著者
北野 聡 石塚 徹 村上 賢英 澤本 良宏 西川 潮 大高 明史
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2126, (Released:2022-04-15)
参考文献数
34

2011年から 2020年にかけて長野県内の 6水域で特定外来生物シグナルザリガニ Pacifastacus leniusculusが新たに確認された。本種の定着が確認された水域は、標高 670 -1300 mのダム湖やため池、緩勾配河川であった。シグナルザリガニに共生するヒルミミズ類 Branchiobdellidaの種組成およびミトコンドリア DNA配列を分析した結果、 1水域は既往の県内産地からの導入、それ以外の水域については北海道・福島県産地からの導入あるいはこれら県内外の複数起源からの混合導入と推測された。今後、各水域のシグナルザリガニ個体群の個体数低減を図るとともに、これらの定着水域からの違法な持ち出しをしないよう普及啓発を進め、さらなる分布拡大を防ぐことが重要である。
著者
村上 賢治 井戸 睦己 桝田 正治
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.284-289, 2006 (Released:2008-04-02)
参考文献数
14
被引用文献数
3 14

シシトウの閉鎖人工照明栽培における果実の辛味低減を目的とし, 暗期挿入および暗期低温の効果について検討した.通常の栽培では辛味を生じないシシトウ‘ししほまれ’を供試し, 植物体上部での光強度が15~350 μmolm-2s-1 になるように白色蛍光灯を用いて照明し, CO2濃度を800 ppmに制御した人工気象器内で栽培した. 明暗サイクルを連続照明および6時間暗期挿入, 暗期の温度を28, 20, 16℃とした. 明期の温度はいずれも28℃とした. 収穫果実の胎座組織からカプサイシンをメタノールで抽出し, 高速液体クロマトグラフにより測定した.食味試験の結果, 強い辛味が感じられなかった果実における胎座のカプサイシン濃度は, いずれも50 mg/100 gDW以下であった. 自然光・自然日長栽培株の果実は, 90%がその範囲内にあった.自然光+電照により24 時間日長とすると, 果実のカプサイシン濃度はやや上昇した. 人工気象器内で連続照明・28℃一定で栽培すると, カプサイシン濃度が著しく上昇し, 90%の果実が50 mg/100 gDW 以上であり, 60%の果実が500 mg/100 gDW 以上の高い値を示した. 6時間の暗期を挿入すると,カプサイシン濃度が減少し, 50 mg/100 gDW 以上の果実の割合が約60%, 500 mg/100 gDW の果実の割合が20% になった.さらに, 暗期の温度を16℃に下げると, カプサイシン濃度がさらに減少し, 50%以上の果実が50 mg/100 gDW 以下の値を示した. 果実当たり種子数とカプサイシン含量の関係を調べた結果, 両者には負の相関があり, 種子数が40個以上と多い果実はすべてカプサイシン含量が低かった. また, 温度が28℃一定の場合, カプサイシンの濃度が高く, 果実当たりの種子数が少なかった. これらのことから, 種子形成とカプサイシン生成との関係が示唆された.本研究の結果, 人工気象器内で連続光・28℃一定下でシシトウ果実に生じる強い辛味は, 暗期挿入と暗期低温で低減しうることが示された.
著者
桝田 正治 吉田 裕一 村上 賢治 浜田 優子 向阪 信一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場学会誌 (ISSN:09186638)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.254-260, 2000-12-01 (Released:2011-03-02)
参考文献数
26
被引用文献数
4 4

本研究は, 閉鎖系連続光下におけるピーマン'京みどり'の果実生産における炭酸ガス施与の効果について調査したものである.栽培環境条件は, 蛍光灯連続光の光強度150μmol m-2 s-1, 気温27±2℃, 湿度70±5%, 炭酸ガス濃度は自然 (340ppm), 800, 1200, 1600ppmとした.播種約45日後に第1番花が開花し, その時点から炭酸ガス施与を開始した.開始後72日間の収穫果数 (20~25gで収穫) はCO2自然区で個体当たり57果, 800~1600ppm制御区では80~90果となり, 自然区に比べて制御区で有意に増加した.CO2濃度の制御区間には有意差は認められなかった.地上部の全乾物重に占める果実乾物重の割合は, いずれの試験区でも40%以上を示した.生育は, すこぶる旺盛で節間は2~3cmと極めて短く葉色も濃緑であったが, 炭酸ガス施与開始2か月後には, 1200ppmと1600ppm区において軽微な葉脈間クロロシスが観察された.長期栽培でのCO2施与は, クロロシスが発生せず収量の向上が期待できる濃度800ppm程度が適当であると推察された.なお, 果実品質について自然光ガラス温室での同栽培法による6月の収穫果実と比較したところ, 連続光下の果実は乾物当たりのデンプン含有率は低いが, 糖含有率には差がなく, 果皮が硬く, 緑色濃く, つやの強い点が特徴的であった.
著者
大倉 健宏 村上 賢 加藤 行男
出版者
麻布大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

2012年から2014年にかけて実施した国内および米国での調査結果を分析し、「ペットフレンドリーなコミュニティ」を大都市の文脈から論じた。本研究では「飼い主」と「公園」および「ペット友人」をネットワークと考える。「ペットフレンドリーなコミュニティ」が飼い犬を中心として、ペットと共生できる街を提案する意義は大きいと考える。そこでは下位文化による結合が、「相談」「親交」「実用的」のいずれにも収斂しえない、住民の「ペットフレンドリーなコミュニティにおけるシビリティ」が想定されるだろう。
著者
阿部 千恵 村上 賢一 藤澤 宏幸
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.136-142, 2016 (Released:2016-04-20)
参考文献数
20
被引用文献数
4

【目的】急性期脳卒中患者の筋厚を測定し,その経時的変化について検討した。【方法】発症後24時間以内の初発脳卒中患者の麻痺側,非麻痺側の筋厚(外側広筋(以下,VL),前脛骨筋(以下,TA)),周径(大腿周径5 cm,大腿周径10 cm,下腿最大周径)を1病日から連続して7病日,その後14,21,28病日に測定した。【結果】VL,TA の筋厚減少は両側で2病日から生じ, 28病日まで減少が継続した。二元配置分散分析の結果,病日と測定肢の間に交互作用は認められなかったが,VL,TA は病日において主効果が認められた。周径では,病日と測定肢の間に交互作用は認められなかった。大腿周径はともに病日と測定肢において主効果が認められ,下腿周径は病日に主効果が認められた。【結語】急性期脳卒中患者では,廃用症候群が非常に早期から生じ,麻痺側・非麻痺側両方に筋萎縮をもたらしている可能性が示唆された。
著者
今野 裕光 桝田 正治 村上 賢治
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.227-234, 2012

トマトの防根給水ひも栽培において,栽培後に肥料袋を除去する「紐上置肥(以下,置肥)」を培地再利用が容易な砂に適用し,生育,収量および養分溶出率について土培地と比較した.また,両培地における混肥と置肥の施肥法の違いについても同様に調査した.供試材料には中玉トマトを用い,第7段摘心栽培とした.栽培期間は,2009年9月~2010年2月の136日間であった.草丈および摘心部の新鮮重・切断直径には,全処理区間で差がなかった.可販果収量は砂と土区間に差はなく,両培地における施肥法間にも差がなかった.砂区の果実は土区より全段位で酸度が低く,高段位でグリーンバック果の発生率が高かった.肥料を栽培後に培地から取り出し分析したところ,total-NおよびK<sub>2</sub>Oの溶出率は80%を超えており,砂区は土区より若干溶出率が低かった.砂区における施肥法間には,溶出率にほとんど差はなかった.一方,見かけの養分吸収量は,特にK<sub>2</sub>Oで少なく,砂区が土区より約4 g低い値を示した.これは元の培地の含有量に依存するものであり,砂区における果実酸度の低下とグリーンバック果の多発に関係していると考えられた.以上より,砂培地の肥料設計は,土培地よりもK<sub>2</sub>Oの肥効を高める必要があると考えられた.<br>
著者
畑 直樹 桝田 正治 小林 昭雄 村中 俊哉 岡澤 敦司 村上 賢治
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.93-100, 2011-09-01 (Released:2011-09-01)
参考文献数
63
被引用文献数
1 2

Altered growth habits and leaf injuries occurring under continuous light are comprehensively reviewed for Solanaceae and Cucurbitaceae crops. Continuous light can accelerate growth by providing a high daily light integral, but many species and cultivars develop leaf injuries and abnormal growth. Other environmental factors may alter responses to continuous light.
著者
金森 耀平 村上 賢 松井 徹 舟場 正幸
出版者
日本微量栄養素学会
雑誌
微量栄養素研究 (ISSN:13462334)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.88-98, 2014-12-15 (Released:2022-12-28)
参考文献数
76

The liver-derived peptide hormone hepcidin is a master regulator of systemic iron homeostatis. Hepcidin binds to an iron exporter ferroportin expressing on the basolateral membrane of enterocytes and induces the internalization and degradation of ferroportin, leading to a decrease in intestinal iron absorption. Various stimuli such as body iron stores, inflammation, erythropoiesis, and hypoxia affect hepcidin expression through the transcriptional regulation. This mini-review summarizes current understandings on the factors affecting hepcidin expression.
著者
我妻 昂樹 鈴木 博人 村上 賢一 鈴木 誠 藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.32-41, 2019 (Released:2019-05-17)
参考文献数
17

〔目的〕フォームに着目した運動学習課題として膝立ち位でのファンクショナルリーチ(FR-k)を取り上げ,Internal Focus of Attention(IFA)のより優れた教示内容を明らかにすることを目的とした。〔対象〕健常青年18名とした。〔方法〕プレテストにてFR-k距離及び重心位置を測定した後,上肢へのIFA教示群(IFA-U)と下肢への教示群(IFA-L)の2群に割り付け,各群30試行の練習を実施させた。また,練習期間終了後の翌日と1週間後における保持テストを実施した。〔結果〕FR-k距離については両群で即時的に有意な変化が認められ,運動学習効果が確認された。また,保持テストにおいて群間で有意な差があり,IFA-L群の方が優れたパフォーマンスを示した。〔結語〕FR-kにおいて,下肢への教示は上肢への教示よりも,運動学習に優れた効果を示した。
著者
吉田 裕一 尾崎 英治 村上 賢治 後藤 丹十郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.343-349, 2012 (Released:2012-10-24)
参考文献数
27
被引用文献数
8 14

低コストで簡便な促成栽培イチゴの新しい花芽分化促進法として間欠冷蔵処理を考案して‘女峰’のトレイ苗に試みたところ,体内非構造炭水化物濃度の低下が抑制され,顕著な開花促進効果が認められた.果実予冷用に用いられるプレハブ冷蔵庫を用いて 13℃暗黒の冷蔵庫内と戸外の 50%遮光条件下に 2,3,4 日間ずつ交互におく処理をそれぞれ 4,3,2 回繰り返し行った.冷蔵庫の利用効率を高めることを前提として,冷蔵庫と戸外で経過する期間は同一とし,交互に入れ替える 2 処理区をそれぞれに設定した.相互の移動は正午頃に行い,処理期間中の戸外の環境条件は,日平均気温 22.5~29℃,日長 12.4~13.1 時間(日の出から日没まで)であった.ピートバッグに定植し,12 日間連続で低温暗黒処理を行った処理区および無処理の対照区と比較したところ,いずれの処理においても,冷蔵処理区は無処理区より 6~10 日早く開花した.12 日間連続処理区と同じ日に処理を開始してその中間で 4 日間戸外においた間欠冷蔵処理区とを比較すると,9 月 13 日定植では 15 日,9 月 17 日定植でも 4 日早く間欠冷蔵処理区が開花した.冷蔵を中断し,2~4 日間戸外で光合成を行わせることによって炭水化物栄養条件が大きく改善される結果,イチゴの花芽分化が促進されると考えられた.効果的な処理条件については今後詳細に検討する余地があるが,2 から 4 日間の低温暗黒と自然条件を繰り返す間欠冷蔵処理は新規の花芽分化促進技術としてきわめて有望であることが示された.
著者
三木 千栄 小野部 純 鈴木 誠 武田 涼子 横塚 美恵子 小林 武 藤澤 宏幸 吉田 忠義 梁川 和也 村上 賢一 鈴木 博人 高橋 純平 西山 徹 高橋 一揮 佐藤 洋一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ed0824, 2012

【はじめに、目的】 本学理学療法学専攻の数名の理学療法士と地域包括支援センター(以下、包括センター)と協力して、包括センターの担当地域での一般高齢者への介護予防事業を2008年度から実施し、2011年度からその事業を当専攻で取り組むことした。2010年度から介護予防教室を開催後、参加した高齢者をグループ化し、自主的に活動を行えるよう支援することを始めた。この取り組みは、この地域の社会資源としての当専攻が、高齢者の介護予防にためのシステムを形成していくことであり、これを活動の目的としている。【方法】 包括センターの担当地域は、1つの中学校区で、その中に3つの小学校区がある。包括センターが予防教室を年20回の開催を予定しているため、10回を1クールとする予防教室を小学校区単位での開催を考え、2010年度には2か所、2011年度に残り1か所を予定し、残り10回を小地域単位で開催を計画した。予防教室の目的を転倒予防とし、隔週に1回(2時間)を計10回、そのうち1回目と9回目は体力測定とした。教室の内容は、ストレッチ体操、筋力トレーニング、サイドスッテプ、ラダーエクササイズである。自主活動しやすいようにストレッチ体操と筋力トレーニングのビデオテープ・DVDディスクを当専攻で作製した。グループが自主活動する場合に、ビデオテープあるいはDVDディスク、ラダーを進呈することとした。2010年度はAとBの小学校区でそれぞれ6月と10月から開催した。また、地域で自主グループの転倒予防のための活動ができるように、2011年3月に介護予防サポーター養成講座(以下、養成講座)を、1回2時間計5回の講座を大学内で開催を計画した。2011年度には、C小学校区で教室を、B小学校区で再度、隔週に1回、計4回(うち1回は体力測定)の教室を6月から開催した。当大学の学園祭時に当専攻の催しで「測るんです」という体力測定を毎年実施しており、各教室に参加した高齢者等にそれをチラシビラで周知し、高齢者等が年1回体力を測定する機会として勧めた。A小学校区内のD町内会で老人クラブ加入者のみ参加できる小地域で、体力測定と1回の運動の計2回を、また、別の小地域で3回の運動のみの教室を計画している。また養成講座を企画する予定である。【倫理的配慮、説明と同意】 予防教室と養成講座では、町内会に開催目的・対象者を記載したチラシビラを回覧し、参加者は自らの希望で申し込み、予防教室・養成講座の開催時に参加者に対して目的等を説明し、同意のうえで参加とした。【結果】 A小学校区での転倒予防教室には平均26名の参加者があり、2010年11月から自主グループとして月2回の活動を開始し、現在も継続している。B小学校区では毎回20名程度の参加者があったが、リーダーとなる人材がいなかったため自主活動はできなかった。2011年度に4回コースで再度教室を実施し、平均36名の参加者があった。教室開始前から複数名の参加者に包括センターが声掛けし、自主活動に向けてリーダーとなることを要請し承諾を得て、2011年8月から月2回の活動を始めた。A・B小学校区ともにビデオあるいはDVDを使用して、運動を実施している。C小学校区では2011年6月から教室を開始し、平均14名の参加者であった。教室の最初の3回までは約18名の参加であったが、その後7名から14名の参加で、毎回参加したのは3名だけで自主活動には至らなかった。2010年度3月に予定していた養成講座は、東日本大震災により開催できなかったが、25名の参加希望者があった。A小学校区内の小地域での1回目の予防教室の参加者は16名であった。大学の学園祭での「測るんです」の体力測定には139名の参加者があり、そのうち数名であるが教室の参加者も来場された。【考察】 事例より、予防教室後に参加者が自主活動するには、活動できる人数の参加者がいること、リーダーとなる人材がいること、自主活動の運営に大きな負担がないことなどの要因があった。自主グループの活動やそれを継続には、2011年3月の地震後、高齢者の体力維持・増進が重要という意識の高まりも影響を及ぼしている。C小学校区の事例で、自主活動できなかった要因を考えるうえで、A・B小学校区と異なる地域特性、地域診断を詳細にする必要性があると考える。リーダーを養成することでC小学校区での高齢者が自主活動できるか検討する必要もある。高齢者の身体状況に合わせて、自主活動できる場所を小学校区単位、小地域単位で検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 介護予防事業を包括センター、予防事業所などだけが取り組む事業ではなく、理学療法士が地域の社会資源としてそのことに取り組み、さらに介護予防、健康増進、障害、介護に関することなどの地域社会にある課題を住民とともに解決するための地域システムを構築していくことは、現在の社会のなかでは必要であると考える。
著者
曹 萬鉉 山本 昌豊 松原 幸子 村上 賢治
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.713-722, 1997 (Released:2008-05-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1

高収量•高品質のトウガラシ新品種を生育する目的で,日本在来種および韓国のF1品種を供試し,親品種と比較しながら品種間雑種の収量,果実のアスコルビン酸含量およびカプサイシノイド含量を調査した.1.日本の固定種間のF1雑種はいずれも親品種より高収量であり,特に'カリフォルニア•ワンダ-(CW)'を片親とした場合,-果重が大きく果数も多く,高収量であった.2.アスコルビン酸は,胎座より果皮に多く含まれていた.アスコルビン酸含量は,品種間差異は少なく,収穫時期による差が大きかった.いずれの品種でも,9月に最も含量が多かった.果実の発育に伴うアスコルビン酸含量の経時的変化を調べたところ,開花4~5週間後まではどの品種,F1雑種も増加したが,その後も緩やかに増加する品種と,ほとんど増加しないかむしろ減少する品種があった.3.カプサイシノイドは,果皮より胎座に高濃度で含まれていた.胎座のカプサイシノイド含量は,'八房などの辛味品種では1000mg/100gDW以上で,一方,辛味のない品種の°CW'と状見甘長では,カプサイシノイドはほとんど含まれていなかった.辛味のない品種と辛味品種のF1雑種のカプサイシノイド含量は,正逆交雑により大きな差が見られた.果実の発育に伴うカプサイシノイド含量の経時的変化では,どの品種でも開花2~3週間後に急激な増加が起こり,5週間後で最大となり,その後は徐々に減少した.カプサイ噛シノイド含量の最大となる時期は,果実の大きさが最大となる時期とほぼ一致していた.
著者
河﨑 靖範 村上 賢治 古澤 良太 尾関 誠 松山 公三郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに】蘇生後患者は低酸素脳症による高次脳機能障害や運動麻痺等の合併症のため,社会復帰に難渋する場合が多い。当院では蘇生後患者に対して,PT,OT,STや心理士が介入した多職種協働のリハビリテーション(リハ)を提供している。目的は蘇生後患者に対するリハの効果について検討した。【方法】2009年1月から2013年12月にリハを実施した蘇生後患者8例(年齢61±23歳,男/女=6/2,入院/外来=5/3)を対象として,基礎疾患,低酸素脳症身体障害の有無,ICDの植込み,リハ職種の介入,リハ期間,6分間歩行距離(6MD),高次脳機能障害,Barthel Index(BI),転帰について調査した。リハプログラムは,PTは通常の心大血管疾患リハに準じて,モニター監視下にウォーミングアップ,主運動にエルゴメータや歩行エクササイズ(EX),レジスタンストレーニングを実施し,高次脳機能障害(記憶・注意・遂行機能)に対して心理士,ST,OTが介入した。心理士は高次脳機能障害の評価とEX,STはコミュニケーション障害の評価とEX,OTはADL障害の評価とEXを実施した。各症例の心肺停止から心拍再開までの経過;症例1:自宅で前胸部痛あり,救急車要請し,救急隊到着時Cardiopulmonary arrest(CPA)状態,CardioPulmonary Resuscitation(CPR)実施,10分後心拍再開(発症から蘇生までの推定時間:約15分)。症例2:自宅で呼吸苦出現し,当院到着後CPA状態,外来でdirect current(DC)およびCPR施行,10分後に心拍再開(約10分)。症例3:自宅でCPA状態,家人救急車要請しCPR実施,約20分後救急隊到着Automated External Defibrillator(AED)施行,26分後車内で蘇生(約45分)。症例4:自宅でCPA状態Emergency Room(ER)搬送,CPRにて心拍再開(約60分)。症例5:自宅でCPA状態ER搬送,心拍再開(不明)。症例6:自宅で飲酒中に意識消失,10分後CPA状態で救急隊にてAEDとCPR施行,18分後心拍再開(約30分)。症例7:心室細動にてAED,心拍再開(不明)。症例8:フットサル休憩中に意識消失CPA状態,10分後救急隊到着AED施行,10分後救急車内で心拍再開(約20分)。【結果】基礎疾患は急性心筋梗塞5例,不整脈原性右室心筋症1例,原因不明2例であった。心室細動が確認された5例に電気的除細動が施行され,低酸素脳症後遺症は高次脳機能障害が8名中6名,右下肢の運動麻痺は1名に認めた。その後のICD植込みは4例(ICD3,CRTD1)であった。リハ職種の介入はPT8例,心理士5例,ST4例,OT3例であった。入院時6MD(m)が測定可能であった8名中4名は,リハ開始時233±196からリハ終了時425±96となった(n.s)。記憶は,高次脳機能障害を認めた6名中,検査を実施した4名の記憶を評価するリバーミード行動記憶検査は,リハ開始時は重度3名,中等度1名からリハ終了時は中等度が3名,軽度1名まで改善した。注意・遂行機能を評価するトレイルメイキング検査は,年齢を考慮しても改善傾向にあった。リハ期間は入院外来を含めて251±311(最短41~最長953)日で,リハ中の虚血性変化,不整脈等の心事故の出現はなかった。BI(点)はリハ開始時72±35からリハ終了後95±5であった(n.s)。外来2名を含む8名全例が自宅退院し,現職者4名中3名は現職復帰し,4名は退職後の高齢者であった。【考察】長期のリハ介入によって,運動能力は改善傾向を示し,高次脳機能障害は,記憶と注意の障害に改善を認めた。記憶や注意・遂行機能障害に対しては,代償手段としてのメモリーノートや携帯アラームなどの外的補助手段を活用した。また高次脳機能と脳血流量は関連があるとする報告も多くあるが,本研究においては運動能力やADLにおいて改善傾向を示したが,有意差はなかった。記憶や注意・遂行機能の改善は,自然治癒も含まれリハ効果と言うより主に障害を家族に理解して頂くための関わりが中心であり,必要に応じてカウンセリングや就労支援も実施した。【理学療法学研究としての意義】蘇生後患者の社会復帰のためには,高次脳機能障害等の合併症の観点からPTが介入する有酸素運動を中心とした運動療法のみならず,心理士,ST,OTや等の多職種協働のリハが必要と思われた。
著者
新堀 晃史 古澤 良太 村上 賢治 松岡 達司 河崎 靖範 槌田 義美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】Honda歩行アシスト(歩行アシスト)は股関節の屈曲伸展運動にトルクを負荷して歩行を補助する装着型歩行補助装置である。先行研究では,歩行アシストの使用により脳卒中片麻痺患者の歩行速度向上,歩幅増加などが報告されている。しかし,歩行アシストを使用した前方ステップ練習が歩行能力にどのような効果を及ぼすか検討した報告はみられない。今回,回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中片麻痺患者に対し,歩行アシストを使用した前方ステップ練習を行った結果,歩行能力の向上を認めたので報告する。【方法】対象は左被殻出血により右片麻痺を呈した60歳代の女性。発症からの期間は135日,BRSは上肢III,手指III,下肢IV,感覚は鈍麻,MASは2(下腿三頭筋),歩行能力はT-cane歩行軽介助(プラスチックAFO)で2動作揃え型歩行であり,イニシャルスイング(ISw)にトゥドラッグがみられた。研究デザインはABAB法によるシングルケーススタディを用いた。基礎水準期(A1,A2期)には通常の前方ステップ練習+歩行練習を実施し,介入期(B1,B2期)には歩行アシストを使用した前方ステップ練習+歩行練習を実施した。各期間は2週間(5日/週)とし,評価内容は通常歩行速度(m/sec),歩幅(m),歩行率(step/min),筋力(kgf/kg)とした。通常歩行速度,歩幅,歩行率は各期間に5回ずつ測定し,筋力は各期間の前後5回計測した。筋力測定にはハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製μTasF-1)を使用し股関節屈曲,膝関節屈曲,膝関節伸展,足関節底屈,足関節背屈の最大等尺性収縮を測定した。前方ステップ方法は,開始肢位として非麻痺側下肢を前方に出した立位とし,麻痺側下肢を振り出す動作と,連続して非麻痺側下肢を振り出す動作の2種類を行い,練習時間は20分とした。その他,通常の理学療法を実施した。統計学的手法として,通常歩行速度,歩幅,歩行率は2標準偏差帯法(2SD法)を用いて分析した。2連続以上のデータポイントが基礎水準期の平均値±2SDの値より大きいもしくは小さい場合は,統計学的な有意差があると判断した。有意水準は5%未満とした。【結果】通常歩行速度は,A1期からB1期,A2期からB2期で有意差が認められた(p<0.05)。B1期からA2期では有意差は認められなかった。歩幅は,A1期からB1期,A2期からB2期で有意差が認められた(p<0.05)。B1期からA2期では有意差は認められなかった。歩行率は,各期ともに有意差は認められなかった。筋力は非麻痺側の股関節屈曲,足関節底屈,麻痺側の足関節底屈が介入期に高い変化量を示した(非麻痺側股関節屈曲はA1期:0.18,B1期:0.25,A2期:0.26,B2期:0.26,非麻痺側足関節底屈はA1期:0.19,B1期:0.23,A1期:0.28,B2期:0.36,麻痺側足関節底屈はA1期:0.10,B1期:0.09,A1期:0.08,B2期:0.21)。最終評価時の歩行能力はT-cane歩行自立(プラスチックAFO)で2動作前型歩行となり,ISwにトゥドラッグはみられなかった。【考察】通常歩行速度と歩幅は,非介入期と比較し,介入期において有意に改善がみられた。筋力は非麻痺側の股関節屈曲,足関節底屈,麻痺側の足関節底屈が介入期に高い変化量を示した。歩行は最終評価時には2動作前型歩行となった。本症例は,麻痺側股関節屈曲筋力低下および足関節の筋緊張亢進により,麻痺側下肢筋の同時収縮がみられ遊脚期における膝関節屈曲角度が不足し,ISwにトゥドラッグが出現していた。大畑らによると,歩行アシスト装着による歩行で,片麻痺患者の遊脚期に生じる最大膝関節角度がアシスト強度に伴って有意に増加したとしている。今回,介入期に歩行アシストを使用した前方ステップ練習を行ったことで,遊脚期の膝関節屈曲角度の増加がみられ,トゥドラッグが改善し,歩幅の増加による歩行速度の向上につながったものと考えられた。また,非麻痺側の股関節屈曲,足関節底屈,麻痺側の足関節底屈筋力が向上したことで,歩幅や麻痺側単脚立脚期の増加につながり,最終評価時において2動作前型歩行となったものと考えられた。【理学療法学研究としての意義】歩行アシストを使用した前方ステップ練習が,回復期脳卒中片麻痺患者における歩行能力向上の効果を示唆するものであり,脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングに有効な介入手段になるものと考える。
著者
阿部 千恵 吉原 真紀 真鍋 祐子 村上 賢一 藤澤 宏幸
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.130-134, 2004-04-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
6
被引用文献数
3

今回我々は,片麻痺患者を対象(n = 33)に,端坐位において体幹側屈による速い側方への重心移動動作時の圧中心点(center of pressure ; COP)の変化量を測定し,体幹運動機能(頸・体幹・骨盤運動機能検査 ; N.T.P.)との関係を検討した。COP変化量の指標は,動作関始直後にみられる重心移動をしようとする方向と逆方向の振幅(A1)・COP最大移動速度(Vmax),重心移動距離(Dcog)とした。また,独歩可能な患者の10m最大歩行速度を計測し,COP変化量との関係を併せて検討した。結果,側方重心移動時のA1とN.T.P.ステージには有意な相関関係があり,N.T.P.ステージが良好であった患者のA1は麻痺側・非麻痺側への重心移動動作共に大きかった。これより,体幹運動機能が良好な片麻痺患者では速い動作を遂行する為の重力のモーメントを作り出すことが可能であると思われた。最大歩行速度とDcogの関係は麻痺側方向と非麻痺側方向共に有意な相関があり,A1においては非麻痺側へ重心移動を行った場合,相関が認められた。これより,歩行時の体幹機能は骨盤掌上の要素に比べ骨盤帯や下肢の支特性がより影響するものと思われた。本研究より,端坐位における側方重心移動動作時のCOPの解析は,体幹運動機能評価に有用であり歩行能力に関連していることが考えられた。
著者
本間 秀文 鈴木 博人 鈴木 誠 村上 賢一 藤澤 宏幸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.323-328, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
13
被引用文献数
6 1

〔目的〕前方歩行と後方歩行において,各歩行速度での8筋の筋活動パターンと筋活動量を比較検討した.〔対象〕健常成人12名とした.〔方法〕20 m/min,40 m/min,60 m/min,80 m/minの4つの速度条件で各歩行様式の表面筋電図を測定した.被験筋は大殿筋,中殿筋,大腿二頭筋,大腿直筋,内側広筋,腓腹筋外側頭,前脛骨筋,ヒラメ筋とした.〔結果〕すべての筋で,歩行速度が変化しても,前方歩行と後方歩行の筋活動パターンに類似性は見られなかった.筋活動量は多くの筋で後方歩行の方が前方歩行よりも大きくなった.また,歩行様式にかかわらず,歩行速度の増加に伴い筋活動量は増加した.〔結語〕後方歩行は前方歩行と同様に速度増加に伴い筋活動量が増加する一方で,1歩行周期における筋活動パターンが前方歩行と異なることが明らかとなった.
著者
西野 佳以 村上 賢 舟場 正幸
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.517-523, 2016

ボルナ病(Borna disease)は,ヨーロッパ中東部において250年以上前から知られていた,馬や羊の神経症状を主徴とする疾患である。ボルナ病の病因は,ウイルス感染によるものであることが明らかにされ,原因ウイルスはボルナ病ウイルス(Borna disease virus: BDV)と命名された。その後,1996年にモノネガウイルス目にボルナウイルス科が新設され,2008年に鳥ボルナウイルス(Avian bornavirus)が分離されるまで,長らくBDVはボルナウイルス科を代表する唯一のウイルス種であった。近年,鳥類あるいは爬虫類からもボルナウイルス科に属するウイルスが多く分離されたことから,哺乳類ボルナウイルス,鳥類ボルナウイルス,及び爬虫類ボルナウイルスにウイルス種が細分類された。従来の典型的なBDVは哺乳類ボルナウイルスであるBorna disease virus-1(BoDV-1)に分類されている。
著者
村上 賢一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.21-26, 2009 (Released:2009-02-17)
参考文献数
44

筋線維伝導速度(以下,MFCV)は,廃用性筋萎縮などいくつかの病態および機能を反映することがこれまで報告され,筋の廃用状態や筋疲労などを非侵襲的に評価できる指標として考えられている。しかしながら,臨床の場でMFCVは積極的に用いられていないのが現状である。理学療法士がMFCVを活用するためには,先ずMFCVの測定法や変化要因を知り,理解を深めることが重要と思われる。そのうえで,今後,MFCVと筋動特性との関係性を明確にすることができるならば,臨床にも役立つ知見が蓄えられるものと考えている。本論では,MFCVの測定法および変化要因を中心に解説する。