著者
島内 憲夫
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.410-420, 2007-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
39
被引用文献数
2

本研究の目的は, ヘルスプロモーションの視点から主観的健康観 (健康の定義) の年齢差. 性差・年次差を明らかにし, その類型化を試みることにある. ヘルスプロモーションとは, 「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし改善することができるようにするプロセスである. 」この健康の決定要因は, 遺伝, ヘルスサービス, ライフスタイル, 環境要因が考えられるが, ヘルスプロモーションの主眼は, ダイエット, 定期的な運動や禁煙そして家族や友人などとの良い人間関係, 音楽や絵画などの趣味活動, さらには自然とのふれあいなどといったような幅広い健康的な生活習慣形成にある. 人々の健康的な生活習慣形成は, 科学的な証拠EvidenceBased Medicine (EBM) に基づくと共に, ライフコースの中で生じる人々の様々な日常的諸経験や物語Narrative Based Medicine (NBM) にも基づいてつくられている. 健康社会学では, この健康的な生活習慣の形成過程を「健康の社会化Health Socialization」と呼んでいる. 健康の社会化とは, 「人々が当該社会における健康知識, 健康態度そして健康行動の様式を内面化することによって, 真の自由と幸せを獲得する過程である. 」 本研究は, その過程の中でも「健康知識」と「健康行動の様式」を媒介する「健康態度」に注目し, その中心を成す「人々の主観的健康観」の類型化とその性差・年齢差・年次差を明らかにしようとした. なぜなら, 生活習慣病が蔓延している現代社会において, 人々の幅広い健康生活習慣を支援するシステムを構築するためには, まず人々がNBMの視点から形成している主観的健康観も明らかにしなければならないからである. 本研究によって得られた人々の主観的健康観は次の6つに類型化された. (1) 「病気がない, 身体が丈夫, 快食・快眠・快便」といった身体的な健康観 (2) 「幸せ, 家庭円満, 生きがいの条件」といった精神的な健康観 (3) 「仕事ができること, 人間関係がよい」といった社会的な健康観 (4) 「心身ともに健やかなこと」といった身体的・精神的な健康観 (5) 「心も身体も人間関係もうまくいっていること」といった身体的・精神的・社会的な健康観 (6) 「人を愛することができること, 何事にも前向きに生きられること」といったスピリチュアル (霊的・魂的) な健康観 そして主観的健康観は, 年齢差, 性差, 年次差があること, また加齢や時代の移り変わりと共に身体的健康観から精神的, 社会的, スピリチュアル (霊的・魂的) な健康観に拡大していることが明らかになった.
著者
AYUMI HORIKOSHI MASARU HORIKOSHI
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.192-199, 2008-06-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目的: ハーディネスは, ストレスが精神的健康に及ぼす影響の緩衝要因として海外で数多く研究されているが, 日本での研究は少なく, 日本語版の尺度の信頼性と妥当性は検証が不十分である. 本研究では, 中高年と大学生を対象に, 日本において最も有用と考えられる多田・濱野1) の15項目版ハーディネス尺度の構造, および精神的健康との関連を検討する. 対象: 関東圏に住む中高年向け会員制雑誌の50歳以上の購読者とその知人の合計750名と, 関東圏の大学に在籍する大学生164名であった. 方法: 多田・濱野の15項目版ハーディネス尺度により調査対象者のハーディネス特性を, 日本語版GHQ短縮版 (GHQ12) 2) により精神的健康を測定した. 結果: 因子分析の結果, 全ての世代および性別で, おおむね同様の3因子構造が確認された. 重回帰分析の結果, GHQ12に対してコントロールとコミットメントは負の影響を, チャレンジは正の影響を与えていた. 考察: 本調査で使用した15項目版ハーディネス尺度の信頼性と妥当性が確認された. コントロールとコミットメントは精神的健康を高め, チャレンジは阻害するという結果が示された.
著者
松村 文照
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.385-396, 1977-09-10 (Released:2014-11-22)
参考文献数
39

強迫現象に関する先人の業積をたどってみるとき, 多くの研究が個人の心理ないし身近な対人関係だけを論拠としていることがわかる. 人間をとりかこむ社会文化的環境との関係を論じたものは多くはない. また, 一般人をいわゆる正常者として評価し, それにくらべて異常者としての強迫症患者をこれに対置しているものが多い. そのため, 強迫症患者の治療目標は, かれらを一般人と同一化することと考えられがちである. 一般人を無垢の白地とみなし, そこに強迫症患者の影を黒く映しだしているといえる. ところが, 実は一般人自体がすでに必ずしも自地ではなく, 灰色に汚れた部分をもっている. そのような灰色に病んだ地に患者の姿を映し, 一般人と患者の双方の“やま”の相互関係をみつめる試みのなかで, 筆者は強迫現象と社会・文化的環境との関係を考えようとした. 社会に生きる一般人は, 日常生活の規範のかなりの部分を常識に仰いでいる. 日常の生活にとって, 常識は水や空気のごとく不可欠な心の糧である. 一方, 強迫症患者を詳しく観察すると, 独特な常識不適応の様相のみられることが少なくない. そこで常識の特性から出発して, さらに強迫現象と常識との関係についての考察を以下に進めてみたい.
著者
池田 黎太郎
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.104-113, 2005-06-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
18

医学校の標章としておなじみの「杖に絡みつく蛇」のデザインは何に由来し, 何を意味するのだろうか?この疑問を解く鍵になると思われるのが, 「サモスのヘルメース」と呼ばれる浮き彫りの蛇の像である. このヘルメースと呼ばれる巨大な蛇は岩の上に厳かに鎮座して人々の崇拝を受け, その足下に8の字形の頭部を持つ杖を置いている. 古代ギリシアの神々はふつう人間の姿をしているが, 神である徴しとしてそれぞれの神格を表す付属物と共に描かれる. ヘルメースの場合は神々の伝令使としての職分を示す杖を持ち旅人の服装をして, それらには天空を駈け巡るための翼が附けられている. 本来この伝令使の杖には蛇が居ないはずであるが医学校の標章には2匹の蛇が絡みついている. じつはここにはヘルメースの別の職分である「死者の霊魂の導師」を表すための表象が混同されているのである. 強い毒と強靱な生命力を持つ蛇は, 地面の穴から地下へ自由に行き来して冥界の事情に通じ, 生死の秘密を知る存在として古来畏怖と崇敬の対象となっていた. だから死者を蘇らせる能力がある神として崇拝されていたアスクレーピオスは神殿に蛇を住まわせ, 蛇を侍らせた玉座に座り, 巨大な蛇を巻き付かせた杖にもたれた姿で描かれている. むしろ神格化した蛇そのものがアスクレーピオスと呼ばれ崇拝されていると考える方が自然である. じっさい蛇とアスクレーピオスが同時に病人の治療にあたっている情景を描く奉納の浮き彫りがあるほどである. だから医学校の標章は蛇を軸にしてアスクレーピオスとヘルメースのイメージが混同され重ね合わされたものだろうと説明することができる.
著者
石田 國廣
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.T10, no.562, pp.58-60, 1921-07-25 (Released:2015-06-12)
参考文献数
3
著者
形井 秀一 北川 龍一
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.210-219, 1992-08-20 (Released:2014-11-18)
参考文献数
36

著者らは慢性前立腺炎 (非細菌性前立腺炎およびProstatodynia) 患者100例に対し, 前立腺局所およびその周囲の循環改善を目的として, 低周波鍼通電療法 (EAT) を行った. 検査は尿検・前立腺直腸診・超音波診断・東洋医学的体表触診・心理テスト・自覚症状の自己採点等を行った. EATによるEPS中のWBC数, および前立腺直腸診時の圧痛の改善率はそれぞれ64.7%・82.1%であり, またEPS中のWBC数の陽性群は, 陰性群に比べて有意に (P<0.05) 有効率が低かったが, 70.6%の有効率であり, EATが慢性前立腺炎の炎症の改善に一定程度影響していることが示唆された. またSTDの既往の有無で有効率の差はなく, EATは器質的病変のある可能性を持つ病態にも一定の効果があることが示唆された. 自覚症状の出現率および改善率は部位間に差はなかった. さらにEATは, 慢性前立腺炎患者のうち, 炎症所見や消化器症状・神経症・うつ傾向が強くない症例に対して有効率が高かった. 自覚症状と他覚所見の両者に対する総合評価では, EATの有効率は79.3%であった. 以上のことより, EATは薬物が無効であったり, 通常の泌尿器科的治療法では効果の現われにくい慢性前立腺炎の治療に有用であると考えられる.
著者
鎌野 俊彦
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.570-574, 1985

膝関節疾患に多くの漢方医家に使用されてきた防已黄耆湯は, 漢の時代に作られた「金匱要略」という書物に記載されている漢方薬で, 主薬は防已と黄耆でその他に蒼朮, 大棗, 甘草, 生姜の6種類の生薬の組合せにより構成されている. 防已は, オオツヅラフジという植物のツル性の根茎から採取され, 薬効は消炎鎮痛利尿作用を有する. 黄耆は, マメ科の植物で防已と同じように水を逐う作用がある. 使用目標としては, 体表に水分代謝の異常のために下肢に浮腫があり関節が腫脹し痛みがある, 体質的にはやや虚弱で肥満の傾向があり色が白く筋肉の軟かく水太りの人, 多汗で利尿減少があり疲れやすく体が重い足が冷えるといった症状の人に用いる. かかる特性を有する防已黄耆湯を変形性膝関節症3例に使用し, 良好な臨床効果を認めたので, その臨床経過を詳細に記し, かかる漢方療法の今後の適応について考察した.
著者
白井 將文
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.335-342, 2002-12-12 (Released:2014-11-12)
参考文献数
14

わが国では更年期と言えば女性特有なものと言う考えが支配的であるが, 男性にも更年期は存在する. ただ女性の更年期に相当する年齢の男性に女性に見られるような症状があるかと言えば必ずしもそうではない. しかしその症状の程度には差こそあれ多くの男性に, 倦怠感・不眠・うつ傾向・集中力の低下・性欲の減退・勃起障害 (ED) などがみられる. 男性の精巣も女性の卵巣と同様加齢と共に機能低下, 即ち精子形成能の低下やホルモン分泌能の低下がみられるが女性と違い精子形成は続いているし, 男性ホルモン分泌の減少も緩やかで, しかもこれら変化は個人差が大きい. 従って出現する症状も女性程激しくなく, 個人差も大きい. この男性に見られる各種症状のうち男性にとって最も関心の高いのが性欲の減退とEDである. 加齢と共に勃起機能, 特に夜間勃起の減少が見られ, 年齢と共に男性ホルモンの欠乏に伴うEDも増加してくる. これら症例に男性ホルモン補充療法を行うと勃起力の回復だけでなく, 気力や体調の改善も見られる. しかし, 前立腺癌の存在を知らずに男性ホルモンを使用すると前立腺癌が発育してしまう危険があるので, ホルモン補充用法前には必ず前立腺癌の無いことを確認すると共にホルモン補充療法中も常に前立腺癌に対するチェックが必要である. また最近EDに対する経口治療薬のバイアグラ®が加齢に伴うEDにも使用され良好な成績が得られている. これらホルモン補充療法やバイアグラ投与で男性のみを元気にしても, ホルモン補充療法の普及していないわが国の女性の多くは性欲の減退や膣分泌液の減少に伴う性交痛などから性交を希望していないことが考えられ, 女性に対するホルモン補充療法や膣分泌液を補う目的のリューブゼリー®の使用なども考慮しながらEDを治療していく必要がある.

1 0 0 0 OA 麻ノ中毒實驗

著者
鈴木 肝一郎
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.M23, no.82, pp.469-473, 1890-05-30 (Released:2015-06-18)
被引用文献数
1
著者
植木 理恵
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂醫事雑誌 (ISSN:21879737)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.327-330, 2013-08-31 (Released:2014-11-26)
参考文献数
5

皮膚科に求められるアンチエイジングは, しみ, しわ, 白髪, 薄毛である. 薄毛は髪が抜けて数が少なくなる場合と, 毛が細くなる場合と両方の場合がある. 脱毛には (1) 生理的脱毛 (成長と休止を繰り返す毛周期があり, 1日100本以内の脱毛は正常範囲である), (2) 病的脱毛 (1日100本以上の脱毛や, 一部分だけ抜けて生えてこない場合など) の2つに大きく分かれる. 病的脱毛の原因は, 1. 加齢変化, 2. 男性型脱毛症, 3. 先天性脱毛症, 4. 円形脱毛症, 5. 内臓疾患に随伴する脱毛, 6. 皮膚病に伴う脱毛, 7. 薬物や放射線治療などの医原性脱毛, など様々である. 病気ではないが, 薄毛の原因で多いのは加齢変化と男性型脱毛症である. 女性では原因がはっきりしない, 髪の成長が休んでしまう休止期脱毛も少なくない. 正常な髪について知って, 様々な脱毛があることを理解して, 健康で美しい髪で過ごすコツを実践していただきたい.
著者
佐藤 貢
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-18, 1959

The status of the primary group, predisposition (intelligence and character) and the view of life and world and the logics of the prostitute and non-prostitute Inmate in Women's Rehabilitations Home in Japan after World War II are studied.2. On the primary group it is found that its status is more or less similar to that of Geishagirl and "Waitress" rather thau "legal" prostitutes in prewar Japan.3. Intelligence of the Inmates in these Home on the average is more or less lower than the average intelligence grade of Japenese women of the same age groups. Also the intelligence is lower in the prostitute groups than in non prostitute groups.4. The proportion of the persons with abnormal character is greater in these Inmates than in the average Japanese women but no difference between these two Inmate-groups is found.5. The logics and the view of life and world of these women are not consistent and this tendency is stronger in the home, where the christian discipline is adopted.6. The results of these researches indicate the necessity of psychiatric examination of personality (including the grade of intelligence of Inmates) at the time of their entrance to Homes.
著者
箕輪 健太郎 森本 真司 高崎 芳成 玉山 容碩 戸叶 嘉明
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.268-273, 2010-06-30 (Released:2014-11-21)
参考文献数
19

目的: 長期間ステロイド薬を投与した全身性エリテマトーデス (SLE) 患者における副作用が, どの時期で発現しやすいかを投与開始年齢, 初回投与量との関連について検討するとともに, 副作用予防の観点から, ステロイド薬投与開始後に発現した生活習慣病と動脈硬化性疾患発症との関連についても検討した. 対象: 1987-1997年の間に当科へ入院し, 観察期間内でステロイド薬の増量を行わなかったアメリカリウマチ学会の診断基準を満たすSLE患者116例 (男性14例, 女性102例) を対象とした. 結果: ステロイド投与開始年齢との関連では脂質異常症, 大腿骨頭壊死の発現頻度が若年群で有意に高く, ステロイド薬の初回投与量との関連では脂質異常症と, 入院を要する感染症の発現頻度が高用量群で有意に高かった. さらに, ステロイド薬の副作用として発現した複数の生活習慣病を有する例では虚血性心疾患を発症する例が有意に多く認められた. 結論: SLE患者において長期ステロイド薬投与による副作用として発現する脂質異常症は, ステロイド投与開始年齢が若年で高用量の症例に多いため, このような症例では早期から脂質異常症に対する予防が必要と考えられた. またSLE患者においても, ステロイド薬投与による複数の生活習慣病因子を予防することが, 動脈硬化性疾患の発症予防に重要であることが示唆された.
著者
川崎 志保理
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.16-20, 2011

最近, 裁判外紛争解決 (Alternative Dispute Resolution;ADR) という言葉を耳にするようになってきています. これは, 医療機関側が紛争解決に向けて行う方策の一つと理解してもらうとわかりやすいと思います.ADR (Alternative Dispute Resolution) は文字通り裁判以外の紛争解決手段の総称であり, 通常は「第三者機関による紛争解決制度」を意味します. 多くの施設では「院内ADR」とか「院内メディエーション」という言葉を使用しています.ADRを行うにあたりまして, 必要なことは第三者的に医療機関側と患者側の間に立って双方の言い分をコントロールする人の存在です.問題は, このようなことをわざわざ第三者としてのADRに依頼しなければならない場合が存在するのはどうしてなのだろうかということにあります. これはADRを要する場合のほとんどが, 患者側の医療機関側への不信感によって生じていることが多いからです.患者クレームに対する初期対応としては, 接遇・マナーを遵守した誠意のある説明を行うことにより, 紛争を未然に予防しながら解決が可能と思われます. 逆に初期対応の失敗により, 感情的対立姿勢が患者側に生じてしまった場合には, 当事者同士での紛争解決は困難であり, ADRを介入しての説明が, 法的手段への訴えを予防できる唯一の手段であるといっても過言ではないと思います.
著者
T K
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.33, no.315, pp.131-133, 1900
著者
唖佛生
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.33, no.316, pp.184-185, 1900

1 0 0 0 図南の翼

著者
有山 登
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.140-141, 1969
著者
横山 和正 服部 信孝
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂醫事雑誌 (ISSN:21879737)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.s53-s59, 2014

ワクチンというと皆さんはエドワードジェンナーについて学生時代に学んだかもしれません.当時経験的に知られていたのは,牛痘にかかったヒトは天然痘にかからないですむ,もしくは天然痘にかかったとしても死に至らず天然痘感染による症状が軽くすんでいたことから治療への応用が検討されました.他の医師が行った実験治療では多くの死亡事故もあったようです.それを踏まえてジェンナーが行ったのは,天然痘予防のためのウシ天然痘(牛痘)のヒトへの接種実験でした.現在ワクチンという呼び名で一般化したこの試みは見事に成功し数多くの人命が救われ,184年後の1980年5月,WHO(世界保健機関)は天然痘の根絶を宣言しました.<br>このようにワクチンは正しく使用すれば効果も高く,社会に貢献するのはあきらかですが例外もあります.本日参加された皆さんはワクチンの適応,時期,その限界や副作用についてもよく知っておく必要があると思います.繰り返しになりますが,ワクチンに限らず万人に対して同じ作用・効果を起こす薬剤は存在しませんし,個々のワクチン接種時の免疫状態によって効果や副作用が変化する可能性もあるのです.またご自身,家族,友人,会社,村,市,地方,県,国,世界と接種対象のスケールアップに伴いワクチンの主たる目的も変わってきます.<br>ワクチンはもともと個人の体内に存在していない異物(非自己)を,皮下,筋肉注射,静脈注射,経鼻,経口ルートから投与し,個人のもつ免疫能を強制的に賦活させるものです.よって,場合によっては死に至るような重篤な副作用を起こす可能性が常にあります.<br>今回の公開講座は広くワクチンの特集であり,他の演者からすでにそれぞれの分野における最新の報告が行われてきたかと思いますが,私の講演ではインフルエンザワクチンにより起こりうる神経系の副作用についてまずお話をします.また,最近話題になっている子宮頸癌ワクチンと神経系への副作用,さらには私の主たる研究である多発性硬化症のワクチンを利用した免疫治療が歴史的にどのように行われてきたかについて述べ,日本でも増加しているアルツハイマー病に対してのワクチンによる免疫治療とその誤算,最後に今後日本でもますます増えるであろう様々なワクチンにどう向き合うかの基本姿勢についてまとめて述べます.自己を病気から守るためには非自己である感染のみならず,自己に対しての過剰反応である免疫現象を理解することが必要不可欠なのです.
著者
関根 美和 馬場 理 片山 由紀 平松 啓一
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.232-242, 2011-06-30 (Released:2014-11-11)
参考文献数
21

黄色ブドウ球菌の全ゲノム解読は, 同菌のほ乳類主要組織適合遺伝子複合体: Major histocompatibility complex (MHC) 様分子をコードする遺伝子を4つ見い出した. この遺伝子産物 (MHC1-4) はヒト免疫機構に何らかの影響を及ぼしているものと考えられ, MHC3 (extracellular adherence protein: Eap) についてはフィブロネクチンやフィブリノーゲン等血漿タンパクと黄色ブドウ球菌表面の接着に関与することや, 血管内皮細胞上に存在するInter-Cellular Adhesion Molecule-1 (ICAM-1) に結合し, 好中球の遊走を抑制することがよく知られているが, ほかのMHC様分子も含め, それらの生理的機能には不明な点が多い. 本研究ではMHC1-4の生理的機能を網羅的に追求すべく, 市中感染強毒型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (community-acquired MRSA: CA-MRSA) であるMW2株から, 4つのMHC様分子の遺伝子それぞれの単一-4重遺伝子欠損変異株を作成した. この変異株を用い, 野生株と対比してヒト血球細胞に対する応答性を調べ, さらにマウスに対する感染実験を行った. その結果, MHC1はリンパ球分化増殖および炎症性サイトカイン産生を促進し, また, MHC3はリンパ球分化増殖を抑制し, 樹状細胞上のHLAおよび補助刺激因子であるCD86の発現, およびINF-γ産生を抑制していることが明らかになった. また, 野生株と比較して, 1-4をすべて欠損した株は3倍以上貪食されやすく, ほかの単一欠損株に比べても2倍近く貪食をされやすかった. 一方で好中球による殺菌活性に差はみられなかった. これらの結果から, MHC様分子は貪食からの回避に関与するのに加え, 宿主の獲得免疫系の応答にも影響を与えていることが明らかとなった.
著者
中村 洋
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.372-376, 2008-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
20

中高年にみられる関節痛のもっとも多い原因が変形性関節症osteoarthritis (OA) である. 保存的治療として, 安静, 保温, 運動療法に加えて, 薬物治療が行われる. アセトアミノフェンは容易に購入できる鎮痛薬で, 本邦では一日1.5gまで使われる. 痛みが強い場合は非ステロイド性消炎鎮痛薬nonsteroidal anti-inflammatory drug (NSAID) であるインドメタシン, ジクロフェナック, ロキソプロフェンといった薬を使用するが, 上部消化管障害などの副作用に注意が必要である. これらの薬剤はシクロオキシゲナーゼcyclooxigenase (COX) を抑えることによって, 痛みや炎症の原因となるプロスタグランディンE2 (PGE2) の産生を抑制して効果を発揮する. 近年, 胃腸障害を軽減するため, COX-2選択的阻害薬が使われるようになってきた. 関節内へ薬剤を直接注入する治療法も医療機関では行われている. ステロイド剤は即効性があり, 効果も劇的であるが, 副作用を避けるため頻回に用いないほうがよい. ヒアルロン酸はその物理的性質と抗炎症作用により, OAの症状を軽減するとされている. 副作用が少なく, 定期的に注入して効果をあげている. 現在販売されているサプリメントにはさまざまな種類があるが, グルコサミンはその作用が科学的に議論されている唯一の物質である. グルコサミンのOA治療への歴史は1960年代のドイツにさかのぼる. その後, 1990年代後半から北アメリカで大ブームを巻き起こし, いくつもの臨床治験が行われた. 有効性を示す研究結果があるが, 否定的な意見もある. 一方, グルコサミンの基礎的研究は盛んに行われており, 抗炎症作用, 軟骨分解酵素の抑制作用が明らかにされ, OAの症状を軽減するだけでなく, 進行を抑制する可能性が強く示唆されている.