに述べる. 湯量調整モデルでは,Fuzzy 推論によって各エージェントの要求湯量を演算し,情報制限下での競合をモデル化している.エージェントの判断をFuzzy 推論によってモデル化することで制御モデルを容易に実現している. 入札行動モデルでは,人間の意思決定モデルを記述し,CBRFによるホワイトボックスなモデル構造の利点について述べている. 周囲の情報を取得し2 次元平面上を移動するモデルでは,シームレスなモデルの分割管理について述べている. 第5 章では,シミュレーションシステムでのモデル構築の容易性に対する新たな評価手法を提案し,その効果について述べる.従来の評価法と異なり,ユーザビリティの計測手法を援用することで,モデル構築容易性を定量的に評価することを試みる. GOMS-KLM 法によって動作の作業量を推定するとともに,総作業時間をもとに課題作業中の思考時間を推定した.推定した思考時間に着目して評価を行うことでユーザの実感としての作業への満足度に近しい評価を可能とした. 第6 章では,第5 章で提案した評価手法を複数のシステムを対象にした比較実験を行い,その結果について述べる.有効性と合わせた比較の結果,今回の課題に対してはUFSfOMが有効であるという結果を得た. 最後の第7 章では,この研究で得られた成果と知見を総括し,将来への展望を考察する. 本研究では,モデル作成を行うユーザが自身の考えたモデルを実現し,理解,共有できるモデル構築プラットホームをもち,その構造をそのまま実行することのできるシミュレーションシステムを実現した. ホワイトボックスなモデル構築によって,実装レベルからグラフィカルなモデル構築を可能とする一方,モデルが大型化してしまうことで視認性が妨げられる問題に対して,PWCによるシームレスな管理システムによってモデルの視認性を維持したまま,より複雑なモデル構築を行えるようになった. さらに従来は比較が難しかったシミュレーションシステムのモデル構築機能のユーザビリティ側面について,定量的に比較する手法を提案した.またGUI の採用によって総作業時間が多いシステムであっても,思考時間で比較した場合は大きな差がなく,より主観的な評価に近いという知見を得た.提案手法による比較の結果,提案システムは効率性において他のシステムに劣らず有効性においては他のシステムよりも有効であるという結果を得た. また本シミュレータションシステムによってシミュレーションによく用いられる典型的なモデルの機能を実現し,これらの作成例を通して,本シミュレーションシステムの機能がどのような場面で有効かを明らかにした.
著者
関井 祐介
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2017-03-24

声質変換は,入力音声を目的話者の声質に変換する技術である.声質変換手法として,従来はGaussian Mixture Model(GMM)を用いた手法がよく用いられていたが,近年のDeep Learning に関する技術の台頭により,Deep Neural Network(DNN)を用いた声質手法が注目されている.しかし,GMM やDNN を用いた手法の多くは一対一の声質変換手法を提案しており,任意話者の入力に対応した研究は少なく,従来の任意話者の声質変換手法は,一対一声質変換と比べ変換精度が劣ってしまうという問題がある.また,従来のDNN を用いた声質変換手法では,一対一変換および多対一変換において複雑なネットワークを用いるため,多くの訓練データが必要となり,かつ変換に要する時間が長くなるという問題がある. 本研究では,これらの問題を解決するため,オートエンコーダおよびスパースオートエンコーダを用いた声質変換手法を提案する.提案手法では,オートエンコーダで次元圧縮した高次特徴量を目的話者の高次特徴量へDNN で変換し,目的話者のオートエンコーダを用いて音響特徴量に復元する.評価実験では,提案手法と従来手法を比較し,オートエンコーダを用いた手法は従来手法よりも若干高い精度でスペクトル変換を行い,変換時間を短縮することができた.スパースオートエンコーダを用いた手法では,オートエンコーダを用いた提案手法と比べ,スペクトル変換精度の向上および変換した音声の自然性を改善し,任意話者の声質変換精度を向上させることができた.
著者
鈴木 邦夫
出版者
電気通信大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

戦前日本の総合商社は、日本国内と世界各地に支店網を張り巡らし、商品相場、売れ行き、生産、金利、新製造法(特許)などに関する情報を収集していた。本研究では、この総合商社に焦点をあて、第1に、商社がどのような情報網を形成し、どのような情報を収集し、これを伝達したのか、第2に商社が形成した情報収集・伝達網が商品取引などをどのように変化させるに至ったかを分析した。そのさい、とくに三井物産に焦点をあてて分析をおこなった。具体的には、財団法人三井文庫で三井物産の内部資料を閲覧し、三井物産の情報網と情報の伝達について分析をおこなった。その結果、利用媒体、情報の機密保持と情報コスト削減の方法、情報収集の方法、情報の処理・分析組織の形成などに関して、かなりの程度まで実態を明らかにすることができた。また、収集された情報が商品取引や組織のあり方に与えた影響などについても、分析を深めることができた。上記の三井物産の分析を補強するため、三井物産を含む総合商社一般の資料に関して、名古屋、京都、大阪の大学図書館ないし公立図書館で資料調査をおこなった。また、情報に関連する図書を購入し、分析に役立てた。
著者
星 守 小早川 倫広
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題では, MPEG-4 audioの圧縮過程から算出されるパラメータ,あるいは楽曲圧縮データのビットストリームに格納されているパラメータを用いた楽曲アノテーションに関する研究を実施した.本研究課題の成果として, 1)圧縮過程で算出される自己相関係数系列を用いた楽曲の構造分析手法, 2)ビットストリームに格納されたLSPパラメータから算出されるLPCケプストラム系列を用いた楽曲のジャンル分類手法, 3)ビットストリームに格納されたLSPパラメータ系列を用いた楽曲に対する印象語付与手法の提案を行った.
著者
金子 正秀
出版者
電気通信大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

顔特徴・顔印象の定量的解析手法を利用した顔認知機能の解明について、以下の研究を行った。1.2つの異なる顔に対する似ているか否かの判断に係る顔認知親子の顔の類似性に対する主成分分析による定量的比較に関して、年齢印象操作による方法と顔部品特徴による方法を検討した。年齢印象操作による方法では、子供の顔に対して大人への年齢印象操作を行った上で親(大人)の顔と比較することにより、親子の顔を直接比較する場合に比べ、類似性評価の精度を向上することができた。顔部品特徴による方法では、子供と大人(親)の2つのグループに分け、各々の固有空間で顔特徴解析を行うことにより、各グループの中で入力顔特徴を定量化した。定量化された顔特徴を言葉による顔特徴記述に置換え、顔部品ごとの類似比較を行い、その結果を統合することにより親子の顔の類似性を柔軟に評価できるようにした。また、車のフロントフェースについて、各部品形状、配置に関する固有空間を求め、人間の顔に対してと同様に、対話的に特徴解析、特徴操作を行うための基礎的システムを構築した。2.顔の3次元形状に対する認知の仕組みの解明ステレオ画像計測により顔部分の3次元形状を取得するシステムの整備を行った。また、正面顔とは異なる典型的な例として横顔を取上げ、主成分分析を用いて横顔特徴の定量的分析を行った。正面顔に対してと同様の横顔特徴解析ツールの構築を進めた。また、どの主成分にどの様な横顔特徴が表れているのかを調べた。3.顔特徴・顔印象の定量的解析及び顔画像生成ツールの機能の拡充Bag of Words手法を顔による個人認識及び表情認識に適用する方法を考案し、従来の認識手法に比べて撮影条件の違いに頑健でかつ認識性能が高いことを実験により確認した。また、GPGPUによる並列演算を利用して顔特徴点の検出処理の高速化を図り、顔特徴点の検出から似顔絵生成までを実時間で行えるようにした。
著者
田中 健一
出版者
電気通信大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

施設配置問題は,都市における様々な施設を対象空間にどのように配置すれば利用者や施設経営者にとって望ましいかを追求する問題であり,これまでに様々な研究がなされてきた.本研究では,施設配置問題に時間軸を導入し,時空間的な人の流れを所与とし,施設の配置の決定と同時に望ましいサービス提供時間帯も決定する新しいモデルを開発した.また,基本モデルのいくつかの拡張モデルを考案した.さらに,首都圏鉄道網を対象とし,実流動データを用いて,多くの人がアクセスし易いサービス提供方法の分析を行った.
著者
出澤 正徳 施 衛富
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の最終目標は、錯視現象を心理学的プローブとして、人間の視覚システムの3次元空間知覚メカニズムを探り、その数理的モデルを構成し、視覚メカニズムの解明に貢献することである。特に、視覚刺激が運動する場合についての新しい錯視現象を探索し、従来には全く予想できなかった新しい現象が見出された。相関をもって運動する複数物体が群としての運動と群内での相対運動として知覚される現象が見出され、剛体条件や軌道条件等、脳内の表現をより単純化する表現単純化原理の作用を推測させる。また、両眼立体視において斑点状視覚刺激を運動させたとき、静止時には全く知覚できない視覚刺激の運動とは異なった表面構造の運動(構成的運動)が知覚される現象が見出された。新たに見出されたパントマイム効果では3種類(全面支持、背面支持、側面支持)の手がかりが考えられ、体積的な透明知覚に側面支持手がかりが不可欠であること、また、従来の多層ランダムドットステレオグラムにおける透明視とは本質的に異なるものであることが確かめられた。さらに、視覚刺激を、互いに異なる複数の構造間を遷移するように運動させたときに錯視対象の分離・融合とその遷移におけるヒステリシス現象が見出され、定量的な計測によってその存在が確認された。水平方向に運動する2群のランダムドットパターンの奥行き関係が異なって知覚されるというこれまでの知見では全く説明できない現象が見出された。さらに、ランダムドットステレオグラムで両眼非対応部に存在するドットが手前側に知覚され、それが物理的に可能な配置であることが証明された。これはこの分野の研究者間で信じられていた仮説(両眼非対応領域は背景の深さに知覚される)を覆す新しい発見である。これら、本研究において新たに見出された動的錯視現象の背後には、さらに多くの未知の現象が隠されており、視覚システムにおける空間知覚メカニズムを解明において有力な手がかりとなるものと期待される。
著者
尾内 理紀夫 岡部 誠
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

効果音を対象とする無音動画の有音化の研究を行った。効果音を、繰り返し音、瞬間的な音、持続性のある音の三種類に分類し、瞬間的な音と持続性のある音について研究した。瞬間的な音はミリ秒単位で発音位置を調整し、動画内の物体の動きと効果音の発音タイミングを一致させる必要がある。そこで音付き動画から効果音の合成に使用する特徴量と音データを切り出し、動画と独立なオブジェクト化を図ることとし、瞬間的な音の貼り付け技術を確立した。爆発音など数ミリ秒から5秒程度持続する音は、広周波数帯域にわたり不規則に音成分が現れる。このため無音動画内の物体の動きに合わせて持続性のある効果音を低劣化で伸長させる技術を確立した。
著者
吉浦 裕 内海 彰
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ソーシャルメディアを通じた個人情報の流出が問題になっている。そこで、メディアに投稿しようとする文章から個人情報の漏洩を検知する技術を開発し、11名の被験者の投稿文各1000件を用いた評価実験で、通勤・通学先及び職種情報の漏洩の約90%を検知することができた。一方、複数の個人情報の照合によるプライバシー侵害の問題が顕在化している。そこで、注目者の投稿文を本人の履歴書との照合により検知する技術を開発し、12名の被験者の投稿文各1000件と100人の背景ノイズ各1000件を用いた評価実験で、8名の被験者について、本人の投稿文と背景ノイズ100人の投稿文の中から、本人の投稿文を特定することができた。
著者
井澤 鉄也
出版者
電気通信大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

長期間の身体トレーニング(TR)は脂肪細胞の脂肪分解反応を増強させる.この現象は脂肪細胞のサイクリックAMP(cAMP)以降の酵素であるタンパクキナーゼ(PK)やホルモン感受性リパーゼ(HSL)の活性が増強するためであると考えられている.しかしながら,PKやHSL自身の活性はTRによって増強せず,未だその実体は捉えられていない.脂肪分解反応はcAMP以外にもCa^<2+>やカルモジュリン(CaM)によっても修飾されている.本研究においてはTRによる脂肪分解増強効果をCa^<2+>/CaM系とPKとの関係を検討した.TRによってラット脂肪細胞の脂肪分解反応は著明に増強した.TRラットおよびその対照群の脂肪分解反応はCaM阻害剤であるW-7で有意に抑制された.その抑制作用はTR群において有意に大きかった.このことからTRによる脂肪分解反応の増強機構にCa^<2+>/CaM系に大きく修飾されている可能性が示唆された.そこでさらにPK活性に及ぼすW-7の影響を検討した.細胞抽出液中のcAMPによるPK活性はTR群で低下する傾向にあった.このcAMPによるPK活性はW-7によって両群共に有意に抑制されたが,その抑制率はTR群(31.5%)で対照群(18.9%)に比較して有意に大きかった.このことから,TR群の脂肪細胞のcAMPによるPK活性の調節はCa^<2+>/CaM系に大きく依存していることが明らかになった.また,TRラットの脂肪細胞では細胞内Ca^<2+>濃度が有意に高く,これがCa^<2+>/CaMにより大きく修飾されているPK活性の調節に役だっている可能性も示唆された.
著者
長井 隆行
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、子供と自律で遊ぶことのできるロボットを実現するために、まずロボットの開発や子供と遊ぶための遊びモジュールの開発を行った。また、保育士と子どもの遊びを観察することで、子どもと長く遊ぶために必要な要素を検討した。その結果、子どもの表情や行動から子どもの内部状態を推定し、その結果に基づいて行動を決定するモデルを構築した。実際に幼稚園の子どもを被験者とした大規模な実験を行い、その有効性を検証した。また、ロボットと子どもの物理的な接触が関係構築に有効であることや、子どもの性格に応じたインタラクション方法があることを実験的に明らかにした。
著者
舩戸 徹郎 柳原 大 石川 欽也 青井 伸也
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

小脳における神経障害が姿勢制御機能を低下するメカニズムを解明するために、生体データから力学モデルを用いて制御系を定量評価する手法を構築した。①環境に応じて運動状態を変える力学モデルとその評価手法、②後肢2足で直立するラットの姿勢実験環境という2つのツールの開発することで制御系の評価手法を構築し、この手法を用いて下オリーブ核障害ラット及び小脳疾患患者の制御系を評価することで、小脳障害が制御入力全体や環境適応のために働く制御機能を低下させるという姿勢制御能力の低下要因を示した。
著者
高橋 弘太
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

人間の聴覚特性に基づいて,最も聞き取り易い再生速度で音声を再生する手法について研究した.この研究では,第一に,話速が聴覚にあたえる影響の定量的研究,第二にその研究成果に基づいた再生速度決定アルゴリズムの研究とそのアルゴリズムを実証するためのシステム実装と実験の2つが大きな柱である.さらに,第三の柱として,この研究のために自前で製作する話速バリエーション型音声データベースをインターネットで公開し、音声分野の研究者に利用してもらい話速推定研究を啓蒙することがあげられる.3年間の期間で,これらを計画どおり実施した.
著者
栗原 聡 諏訪 博彦 篠田 孝祐
出版者
電気通信大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

早急な開発と運用が求められるスマートグリッドやアンビエント情報基盤,そしてビッグデータを背景とする次世代情報社会インフラシステム等の構築に際しては「多段創発型階層構造」に基づく設計が重要である.そこで,多段創発型階層構造における「下層が上層をボトムアップ的に多段階に創発するしくみ」を本研究の主目的とした.そして,群知能型手法の代表であるACOを土台とする方法を提案した.この方法により,階層性のある時系列パタンが含まれるデータからの階層構造抽出を可能とした.多数の自律エージェントが簡潔なルールに基づき他のエージェントと協調することで,データに隠された階層構造を抽出することができる.
著者
石田 尚行 岡澤 厚
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では有機無機ハイブリッド分子性磁性体を中心に複合機能の開発を進めた。(1)機能性低次元磁石:ラジカル-コバルト系単一次元鎖磁石からこれまでの世界最高の保磁力をもつ磁性材料を開発した。(2)分子包接誘起磁性体:ラジカル置換のホスト・配位子分子を構築し、その磁性を超分子化学手法により制御した。(3)液晶性磁石・可溶化磁石:長鎖アルキル基を有する鉄(II)錯体を合成し、中間相転移とスピン転移の共存する系を得た。
著者
石橋 孝一郎
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

Q値の大きいMEMS共振器を製作し、これを用いて無電源のウエイクアップモジュールを実現することを目的として、研究を行った。静電型MEMS共振器の設計法、製造法、測定法、動作シミュレーション方法を確立した。くし歯型静電型MEMSを製作し、131MHzの共振周波数を確認した。一方、静電型MEMS共振器では、ウエイクアップ信号発生に必要な共振エネルギーが得られないこともわかった。次に圧電型MEMS共振器について検討し、圧電型で一定の大きさのMEMS共振器で900MHz帯でウエイクアップモジュールが実現できることを明らかにした。
著者
若月 光夫 富田 悦次 西野 哲朗
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

決定性プッシュダウン変換器のスタック記号を1種類に限定した決定性限定1カウンタ変換器について,それが最終状態受理式の場合,より一般的なε-推移を持つ場合についてもその等価性判定及び包含性判定が多項式時間で行えることを明らかにした.また,実時間最終状態受理式決定性限定1カウンタ変換器に対して,所属性質問及び等価性質問を用いた多項式時間の学習アルゴリズムを開発した.更に,正則言語の部分クラスに対する正例からの極限同定を組み込んだジュウシマツの歌構造解析ツールEUREKAを利用することによって,コンピュータ上でトランプゲームの大貧民の対戦を行うプログラムの挙動の規則性が抽出可能なことを示した.
著者
佐藤 賢一 福田 舞子
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では近世日本科学史・自然災害史の史料に関する総合的研究を進め、以下の項目について成果を公開した。(1)和算家・石塚六郎兵衛と横川玄悦の事績を明らかにした。(2)近世日本の測量術におけるオランダ由来の技術の実態を解明した。(3)博物学者・田中芳男の史料群の構成を明らかにした。(4)仙台藩の和算の通史を刊行した。(5)宮城県の自治体史における災害記事の一覧を分析し、その歴史的背景を明らかにした。