著者
伊藤 毅志 保木 邦仁 西野 哲朗 棟方 渚 片寄 晴弘 池田 心
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、ゲームにおける人間のミスに着目し、人間らしいミスを犯すゲームAIの構築を目指し、以下の研究成果を得た。1)ゲームにおける人間の犯すミスの原因に着目した分類。2)人間の生物学的成約を考慮したモデルを持ったゲームAIの構築。3)ゲームにおける技量を自動的に調整して良い勝負を演出できるゲームAIの提案と評価。4)人間の思考の特徴である「流れ」を持たせ、人間らしいプレイを実現するゲームAIの提案。これらの研究の成果は、人間と対戦するゲームAIに「強さ」という方向性以外の新しい評価基準をもたらし、多様なゲームAIの指針となると考えられる。
著者
早川 広記 Hiroki Hayakawa
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2016-09-30

近年の汎用計算機はCPU以外にGPUや専用アクセラレーションユニット等,様々なハードウェアがプログラマブルデバイスとして搭載されるようになった.特に,GPUやIntel(R)Xeon Phiのようなメニーコアアーキテクチャの拡張デバイスが搭載される例が多く,スーパーコンピュータへの導入事例も多い.例えば,東京工業大学のスーパーコンピュータ,TSUBAMEは多数のCPU及びGPUで構成される.他には,TOP500上位にランクインするスーパーコンピュータにおいてもGPUやXeon Phiなどのメニーコアデバイスが採用されている例が多く見られる.このような構成のマシンでは,CPUとアクセラレーションユニットが効率良く協調動作するプログラムを実装すると高い性能を発揮できる.アクセラレーションユニットを活用する技術は未知な部分が多く存在し,高い性能を実現するための理論的な研究及び実験的な研究が盛んに行われている. しかしながら,これらの研究はアクセラレーションユニット上で高い性能を実現することを目的として完結している例が多く,計算機上のアクセラレーションユニットは十分に活用できているが,CPUが十分に活用できていない例が多く見られる.これはアクセラレーションユニットのみならず,CPUも適切に活用すれば更なる性能向上ができる可能性を示している.本研究では,計算リソースが複数混在した計算機上(CPU 4 cores 8 threads + GPU 2台)において,GPUアクセラレーションの成功実績のある最短経路探索アルゴリズムであるIDA*アルゴリズム(Iterative Deepening A* algorithm)をGPU実行のみならず,計算機上の計算リソース全て(CPU+GPU)を効率良く動作させることを目的とし,単純なGPUアクセラレーションを行った場合よりも高速な実装手法の有無を検討した.研究成果として,IDA*アルゴリズムをルービックキューブの最短解探索に適用した場合において,CPUとGPUを同時に効率良く使用する実装手法を3つ提案することができ,従来手法に対し高いパフォーマンスを得ることに成功した.
著者
宮脇 陽一
出版者
電気通信大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本年度は、多様な物体画像が「いつ」脳活動に表現されるのかをスパースモデリングを用いて定量化する手法についての研究をさらに押し進めつつ、画像特徴量と物体カテゴリ表現ダイナミクスの関係性の検証を開始した。この目標達成のため、以下の項目を特に重点的に実施した。1.背景除去済み物体画像を用いたMEG計測実験:MEG信号からの物体カテゴリ予測成績をより高め、結果の信頼性を向上させるため、物体画像刺激に含まれている背景部分を除去した。この背景除去済み物体画像を用いて、新たにMEG信号計測実験を行った。2.MEG信号からの皮質上神経電流分布推定と物体カテゴリ情報の時間分解予測解析:背景除去済み画像に対して得られた新しいMEG信号を用いて皮質上神経電流分布を推定した。推定された皮質上神経電流分布の各時刻の信号をパターン識別アルゴリズムを用いて解析することにより、物体カテゴリの情報がいつ脳内に表現されているのかを同定した。3.皮質上神経電流分布推定の精度評価:皮質上神経電流分布推定結果の精度評価を行うため、人工データを用いた解析を行った。具体的には、本研究で主たる解析対象とする脳部位に人工的な神経電流源をおき、それをもとに頭皮上で計測される脳磁場信号をシミュレートし、シミュレートした信号から逆に皮質上神経電流分布を推定することで、どの程度正確に原信号を復元出来たかを厳密評価した。4.物体カテゴリ画像特徴量の定量化:コンピュータビジョンの分野で物体カテゴリの認識に大きな成果を挙げているDeep convolutional neural network(DCNN)を用いて、MEG信号計測実験で用いた物体画像刺激に対応する高次画像特徴量を抽出した。
著者
岡崎 龍太
出版者
電気通信大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

本課題の目的はポータブル環境において,聴覚を触覚刺激提示によって補助・向上させることである.最終年度である本年度は下に述べた2項目において,これまでの研究成果の取りまとめをおこなった.一つ目は,聴覚と触覚の知覚可能な周波数範囲の隔たりに着目した触覚提示手法である.触覚の知覚可能周波数範囲は0 Hzから高々1000 Hz程度であり,音波形をそのまま触覚提示に用いると,音周波数の上昇に伴って触覚刺激が消失する.この問題に対して,提示する振動を低音域にしぼって身体全体へ高強度で提示したり,音の高低を振動提示部位の高低に置き換えるなどの手法が提案されているが,提示振動の強度や範囲が制限されるモバイル端末においてはこのような提示は困難である.そこで本研究では提示する振動に対して,ピッチシフト処理を行い,オクターブ低い刺激を振動提示する手法を提案した.生成した振動を音楽と合わせて体験した際の主観的な音楽体験評価を行った結果,これまで振動提示が困難であった比較的周波数の高い音を含む音楽に対して提案手法を用いて触覚提示することで,音楽に対する主観的な評価が有意に向上することが明らかになった.二つ目は,全身体感音響装置のモバイル化を目的としたものである.従来の体感音響装置に共通の問題である装置の大きさ,重さ,拘束性といった問題を解決するため,ユーザの骨を介して身体の広範囲に振動を提示する手法を提案した.これまでに,鎖骨が最も簡便かつ効率よく振動を体内へ伝達可能であることを検証した.また提案手法と従来手法で用いられてきた部位に対して振動提示を行い,ユーザが主観的に知覚する振動の「心地よさ」および音楽コンテンツへの影響に関して検証を行った.その結果,提案手法は物理的にも主観的にも身体広範へ振動を伝搬可能であり,またそれによってユーザが知覚する主観的な音楽体験が向上することが明らかになった.
著者
山田 伊織
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2018-03-23

定理証明支援系Coqにおける証明は、一般に手続き的証明と呼ばれる形式で記述される。これは対話的証明を前提としており、自然言語による証明記述と大きく異なるため、可読性が高いものではない。この問題を解決するためにCoq用宣言的証明言語C-zarが開発された。宣言的証明は可読性が高く、また外部ツールを導入し易い。しかし、C-zar は手続き的証明に対して記述量が多い上に柔軟性が低く、Coq ユーザに受け入れられなかった。本研究では、Coq の手続き的証明からC-zarの証明を生成することで、両者間の橋渡しを行う。一般に手続き的証明から宣言的証明への変換手法としては、証明項や証明木のような中間表現を経由する方法が考えられ、既に定理証明支援系Matitaでは証明項を経由する手続き的証明から宣言的証明への変換が存在する。しかし、中間表現は元の証明と比べて詳細かつ巨大になり、元の手続き的証明1ステップに対して数百ステップの宣言的証明が生成されてしまう場合もある。一方で、C-zar は手続き的証明で用いられるタクティックと呼ばれるコマンドを利用することができ、これによって手続き的証明の1ステップは、多くの場合C-zarの数ステップと対応させることができる。本研究では、元の手続き的証明と証明項の両方を用いて変換を行うことで、元の証明に近い粒度の宣言的証明の生成を実現する。
著者
大隅 匡
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2017-03-24

【目的】 大地震発生後の災害支援物資の輸送場面において、円滑でかつ偏りが少ない配分をアマチュア無線によって実現できるか、シナリオの作成やシミュレーションを通して検証する。また、上記のシナリオやシミュレーションを、本学所在地の東京都調布市に当てはめることで、実現に向けた課題を見出す。【検証方法】 プッシュ型、プル型、今回提案する方法(以下、提案方法)で、簡易シミュレーションを作成する。輸送終了後の物資の在庫数や所要時間を比較して、提案方法が有効であることを示す。 提案方法では、無線機を避難所や、物資を保管する集積所などに配置することで、通信網を構築して円滑な情報共有を可能とする。【結果】 提案方法が、偏りが少なく適切な物資配分が実現できること、所要時間短縮が可能であることから、有効であることが示された。【調布市における想定】 本論文で提案したシナリオやシミュレーションを調布市に当てはめる場合、5つのエリアに分けて災害支援物資を輸送する方法を提案する。また、本学が調布市に貢献できる可能性にも言及する。【課題】 提案方法において、極端に避難者が多い避難所が存在する場合、災害支援物資を十分に輸送できず不足が発生することが分かった。広範囲で連絡できるように体制を見直すなど、検討する必要がある。
著者
棚原 翔平 Shohei Tanahara
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2016-03-25

摩擦現象は最も身近な物理現象のひとつであるが,そのメカニズムの詳細は未だに解明されていない.近年,表面制御技術の進展や原子間力顕微鏡(AFM)や摩擦力顕微鏡(FFM)などの計測技術の発展により,ミクロな視点から摩擦を解明しようとするナノトライボロジーという分野が確立した.我々はこれまで、原子間力顕微鏡(AFM)と水晶マイクロバランス(QCM)を組み合わせたエネルギー散逸顕微鏡(AFM-QCM)を用いて,ナノスケール接触面におけるエネルギー散逸および有効的な弾性力を測定してきた.これまでの研究から,ナノスケール接触面のエネルギー散逸および有効的な弾性力は基板周期ポテンシャルを反映した基板振幅依存性を示すことが明らかになってきた.共振状態の水晶振動子上の試料基板にAFM 探針を接触させると,接触面のエネルギー散逸や有効的な弾性力の増加により水晶振動子のQ 値および共振周波数fR が変化する.試料基板とAFM 探針を接触させた状態でAFM 探針を走査させると,試料基板の表面構造によってエネルギー散逸や有効的な弾性力がさらに変化する.AFM-QCM では表面のAFM でトポ像を測定すると同時に,QCM によるエネルギー散逸像および有効的な弾性力像を取得できる.本研究では,3MHz SC-cut 水晶振動子の中心にHOPG(高配向熱分解グラファイト)基板を貼りつけた試料を用意し,トポ像と同時にエネルギー散逸像および有効的な弾性力像を測定した.図1 にSi3N4探針-HOPG 基板における典型的な表面スキャン像を示す.測定は室温大気中で行われ,スキャン範囲は500 nm x 250 nm,分割数は128 x64 である.図1(a)はトポ像であり,グラファイトの典型的なステップ構造が測定されている.このステップの高さは4 nm で12 層程度の構造であると考えられる.図1(b)はQ 値の逆数の変化,つまりエネルギー散逸像であり,ステップ構造の部分でエネルギー散逸の増加が観察されている.図1(c)は共振周波数fR の変化,つまり有効的な弾性力像であり,エネルギー散逸と同様に,ステップ構造で弾性力の増加が観察されている.
著者
奥 浩昭
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.34-46, 2020-02-01

This article aims to help tanka-making beginners learn rhetorical expressions from tanka poems by KASHIWAZAKI Gyoji (1941-2016) and HONGO Sumie (1934-). The two poets learned the art of tanka from one of the major contemporary tanka poets: MIYA Shuji (1912-1986). The fact implies that the two poets learned from Miya some skills of making tanka. The characteristics of rhetorical expressions by the two poets are summarized as follows. The tanka poems by Kashiwazaki generally use plain expressions: they are mostly composed of plain vocabulary both in kango words, words made of Chinese characters and read in Chinese way, and wago words, original Japanese words. For example "地面" (jimen or ground) and "ちかづく" (chikazuku or coming nearer). Kashiwazaki avoids expressions not used in daily lives such as a compressed or shortened expression; for example 落ち実 (ochimi) or fallen fruit. Instead, he uses a natural phrase of 落ちた実 (ochita mi). Contrastively, Hongo makes use of strongly sounding kango such as 精魂 (seikon), meaning a steadfast will to realize something. She might have learned the use of this type of kango from Miya. Hongo also uses utakotoba, a word dominantly used in tanka, not in everyday life, such as kirigishi or a sharply cut cliff, and compressed or shortened expressions such as 熟実 (uremi) or ripe fruit. ("Uremi", when heard, is difficult to understand, and should be "ureta mi" in daily communication.) The article suggests that shortened expressions by Hongo come from those by Miya. Learning the rhetorical expressions by the two poets, tanka beginners are expected to pursue useful rhetorical expressions for the tanka they would like to create.
著者
CHEN HONG
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2020-03-25

グラフは複雑なシステムを記述する強力なツールとして,ソーシャルネットワーク分析,生物情報科学,化学情報科学などの多くの分野で幅広く使用されている.例えば,分子の生物活性を予測するなどのパターン認識がグラフ分類問題に帰着できる.しかし,グラフに適用する数学ツールが少ないため,グラフ分類問題は伝統的な機械学習のベクトル分類問題より難しい.そこで,グラフデータを既存の機械学習アルゴリズムに適用するために,グラフデータを数値特徴ベクトルに変換する技術が注目されいる.特に近年,ニューラルネットワークを用いたグラフの特徴ベクトル(分散表現とも呼ばれる)を学習する課題が盛んである. 近年提案されたニューラルネットワークを用いて,グラフの分散表現を獲得する手法ではノード特徴のみを活用し.エッジ特徴を扱えない手法が多い.そこで, 本研究では,エッジ特徴を用いてグラフの特徴ベクトルを改良することを目指す. 提案手法では,まずライングラフを用いて,元のグラフのエッジをノードに変換する.この操作により,元のグラフのエッジ特徴がライングラフのノード特徴となるため,ノード特徴しか取り扱えない手法を利用して,元のグラフのエッジ特徴を反映したグラフ分散表現を獲得する. この方針に基づき,ノード特徴のみを使う既存の2つのグラフ分散表現学習手法を改良した. 1つ目はGraph2vec である.Graph2vec はノードラベル付きのグラフ集合から,教師なしでグラフの分散表現を獲得する手法である.本論文では,まず従来手法Graph2vec の(1)エッジラベル情報を扱えないことと,(2)グラフ間構造の類似性が適切に表現できないという欠点を指摘して,それを対処するため,ライングラフを利用して補う手法 GL2vec を提案した. 2つ目は GIN(Graph Isomorphism Network)である.GIN はノード属性付きのグラフ集合から,教師ありでグラフの分散表現を獲得する.GIN はノード間で情報伝搬することによって,End-to-End で特徴ベクトル及び分類器を一気に学習させる.しかし,GIN もエッジの属性情報を使用していない.本論文では,ライングラフを用いて,GIN が生成するグラフの特徴ベクトルにエッジの特徴を補完できる手法GLIN を提案した. 実験によって,エッジ特徴とノード特徴両方とも考慮した提案法が従来法よりもグラフ分類性能を改善することを示した.上記の二つ改良例から,ノード属性しか扱えないグラフ分散表現学習のモデルの一族に対し,ライングラフはエッジ属性を活用できる有効なツールであることを確認できた.なお,エッジ特徴がグラフ分類タスクに役に立つことも確認できた.
著者
笹倉 理子
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.68-72, 2020-02-01

“Since 2016 the global school for high school students has been held as an educational program conducted by three national universities in Western Tokyo(TUFS, TUAT, and UEC). In March 2019 the school took place with the theme of “SDG14”, “SDG15” and we designed the school program in UEC that covers environmental techniques from basics to practice. Here we report the teaching materials by using a CO2 sensor and micro:bit, and how our program was carried out.
著者
島内 景二
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1-2, pp.127-175, 2006-01-31

Mishima Yukio’s Silk and Enlightenment (Kinu to Meisatsu, 1964) is a long and a ratherunfortunate novel in that it received uncertain reviews of both approvals and disapprovals by thecritics. Where did Mishima’s true intention lie in writing this full-length novel?Fuefukigawa Art Library, where Mr. Hatano Takeo acts as the President, holds many of thebooks owned by Mishima himself. I was so fortunate to be given the opportunity to examine thefour books that provided sources for Silk and Enlightenment. Indeed, I was the first scholar to begiven access to these items, which are all concerned with the industrial actions that took place inthe rapidly growing silk factory, Omi Kenshi.In these four books, many underlines are drawn and marginalias scribbled in by Mishimahimself. Also, whenever he found useful accounts for his novel, he folded the top corner of pages.In fact, there are applications of such relevant parts in Silk and Enlightenment. The pages,stained with Mishima’s greasy hands, have now turned into almost black over forty years and hisfinger prints are clearly retained in some of them. By tracing the pages he referred to, we caninvestigate minutely into the process through which the novelist constructed the plot, created thecharacters, and rendered the novel as close as possible to the real historical incident.Silk and Enlightenment compares the two contrasting spheres: the enlightened world ofthe West, which is represented by Heidegger and Hlderlin, and the chaotic reality of Japan asexposed through the industrial actions over the silk factory. Mishima’s own thought on Japanduring the industrialising period is made clearer by the above four books discovered in his library.It also elucidates his researches on the subject of the hitherto uncertain relationships between theworld of West and that of Japan. Mishima had an eye for the uniqueness of Japanese society as wellas an eye to observe the cultural universality.Besides, this research becomes the key to understanding the root of Mishima’s ‘motivationsas a novelist’ which drove him in the first place to select out these four reference items on theindustrial actions at Omi Kenshi. It sheds a new light upon his fundamental views on humanity andthe world.I am confident that this paper will present a model case for future studies on Mishima Yukioby making a close and detailed analysis of Silk and Enlightenment (Kinu to Meisatsu), for thefirst time, by actually basing research on Mishima’s marginalias on his own books.
著者
小林 信一 加藤 毅
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、平成7年6月に実施した大学教員の生活時間調査の再分析により大学教員の置かれている状況を時間資源の観点から多角的に明かにするとともに、研究活動の編成様式との関連の理論的検討を行うものである。1.生活時間分析大学教員の活動の実態をさまざまな属性別に分析し、中でも研究時間の不足感が強い国立有力大学について詳細に分析した。また、大学改革と生活時間の関係に関して分析を行い、会議時間に対する負担感が実態以上に大きいこと、時間の寸断など時間の質の低下などが発生していることを明かにした。さらに管理的職務の実態について分析を行った。これらの分析結果を、大学教員の仕事の質、大学教員の多忙と教育研究の支援体制、時間からみた大学教員の学術研究環境、管理的業務に関する分析の各項目についてとりまとめた。また、大学研究者に関する国際的統計の根本問題であるFTEをめぐる問題についても検討した。2.研究活動の編成様式の理論的検討科学技術のモード論を参照しつつ、科学技術論のレベルで大学教員の多忙の原因について検討を行った。知識生産の様式として、ピアレビュー・システム、インハウス・システム、オ-ディション・システムの3タイプが存在することを明かにした。とくにモード2の出現にともなうオ-ディション・システムの浸透、また多様な研究様式が並存することが、大学教員の多忙の原因になることを示した。3.とりまとめ以上の結果を内外の学会で口頭発表するとともに、論文などにまとめ、さらに報告書にとりまとめた。
著者
奥 浩昭
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.48-60, 2019-02-01

This article aims to demonstrate three significances of tanka poems by HONGO Sumie (1934~), who has lived for sixty years in Nishijin, Kyoto: the significance of her poems in depicting the glory and decline of Nishijin fabric industry and the ever-inspiring historic places of and figures in Kyoto; the beauty and artistry of her poems in exploiting a variety of rhetorical expressions; the possibility of making ordinary Japanese people realize the beauty and richness of the Japanese language. Among her conspicuous rhetorical expressions is the use of onomatopoeia like saya-saya, light and rhythmic sounds of a bamboo or a small waterfall, describing a Nishijin fabric machine and a small waterfall in a well-known garden in Kyoto. Another is the frequent use of hikari or light, referring to encouraging aspects of the world around her. In a tanka poem her late husband is associated with light (hikari) and a shield (tate). Not well-known to the tanka-related people, the poet deserves, the author believes, to be accepted as a distinguished Nishijin- and Kyoto- related poet. (Kyoto and Nishijin need a poet who gives literary description of its glorious culture and history.) Her use of uta-kotoba or words frequently used in tanka poems like modasu or ‘to remain silent’ might enable ordinary Japanese people to be impressed with not-daily-used beautiful Japanese expressions, thereby being more interested in their native language.
著者
矢崎 俊志 Syunji Yazaki
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2006-03-23

本論文は,一般的な汎用プロセッサのビット長を大きく上回る多倍長数の乗算をハードウェアで実現する方法について述べる.多倍長数の演算は高精度の数値計算や素数判定,カオス計算,暗号計算など,多様なアプリケーションに利用されている.多倍長演算はその性質から,多くの時間を必要とする.特に,頻繁に利用される乗算は演算のボトルネックとなり得る.多倍長乗算においてはO(n^2^) の筆算式乗算よりも効率よく乗算を行う様々なアルゴリズムが存在する.代表的なものとして,O(n^1.58^) のKaratsuba 2-way 法,O(n^1.465^) のKaratsuba 3-way 法,O(n^1.404^) のKaratsuba 4-way 法,O(n^1.365^) のKaratsuba 5-way 法,O(n^1.63^) の法算法,O(n log n log log n) の高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform, FFT) 法がある.これらの中で,オーダの上で最も高速なのはFFT 法である.しかし,FFT 法は,複素数演算のオーバヘッドが大きく数百から数万ビットの演算における実質的な性能はKaratsuba 法よりも低い.このことから,現在もっとも利用されているアルゴリズムはKaratsuba 法である.ただし,数百万桁の乗算においてはFFT 法の方が高速である.現在,これらの多倍長乗算はソフトウェアによって実現されている.一方,多倍長乗算のハードウェア実装に関する研究としては,ガロア体上の乗算を行うものが多く報告されているが,整数の乗算に関するものはごくわずかである.特にFFT 乗算のハードウェア実装に関する研究は知られていない.本研究の目的は,FFT 法を用いた比較的大きな桁数の多倍長乗算とKaratsuba法を用いた比較的小さな桁数の多倍長乗算をそれぞれハードウェア実装し,ソフトウェアとの比較を行うことでその性能やコストを明らかにすることである. FFT 法のハードウェア実装においては,最大値どうしの乗算が最大の誤差をあたえることに着目し,乗算に必要な精度を求め,それを保証するデータ長でFFT 乗算器をCMOS 0.18μm テクノロジを用いて構成した.その結果,16 進数2^13^ 桁の乗算において,IEEE754 の64 ビット浮動小数点表現を用いた場合と比較して面積を60%,最大遅延時間を26% 削減したFFT 乗算器を実装することができた.さらに最適なパイプライン化を行った結果,同世代のテクロノジで設計されたPentium4 1.7GHz 上で実行したFFT 乗算と比較して16 進数2^5^ から2^13^ の範囲で,19.7倍から34.3 倍,平均で25.7 倍の性能を実現することができた.この時の面積は9.05mm^2^ であった.また,FFT 乗算とKaratsuba 乗算の性能が逆転する16 進数2^21^ 桁の乗算においては35 倍の性能を実現した.この時の面積は16.1mm^2^ であった.実際に,16 進数2 桁のFFT 乗算器を2.8mm 角のカスタムチップで試作し,その結果から,より大きな桁のFFT 乗算器も現実に実装可能であることを示した. Karatsuba 乗算器の実装においては2 つの設計選択肢として組み合わせ回路で行うRKM (Recursive Karatsuba Multiplier) と順序回路で行うIKM (Iterative Karatsuba Multiplier) を構成した.CMOS 0.18μm テクノロジを用いてこれらを実装した結果,2^9^ ビット以上の乗算においてRKM の面積は標準的な乗算回路であるWallace Tree 乗算器(Wallace Tree Multiplier, WTM) より小さくなることがわかった.2^9^ ビットにおける面積は30mm^2^ であった.また,最大遅延時間は常に WTM の方が短かった.このことから,性能コスト比においてRKM よりWTMの方が優れていることがわかった.したがって,IKM で用いる基本乗算器としてはWTM を用いる方が良い.IKM に関しては,再帰の回数をそれぞれ1,2,3 としたR1IKM,R2IKM,R3IKM を実装した.さらにそれぞれについて,基本乗算器のビット長(基本ビット長) を4 から128 ビットとするIKM を実装し,その性能,面積,電力を評価した.その結果,基本ビット長を32,64,128 ビットにしたIKMは,ソフトウェア実装exflib と比較してそれぞれ約5,10,30 倍の性能を実現できることを示した.この時,最も大きい面積は,基本ビット長を128 ビットにしたR3IKM の10.9mm^2^ であった.同じR3IKM について消費エネルギーを評価したところ汎用プロセッサと比較して1/600 であることがわかった.全体を通して,ハードウェアとソフトウェアいずれにおいても,FFT 乗算とKaratsuba 乗算は2 進2^23^ 桁(16 進数2^21^) 付近で性能が逆転することがわかった. 2 進2^23^ 桁においてハードウェア実装とソフトウェア実装の性能比はいずれのアルゴリズムについても約30 倍であった.またこのとき,面積はそれぞれ2^12^mm^2^ と16mm^2^ であった.ただし,FFT 乗算器の面積に外部メモリは含まれていない.これらの結果から,FFT 法とKaratsuba 法の両ハードウェア実装おいて,パラメータに応じた性能コスト比の変化と適用範囲が明らかになった.本論文は,広い桁範囲における多倍長乗算のハードウェア化に関する詳細な研究結果を述べた唯一のものであり,多倍長乗算を用いたアプリケーションやシステムの実現において有益な指標となる.また,多倍長演算に関する実装技術の研究や開発,およびアプリケーションシステムの利用促進に大きく寄与すると考えられる.
著者
岡元 晃一 Koichi Okamoto
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2016-03-25

近年では, 健康的至高の高まりにより食事記録を付ける人が増えてきている. それに伴い食事記録支援システムが多く公開され始めているが, 既存のシステムのほとんどが正確にカロリー量を推定することができない. そこで本論文では食品を基準物体と撮影することで, 食品の認識を行い, さらに大きさを推定することでその食品のカロリー量を推定するシステムを提案する. システムはユーザーの携帯性や利便性を考えスマートフォンアプリという形での実装を行う. システムは画像中より食品領域及び基準物体領域を抽出し, その大きさを比較する. 基準物体は事前に面積がわかっていること以外には制約はなく, ユーザーが各々常に携帯しているものを使用することが出来る. 食品認識部分の手法には高精度な認識が可能なディープラーニングを用いた. 一般にディープラーニングによる画像認識は計算量が多くモバイルでの利用は難しいが, パラメータ数が少ないネットワークを選択したりなどの工夫により, サーバを介さずモバイル上での実行ながら約0.2 秒程度での実行速度で高精度な認識を可能にした. 実験ではカロリー量推定実験とユーザー評価実験の2 つを行い結果としてカロリー量推定実験での誤差の平均は52.231kcal, 相対誤差の平均は0.213 となった.ユーザー評価実験でも既存システムよりも記録を取りやすいという評価を得た. このことから提案システムの有効性が確認できた.
著者
木村 和彦 大鋸 順
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

Jリーグチームの誘致が、ホームタウンの住民の運動生活や個人生活および地域に与えた影響を明らかにするために、茨城県鹿嶋市の住民と対象として質問紙による調査を実施し、平成6年度調査と比較検討した。また同様の調査(一部修正)を、Jリーグチームを誘致している千葉県柏市、市原市、埼玉県浦和市および静岡県清水市の住民を対象として実施し、比較検討した。それぞれの調査の概要および結果の概要は以下の通り。1. 鹿嶋市調査(1) 調査内容a.サッカー活動への影響 b.運動生活全般への影響 c.スポーツ観戦への影響 d.支援ボランティア活動への影響 e.個人生活や地域生活への影響、など(2) 調査時期および調査方法(省略)有効標本507 回収率23.8%(4) 結果の概要(特に平成6年度調査と比較して)サッカー活動への影響としては、16〜24歳までの比較的若い年齢層の実施率の低下がみられた。サッカー実施欲求、サッカークラブ参加率ともに低下傾向がみられた。運動生活全般としては、約1割の人がJリーグがきっかけで以前より運動頻度や運動欲求が増加したと回答している。運動実施種目ベスト10にはほとんど変化がなかった。スポーツ観戦について、アントラーズの試合を観戦したことのある人は、78.5%で前回調査より8.7ポイント増加し、住民の約8割の人が観戦経験を持っていた。Jリーグの競技場での観戦欲求は、男性では24歳以下、女性では39歳以下の年齢層で著しく低下しており、比較的若い層の欲求の低下が認められた。支援ボランティア活動として、私設応援団への加入率が特に24歳以下の女性で大きく減少している。4.3%の人が運営ボランティア経験を有しており、次第に増加してきている。個人生活への影響では、「町への愛着が増した」「家族共通の話題が増えた」「生活の楽しみが増えた」という順に肯定的な回答が多く、地域への影響では、「鹿嶋市の知名度が向上」「市民間の共通の話題が増えた」「鹿嶋市のイメージが向上」「地域の連帯感が増した」といった項目で肯定的な回答が多かった。2. 柏市、市原市、浦和市、清水市の調査(1) 調査内容は、鹿嶋市と同様。(2) 調査時期平成10年2月〜3月(3) 調査方法地域版電話帳をもとに、各市から1,000名を無作為抽出し、郵送自記法による調査(有効標本616回収率15.7%)。平成8年度の鹿嶋市調査と平成9年度の4都市調査を一括して分析したところ、サッカーへの参加、サッカー欲求、競技場での観戦および観戦欲求、個人生活や地域への影響に関しても、鹿嶋市が最も大きな影響を受けたことがかわった。しかし個人生活や地域への影響に関しては、高い割合を示す項目は5都市間でほぼ共通していた。
著者
加川 敏規 Toshinori Kagawa
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2013-03-25

近年我が国では,高齢化社会の到来により独居者や在宅医療を受ける患者が増加し,患者の健康状態評価や生存確認を行う目的で,生体情報の24時間常時モニタリングの必要性が高まっている.このような背景の中,バイタルサイン(脈拍数,呼吸数,心電図,運動量,血圧など)の無侵襲・無拘束計測技術の研究が盛んに行われている.無侵襲・無拘束計測技術とは,利用者の身体を傷つけず,日常生活や生活行動を制限することなく,利用者のバイタルサインを取得することを目指すものである.本研究では,人間のバイタルサインをモニタし,必要な情報をインターネットなどを介してリアルタイムで医療,介護,健康管理センタに提供するヘルスケアネットワークシステムの実現を目指している.ヘルスケアネットワークは1)バイタルサインセンサ,2)Body Area Network (BAN),3)インターネットを用いた情報ネットワークで構成される.1)バイタルサインセンサとはバイタルサインの常時センシングを可能とするセンサ群であり,2)BANとはバイタルサインセンサ群から得られたセンシングデータを本用途に特化した最適な通信方式によって集約するネットワークである.3)インターネットを用いた情報ネットワークとはBANが集約したセンシングデータを医療,介護,健康管理等の目的でインターネットを介して利用できるようにする仕組みである.その中で本論文では,1)バイタルサインセンサがセンシングするバイタルサインの中で脈拍数と呼吸数に着目し,毛細血管からの赤外線反射を利用して得た光電脈波から呼吸数・脈拍数を測定するセンサを検討した.脈拍数・呼吸数を無侵襲・無拘束で計測する技術は,大きく分けてi)センサを身体に取り付ける方法(ウェアラブル型),ii)環境にセンサを設置しリモートセンシングを行う方法(環境埋め込み型)の2つがある.環境埋め込み型は,ウェアラブル型と異なり身体に器具を取り付ける必要はないが,例えばベッド上に圧力センサを配置し,呼吸に伴う体表面の上下変位を取得するといった方法で呼吸数を計測する.しかしこのような方法の場合,バイタルサインの計測がベッド上などの場所に限定されてしまう.利用者は自由に動き回るため,連続的なバイタルサイン測定をするためには場所を限定することのないウェアラブル型が望ましい.本論文では,利用者に対するストレスのない24時間連続測定を可能にするために,既に日常生活に溶け込んでいる腕時計の形をした腕時計型のセンサに着目した.従来の腕時計型脈拍数測定センサは脈波検出が安定せず,脈拍数の精度も低かったが,脈波波形を安定して取得できるアレイ状フォトインタラプタ,および脈波波形を周波数解析し体動状態を検出することで体動状態除去をするアルゴリズムを考案し実装することで,高精度かつ安定した脈拍数測定が可能となった.さらに,呼吸数測定センサでは,脈波波形に呼吸性変動が重畳することに着目し,腕時計型脈拍数測定センサから得られた脈波波形を周波数解析し脈波波形内の脈拍数成分と呼吸数成分を切り分けることで,脈拍数と呼吸数を同時に腕時計型センサで取得することを可能にした.これらの要素技術を組み合わせた脈拍数・呼吸数計測法によって,従来の技術では空間的に限定され,また精度の低かった脈拍数測定を場所や時間を選ばずいつでもどこでも的に限定され,また精度の低かった脈拍数測定を場所や時間を選ばずいつでもどこでも常時測定できるものにし,さらに呼吸数を同時に測定する方法を確立した.これらの技術は,独居者や入院・在宅患者の健康状態をより正確かつ詳細にモニタ可能にするもので,現在の高齢化社会において重要な役割を担うと考える.