著者
堂ヶ崎 知格 角野 洋一 川上 泰 山本 裕介
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.203-206, 2005

ヤーコンの塊根部は流通や貯蔵の過程で褐変化することによって商品価値が低下することがしばしば問題となる。これはヤーコンに含まれているポリフェノール化合物が酵素的反応によって重合体となり,褐変現象を引き起こすためである。しかしながら,この重合体はVesiculogenと呼ばれ,食品の色,香りと強く関係するのみならず,免疫賦活効果と関連することが指摘されるが,生理活性に関する研究報告は少なく,その生成機序などにも不明な点が多い。また,Vesiculogenはその生成過程で様々な要因(食品中の成分,温度,反応時間など)の影響を受けるため,食品中で既に生成したVesiculogenの構造解析や機能性の直接的な検討は困難であるため,本研究ではヤーコンに含有されるものと同等の市販のポリフェノール標準試薬を用いてVesiculogenの合成を試みるとともに,マウスリンパ細胞を用いたマイトジェン活性試験によりVesiculogenの生理活性を検討した結果,以下のとおりであった。1)ヤーコンに含まれる各種成分の分析ヤーコンを塩酸濃度が2Nになるように加えて調製された50%メタノールで抽出し,抽出物をさらに酢酸エチルで分配抽出した。抽出物はHPLC(ODS-C18カラム10.Omm×250mm,溶離液0.05%TFA/メタノールを用いた)で分離し,それぞれの分離ピークをFT-IR,LC-MS,NMR等の分析機器を用いて構造解析を行った。その結果,ヤーコン抽出液中から,フマル酸,クロロゲン酸及び3種類のジエン系化合物が検出された。フマル酸の定量値は可食部100gあたり537.2mgであった。また,ヤーコンにフマル酸が含有されることは未報告であり,ヤーコンには新たに疲労回復の効果が期待されることがわかった。ジエン系化合物については,いずれも文献等に未記載であり,新規化合物の可能性が強く示唆された。2)褐色色素群の合成と生理活性ヤーコンに含有される主なポリフェノールはクロロゲン酸のみであったことから,市販のクロロゲン酸標準品を用い,同じく西洋ワサビ由来の市販の酵素(HRP)並びに少量のH_2O_2を添加して室温で反応させ,Vesiculogenを合成した結果,クロロゲン酸50mg,HRP20mgおよびH_2O_2(市販品100倍希釈液)5mlを添加した場合に最も褐変濃度の高いVesiculogenを得た。次いで,生理活性の一つして免疫賦活効果を検討するために,マウスリンパ細胞を用いたマイトジェン活性試験を行い,リンパ球幼若化能を検討した。その結果,分子量が50kDa以上の高分子なVesiculogen画分にのみ顕著な活性が認められた。以上より,酵素的褐変色素はヤーコンをはじめとするポリフェノール含有食品において容易に生成されることが推測され,免疫賦活効果に深く関与することが示唆された。
著者
後藤 純雄 高木 敬彦 阪口 雅弘 峯木 茂
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

環境空気浮遊粒子中の真菌類の存在実態を把握するため、粒径別分級採取法、分子マーカーのGC/MS分析法、リアルタイム濃度測定法などについて検討した結果、大学室内及び牛舎内空気で平均粒径1.1μmのステージに多く採取されたこと、室内空気中エルゴステロール濃度が0.067~4.2(平均1.1)ng/m^3となり屋外空気中のそれらとほぼ同等であったこと、レーザー照射蛍光測定装置を用いるとリアルタイム測定が可能であることなどを認めた。
著者
宇根 ユミ
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2011-04-06)

本研究は、外来/野生動物に流行する感染症および病原体のリスクプロファイリングを行い、その対策を確立して、我が国の生態系および生物多様性の保全に貢献しようとするものである。カエルツボカビは国内に広く、高率に分布し、国内の両生類は海外とは異なる多くのハプロタイプを有していることを明らかにし、併せて非侵襲的検査法と除菌法を確立した。ラナウイルスによる大量死事例の確認と感染実験により本ウイルスの高い病原性を明らかにした。また、国内でラナウイルスが分布を広げ、かつ保有率が急上昇していることを示した。これらの研究活動の成果を公表し、実務的な流行阻止・防除システムの構築に、有用な情報を提供した。
著者
宇根 有美
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.124-129, 2007

愛玩用に輸入される齧歯類の公衆衛生上のリスクを評価するために,2006年に輸入動物届け出制度に基づき衛生証明書が添付され輸入された8種の齧歯類,計140匹を対象として病原体保有状況調査を行なった。その結果,レプトスピラ(Leptospira alexanderi)がステップレミング1匹(1/10,10%)で検出された(全頭の0.7%)。Borrelia属細菌は,シマリス5匹(5/30,16.7%)から,B. grahamiiおよびB. washoensis,それぞれ3匹,2匹から検出された。また,消化管よりSalmonella Enteritidisが11/140,7.9%分解された。140匹中20匹の皮膚よりS. aureusが分離され,特にデグー1ロット(9/10)とピグミージェルボア(8/10)からの分解率が高かった。消化管内寄生虫として,人獣共通寄生虫である小形条虫が23匹のハムスター(ジャンガリアンおよびゴールデン)で確認された。なお,腎症候性出血熱,ペストおよびライム病の病原体に対する抗体を保有する動物はいなかった。また,Yersinia pestis,野兎病菌,豚丹毒菌も分解されなかった。以上のように,過去に実施した愛玩用野生齧歯類を対象とした成績より,今回検出された病原体の種類は少なかったものの,輸入ロット毎に汚染の高度な動物群が存在し,野生動物ではみられなかった病原体も確認されたことから,衛生証明書の添付が義務付けられた現在でも,一般市民に愛玩用としての齧歯類の取り扱いに関して注意を喚起し,動物取り扱い業者へは,駆虫を含めた衛生指導が必要と思われる。
著者
福山 正文 角野 洋二 原 元宣
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.194-198, 2002

ヒトのVero毒素産生性大腸菌(VTEC)感染症における感染源や感染経路を明らかにするため,1997年8月から1998年1月までの期間にハトは相模原市で,カラスは相模原市,川崎市,横浜市および東京都内で害鳥駆除のために捕獲した野鳥の腸管内容物を採材し,VTECの分離を試みたところ,以下の成績が得られた。1)供試した521例中32例(6.1%)からVTECが分離された。その内訳において,ハトでは相模原市262例中25例(9.5%)から,カラスでは相模原市184例中7例(3.8%)からそれぞれ分離されたが,横浜市11例,川崎市4例および東京都内60例からは1例も分離されなかった。2)分離された33株について毒素型別を行ったところ,VT1産生株が4株(6.5%),VT2産生株が27株(88.7%),VT1とVT2両毒素産生株が2株(4.8%)であった。3)分離株の血清型では,O78:H-に10株,次にO152:H-に7株,O153:H19に2株,O164:H-,O128:H-,O164/O143:H-およびO1:HUTに各1株が型別されたが,残り10株は型別不能であった。また,型別不能10株のうち,1株は自家凝集が認められた。4)供試した33株についてeacAを確認したところ,31株(93.9%)が保有していた。以上のことから,ヒト下痢症由来VTECの毒素型や血清型と一致する菌株がハトやカラスから分離されたことや病原性の発現に重要な関与が考えられるeacAを高率に保有していたことから,ヒトVTEC感染症の感染源の一つとしてこれらの鳥類も関与する可能性が考えられた。
著者
高槻 成紀 吉田 邦夫 須田 知樹 佐藤 雅俊 佐藤 喜和
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

研究の目的は野生馬タヒを自然復帰した保護区におけるギルドの解析であった。草食獣については大型のタヒとアカシカの群落選択と食性比較をおこない、タヒは草原をアカシカは森林を利用し、食物もタヒはイネ科を主体とし、アカシカはイネ科と双子葉を半々程度食べていることがわかった。最終年には当初予定していなかったユキウサギとシベリアマーモットを含めた比較ができた。肉食動物については鳥類は営巣崖値の調査が危険であるためにサンプルの確保ができず、断念した。しかしオオカミとキツネの比較はできた。ただし糞分析法を採用したため、アカギツネとコサックギツネの区別はできず、「キツネ類」としてまとめた。この分析によりオオカミはもっぱら哺乳類を食すが、キツネは夏は昆虫をよく食すことがわかった。またオオカミは保護区外の家畜をよく採食していることがわかり、保全上の問題が浮上した。タヒ個体数の順調な増加は保護区の設立目的からして歓迎されているが、保護区を生態系保全という視点でみた場合、草食獣による影響が強くなりつつある。そこで森林群落での影響調査を実施したところ、構成樹木の非常に高い枯死率、ディア・ラインの形成、若木の生長阻害が認められた。資源利用とこれらの結果から、タヒ・草原系とアカシカ・森林系の関係において、タヒ・草原系には有利に葉たらしているが、アカシカ・森林系が縮小・退行していることが懸念される。全体としては初期の目的をほぼ達成することができたが、食肉鳥類が分析できなかったこと、肉食獣の同定に限界があった点は課題を残した。これらの成果は順次論文として公表する予定であり、資源利用の基礎となるバイオマス推定についてはすでに投稿中であり、食性などは論文準備中である。
著者
田中 智夫 太田 光明
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.230-234, 2002

平成14年4月より行っている動物介在活動・療法(AAT/AAA)教育プログラムは,行動学者,人と動物の関係学の研究者,動物福祉の研究者,獣医師,心理学者,精神科医,心理療法士,ソーシャルワーカー,教育学者らが集まって,AAT/AAAに関わる人材を育てるための継続的な教育カリキュラムで,2年間で修了する。このプログラムは,Dennis C.Turner博士(institute for applied Ethology and Animal Psychology所長,スイス,本学客員教授)によって開発されたもので, 1998年に行われたプラハでのIAHAIO(international Association of Human and Animal Interaction Organi-zations)国際会議で発表され,1999年の4月に第1期生をスイスで迎え,現在はアメリカはじめ国際的に認知されている。本学では,Turner博士を含む欧米の教育・研究者6名と本学教員からなる講師陣を構成し,獣医学部ならびに獣医学研究科の研究教育カリキュラムヘの導入を図った。講義(英語)は,心理学,人と動物の関係学,人と動物に関する行動学,動物の心理学,AAT/AAAに携わる動物の適切なケア,AAT/AAAに関する倫理や危機管理,患者自身の安全管理,人獣共通感染症,動物のトレーニング方法,産業動物や野生動物を用いた作業療法など多岐にわたる。また,精神科病院や刑務所(アメリカ,カナダなど)の見学,学校への訪問など学外実習も含まれている。2年間の間に,課題レポート(英語)の提出があり,また最終試験は口答試問(英語)によってなされる。このプログラムを修了することによって得た認定書は,日本はもちろん,ヨーロッパ各国および北米でも通用するものであり,2004年3月に修了する第一期生への期待は極めて大きい。この4月より,第二期生に対するプログラムが開始された。
著者
大仲 賢二 古畑 勝則 福山 正文
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.241-247, 2006

Vibrio vulnificus感染症の感染経路や感染源を解明する一環として,環境由来株とヒト臨床由来株について血清型別,各種抗菌剤の薬剤感受性試験およびPFGE法によりDNA解析を行い分子疫学的検討を行ったところ,以下の成績が得られた。1.由来別に血清型を検討したところ,環境由来では72.5%が18菌型に型別され,O7が43.1%と最も多く,次にO4が6.1%などであった。ヒト臨床由来では87.1%が8菌型に型別され,O4が43.5%と最も多く,次にO7が12.9%などであった。その地域別において,東日本地域では69.2%が18菌型に型別され,O7が44.6%,04が5.7%などに,西日本地域では64.8%が8菌型に型別され,O7が20.4%と最も多く,次にO4が11.1%などにそれぞれ型別された。2.由来別に薬剤感受性をMIC_<90>で比較検討したところ,環境由来ではABPC,PIPC,CPZ,CTX,LMOX,MEPM,GM,EM,TC,DOXY,MINO,CP,NAおよびCPFXに感受性を示したが,CER,CET,CTX,CMZ,KMおよびLCMに対して耐性株が認められた。ヒト臨床由来ではEM,TC,DOXY,MINO,CP,NAおよびCPFXに感受性を示したが,ABPC,PIPC,CER,CET,CPZ,CTX,CMZ,LMOX,MEPM,KM,GM,AMKおよびLCMに対して耐性株が認められた。3.Not IとSfi Iの2種類の酵素を用いてそれぞれDNA切断を行い,PFGE法でDNA解析を検討したところ,酵素別のDNAパターン判読率は,Not I では76.9%,sfi Iでは97.9%を示し本菌のDNAパターン判読率はSfi Iが優れていた。4.Sfi IによってDNAパターンが判読された菌株をUPGMA法で解析を行ったところ,類似度が低く多岐のクラスターを示し,本菌感染症は複数のクローンから発生していることが明らかとなった。また,由来等が異なるが類似度が89%以上の類似度で,臨床株と環境株の組合せが認められることから,環境からヒト,ヒトから環境への感染の可能性が考えられた。