著者
後藤 任孝 青木 功
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.41-44, 2009

日本製紙石巻工場は,平成19年に最新鋭の高速オンマシンコーターであるN6マシンを建設,同年11月に営業運転を開始した。また当工場ではこれに先立ち,N6マシンへDIPを供給するパルプ設備として,日産400トンの高白色新聞DIP設備(HDIP―2)を稼動させた。HDIP―2は近年の古紙品質低下にも対応出来るよう,異物やインキ除去に関わる最新の技術を導入したが,特にインキ剥離工程に関しては,今後古紙への混入率増加が予想されるUVインキやトナー印刷物にも対処すべく,相川鉄工株式会社と共同でニーディング力に優れた4軸タイプの新型ニーダー(商品名:UVブレーカー)を開発,HDIP―2の粗選工程に設置した。<BR>UVブレーカーは,従来型ニーダーの代表機器である2軸型ニーダーとの比較においてダート除去率に優れ,特に粗大ダート区分において効果が大きかった。また4軸のそれぞれのローターについて,回転数の違いによるダート除去効果についても実機で確認し,最適な回転数を見極めた。<BR>本報では,新型ニーダーであるUVブレーカーの開発経緯と石巻工場の実機操業によって確認したダート除去効果について報告する。
著者
玉城 道彦 梅口 直人
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.630-632, 2015

2014年9月17日~19日に2014International Bioenergy & Bioproducts Conferenceが開催された。例年同様,PEERS(Pulping, Engineering, Environmental, Recycling and Sustainability)Conference(9月14日~17日)に引き続いての開催となったが,筆者らはIBBCのみ参加した。会場となったのは,米国ワシントン州タコマにあるホテルムラーノのヴェニスボールルームである。<BR>今回参加者はPEERS,IBBCを合わせて14ヶ国420名であり,その大半は米国からであった。また,日本からの参加は5名あった。平成27年は,TAPPI100周年を迎え,全てのカンファレンスがアトランタで開かれることについてもアナウンスがあり,製紙産業が移り変わりゆくなかで,バイオ関連項目での新たな成長が期待される意気込みを感じた。<BR>発表は以下のセッションにより行われた。<BR>・Availability<BR>・Preparation & Pelleting<BR>・New Technology<BR>・Biochemical<BR>・Thermochemical<BR>・Modeling<BR>・Bioproducts<BR>・Status Updates<BR>・Policies/Incentives<BR>本稿では,筆者らが聴講した中で,興味深かった研究発表の概要を紹介する。
著者
コノパ ジョー
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.1035-1041,017, 2003
被引用文献数
3

米国では, クラスター・ルールの実施に基づき, すべての漂白クラフト・パルプ工場は排水中の, 吸収性有機ハロゲン化物に関する厳格な基準に適合する必要が生じた。ほとんどの工場では, 吸収性有機ハロゲン化物の基準を達成するために, 主にC段かCD第一段で, 100%二酸化塩素を, その代用物として適用しようとした。二酸化塩素を代替物として, 無塩素漂白 (ECF) に転換した工場では, 漂白設備の第一段の幾つかの操業パラメーターに影響が見出されるようになった。<BR>いくつかの問題点のうち, そのひとつは, ECFによる脱リグニン工程において, 塩素段に適用される二酸化塩素に100%変更できず, 部分的にしか適用できなかった。またもう一つには, 第一段でのpH上昇により, 塩素やCD漂白法と比べて, その金属の溶解性は同一のレベルに達しなかった。<BR>金属および金属イオンを管理することは, ECFによる漂白工程において, 大変重要な課題となっている。従来の漂白方法では, 影響が少なかった金属でも, 無機の汚れを発生させ, 過酸化物による漂白において, その効率を低下させることになる。操業条件の幾つかについて, それを検討し, その最適条件を見出すことにより, 漂白工程での様々な工程段階で, そのスケールに関する問題を減らすことができる。
著者
高木 均
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1642-1648, 2006-11-01
被引用文献数
1 2

欧米の主要製紙国の環境法規制の動向について,水環境の面から概説した。<BR>アメリカでは水汚染防止のために連邦水質浄化法のもと,化学物質管理と生物試験,生物相調査の3手法による統合的な管理がなされている。1998年制定のクラスタールールによる規制にほとんどの紙パルプ工場は適合し,汚染物質の排出量は着実に減少している。<BR>カナダでは1992年に漁業法の下でニジマス毒性規制を含む紙パルプ排水規制が成立し,1996年以降は汚染物質の排出量が著しく低下した。同時に工場周辺の環境影響モニタリングEEMを全工場に義務づけ,現在4回目の調査が進行中である。紙パルプ工場排水の水生生物への影響に関するデータを国をあげて蓄積し,影響の軽減に努めている。<BR>EUは加盟国間の協議により統一した思想で環境政策を決定し,これを参考に各国は国内法を整備し,地域全体で同じ水準の環境を維持することを目指している。水管理は2000年の水政策枠組み指令を基本に進められ,総合的汚染防止管理指令IPPCにより最適利用技術に基づく排水基準が示されている。排水規制の中に生物影響項目を加えているのは一部の国に止まっているが,産業排水の生物試験による影響評価を加盟各国で実施している。<BR>環境改善のための経済的手法としてアメリカでは排出量取引が実施され,欧州では古くから課徴金の制度が定着していて,汚染物質の排出削減に一定の効果をあげている。
著者
丸本 裕一
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.1115-1119, 2012-10-01

紙パルプ業界は,アジア需要の増加に伴う原材料の高騰と,国内需要減少による設備稼働率の低下により,国内工場の採算確保が厳しい状況が続いている。日本顧客特有の高品質要求を満たしながら利益を確保するには,継続的にコスト削減を実現する仕組み作りが必要となる。<BR>原料切替時の変動や試運転中の損紙費用の把握によるコスト削減を実現したリアルタイム原単位システムを紹介する。<BR>リアルタイム原単位管理システムの基本的な考え方は,プロセスのデータを本社,工場,製造現場共通の指標であるコストに変換してできるだけ早く見せることを実現することである。
著者
ルトファー ラーマン 藤井 光雄
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.12, pp.649-664, 1970

ポリ酢酸ビニルエマルジョンを常法により作成し,ピーター添加法,エマルジョン含浸法および樹脂のアセトン溶液による含浸法により加工紙を作り,この加工紙の樹脂含有量の測定および光学ならびに電子顕微鏡観察を行ない,それぞれの加工法の根本的相違について研究した。紙はロ紙をランペンミルによって叩解し,種々の叩解度の紙をTAPPI法によって作成した。<BR>叩解度はカナダフリーネス270~450程度,樹脂含有量は0~40%程度のものを作った。すなわち叩解度の異る紙を用い,ピーター加工,エマルジョン含浸加工および溶液含浸加工により樹脂含有量の異るものを作成し試料とした。結果を要約すれば次の如くである。<BR>含浸加工の場合は叩解度の増大に伴って,樹脂含有量は減少するが,ビーター加工の場合は増大する。ビーター加工において使用した樹脂の歩留りは叩解度の増加に従って増大する。いずれにせよ叩解度の影響は大きい。これは繊維間の空間やフィブリル化,繊維表面などの点から説明される。<BR>顕微鏡観察の結果から加工法と紙中における樹脂の状態に関する知見を得て,それぞれの加工法の加工効果を推定し,全般的にいつてビーター加工は最も加工効果が低く,溶液含浸加工は最大であることなどを明かとした。
著者
原 啓志 大江 礼三郎
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.477-483, 1980

亜麻, ケナフ, 広葉樹材をクラフト法, 中性亜硫酸塩法でパルプ化し, 得られたパルプをPFIミル, ランペンミルを使用して叩解を行った。<BR>叩解による炉水性の低下の割合は, ケナフパノレプが最も大きく, 広葉樹材パルプ, 亜麻パルプの順であった。全般的にケナフパルプが最も濾水性が低く, 広葉樹材パルプ, 亜麻パルプの順であった。<BR>パルプ化法による影響では, 中性亜硫酸塩パルプは, 低い濾水性を示し, クラフトパルプが叩解され難かった。<BR>繊維の種類では, ケナフパルフ.が最も叩解され易く, 膨潤もし易い。<BR>叩解によるパルプ中のリグニン, ヘミセルロースの溶出は, ほとんど見られなかった。このため叩解による紙質の変化は, 主としてパルプ繊維の構造変化によるものと推察された。
著者
中村 成人
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.634-639,023, 2001

1. 風力発電の現状<BR>世界的な地球環境への意識の高まりを背景に, 90年代半ば以降欧米先進各国を中心に風力発電に代表されるいわゆる再生可能エネルギーの導入が急速に進んでいる。現在全世界で設置されている風力発電の総容量は約12,500MW, 最大のドイツで4,445MWであるのに対し, 未だ離陸期にある我が国の設置済み容量は100MW程度と推測される。<BR>トーメンは1987年に米国カイリフォルニア州におけるプロジェクトを始めとして, 現在までに欧米, 日本の6ヶ国で合計約700MWの風力発電設備を建設・運営中である。<BR>2.苫前グリンヒルウインドパーク<BR>1999年11月, トーメンは日本で初めて且つ最大規模の集合型風力発電施設 (1MW×20) を, 北海道苫前町に完成し運転を開始した。この施設は通産大臣の新エネルギー事業者としての認定に基づく補助金対象事業であり, 且つ17年に亘り発電電力の全量を北海道電力に売電する我が国初の風力発電による卸電力事業でもある。その特長は下記の4点である。<BR>・大規模化による大幅なコストダウン (風車はデンマーク製を採用)<BR>・複数の運転員を常駐させることによる安全・安定操業の確保<BR>・周辺環境との調和<BR>・地域社会との共生<BR>3.風力発電の将来<BR>欧米各国は政策的支援を含めて, 今後供積極的に風力発電の導入を促進していく方針を明らかにしている。日本においても漸く風力発電を始めとする自然エネルギー導入に関する本格的な関心と議論が高まるところとなって来た。風力発電の本格的且つ大量の導入に当たっては技術的, 経済的な課題もあるが, これらを踏まえて種々の観点から, 国民の一人一人が自分自身の明日のライフスタイルとエネルギーを選択する時期に来ているものと考えるものである。
著者
松村 洋一
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.72-76, 2012

製品への虫の混入はユーザークレームに直結し,企業としての信用を失墜しかねない重要な課題と位置付けられている。<BR>勝田1M/Cでは,建屋内に設置した捕虫器の虫カウント数で虫混入の危険度を傾向管理しながら,薬剤散布や抄紙機ライン上照明をUVカットタイプへ切り替えるなどの方法で防虫対策を継続してきた。また,捕虫器に捕獲される虫の大半が外部侵入種であったことから,スチールシャッターへの防虫ブラシ取付け,建屋出入口の2重ドア化といった虫の侵入経路を塞ぐ対策を行った。<BR>さらに,一般に知られるように,外気導入量を増やし建屋内部の陰圧を低減することが防虫対策として有効な手段になるため,平成22年11月より建屋陰圧低減工事を進めてきた。はじめに,ドライヤー給気ファンの吸気源を室内空気から外気に変更した。その後,建屋陽圧ファン設置工事を開始し,平成23年4月までに第1期工事として10ユニットの設置が完了している。<BR>以上の工事後,建屋内部の陰圧低減が認められ,虫カウント数についても大きく減少する効果が得られた。これらの取り組みについて報告する。
著者
石戸谷 晃二
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.633-636, 2013-06-01

王子製紙(株)米子工場では,省エネ目標『総エネルギー使用量の1.5%削減』に向けて工場全体で省エネに取り組んでいる。しかし,新規案件や大きな省エネ効果を生む案件を発掘することが,年々厳しい状況となってきている。その中で工場ではテーマを絞り込んで,エネルギー使用量の削減を継続している。<BR>本稿では,工場で実施した以下の省エネ事例を紹介する。<BR>1)過剰能力設備の省エネ<BR>2)発電設備運用見直しによる省エネ<BR>3)無負荷時の駆動電力の省エネ<BR>4)生産に寄与しない電力の省エネ<BR>取り組みは,設備費が高額となる機器交換やインバーター化は採用せず,安価に短期間で施工可能なアジテータのプーリー小径化,ポンプのランナーカットを実施。また,既存設備の信号を活用したシーケンス改造を積極的に実施したことで,大きな省エネ効果を発現した。<BR>今後も設備が必要で運転が当たり前といった既設概念にとらわれずに,案件を掘り起こしていきたい。
著者
但木 孝一 朝田 知子 川上 秀明 春日 一孝 黒瀬 茂
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.941-948, 2008-08-01

近年の抄紙マシン汚れの原因は,原料事情の悪化や中性抄紙化等の影響で大きく変化してきている。中でもDIP等の古紙の高配合化による抄紙マシン系内への多量の夾雑物の混入は,汚れトラブルの大きな要因になっている。そして抄紙マシンの操業性・生産性向上のためには,この汚れ対策が重要なポイントになっている。<BR>これまで弊社では,抄紙マシンの汚れについて化学的,微生物的な分析手法を用い原因物質を特定し,同時に対応薬剤の選定を迅速に行なってきた。古紙由来の疎水性ピッチに対して有効な高機能凝結剤として開発を続けている「リアライザーAシリーズ」と繊維及び填料等の微細成分の歩留り向上に有効な高機能歩留り剤「リアライザーRシリーズ」,「レクサーFXシリーズ」の組み合わせからなるウエットエンド改質システム「アクシーズシステム」は多くのマシンで使用され効果を発揮している。また昨年発表した次世代型ASAサイジングシステム「レグシス」によるサイズ剤定着性の向上は,ウエットエンドの最適化と同時に抄紙マシンの汚れ対策の面で大変重要な役割を果たす。更に上記システムに新規微生物コントロールシステム「キュアサイドシステム」を組み合わせることにより化学的・微生物的両面から抄紙マシンの汚れ対策を大きく改善できる。
著者
大石 浩之 但木 孝一 春日 一孝 藤田 幸裕
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.142-149, 2014
被引用文献数
1

近年,抄紙マシンのクローズド化やパルプ原料の悪化等のため,各種内添薬剤の効果が発揮しにくい状況へ変化してきている。特に古紙や填料の高配合化で歩留り剤,紙力剤,サイズ剤等の各種ウエットエンド薬剤の添加量が増え,抄紙マシンの汚れや紙面欠陥の問題を抱えるマシンが増加している。<BR>弊社で開発を進めてきた「リアライザーAシリーズ」は,粘着性ピッチや紙面欠陥対策等に有効な高機能凝結剤で,パルプ原料の前処理段階に適用する特殊なカチオン性ポリマーである。また高機能歩留り剤「リアライザーRシリーズ,FXシリーズ」は低添加で高い歩留り物性が得られる様々な構造を有する高分子量特殊ポリマーとなっている。<BR>現在,これらの薬剤を組み合わせて添加する次世代ウエットエンド改質システムを「アクシーズシステム」と命名し,更なる抄紙マシンの操業性,生産性向上のためのテストを実施している。<BR>本報告では,アクシーズシステムを適用した板紙マシンや洋紙マシンでの歩留り物性の向上及び欠陥数低減や紙質向上等の例を報告する。
著者
但木 孝一 朝田 知子 春日 一孝
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1159-1163, 2009
被引用文献数
4

近年の抄紙マシンは大型化,高速化等が進む中で省エネ,省資源化が重要な課題になっている。これまで弊社では,ウエットエンドを最適化することにより抄紙マシンの汚れ低減や操業性の向上等に有効な歩留り剤や凝結剤「リアライザーシリーズ」の開発を続けてきた。これらの試みの中でウエットエンド改質システム「アクシーズシステム」を適用することにより各種ウエットエンド薬剤の添加量を削減できる点や排水負荷を低減できる点等,環境負荷低減につながる効果が見出してきた。<BR>また最新のASAサイジングシステム「レグシス」の開発によりサイズ剤等の添加量の大幅な削減を目指している。高機能乳化剤「レグシスEシリーズ」を適用することにより,各種添加薬剤のパルプ繊維への定着性を向上させ,サイズ効果以外の面でも効果を発揮できるように開発を進めている。弊社では,環境負荷低減に重きを置いた薬剤を開発し,様々な角度からテストを実施している。
著者
但木 孝一
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.1108-1116, 2014
被引用文献数
1

「アクシーズシステム」は2001年に上市以来,多くの抄紙マシンに採用され,従来の歩留り向上システムを大きく改善してきた。中でも微細繊維及び灰分歩留りを大きく向上可能な「リアライザーRシリーズ」は洋紙マシン,板紙マシン問わず幅広い抄紙マシンへの適用が進んでいる。<BR>ここでは「リアライザーRシリーズ,FXシリーズ」,「リアライザーAシリーズ」の開発経緯とそれらの添加によって生産性,操業性及び紙品質向上を達成してきた事例を紹介していく。<BR>近年では,パルプ原料の悪化等が原因で各種ウエットエンド薬剤の添加量が増加する傾向が見られる。そのため抄紙マシンのウエットエンド状態が大きく変化して各種薬剤の効果も発揮し難い状態になってきている。同時に紙面欠陥による紙品質の低下やピッチ等のマシン汚れトラブルも増加傾向が見られる。<BR>そこで弊社では,厳しい抄紙条件下で各種ウエットエンド薬剤の本来の効果を最大限発揮させるためのウエットエンド改質システム「アクシーズシステム」を開発してきた。「リアライザーAシリーズ」は,パルプ原料の高濃度紙料段階に適用する特殊なカチオン性ポリマーであり,粘着性ピッチや紙面欠陥対策等に有効な高機能凝結剤である。また高機能歩留り剤「リアライザーRシリーズ,FXシリーズ」は特殊な構造を有する高分子量ポリマーであり,低添加で高い歩留り物性が得られる。これらの薬剤は,組み合わせて最適なシステムを構築可能であり,且つ各薬剤が単独で効果を発揮できる点が最大の特徴である。
著者
ピンゲル ケン ヒギンズ ダン イプ トレウ゛ァル
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.934-939, 2007-08-01

アンソニーロスでは,カナダにあるノースウッドパルプ社に初めてスメルトスパウトクリーナシステムを販売納品致した。ノースウッド社はこのスメルトスパウトクリーナの開発とテスト段階から参加し,この度およそ3ヶ月の期間でNo.1回収ボイラーにプロトタイプシステムの導入と運転評価を行った。<BR>この装置は,自動でスパウトのトラフと取り口を効率的な動作により清掃する。このスパウトクリーナの設計にあたりアンソニーロスは,長年の自動ポートクリーナの設計ノウハウをベースに,クリーニングランスの移動方式,折り畳み式のアーム設計,又スパウト床での移動性の高い構成などの特徴ある機能装置の実現を図った。<BR>クリーニングの動作や周期は調整可能で,対象ボイラの特性や運転状況に順応できる機能を実装し,さらにアラーム通報やカメラ監視などの運用管理機能も備えている。<BR>この論文では,本自動スメルトスパウトクリーナの開発経緯を述べ,又現状の各装置の動作と特徴を設計方針とともに公開する。テスト段階の終端として,ケーススタディとなるように回収ボイラーでの適用設計図や写真も記載した。
著者
山田 竜彦 菱川 裕香子 久保 智史 山口 真美
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.1198-1200, 2012

バイオ由来の液体燃料として,バイオエタノールは,デンプン等の糖類由来は既に商用化され,加えてセルロースからも糖化・発酵法等で製造可能であり開発が進んでいる。一方,ディーゼル油,灯油,ジェット燃料に相当する液体燃料は,パームオイル等の植物油や微細藻類の産するオイルの研究開発が進んでいるものの,地上に最も多量に存在する有機化合物であるセルロースから直接に製造した例はほとんどみられない。<BR>我々は,セルロースから誘導可能なディーゼル油相当液体燃料としてのポテンシャルを持つ有用化合物として「バイオレブリネート」なる物質を見いだし,検討を進めている。バイオレブリネートとは,糖の酸加水分解物により得られる有機酸である「レブリン酸」とアルコール類がエステル結合したレブリン酸エステル骨格を持った化合物である。レブリネート類の燃料としての物理パラメータ(沸点や引火点)は,石油化学でいうケロシンに相当し,ディーゼル油,灯油,ジェット燃料源として期待されている。加えて,MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)やETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)に替わるクリーンなガソリン添加剤(ブースター)としても期待される。<BR>本報告では,紙パルプ産業分野への技術の応用を見据え,種々の製紙スラッジを用いた,簡易な酸加溶媒分解法でのバイオレブリネートの調製について紹介する。反応としては,硫酸を含むn―ブタノールで抄紙スラッジを還流するだけあるが,ブチルレブリネートの生成率は抄紙スラッジのヘキソース基準で50―70%と高収率であった。
著者
自動化委員会
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.724-732, 1993

第15回紙パルプ計装技術発表会 ('91.10.2) において「ユーザーから見たDCSソフトの期待」と題し, 自動化委員会より発表を行った。<BR>その中で各DCSメーカーに対する自動化委員会としての希望・要望事項を提案した (本誌92年10月号) 。本報はそれに対する各DCSメーカーの回答を整理したものである。<BR>なおDCSのビルダ, メンテナンスに関する回答であり, DCS 全体 (オペレーション, 互換性等) に関するものではない。DCSの性能比較を目的としたものではないことをお含み頂きたい。<BR>回答を見ると, 如何にユーザーフレンドリーなものにして行こうかとする各社の姿勢が現れており, これからの開発に期待がもたれる内容である。