著者
石井 康夫
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.19-30, 2007

It is recognized that ancient masks of Japan used for playing Noh were endowed with various facial expressions, meaning that manifold faces with agony, sadness, calmness, indignation, or pleasure are immanent in one mask. As for performing arts played in the Medieval Period of Japan, it is supposed that they were separated from Shinto rituals and independently developed during this era. People who engaged in those performing arts belonged to the class of humble people. Performing includes implication of purifying "impurity" which existed in birth and death, blood and decay, plague, or poverty, all of which are associated with everything of human life. Those humble people as performing artists wore clothes of monks as a lower religious order, meaning that they were not ordinary people who were never able to purify impurity. Purification was also involved in the activity of shamanism, including traditional Japanese dance. The dancers of shamanism attained a state of trance which expressed the words of Gods, which led to the primitive style of playing Noh. In the Medieval Period, as agricultural techniques developed, the level of people's lifestyle improved. A new type of Buddhism which parted from that belonging to the aristocracy spread into the people's spirit, encouraging people's economic and political power. In the Muromachi era, art theory was sophisticated through Japanese songs, tea-party, and pictures, particularly Indian-ink drawings. Yugen (subtletly), the philosophical idea of expression, was applied to arts, which became the core art theory of this era. This art theory was affected by another branch of Buddhism, that is, Zen. The charm of refined simplicity was promoted by religious meditation that was the essence of Zen thought. Particularly the Indian-ink drawings were art works reflecting the quiet precinct of poetical sentiment and philosophical meditation. While Kanami and Zeami established the foundation of Noh, the masks were mutually affected by other ancient masks which had been used in divine, religious rituals in local areas. The artistry of ancient masks implies the incantatory divinity which was related to the subtle profundity of the art spirit of this era. Consequently, the performing arts were supported by religious incantation which yielded the fundamental creativity of the Medieval Period.
著者
小松 謙之
出版者
麻布大学
巻号頁・発行日
2015-07-08

オガサワラゴキブリ(Common name : Surinam cockroach)は、世界の熱帯、亜熱帯に広く分布する害虫であり、国内では鹿児島から南西諸島、小笠原諸島などに分布している。近年、このゴキブリが、我が国の都市部の建築物内にも侵入し、捕獲や駆除が報告されはじめている。また海外においても、同様に都市部の家屋内への侵入が問題となっている。疫学的には、エチアピアにおいて、Kinfu and Erko (2008) は、このゴキブリの体表から、ヒトに感染性をもつ蠕虫類の回虫卵やテニア科条虫卵を検出し、さらに腸管からは、これらに加え、鞭虫卵や原虫類である大腸アメーバのシストの検出を報告しており、感染症を媒介する衛生害虫としても注目されている。 オガサワラゴキブリに関しては、形態的に良く似た2種が知られており、両性生殖を行うPycnoscelus indicusと、単為生殖を行うPycnoscelus surinamensis が存在する。P. indicusとP. surinamensisの種の分類方法については、Roth(1967)が成虫を用いた交配実験を行い、受精嚢内に精子があるにもかかわらず、雌のみを産出した個体をP. surinamensis、雌雄を産出した個体をP. indicusとしている。また、形態的な違いとしてP. indicus は複眼と単眼点の距離が離れているのに対して、P. surinamensis は両眼が接していることで区別できるとしている。 P. indicus の雄は雌に比べて乾燥に弱く、生育環境が適切でないと雄が死んでしまうため交尾ができず、繁殖することはできない。ところが、P. surinamensis は繁殖に雄は必要ないため、雌が1匹でも生息すれば多少環境が悪くても侵入した場所で繁殖を繰り返すことが可能である。 朝比奈(1991)は、日本産の個体は、雌雄が常に同時に採集されており、雌だけの単為生殖の系統は観察されないことから、日本に生息する個体はP. indicusである可能性を示唆した。しかしながら、日本産のオガサワラコギブリを用いた詳細な実験による証明が行なわれるまでは、従来のP. surinamensisとすることを提唱し、今日に至っている。このように、オガサワラゴキブリは衛生害虫として重要なゴキブリでありながら、種の鑑別と分布がまったく不明なのが現状である。 そこで本研究では、成虫にまで発育する前に雌雄の区別ができるように、まず幼虫期における雌雄の鑑別方法の確立を行った。ゴキブリ類の幼虫期における雌雄の鑑別については、トウヨウゴキブリBlatta orientalis、チャオビゴキブリSupella longipalpa、クロゴキブリPeriplaneta fuliginosaで確立されており、幼虫期の腹板の形態により鑑別可能であることが報告されている。そこで、沖縄県八重山郡竹富町石垣島で採集し、予備実験により産仔幼虫が雌雄の成虫に発育することを確認した個体群を使用して実験を行い、孵化直後の幼虫を腹板の形態ごとにグループに分け、成長段階における腹板の形状を記録し、最終的に各グループの個体が雌雄のどちらになるかを調べた。その結果、雌では1~6齢期の幼虫において第9腹板の後縁中央部に雄では見られないnotch(V字型)を有し、7齢(終齢)期では、第7腹板が発達して第8~9腹板および尾突起を覆い隠した。これに対して雄では7齢期まで第8~9腹板、尾突起がみられた。したがって、この特徴を観察することによって幼虫期の雌雄鑑別が可能であることが判明した。 次に幼虫期の齢期を判定するため、尾肢の腹面および背面の環節数を計測した。その結果、背面の環節数は2、3齢で同数となり判定できないが、腹面の環節数は1齢幼虫で3節、2齢幼虫で4節と加齢するごとに1節ずつ増加することが分かり、この部位の環節数を調べることにより幼虫の齢期の判定が可能となった。 これらの結果をもとに、日本に生息するオガサワラゴキブリの種と分布を明らかにするため、小笠原諸島(硫黄島・母島・父島・西島・媒島)、奄美諸島(徳之島・奄美大島)、沖縄諸島(沖縄島・宮古島・石垣島)、ハワイ島から採集した雌成虫を単独で飼育し、実験に用いる個体の繁殖を行った。その結果、硫黄島・徳之島・沖縄島は、雌のみを産出する個体と、雌雄を産出する個体が見られたため、前者をAグループ、後者をBグループとして11地域14系統の個体群を使用して交配実験を行った。 交配実験は、雌のみを産出する個体群には、Roth(1967)と同様にP. indicusと判明しているハワイ産の雄を使用し、雌雄産出する個体群は、その個体群内の雄を使用した。その結果、1地域で2系統見られた硫黄島、徳之島、沖縄島では、硫黄島Aグループの個体での産出数は、雄0個体、雌478個体で、産出後のすべての各個体における受精嚢内に精子を保有していたことよりP. surinamensisであった。硫黄島Bグループは、雄162個体、雌157個体を産出し、1回の平均産仔数の雄雌比は、10.8:10.5(p>0.05)で、性比に有意差は認められずP. indicusであった。徳之島Aグループは、雄0個体、雌221個体を産出し、すべて受精嚢内に精子を保有していたことよりP. surinamensisであった。徳之島Bグループは、雄242、雌207を産出し、1回の平均産仔数の雄雌比は12.1:10.4(p>0.05)で、性比の有意差は認められずP. indicusであった。沖縄島Aグループは、雄0個体、雌724個体を産出し、すべての受精嚢に精子が保有されていたことよりP. surinamensiであった。沖縄島Bグループは、雄322、雌312を産出し、1回の平均産仔数の雄雌比は16.1:15.6(p>0.05)で、性比の有意差は認められずP. indicusであった。以上の結果より、硫黄島、徳之島、沖縄島は、P. surinamensisとP. indicus の2種が同時に生息していることが初めて明らかとなった。 雌のみが産出された母島・父島・西島・媒島の個体のうち、母島の受精嚢に精子が確認された個体での産出数は、雌248個体、父島の精子が確認された個体での産出数は、雌59個体、西島の精子が確認された個体の産仔数は、雌663個体、媒島の精子が確認された個体での産出数は、雌143個体であったことから、以上4島の個体は全てP. surinamensis であることが明らかとなった。 雌雄産出した個体のみであった奄美大島・宮古島・石垣島では、奄美大島の個体は、雄260、雌260で、1回の平均産仔数が14.4:14.4(p>0.05)であった。宮古島の個体は、雄230、雌267で、1回の平均産仔数が16.4:19.1 (p>0.05) であった。石垣島の個体は、雄281、雌266で、1回の平均産仔数が16.5:15.6(p>0.05)であった。ハワイ島の個体は、雄199、雌189で、1回の平均産仔数が11.7:11.1(p>0.05)であり、以上4島の個体はすべてP. indicusであることが明らかとなった。 以上の結果より、日本にはP. indicusとP. surinamensisの2種類が生息しており、これらが混生している地域、およびP. indicusのみ、あるいはP. surinamensisのみが生息する地域があることが明らかとなった。 次に、実験により種が判明した個体を使い、この2種類の形態的な違いを調べた。Roth(1967)は、複眼と単眼点が接していればP. surinamensis、離れていればP. indicusであるとしたが、本実験ではP. surinamensis の雌成虫の複眼と単眼点は接しておらず、その距離は、母島0.16㎜>父島0.14㎜>媒島0.13㎜>西島・徳之島・沖縄島0.12㎜>硫黄島0.10㎜となり、平均0.13㎜であった。一方、P. indicus 雌成虫の複眼と単眼点の距離は、硫黄島 0.18㎜>宮古島0.16㎜>奄美大島・沖縄島 0.13㎜>徳之島・石垣島0.12㎜で、平均0.15㎜となり、どちらの種も接しておらず、両種の複眼と単眼点の距離による鑑別は不可能であった。 また、昆虫類の種の違いとして前翅長の違いが広く利用されているため、雌成虫の平均前翅長を計測した。その結果、P. surinamensisは、沖縄島15.82㎜>母島15.26㎜>西島15.07㎜>媒島14.16㎜>父島13.81㎜>徳之島13.57㎜>硫黄島12.87㎜、P. indicus 雌成虫の平均前翅長は、沖縄14.72㎜>硫黄島14.35㎜>石垣島13.81㎜>徳之島13.54㎜>奄美大島13.53㎜>宮古島12.96㎜と、地域的な差異が大きく、両種を鑑別することはできなかった。 一方、交配実験を行わなくても種を鑑別できる方法を検討するため、本実験で得られた各雌成虫の未交尾個体による飼育実験を行った。その結果、P. surinamensisはすべての個体が幼虫を産出し、前述した幼虫期の雌雄鑑別法により、すべてが雌であることがわかった。一方、P. indicusはすべての個体で幼虫は産出しなかった。このことより、野外で採集した雌成虫の同定法として、産仔幼虫がすべて雌であった場合はP. surinamensis、また雌雄を産出、あるいはまったく産出しない場合はP. indicusと同定できることが判明した。 以上、本研究により、これまで日本に生息するオガサワラゴキブリはP. surinamensisのみであると考えられていたが、P. indicusも同時に生息していることが明らかとなり、これらの結果から、日本に生息するゴキブリは1種増えて58種となった。さらに、現在までP. indicusとP. surinamensisは生息地域が違うと考えられてきたが、2種類が同一地域に混生している事実が明らかになり、今後の研究の方向性を再検討する必要がある。また、Roth(1967)が提唱している複眼と単眼点の距離による形態をもとにした鑑別方法は利用できないことがわかった。これに替わる新たな鑑別方法として、交配実験を行わなくとも未交尾の雌個体であれば、そのまま飼育して産仔すればP. surinamensis、産仔しなければP. indicusと判断でき、野外採集個体であれば、産出された幼虫が雌のみであればP. surinamensis、雌雄産出すればP. indicusと判断できることがわかった。朝比奈(1991)の報告では、我が国におけるオガサワラゴキブリの種に関する知見が明確ではなかったが、本研究における種々の交配実験や形態的な観察により、その詳細が明らかとなった。
著者
太田 光明 江口 祐輔 大木 茂
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.183-192, 2006

地震が起こる数日前から地震発生地域を中心に動物の異常行動が見られることがある。この行動を前兆行動と呼び,1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震を始めとする大地震では,「地震の前夜,鳥が一晩中鳴いていた」,「ネズミがいなくなった」,「地震数日前よりいなくなっていた猫が地震後に帰ってきた」など多数報告されている。特に犬において,地震前に見られる行動を挙げてみると,「普段吠えることのない犬が吠え続ける(遠吠えする)」,「飼い主を突然咬む」,「餌を食べなくなる」,「体を震わせ怯える」,「しきりに外へ出たがる」など様々である。前兆行動が起こる原因としては,電磁波電場,帯電エアロゾル噴出,地震発光などの地震前兆現象によるためであり,どの現象が原因であってもそれぞれの現象に曝露されることが,動物にとってストレスとなり異常な行動で表わされると考えられる。つまり,前兆行動は動物が物理的な地震前兆現象を感じ取って起こす行動である。しかし,全ての動物が地震を感知し,前兆行動を示す訳ではない。兵庫県南部地震では犬の前兆行動が調査個体の約20%に見られたが,この犬たちは他の犬たちと比較したとき,ストレス感受あるいは行動発現に関する何かに違いが見られると考えられる。そこで本研究は,地震感知できる犬とできない犬との違いが,ストレス反応の最上位ホルモンであるCRHに見られる可能性があると考え,CRH遺伝子多型の存在を検証することを目的とした。しかし,33犬種37頭を解析した結果CRH遺伝子多型は検出されなかった。地震感知遺伝子を持つ犬を発見するためには,地震を感知できる犬が持つ特異性の発見が必要である。よって今後はCRH遺伝子以外にもグルココルチコイドを始めとするストレス因子での遺伝子学的解析を行なうことが有効である。
著者
福永 航也
出版者
麻布大学
巻号頁・発行日
2011

薬物治療中は他の薬物や食物の相互作用について考慮する必要がある。ヒトでは、併用薬、食餌、病態、経口投与補助剤、サプリメントなど様々な因子により薬物の体内動態が変化することが報告され、これらの情報をもとに適正な薬物治療が行われている。しかし、獣医療では、薬物相互作用を引き起こす因子に関する知見が非常に少ない。薬物相互作用により血中濃度が予測より増加あるいは減少することで、薬物の効果を過小評価したり、副作用を過大評価したりしてしまうケースがある。例えば、ゾニサミドはイヌのてんかん発作に対し有効性が高いことが前臨床試験において判明していたが、実際の獣医療ではてんかん発作を抑制しないというのが獣医師の見解であった。この矛盾は、獣医療でのてんかん発作に対する第一選択薬であるフェノバルビタールが薬物代謝酵素を誘導し、ゾニサミドがその誘導した酵素で分解されるという薬物相互作用が原因であることを本論文の第1章で明らかにした。 薬物相互作用を引き起こす因子は獣医療特有のものも多く、ヒトの情報が転用できない場合が非常に多い。ヒトのてんかんに対し広く用いられているバルプロ酸やカルバマゼピンは、イヌでは代謝が著しく速いため、1日に4-5回投与しなければ有効血中濃度を維持できない。そのため、イヌのてんかんにはフェノバルビタールが第一選択として用いられている。このことが、前述のイヌ特有の薬物相互作用を引き起こした。また、イヌはヒトとは異なり、毎日同じドッグフードを摂取する。ドッグフードの成分が薬物と相互作用を引き起こす場合、その作用は継続するため、イヌ特有の薬物-食餌相互作用が惹起される可能性が非常に高い。 本論文では、獣医臨床上イヌで薬物相互作用を惹起する因子を薬物動態学的観点から明らかにすることで、獣医療における適正な薬物使用法確立の礎を構築した。第1章 薬物-薬物相互作用:フェノバルビタールが抗てんかん薬ゾニサミドの薬物動態におよぼす影響とその持続期間 フェノバルビタールはイヌのてんかんに対し第一選択薬として用いられている。しかし、副作用などにより減量あるいは退薬すべき時には、ゾニサミドと併用あるいはゾニサミド単独投与に変更することが多い。本章では、これら2薬の相互作用の可能性について追究した。フェノバルビタール反復投与中にゾニサミドを経口投与すると、ゾニサミドの最高血中濃度および半減期はフェノバルビタール非投与に比べ減少した。この作用は、フェノバルビタール断薬後も10週間持続した。また、チトクロームP450(CYP)活性の指標となるアンチピリンの代謝は断薬後4週まで促進されていた。本結果より、フェノバルビタール反復投与時および断薬後10週間はゾニサミドの代謝が促進されることでその血中濃度が減少し、少なくとも断薬後4週間はCYP誘導が血中濃度減少のメカニズムとして関与していることが示唆された。第2章 薬物-食餌相互作用:尿pHコントロール食が抗てんかん薬フェノバルビタールの薬物動態におよぼす影響 イヌでは、尿石症の治療・予防に尿を酸性化する食餌やアルカリ化する食餌を用いる。また、これらの尿石症は抗てんかん薬投与時により多く誘発される可能性が示唆されている。本章では、尿pHコントロール食と抗てんかん薬フェノバルビタールの相互作用の可能性について追究した。尿をアルカリ化または酸性化する食餌を与え、フェノバルビタールを単回経口投与すると、フェノバルビタールの血中半減期は、尿をアルカリ化する食餌で短くなり、酸性化する食餌で長くなった。また、フェノバルビタールの尿中排泄率は、尿のアルカリ化により上昇し、酸性化で低下した。本章では、尿pHコントロール食がフェノバルビタールの尿排泄率を変化させ、薬物動態に影響をおよぼすことが明らかとなった。第3章 薬物-病態相互作用:僧帽弁閉鎖不全(MR)が新規心不全薬ニコランジルの薬物動態におよぼす影響 イヌの心不全治療(主にMR)にはACE阻害薬、ジゴキシン、ループ利尿薬、ピモベンダンが用いられているが、これらを併用しても十分な効果を得られない症例が少なくないため、新規心不全薬の開発が待たれている。MRは薬物の体内動態に影響を与えることが報告されているため、本章では、獣医領域で有用性が期待される冠血管拡張薬ニコランジルとMRとの相互作用の可能性について追究した。作出したMR犬にニコランジルを経口投与したところ、ニコランジルの血中濃度は投与量依存性に増加した。薬物動態学的解析の結果、ニコランジルの体内動態はMR犬とコントロール犬との間に差は認められなかった。MRがニコランジルの薬物動態には影響を与えないことが示唆された。第4章 薬物-経口投与補助剤相互作用:経口投与補助剤(ペースト、カプセルおよびオブラート)がゾニサミドの薬物動態におよぼす影響 獣医療では、ペースト状の食べ物、カプセルやオブラートなどの経口投与補助剤は、粉薬や苦い薬物、多数の薬物を投与するときに汎用されているが、これらが薬物動態におよぼす作用は不明であった。本章では、苦みが強いにもかかわらず長期間にわたり反復投与する必要のある抗てんかん薬ゾニサミドを経口投与した時に、これらの経口投与補助剤がゾニサミドの薬物動態に及ぼす影響について追究した。単回経口投与後のゾニサミドの吸収は、ペーストで包むともっとも速く、カプセル、オブラートの順に遅かった。ペースト、カプセルおよびオブラートで包むことはゾニサミドの吸収を遅らせることが明らかとなった。第5章 薬物-サプリメント相互作用:セントジョーンズワートが免疫抑制剤シクロスポリンの薬物動態におよぼす影響 シクロスポリンは、イヌのアトピー性皮膚炎に対し有効性が高い薬物である。セントジョーンズワートは、無駄吠えや分離不安などのストレス要因に対し有用性が認められているサプリメントであり、アトピー性皮膚炎で痒みに苦しむイヌにシクロスポリンとともに併用する可能性がある。本章では、セントジョーンズワートとシクロスポリンの相互作用の可能性について追究した。セントジョーンズワート反復投与開始から少なくとも1週後にはシクロスポリンの血中濃度は減少し、その作用は4週間持続した。小腸および肝臓のCYP mRNA量を測定すると、それぞれCYP2B11/3A12およびCYP2C21/3A12のmRNA量が増加していた。以上の結果より、セントジョーンズワートが小腸及び肝臓のCYP3A12量を増加することによってシクロスポリンの薬物動態に影響をおよぼすことが示唆された。 本論文では、イヌ特有に薬物相互作用を引き起こす因子について薬物動態学的手法を用いて追究した。その結果、併用薬、食餌、病態、経口投与補助剤、およびサプリメントがCYP量増加などを引き起こすことで薬物動態に影響を与える可能性があることが明らかになった。本論文ではイヌの薬物相互作用研究の重要性を示唆するとともに、獣医療における適正な薬物使用法確立の礎を構築した。
著者
太田 光明 江口 祐輔 大木 茂
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.110-123, 2007

宏観異常現象というのは,「特別な機器を利用せずに観察できる異常現象」である。この言葉は地震前の前兆として起こる様々な異常現象に対して使われ,古今東西を問わず,様々な形で世の中に知れ渡っている現象である。兵庫県南部地震以降,この異常現象は注目され様々な形で取り上げられている。特に,動物の行動異常に関する情報は多く,この異常現象の情報をうまく収集することができれば,短期予測が可能なのではないか,と考えられる。そのことから,麻布大学動物人間関係学研究室(現:介在動物学研究室)では,NTTドコモの第三次携帯端末FOMAを利用して,イヌとネコの飼い主から普段見受けられない異常行動を発現したときにその行動を写した動画を同研究室に送信し,その行動は地震前兆前の異常なのかどうかを客観的に分析し,異常行動を起こすメカニズムや異常行動に関するデータを収集する,というシステムを始動している。この研究は,このFOMAを利用したモニターの説明を受けた人々が,宏観異常現象(特に動物の異常行動)や,このようなシステムに関してどのように受け止めたのかなどを,アンケート形式で答えていただいて,システムや地震,宏観異常現象の研究についてどのように考えているのかを分析していくものである。アンケートの結果から,ほとんどの人が大学の研究内容について知る機会がないとの回答であった。また,アンケートに回答していただいた方のうち,動物を飼っている人が過半数であるにもかかわらず,モニター参加をしてもよいと答えていただいた人は17%ほどしかいなかった。自由回答の欄では宏観現象について興味があると答えていた人でも実際には自ら「モニターになりたい」と答えていた人はほとんどいなかった。臨震情報を作り上げる上で,動物の異常行動の小さな情報を積み上げていくことは,とても重要なことである。臨震情報によって,多くの命を救うことができることが,被害想定でもしっかりと予測されている。地震の被害を最小におさえるために,各専門家や企業,個人が自分には何ができるのかをしっかりと考えて行動し,「差し迫る危険」に対してどう対処すべきなのかをじっくり考える機会を待つべきである。このシステムに参加することにより,日ごろから地震に対する防災意識が芽生えるとともに,ペットとのよりよい関係を築くことができれば,よりよいペットとの住空間を作り上げることができると考える。
著者
森田 英利 坂田 亮一 加藤 行男 久松 神
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.176-181, 2002

亜硝酸ナトリウム(NaNO_2),塩化ナトリウム(NaCI)あるいは数種類の抗生物質で処理したベロトキシン産生大腸菌(VTEC)O157:H7の3株から,ベロトキシン(VT)1型と2型の放出量を定量した。VTEC O157:H7のうち,2株がVT1型とVT2型の両者を産出し,1株がVT2型のみ産出した。VTEC O157:H7をNaNO_2(最少発育阻止濃度である6,000mg/L)で処理したがVT1型およびVT2型の放出量は増加しなかった。NaNO_2由来の一酸化窒素(NO)の抗菌メカニズムを明らかにするために,NaNO_2で処理したVTEC O157:H7の細胞を77Kでの電子常磁性共鳴吸収(EPR)法に供した。その結果,g値2.035と2.010のEPRシグナルを検出し,細胞内に鉄硫黄タンパク質とNOが反応して形成されたジニトロシル鉄硫黄錯体が存在した。またATPの合成も阻害されていた。このことから,NaNO_2出来のNOは細胞内に入り,呼吸鎖に関与する酵素を不活化したものと考えられた。
著者
坂田 亮一 岡谷 友三 アレシヤンドレ
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.125-128, 2008

本実験では,蒸し加熱で試作したソフトソーセージの破断特性および微生物学的品質を調べた。最大荷重,破断荷重,破断応力,破断歪率,破断エネルギーのすべてにおいて,調理当日の試料の値が低く,冷蔵試料,凍結試料の順で値が上昇し硬くなることが分かった。また,当日試料はほぼ平坦な波形を示し,冷蔵試料,冷凍試料は破断後,上昇したり,下降したりする波形を示した。当日試料に比べて冷蔵試料,凍結試料が硬くなったのは,冷蔵,凍結のせいではなく,蒸し加熱と重曹によってケーキの様に膨らんだ生地が真空包装によって締まったからだと思われる。また,調理当日測定のソフトソーセージはつみれ(いわし,ほっけなどを原料)と非常に類似した破断特性を示した。 微生物学的品質では,大腸菌群,黄色ブドウ球菌,サルモネラは検出されず,生菌数も指導基準の菌数限度を大きく下回る値となった。これは80℃で30分間の加熱処理によるものと考えられる。Soft sausages prepared by steam-cooking were investigated to measure their rheological nical properties and microbial quality. Maximal force, breaking strain and other property values are lower in the fresh soft sausage but were found to increase with refrigeration and freezing. The fresh sausage showed a flat wave pattern, but those of the refrigerated and frozen samples rose and fell, which caused hard structure in the sausage. The fresh soft sausage showed to have similar rheological properties to tsumire (fish meatball). With regard to microbial quality, E. coli, Staphylococcus aureas and Salmonella were not detected, and the aerobic bacterial counts were observed to be below the standard guideline level in Japan. This seems to be the effect of steam-heating at 80 ℃ for 30 min.
著者
永澤 美保
出版者
麻布大学
巻号頁・発行日
2008-03-15

犬との関わりが人にもたらす恩恵は、医療や福祉、教育など様々な分野において注目されているが、人と犬との関わりがなぜ人の心身に影響を与えるかについてはいまだ明らかではない。 犬によってもたらされる効果の機序を明らかにするためには、他の動物種には見られない犬の特異性に注目したうえで、実際の行動上の相互交渉に基づいた両者の関係性から客観的に判断する必要がある。 本研究では、人の母子間の絆の形成を説明する「アタッチメント理論」(Bowlby, 1969)に基づいて、犬との関わり方と飼い主の心身への影響との関連を明らかにすることを目的とした。アタッチメントは、子の生存確率や養育者の適応度を高めるための行動制御システムであると説明されており、子の養育者との近接を維持するための行動(アタッチメント行動)への養育者の対応の仕方が両者間の絆の形成に関連しているともいわれている。さらにラットやサルなどでは、絆の形成された対象の存在によって生理的変化が生じることが明らかにされている。 一方、犬は家畜化に伴って、人に対する社会的な認知能力が向上したといわれている。特に視覚による認知能力は、類人猿などに比べ、より人間に近い優れたものがあり、人との関係における犬の特性として注目されている。 そこで、人の母子間において、特に重要なアタッチメント行動といわれている「注視」に焦点をあてた。第1章では、「犬の視覚的行動がアタッチメント行動として作用し、飼い主の犬に対する養育行動を促進することで、飼い主の心身へ影響がもたらされる」という仮説を検証するために、犬の飼い主に対してアンケート調査を行った。その結果をふまえ、第2章では、飼い主と犬の交流時の行動を観察し、犬の「注視」が飼い主の心身の状態と関連があるかどうかについて検討した。さらに第3章では、その関連が「アタッチメント行動」から発したものであるかどうかを、内因性物質の変化に注目し、客観的に評価した。第1章 「犬の視覚的行動」と人から犬への愛着との関連【目的・方法】 犬の視覚的行動がアタッチメント行動として飼い主に認識され、心身の健康に影響を与えているかどうかについて調べるために、犬の飼い主および犬の飼育経験者(n=771)を対象にアンケート調査を行った。質問内容は、犬の視覚的行動に対する飼い主の意識と、犬への愛着の程度、犬の飼育状況、飼い主の飼育経験等であり、心理尺度への回答も求めた。【結果・考察】 アンケートの結果を重回帰分析したところ、犬の視覚的行動に対する飼い主の意識、犬への愛着、心理尺度、健康状態との間にそれぞれ有意な標準回帰係数が得られ(R^2=.09, p<.001)、飼い主が犬の視覚的行動を意識することと、犬に対して感じる愛着の程度に関連が見られ、人生や人間関係等に対するポジティブな感情をもたらすが示唆された。年代別では、23~39歳の群には関連が見られず、40~64歳の群と65歳以上の群に有意な結果が見られ(40~64歳:R^2=.15, p<.001, 65歳以上:R^2=.12, p<.001)、特に65歳以上の高齢者群では項目間で強い因果関係が見られた。犬への愛着の程度が飼い主の心身の健康に与える影響は、年齢層が高いほどその効果が期待されることが示唆された。この結果は、年齢や過去の飼育経験が現在の飼い主の精神的健康状態に影響を及ぼすこと(Nagasawa & Ohta, 2007)と一致した。 しかし、犬の視覚的行動と犬への愛着の程度はともに「犬のしつけの程度」と関連が見られたため(ともにp<.001)、犬への愛着や飼い主のポジティブな感情が本来の意味でのアタッチメントによって喚起されたものなのかどうかについて、さらに検討が必要となった。Nagasawa & Ohta(2007). The influence of the experiences of dog-ownership in the past on the present mental health of the elderly men.The 11th International IAHAIO Conerence, p.192.第2章 「犬からの注視」が飼い主の心身の健康に与える影響【目的・方法】 飼い主と犬との交流時に、実際に犬から飼い主へ向けられる注視行動が、飼い主の心身の状態に影響を与えるかどうかについて検討した。また、第1章で示された結果が、犬からのアタッチメント行動が飼い主に対して機能したことによるのか、あるいは、犬のトレナビリティ(trainabiliy)によるものなのかという課題についても検証を行った。実験室内において、飼い主(n=70)と犬に対し、基本的な指示を与え、また遠隔指示によるスラロームの課題を出し(実験1)、それを達成する過程での相互行動を観察し、各行動や課題の達成率と、飼い主の唾液中クロモグラニンA(CgA)、血圧・心拍数、心理尺度の実験前後の変化との関連を調べた。さらに同じ条件で課題を提示しない場合(実験2)との比較も行った。【結果・考察】 飼い主と犬との間に見られる交流のタイプによって群分けするために、「犬から人への注視時間」、「犬から人への接触時間」、「人から犬への接触時間」と「成功所要時間/回」の4項目に対して主因子法による因子分析を行った。得られた因子によってクラスター分析を行い、犬からの注視時間の長い「注視」群、注視、接触時間がともに低い「低交渉」群、人と犬の双方からの接触時間の長い「接触」群の3群に分け、反復測定分散分析を行ったところ、注視群は、精神的な負荷による交感神経の活性を反映するCgAの値の上昇が見られず、それに対し、接触群は実験後のCgA値が有意に高く(p<.001)、心理尺度の結果、不安度も高かった(p<.05)。血圧・心拍数は有意な差が見られなかった。実験2では、接触群のCgA値が実験1と比較して有意に低くなっていた(p<.001)。また、実験後に実施した心理尺度の結果から、注視群は生きがい感が高く、友人から社会的支援を受けていると感じている程度も有意に高くなっていた(生きがい感:p<.01, 友人からの支援:p<.001)。 以上の結果から、人と犬の双方からの接触が多い群はCgA値の上昇が見られ、不安度も増したのに対し、犬からの注視の長い群は本実験では飼い主に精神的な負荷をかけることなく、人と犬との間でスムーズなコミュニケーションを図ることができたと思われた。しかし、課題達成時間が注視群間で有意に短いこと(p<.05)と、犬のしつけの程度が高いほど達成時間も短いこと(rs=-.47,p<.05)から、本実験のCgAの反応は犬からの注視がアタッチメント行動として機能した結果ではなく、犬のトレナビリティに起因するものである可能性を排除できなかった。第3章 「犬からの注視」とアタッチメントとの関連~飼い主の尿中オキシトシンによる検証~【目的・方法】 「犬からの注視」と飼い主が感じるアタッチメントとの関連を正しく評価するために、飼い主(n=55)の尿中オキシトシン(OT)とCgAを用いて実験を行った。実験では、飼い主と犬の30分間の交流の中での、犬からの注視時間の長さと飼い主の尿中のOTおよびCgAの交流前後の変化との関連を見た(実験1)。また、実験中に見られた飼い主と犬との相互のやりとりを1バウトとして、各バウトがどの行動から始まったかで分類したものも解析に使用した。実験前後の気分の変化はPOMS短縮版によって測定した。さらに、飼い主が「犬からの注視」を認識できる場合とできない場合で、実験前後のOT値の変化に違いが見られるかどうか調べた(実験2)。実験2では、飼い主に壁を向いて座ってもらい、犬からの注視を直接認識できないようにし、それ以外は実験1と同じ条件で行った。【結果・考察】 事前に行ったアンケートの回答と実験中に観察された犬からの注視時間を用いて、クラスター分析を行い、飼い主を「高注視」群と「低注視」群の2群に分けて、反復測定分散分析を行った。 実験1では、高注視群の交流後のOT値が低注視群よりも有意に高くなっていた(p<.05)。また、高注視群では、OT値の実験後の上昇と犬からの注視で始まるバウト数との間に有意な高い相関が見られた(rs=.74, p<.01)。犬の注視を認識できない設定の実験2では、高注視、低注視群ともに、有意なOT値の変化は見られなかった。一方、CgA値はどの条件でも有意な変化はみられなかったが、高注視群のほうが低い傾向がみられた。しかし、高注視群において、犬からの注視時間とCgA値、POMS(緊張・不安度)得点の間にそれぞれ有意な相関が見られた(CgA:rs=.65, p<.05, POMS:rs=.66, p<.05)。 以上のことから、犬からの注視時間が長い群の方が、OT値が上昇することと、犬からの注視で始まるやりとりが多いほどOT値が上昇すること、飼い主による「犬からの注視」の認識を遮ることによってOT値が減少することが示され、「犬からの注視」がアタッチメント行動として飼い主に対して機能している可能性が示された。また、OT値の動向と年齢や性別等との関連についても新たな結果が得られた。一方、注視時間が長いほどCgAや緊張度が上昇することから、OTとCgAとでは、それぞれアタッチメントの異なる側面を表していることが示唆された。まとめ 本研究は犬の何が、どのようにして人の心身に影響を及ぼすのか、その一端を明らかにすることができた。犬から飼い主に向けられる「注視」は視覚によるアタッチメント行動として飼い主に認識され、その結果、飼い主の精神状態に変化をもたらすことが示された。動物は種特異的なアタッチメント形態を持つといわれているが、本研究では人と犬とがアタッチメントにおいて共通の基盤を持つ可能性が示され、なぜ、犬がこれほどまでに人社会に溶け込むことができたのかという疑問の解明につながると考えられる。さらに、それぞれの飼い主と犬とが固有の関係を持つことや、犬が人の健康にもたらす効果に差が生じることを説明する上で、「視覚的アタッチメント行動」は明確な指標となりえると考えられる。 また、本研究で測定した尿中OTは、人の内的変化を客観的に評価できるものとして、その有用性は高い。従来、動物とのふれあいによる効果は、コルチゾールやカテコラミンによって、ストレス反応を軽減させる「緩衝作用」として評価されてきたが、愛情や親和的情動等ポジティブな効果の評価には適切とはいえない。OTは、社会的な接触によって分泌が促進される等、個体間の関係性に関するポジティブな評価が可能であり、本研究では30分間という短い犬との交流でも、その影響が尿中OTに反映された。今後、人と動物との関わりを評価する際の重要なパラメータとなりうるであろう。
著者
植竹 勝治 中谷 治奈 増田 尚子 吉田 善廣 江口 祐輔 田中 智夫
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.17/18, pp.191-193, 2009-03-31

γ-アミノ酪酸 (GABA) の経口投与が肉用牛の長距離輸送および出荷・屠畜時のストレスを低減するかどうかを調べた。試験1では,対照区の去勢牛4頭に20mLの蒸留水を,処理区の去勢牛4頭に体重当たり10mgのGABA粉末を20mLの蒸留水に溶解した水溶液を,それぞれ130.1kmの陸路輸送直前に経口投与した。分散分析の結果,供試牛の唾液中コルチゾール濃度に対する処理と輸送経過時間との交互作用は,経過時間が60分までは有意 (P<0.05) であったが,120分以降については有意ではなくなった。試験2では,肥育牛20頭を5頭ずつ4処理区に分け,屠畜場への輸送前と翌朝の屠畜直前に,G区には13gのGABA粉末を100mLの蒸留水に溶解した水溶液を,S区には100mLの生理食塩水を,SG区には輸送前に生理食塩水と屠畜直前にGABA溶液を,それぞれ経口投与した。C区には輸送前も屠畜直前にも何も投与しなかった。多重比較検定の結果,いずれの処理区のウシの血漿コルチゾール濃度も,C区のウシよりも有意に低かった (全てP<0.01)。血漿アドレナリン濃度も,C区に比べ,S区のウシで有意に低く (P<0.05),G区のウシで低い傾向 (P<0.10) がみられた。これらの結果から,GABAの経口投与は,肉用牛の輸送および屠畜時のストレスを投与後数十分間は低減させることが確認された。
出版者
麻布大学
巻号頁・発行日
2015

The so-called “Ogasawara cockroaches”, which hitherto has also been synonymously called “Surinam cockroaches”, are widely distributed throughout the world in the tropical and sub-tropical areas. In Japan, their distribution is limited to Kagoshima in Kyushu and the island chain of Nansei and Ogasawara island chain. In recent years, this cockroach has invaded into urban buildings and abode, resulting in the report of their capture or eradication attempts. The problem of urban buildings invasion by this cockroach has also been seen in other countries. From an epidemiological perspective, Kim and Erko (2008) reportedly detected the potentially zoonotic helminth ascarid and taeniid eggs on the body surface of this species of cockroach in Ethiopia. Furthermore, they also reported the presence of trichurid eggs and Entamoeba coli cyst in the digestive tract of the cockroach. These findings has put the spotlight on the role of the cockroach as a potential mechanical transmitter zoonotic infectious diseases.Regarding the constituent species of the so-called “Ogasawara cockroaches” or “Surinam cockroaches”, it seem that there were two apparently morphologically similar species, namely Pycnoscelus indicus and Pycnoscelus surinamensis, with the former showing bisexual reproduction and the latter, parthenogenesis. For the identification of these two species, Roth (1967) proposed that for the adults, irrespective of the presence or absence of sperms in the spermatheca, those which produce only female offspring should be identified as Pycnoscelus surinamensis, while those that produce both male and female offspring should be relegated as Pycnoscelus indicus. Moreover, he also reported that there were morphological differences between the two aforementioned species, based on the distance between the compound eye and ocelli. In P. indicus, the ocelli and the compound eyes were separated, whereas in P. surinamensis, the two eyes were in contact.The male of P. indicus are relatively more susceptible to dryness than the female, and easily died off under non-optimal environmental condition, leading to reduced chances of mating. However, since P. surinamensis is parthenogenetic and does not need male to reproduce, they can even proliferate under a harsh environmental condition if a single female is able to invade and survive under that condition.Asahina (1991) reported that both male and female individuals could always be found among the “Ogasawara cockroaches”, without noting that the female were parthenogenetic. This led him to suspect that the Japanese “Ogasawara cockroaches” might include P. indicus. However, he proposed that until the detailed breeding experiments had been carried out, the “Ogasawara cockroaches” should all be tentatively be identified as P. surinamensis. Thus, despite that the Ogasawara cockroaches has been recognized as a pest, their species identification and distribution has not been clearly elucidated.To clarify the species involved, first of all, we need to establish a criteria be able to identify the sex of the cockroach at the larval stage before they mature into set out to establish a method to differentiate the sex of male and female cockroach from the larval stage to the adult stage. Sexual differentiation of the cockroach nymph for all the instar stages of Blatta orientalis, Supella longipalpa and Periplaneta fuliginosa has been established, based on the morphological observation of the abdominal segments of the in star.In our study, cockroaches were collected in Ishigaki island, Taketomi-cho, district, Okinawa prefecture, Japan. They were then reared and passaged for several generations in the laboratory. Only those groups that produced offspring, which matured into male and female adults were used in the following experiment. The instar that hatched from the eggs were immediately isolated and separated according to their morphoplogical characteristic of ventral segments. Changes on the ventral segment were also noted for each instar stages and ultimately, the sex of the mature adult for each group was determined. Using the aforementioned method, the female of the 1st to 6th stage instar nymph were found to possess a V-shaped notch at the middle of the posterior edge of the 9th sternite. This notch was not seen in the male nymph. In the female 7th stage (final stage) instar nymph, the styli were not apparent and, the 8th and 9th sternites became degenerated and were covered over by the profoundly developed 7th sternite. In contrast, all stages of the male nymph until the 7th stage nymph showed the presence of the 8th and 9th sternitesas well as styli. Based on these observations, our study has demonstrated that it is possible to differentiate the sex of the Indian cockroach, P. indicus, at different developmental stages.Next, to identify the various specimens as to which stage the nymph instar belong to, we counted the number of cercal segments from the dorsal and ventral view. It was observed that the number of cercal segments from the dorsal view in 2nd and 3rd stage nymph were the same, that is 4 and thus could not be used to identify the nymph stage. However, when viewed ventrally, it was observed that the number of cercal segments on the1st stage nymph was 3; 2nd stage, 4; and in the subsequent stages, an increase of one extra segment for each stage. The number of cercal segments of all the stages of the female, right up to the 7th stage nymph, when viewed ventrally were the same as that of the male nymph. Therefore, the developmental stage of the nymph could be identified by examining the number of segments from the ventral view.Based on the above results, we set out to confirm species and distribution of Surinam cockroaches inhabiting Japan. We collected cockroaches from Ogasawara island chain (Iwoto, Hahajima, Chichijima, Nishijima, Nakodojima), Amami island chain (Tokunoshioma, Amamiooshima), Okinawa island chain (Okinawato, Miyakojima, Ishigakijima) and Hawaii, kept the female in solitary rearing for use in later mating experiments. Cross breeding experiments that were carried out showed that there were those cockroaches from Iwoto, Tokunoshima, and Okinawato that produced only female offspring, and also that produced both male and female offspring. The former group was designated A group and the latter, B group. Both groups comprises of 14 isolates from 11 areas. The cockroaches from both groups were then used for subsequent cross breeding experiments. For the cross breeding experiments, those specimens that produced only female offspring were mated with those male from Hawaii that had produced both male and female offspring and had been identified a P. indicus as previously reported by Roth (1967). From the results of our study, the area that contain the two different characteristic types of the cockroaches were Iwoto, Tokunoshima and Okinawato, whereas an individuals of Iwoto- A group, which produced a total of 478 female and no male offspring, despite having sperms in their spematheca, can be identified as P. surinamensis. On the contrary, while those of Iwoto-B group with all having sperms in their spermatheca, produced a total of 168 male and 157 female offspring in an average ratio of 10.8 to 10.5 (p>0.05) with no significant difference in the sexual ratio, can identified as P. indicus. Cockroaches of Tokunoshima-A group that produced a total of 221 female and no male offspring, despite having sperms in their spematheca, can be identified as P. surinamensis, while those of Tokunoshima-B group with all having sperms in their spermatheca produced a total of 242 male and 207 female offspring in an average ratio of 12.1 to10.4 (p>0.05) with no significant difference in the sexual ratio, can thus be identified as P. indicus.On the same note, female cockroaches of Okinawato-A group that produced a total of 724 female and no male offspring, despite having sperms in their spematheca, can be identified as P. surinamensis, while those of Okinawato-B group with all having sperms in their spermatheca produced a total of 322male and 312 female offspring in an average sexual ratio of 16.1 to 15.6 (p>0.05) with no significant difference in the sexual ratio, can be identified as P. indicus.Thus, both species of P. surinamensis and P. indicus were found to be distributedon the three islands of Iwoto, Tokunishima and Okinawa, with their habitat overlapping with each other.The group of five F1 female cockroaches from Hahajima, Chichijima, Nishijima and Nakodojima, produced a total of only 248, 59, 663 and 143 female offspring, respectively and no male offspring, despite having sperms in their spematheca. These cockroaches were identified as P. surinamensis. Thus, there is a possibility that only P. surinamensis and not P. indicus are distributed on these four islands.The group of five F1 female cockroaches from Amamiooshima, Miyakojima, Ishigakijima and Hawaii, produced a total of 260 male (M) and 260 female (F) offspring with an average ratio of M:F at 14.4:14.4 (p>0.05) per litter, 230M, 267F, av. 16.4:19.1 (p>0.05) per litter, 281M, 266F, av. 16.5:15.6 (p>0.05) per litter and 199M, 189F, av. 11.7:11.1 (p>0.05) per litter, respectively. Thisprobably indicates that only P. indicus and not P. surinamensis were inhabiting the four islands.From the above results, we can conclude that there are areas in Japan where the distribution of P. surinamensis and P.indicus overlap with each other, and there are also areas in which either only one or the other could be found.Futhermore, all the various specimen from our study were examined for morphologic differences between the 2 species. Roth (1967) stated that P. surinamensis could be morphologically distinguished from P. indicus based on the distance between the ocelli and compound eye, in which the former species show contact between the ocelli and the compound eye, while in the latter species, they are separated. However, in our experiments, we could not find any female adult cockroach of P. surinamensis, whose ocelli were in contact with the compound eye, that is, for the groups that do not produce any male offspring, the distance between ocelli and compound eye in the adult female from the various localities are as follows: Hahajima, 0.16 mm > Chichijima, 0.14 mm > Nakodojima, 0.13 mm > Nishijima, Tokunoshima-A & Okinawato-A, 0.12 mm > Iwoto-A, 0.10 mm, respectively, with an average distance of 0.13 mm. For the groups that produce both male and female offspring, identified as P. indicus, the distance between ocelli and compound eye in the adult female from the various localities are as follows: Hawaii, 0.21mm > Iwoto-B, 0.18 mm > Miyakojima, 0.16 mm > Amamiooshima & Okinawato-B, 0.13 mm > Tokunoshima-B & Ishigakijima, 0.12 mm, respectively, with an average distance of 0.15 mm.There was no significant difference in the distance between the ocelli and compound eye between the two species. Thus, this morphological criterion is not applicable for species identification.The length of tegmina has been used as a criterion for species identification in many insects. Thus, we proceed to measure the length of the tegmina of the adult female cockroaches in our study. For the groups that do not produce any male offspring, identified as P. surinamensis, the average tegmina length of the adult female from the various localities are as follows: Okinawato-A, 15.82 mm > Hahajima, 15.26 mm > Nishijima, 15.07 mm > Nakodojima, 14.16 mm > Chichijima, 13.81 mm > Tokunoshima-A, 13.57 mm > Iwoto-A, 12.87 mm, respectively. For the groups that produce both male and female offspring, identified as P. indicus, the average tegmina length of the adult female from the various localities are as follows: Okinawato-B, 14.72 mm > Hawaii, 14.64 mm > Iwoto-B, 14.35 mm > Ishigakijima, 13.81 mm > Tokunoshima-B, 13.54 mm> Amamiooshima, 13.53 mm > Miyakojima, 12.96 mm, respectively. It was observed that there was not much difference in the tegmina length among the specimens from different localities and also between the two species, thereby excluding the used of this criterion for species identification.Moreover, to differentiate the species without using the cross breeding experiment, we tried the method of solitary rearing of the unmated female adult cockroaches obtained from our previous experiments. Our results showed that all individuals identified as P. surinamensis produced offspring, and based on our previous sexual differentiation method of the nymph, all the offspring nymph were found to be female. On the contrary, individuals identified as P. indicus did not produce any offspring. From this observation, we can identify the species of the adult female cockroach collected from the wild by solitary rearing and examining the sex of the offspring produced. Thus, those female adult that produce only female offspring can be identified as P. surinamensis and that that produce both male and female offspring or those that did not produce any offspring can be identified as P. indicus.Based on the results of the above studies, the so-called “Ogasawara cockroaches” which has until now been thought to consist of only P. surinamensis, actually also comprises of P. indicus, which are also distributed in the same area. From our study, we have also added one more species of cockroach that inhabit Japan, that is to 58 species. Until recently, P. indicus and P. surinamensis were thought to be distributed in different areas but our study shows that there are areas in which both species co-habitat together and there are also areas in which either only one of the two species can be found. This finding has deep implication for future studies. In addition, we also found that the criterion of using the distance between the ocelli and the compound eye for species identification, as proposed by Roth (1967), is applicable nor reliable. We propose an alternative method in the form of solitary rearing of wild female adult and determining the sex of the offspring for species identification. Those that produce only female offspring be identified as P. surinamensis, while those that produce both male and female offspring, as well as that that failed to produce, should be regarded as P. indicus. Since the report by Asahina (1991) that species identification of “Ogasawara cockroaches”, needs further clarification, the results of our present study has provided the answer to his question through our morphological observation, cross breeding and solitary rearing experiments of those cockroaches.
著者
桐生 崇 光崎 龍子
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.49-59, 2003

High economic growth in Japan has affected social structure and local populations. After urban concentration of the population, residential areas developed in suburbs existing towns and cities surrounding the big cities. Population movement is a phenomenon that constructs new social relationships in combination with existing relationships and it is necessary to understand this phenomenon on the basis of an aggregate of individually occurring phenomena. Sagamihara city, Kanagawa Prefecture, is located 30-40km from Tokyo, and has developed as a satellite town. This city is suitable for development, but geographically it has a long axis from north to south, and the transportation connecting Tokyo has clustered on one side. We examined the social local characteristic through human relationships as a measure of the problems related to residential life. The following conclusions were drawn: 1. Population growth in Sagamihara was related to transportation and high economic growth. Because of changes to the social structure, the population trend is increasing, and social increase is a great contribution to this trend. 2. As to the population structure, the population of Sagamihara was small in 1965, but it had doubled by 1975, when it showed the star shape of an urbanized population structure. Now, it is showing a change to the gourd shape, suggesting population decrease. 3. Future municipal policies in Sagamihara should take this aging into consideration.
著者
吉本 正 谷田 創 田中 智夫
出版者
麻布大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989 (Released:1989-04-01)

研究者らは1985年以来,暑熱環境における雄豚のサマ-ステリリティについて検討を行ない,30〜35^。Cの環境温度において3〜6週間飼養すると明らかに造精機能が低下することを認めた.現在は,その造精機能の低下防止について検討を行なっており,平成元年からは当補助金を受け,局所冷却による造精機能の低下防止法について検討を行っている.初年度は,自然環境下において局所冷却(豚の首〜肩部に水滴を落下させる drip cooling法)を行ない,その効果をサ-モグラフィ-を用いて生理反応の面から検討した.その結果,自然環境温(29〜31^。C)の条件下においては,局所冷却を行なうことによって豚体の皮膚表面温を2〜3^。C抑制する効果が認められた.2年度は環境調節室を用い,適温期(24^。C一定)を3日間,加温期(33^。C,10h;28^。C,14h)を4週間とし,大ヨ-クシャ-種雄豚6頭を用いて,同様の調査を行なった。実験1では,水滴の落下位置を検討するために,33^。Cの室温において,頭部,頸部,精巣部に水滴を11分ごとに1分間,滴下させて,それが全身の皮膚温に及ぼす影響を調査した.その結果,頸部に水滴を落下させた場合に全身の皮膚温を低下させる効果が認められた.実験2では,実験1の結果を基に,頸部に水滴を落下させた場合における適温期および加温期(33^。時)の心拍,呼吸,直腸温,サ-モグラフィ-による皮膚温および精液性状を調査した.その結果,心拍数および呼吸数に対しては大きな影響を与えなかったが,直腸温および皮膚表面温については約1^。C上昇を抑える効果が認められた.以上のことから,drip coolingによる局所冷却は,雄豚のサマ-ステリリティ-の方止に十分,活用できる方法であることが示唆された.
著者
森 裕子 遠藤 伸 伊藤 亨子 柏崎 直巳 二宮 博義 猪股 智夫
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.125-127, 2006

本研究は,ビオチン欠乏がラット海馬へ及ぼす影響について,Timm染色法を用いて海馬組織を組織計測するとともに,DNAマイクロアレイ法を用いて海馬組織における遺伝子発現を検証した。組織学的観察では,歯状回,CA1,CA3の各エリアにおいてBD群の方がBS群より神経細胞が小さい傾向を示し,ビオチン欠乏により海馬神経細胞の代謝活性が低下していることが示唆された。また,Hilus,Lucidum領域のシナプス密度は,背側海馬(頭側)では両群の間に差は認められなかったが,腹側海馬(尾側)ではBD群の方がBS群より有意に増加しており,ヒト側頭葉てんかんに見られる所見に類似することが示唆された。さらに海馬組織の遺伝子発現については,BD群では細胞間や細胞内情報伝達に関わる複数の遺伝子(アセチルコリン作動性受容体,AMPA型受容体,神経軸策伸張に関わる関連遺伝子)が抑制されており,ビオチンが遺伝子発現にも重要な働きを示すものと推察された。ビオチンは脳機能の維持,特に記憶・学習に関与している可能性がある。
著者
大仲 賢二 古畑 勝則 福山 正文
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.241-247, 2006

Vibrio vulnificus感染症の感染経路や感染源を解明する一環として,環境由来株とヒト臨床由来株について血清型別,各種抗菌剤の薬剤感受性試験およびPFGE法によりDNA解析を行い分子疫学的検討を行ったところ,以下の成績が得られた。1.由来別に血清型を検討したところ,環境由来では72.5%が18菌型に型別され,O7が43.1%と最も多く,次にO4が6.1%などであった。ヒト臨床由来では87.1%が8菌型に型別され,O4が43.5%と最も多く,次にO7が12.9%などであった。その地域別において,東日本地域では69.2%が18菌型に型別され,O7が44.6%,04が5.7%などに,西日本地域では64.8%が8菌型に型別され,O7が20.4%と最も多く,次にO4が11.1%などにそれぞれ型別された。2.由来別に薬剤感受性をMIC_<90>で比較検討したところ,環境由来ではABPC,PIPC,CPZ,CTX,LMOX,MEPM,GM,EM,TC,DOXY,MINO,CP,NAおよびCPFXに感受性を示したが,CER,CET,CTX,CMZ,KMおよびLCMに対して耐性株が認められた。ヒト臨床由来ではEM,TC,DOXY,MINO,CP,NAおよびCPFXに感受性を示したが,ABPC,PIPC,CER,CET,CPZ,CTX,CMZ,LMOX,MEPM,KM,GM,AMKおよびLCMに対して耐性株が認められた。3.Not IとSfi Iの2種類の酵素を用いてそれぞれDNA切断を行い,PFGE法でDNA解析を検討したところ,酵素別のDNAパターン判読率は,Not I では76.9%,sfi Iでは97.9%を示し本菌のDNAパターン判読率はSfi Iが優れていた。4.Sfi IによってDNAパターンが判読された菌株をUPGMA法で解析を行ったところ,類似度が低く多岐のクラスターを示し,本菌感染症は複数のクローンから発生していることが明らかとなった。また,由来等が異なるが類似度が89%以上の類似度で,臨床株と環境株の組合せが認められることから,環境からヒト,ヒトから環境への感染の可能性が考えられた。
著者
大仲 賢二 古畑 勝則 福山 正文
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.13/14, pp.241-247, 2007-03-31

Vibrio vulnificus感染症の感染経路や感染源を解明する一環として,環境由来株とヒト臨床由来株について血清型別,各種抗菌剤の薬剤感受性試験およびPFGE法によりDNA解析を行い分子疫学的検討を行ったところ,以下の成績が得られた。1.由来別に血清型を検討したところ,環境由来では72.5%が18菌型に型別され,O7が43.1%と最も多く,次にO4が6.1%などであった。ヒト臨床由来では87.1%が8菌型に型別され,O4が43.5%と最も多く,次にO7が12.9%などであった。その地域別において,東日本地域では69.2%が18菌型に型別され,O7が44.6%,04が5.7%などに,西日本地域では64.8%が8菌型に型別され,O7が20.4%と最も多く,次にO4が11.1%などにそれぞれ型別された。2.由来別に薬剤感受性をMIC_<90>で比較検討したところ,環境由来ではABPC,PIPC,CPZ,CTX,LMOX,MEPM,GM,EM,TC,DOXY,MINO,CP,NAおよびCPFXに感受性を示したが,CER,CET,CTX,CMZ,KMおよびLCMに対して耐性株が認められた。ヒト臨床由来ではEM,TC,DOXY,MINO,CP,NAおよびCPFXに感受性を示したが,ABPC,PIPC,CER,CET,CPZ,CTX,CMZ,LMOX,MEPM,KM,GM,AMKおよびLCMに対して耐性株が認められた。3.Not IとSfi Iの2種類の酵素を用いてそれぞれDNA切断を行い,PFGE法でDNA解析を検討したところ,酵素別のDNAパターン判読率は,Not I では76.9%,sfi Iでは97.9%を示し本菌のDNAパターン判読率はSfi Iが優れていた。4.Sfi IによってDNAパターンが判読された菌株をUPGMA法で解析を行ったところ,類似度が低く多岐のクラスターを示し,本菌感染症は複数のクローンから発生していることが明らかとなった。また,由来等が異なるが類似度が89%以上の類似度で,臨床株と環境株の組合せが認められることから,環境からヒト,ヒトから環境への感染の可能性が考えられた。