著者
鎌田 彩子 大日方 薫 鈴木 光幸 春名 英典 木下 恵司 清水 俊明
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.256-260, 2012-06-30 (Released:2014-11-11)
参考文献数
20

症例 (13歳4ヵ月女児) は1歳頃より偏食傾向と体重減少がみられ, 1歳11ヵ月時に大球性正色素性貧血, 骨髄での巨赤芽球性変化, 血清ビタミンB12の低下を認めビタミンB12欠乏性巨赤芽球性貧血と診断された. ビタミンB12投与後貧血は改善し, 摂食状態や身体発育も正常化した. しかし補充を中止するとビタミンB12値は漸減した. 低ビタミンB12血症の原因として摂取不足のみならず, 吸収障害の関与も考えられた.
著者
岡田 隆夫 アレン ブルース 檀原 高
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.349-356, 2001

目的: 医学部を卒業しても医師国家試験に不合格となる, 特に成績の不良な学生をできるだけ早い段階で特定する方法を模索した.対象と方法: 平成7年度から12年度までの6年間の6年生の卒業試験成績, および彼等の各学年での席次を調査した. また, 彼等の所属クラブも参考にした.結果: 卒業試験における得点と席次との関係から卒業延期または医師国家試験に不合格となる確率が極めて高い (60-80%) 学生を特定することができた. 彼等の各学年における成績を遡及的に調べた結果, 彼等には臨床医学の知識よりも基礎医学の知識が不足している傾向が強く, BSLにおける自学自習のためには基礎医学の知識が重要であることが示唆された. 基礎医学と臨床医学の成績を総合して将来落ちこぼれる可能性の高い学生をピックアップする基準を設定した.結論: 上記基準を用いることにより約80%の落ちこぼれ学生を4年生終了時点で捉えることができる可能性が示唆された.
著者
HIROSHI TAMURA JOHANNES REICH ISAO NAGAOKA
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂醫事雑誌 (ISSN:21879737)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.132-140, 2016 (Released:2016-07-02)
参考文献数
51
被引用文献数
5

The Limulus amoebocyte lysate (LAL) test is the most sensitive and reliable assay for the detection of trace amounts of bacterial endotoxins (lipopolysaccharides, or LPS), and is an accepted in vitro alternative to the rabbit pyrogen test for evaluations of parenteral drugs, biological products, and medical devices. There are three principal LAL tests, which can be categorized as both semi-quantitative and quantitative methods, including gel-clot, turbidimetric, and chromogenic assays. Since the 1970s, these tests have been successfully formulated and commercialized by US and Japanese manufacturers. More recently, in addition to the recombinant factor C-based assay, a novel product containing all of the recombinant coagulation factors from horseshoe crab has been developed, which may lead to the creation of a next generation LAL alternative. Furthermore, there are antimicrobial peptides called “host defense peptides (HDPs)” that play a key role in innate immune responses. The LAL test for HDP-related studies is challenging, because the active site of endotoxin could be masked by the binding with HDPs. Thus, it is very important to properly evaluate the actions of HDPs (human defensins and cathelicidin peptide LL-37) such as the neutralization of LPS, immunostimulatory functions, and anti-endotoxin activity. Moreover, sensitive detection of LPS in cell culture media should be conducted to address the problem of endotoxin contamination in the media. Here, we discuss the progress of LAL-based endotoxin assay technologies, as well as their applications and limitations, with a focus on innovative functional studies of HDPs.
著者
西村 豐作
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.23, no.83, pp.540_1-540_1, 1890
著者
柘植 俊直 ウィグノ プロドジョスドジャジ モハマド ヨギアントロ 来栖 厚 大澤 勲 小林 則善 清水 芳男 スハードジョノ ダルメイザー ジノヴァ ナインゴラン アイーダ リージャ プラナワ チャンドラ モハニ ジョーコ サントソ ウィドド リザニアンシャ 堀越 哲 富野 康日己
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.100-106, 2010

背景 : 慢性腎臓病 (CKD) は, IgA 腎症やループス腎炎などの慢性糸球体腎炎, 糖尿病腎症や腎硬化症など, 全ての慢性腎臓病を含んだ疾患概念である.CKD は末期腎不全 (ESKD) の準備状態であると同時に, 心血管疾患 (CVD) の重大なリスク因子であることが明らかとなっている.アンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB) は, 降圧薬として広く用いられているが, 両薬剤の腎保護効果にも注目が集まっている.今回, 順天堂大学とインドネシア大学, アイルランガ大学は, 高血圧を伴うCKD 患者におけるACE阻害薬イミダプリルの尿蛋白減少効果を検討する共同研究を行った.方法 : 23名の高血圧を伴うCKD 患者にカルシウム拮抗薬 (CCB) とイミダプリルを投与し, 腎機能と尿蛋白量の変化を治療前後で比較した.CCB を投与している患者にイミダプリルを追加投与 (5mg/日) し, 血圧が目標値 (130/85mmHg未満) に達しなかった場合には, さらにイミダプリルを10mg/まで増量し, 投与後12 ヵ月で評価した.結果 : CCB にイミダプリルを加えることによって, 6 ヵ月後・12 ヵ月後の収縮期血圧および拡張期血圧は有意に低下した.尿中アルブミン排泄量は, 投与開始時には顕性蛋白尿レベル (0.3g/g・Cr以上) であったが, 6 ヵ月後・12 ヵ月後は共に微量アルブミン尿レベル (0.299g/g・Cr 以下) にまで有意に減少した.結語 : イミダプリルとCCB の併用によるCKD 患者の腎保護効果を, 順天堂大学とインドネシア大学, アイルランガ大学の共同研究により検討した.イミダプリルを軸とした治療により, CKD患者の血圧は有意に低下し, 尿中アルブミン排泄量は有意に減少した.以上より, イミダプリルは高血圧を伴うCKD 患者において, 腎保護的に作用することが確認された.
著者
齋藤 孔良 齋藤 玲子
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂醫事雑誌 (ISSN:21879737)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.41-48, 2013-02-28 (Released:2014-11-26)
参考文献数
18

インフルエンザワクチンは抗インフルエンザ薬とともに日本におけるインフルエンザ対策の要になっています. 日本を含む世界の多くの国々で使用されているスプリットワクチンは, ほぼ毎シーズンごとに抗原性が変化するウイルス膜蛋白質ヘマグルチニン (HA) が主成分であるため, 毎シーズンごとに世界規模のインフルエンザサーベイランスと各国の流行状況や抗体保有状況を考慮に入れたワクチン株の見直しが必要です. この総説では, 現在日本および世界各国で使用されているインフルエンザワクチンの性質, ワクチン株が毎年どのように決定されるか, ワクチンの投与量, スプリットワクチン以外の新しいワクチンの開発について説明します.
著者
大塚 親哉
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.182-190, 1996

終戦後間もない1947年から2年間, 第一次ベビーブームといわれた. 第二次ベビーブームは1971年からの3年間で, それ以降の出生数は減少の一途をたどり, 1995年の出生数は最盛期の4割強である119万人になってしまった. 小児科はその影響を受けることになる.1959年からの大学院を含めれば37年間, 1963年, 助手として勤務開始以来33年間, ベビーブームから少子時代への変遷の中に身を置き, 教育・診療・研究の日々を過ごした. 診療実績・研究成果, 思い出はさまざまであるが, 勤務開始以来の33年間を, 1) 紛争のdecade 2) 粛々のdecade 3) 浦安のdecadeの3つに分け, 私の感想と共に回顧したいと思う.
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.M8, no.1, pp.1_j1-1_j2, 1884 (Released:2015-06-18)
著者
三輪 洋人 佐藤 信紘
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.293-303, 2001-01-20 (Released:2014-11-12)
参考文献数
49

最近ヘリコバクター-ピロリ (以下H. pylori) の臨床的意義が明らかにされ, 最近胃疾患の治療が根底から変わりつつある. 除菌の対象に関しては, 今後のさらなる議論が必要であるが, 実際のH. pylori感染症に対する臨床的対応はそれほど困難なものではなく, H. pylori感染症をいかに診断し, そしてどのように治療するかに集約される. H. pylloriの診断法には大きく分けて, 内視鏡を用いる侵襲的診断法と内視鏡を用いない非侵襲的診断法がある. 非侵襲的診断法のうち, 13C尿素呼気テストは最も診断精度に優れた方法のひとつであるとされる. また, その優れた診断精度から除菌治療後の治癒判定にも積極的に用いられている. 血清診断キットは欧米からの輸入キットがほとんどであるが, 近年このキットを日本人にも用いると, その診断率が欧米での成績よりかなり劣ることが明らかとなり, 本邦独自での血清抗体の開発が待たれる. 最近尿を用いたIgG抗体検出キットが開発されたが, 従来の血清抗体測定法以上に良好な診断率が報告された. また, 便中H. pylori抗原測定法も実用化され, その信頼性に対しても検討もすすんできた. 除菌療法の世界の主流はプロトンポンプ阻害剤 (PPI) と抗菌剤2剤を用いた新3剤療法である. 欧米では除菌治療レジメに関して多くの論文が出されているが, これら欧米人で用いられる治療法が日本人でも有効かどうかについては新たな検証が必要である. われわれの多数例の検討では, 現在の日本における最適な治療法はPPIの2倍量 (1日2錠) にアモキシシリン1500mg, クラリスロマイシン400mgを組み合わせて7日間服用するPPI/AC療法であると考えている. 副作用は下痢や口腔内症状が主であるが, ほとんどは軽微で服薬率に影響を与えることは少なく, 安全な治療法でもある. H. pylori感染症の診断と治療は常に進歩しているが, 新しい方法や知識をいち早く取り入れ, そしてそれらの限界を見極めながら安全に効率よくH. pylori感染症の診断と除菌治療を行っていくことが肝要である.
著者
川久保 嘉昭 竹井 謙之 泉 光輔 山科 俊平 今 一義 榎本 信行 鈴木 聡子 池嶋 健一 大久保 裕直 佐藤 信紘
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.73-81, 2007

目的: 肝星細胞は肝障害が継続すると筋線維芽細胞様細胞に形質転換し, コラーゲンをはじめ, 細胞外マトリクスを過剰産生し, 肝線維化機序の中心的な役割を果たす. このため, 活性化した星細胞に細胞死を誘導することができれば, 肝線維化抑制につながると期待される. グリオトキシンは活性化した星細胞にアポトーシスを引き起こすことが知られているが, その分子機序は明らかではない. 一方, inverse genomicsの手法は, ランダムな切断配列をもつリボザイムライブラリーを導入し, 細胞の表現型・性質を変化させる刺激を与えた際, 変化が起こらなかった細胞からリボザイムを単離し, その塩基配列を知ることで表現型変化に関わる機能遺伝子を同定することが可能である. われわれはこの手法を用いてグリオトキシンによる星細胞のアポトーシスに関わる遺伝子の探索を行った.対象・方法: 株化星細胞であるHSC-T6にリボザイムライブラリーを搭載したプラスミドをトランスフェクションし, 48時間後にグリオトキシン (1.5μM) を培養液に添加して24時間培養後, 生存細胞からプラスミドを回収した. このグリオトキシンによるセレクションを3回繰り返した後にリボザイムを単離してシークエンス解析を行い, その配列情報をもとにアポトーシス関連遺伝子の検索をデータベース上にて行った.結果: われわれは20の星細胞アポトーシスに関わる候補遺伝子の配列を得た. その中の1配列は, カスパーゼ7に相補性を有していた. 同配列を持つリボザイムをHSC-T6に導入したところ細胞はグリオトキシンによるアポトーシスの誘導に抵抗性を示した.結論: 以上の結果によりグリオトキシンによるアポトーシスの誘導にはカスパーゼ7が関与していることが示唆された. またinverse genomicsによるアプローチは, 肝星細胞のアポトーシスに関わる機能遺伝子の探索に有用であることが示唆された.
著者
千葉 百子 横山 和仁
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.115-122, 2012

放射線の生体影響は早期影響, 晩発影響および遺伝的影響に分けて考えねばならない. 晩発影響や遺伝的影響は半世紀以上経過した広島・長崎の例, 四半世紀を経過したチェルノブイリの原発事故の例から学ぶことができる貴重なデータがある. 2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴って起きた福島第一原子力発電所事故では日本政府は原発から半径20km以内の住民に避難指示を, 半径30km以内の住民に屋内退避指示を出した. 事故から約1年経過した現在も残留放射線があり, わが家へ帰れない住民は少なくない. 環境の放射能汚染にとどまらず食品, 飲料水からも高い放射線が検出され, 厚生労働省は食品衛生上の暫定規制値を設定した. 放射線被曝に関連して過度に恐れることなく, 適切に対処するには正しく理解することが重要である. そこで1950年に12万人の対象者で開始された広島・長崎の追跡調査 (寿命調査), チェルノブイリ原発事故に関する知見, その他放射線に関する環境衛生学的な知見について紹介する.
著者
山口 忍 丸井 英二 斉藤 進 荒賀 直子
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.468-476, 2007-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
29

目的: 1歳児をもつ母親の育児困難感の有無を把握し, 母子の属性と育児困難感の関連を明確にする. 対象: 千葉県内の協力が得られた2市に在住する1歳児をもつ全母親910名 方法: 2005年10月に無記名自記式質問紙による郵送調査を実施した. 育児困難感がある母親の把握には母子愛育会日本子ども総合研究所が作成した子ども総研式育児支援質問紙1歳児用を使用した. 結果: 分析対象は有効回答が得られた362名 (39.8%). 育児困難感がある母親は21.0% (76名) であった. その内, 育児困難感I. IIともにもっとも強いランク5である面接相談が必要とされる母親は4.4% (16名) であった. 育児困難感がない母親は79.0%で, その内訳では全くなしが45.0%であった. 母の属性7項目との関連では, 妊娠中に異常があった母親と関連がみられた (p<0.05). 子どもの属性7項目との有意な関連はなかった. 結論: 育児困難感がある母親は21%であり2000年の川井らの報告と比較して増加していた. また, 妊娠中に異常があった母親は育児困難感を持つことが明確になった. 今後は育児困難感軽減に向けた取り組みの充実が急務であり, そのためには妊娠中からの予防方法の開発, 汎用性がある育児困難感尺度の開発が必要である.
著者
金子 堅一郎
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.p153-159, 1976-06