著者
児玉 厚
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.1192-1201, 2004-09-01
被引用文献数
1

本原稿ではWIS(Web Imaging Solution,オンライン欠点検出システム)の概要と特長を述べている。弊社はMTS(Machine Technology Solution)というコンセプトをベースに紙を抄造する抄紙機操業・塗工機操業に必要な全ての制御システム,運転支援システムを提供していくが,WISもMTS構成要素の1つという位置付けである。WISのシステム構成はシンプルで他社の様にコンピュータを収納するキャビネットがない。コンピュータは個々のカメラと一体化されており,カメラビームに収納されている。基本システム構成ではオペレータステーション1台で運転が可能である。またメンテナンスビリティが優れており,CCDモジュール単体の交換が可能(カメラと分離),カメラユニット交換時現場での光量調節が不要(絞り固定,光量調節はシステムが全自動で実施),光源は5年間交換不要の長所がある。操作画面はオペレータの実感覚にあった使いやすい欠点マップを採用しており,欠点画像だけでなく地合表示も可能である。欠点検出では穴,明欠点,暗欠点,密集欠点,紙端欠点,ストリークの他,水滴や油垂れの検出,SDIによる薄汚れ・しわの検出も可能である。トピックとして欠点自動分類+閾値生成機能(Auto Classifier,以下オート・クラシファイアーと呼ぶ)がある。オート・クラシファイアーは欠点の自動分類だけでなく,多大な時間を要する欠点チューニングを自動で行い欠点閾値を自動決定する。
著者
ハーケンラート ハインツ 大貫 守健
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.1484-1487, 2006-10-01

ディーネス社による最近の「完全自動スリッターシステム」機器の開発とその技術進化には目ざましいものがある。その一つは,常に変わらない「カッテングポイント」を保持するための堅牢な機構とその制御システムである。機械的には既に数百台に実績を持つ特殊2軸(隙間ゼロ)機構と熱処理された各機械部品の組み合わせ。制御的にはPLC制御により「再研磨後の自動噛み合わせ(精度0.005mm以内)」と「連続的な側圧制御システム」である。又,位置決め機構とその制御システムは全く新しい機構により振動に強く且つ精度の高いシステムで構築されている。位置決め速度は一秒間に1,500mm且つ位置決め精度は±.0.1mm以内である(上下スリッターユニット5個から6個の組み合わせで30秒前後での設定)。<BR>その他数え切れない新しいシステムの組み合わせにより今まで起きていたスリッターでの多くのロスを減少し,同時に「多層紙のカッテング(ノンコート紙850g/m<SUP>2</SUP>,8層切り)」が可能になって来ている。又,繊細なカッテングの要求される紙質のものや新しい素材等に益々活用されて来ている。又,伝統あるドイツの刃物のメーカーとして,新しい素材による寿命の長い,切れ味の鋭い刃物の供給も続けている。
著者
土肥 清幸
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.923-926, 2011

濃度計の中で回転式タイプは,過去60年以上に亘りパルプ&製紙工場では非常に多くの取付け箇所に率先して選定されてきた歴史がある。これまで,多くの濃度計が市場に導入されて来たが,その測定原理はどれも根本的な箇所は改善されずそのままであった。<BR>今,特に性能と保守の技術的改革の時期にきており,抜本的によりよい測定方式に基づいた解決策が求められていると言える。<BR>そのためには,これまでのトルク変位測定の原点であった「Force balance=力平衡方式=コイル励磁,背圧バランス(=ブルドン管又はベローズ)」の概念に頼らず,新しい概念に基づいて開発をする必要性があった。<BR>今般,メッツォはパルプスラリー内で生じた剪断力をトルク特性として変換する際に,従来その変位を捉えるための基準になる力学的な作用点(支点)に使用されていた弾性ラバーに改善の余地があるということに焦点を当て,その解決方法を見出すに至った。それはシール材の硬度を上げれば解決するというものではなく,「シール材は性能と同時に回転変位を生じさせる機能をも持ち得なくてはならない」という通常は矛盾した理論の中に答えがあった。
著者
内田 盛也
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.685-701, 1993

ご紹介にあずかりました内田でございます。本日は紙パルプ技術協会のこういう大会にお招きを頂き, 大変光栄に存じております。今日お話ししたいと思いますのは「国際的にみた企業の知的戦略」という題目でございますが, ご承知の通り, ただ今は大変な世界の変動期にあります。戦後懸命に日本の産業を大きくされてきた皆さん方は, 何となく今後の将来について戸惑いがおありになるのではないか。いったい今後どういうことになるのであろうか。私どもが大学を出て産業界に入りました時は, アメリカの国力の 1/30 でありました。現在, アメリカに匹敵するような大国になっております。ということは, 戦後我々がやってきたような方法で懸命に働いてこのままいきますと, 世界全体が日本になってしまうという事で, ご承知の通りいろんな摩擦問題等が出て来ております。<BR>それから, もう一つは小国日本が世界的な観点から色々な期待をされております。所が日本人の意識構造には全くそのような観点がありません。歴史的に見てヨーロッパなどでは学問が出きて, 宗教の中に育てられて, そういう形の中で伝統的に国際社会の自分達という意識構造, 社会構造というシステムが出来上がっておりますが, 日本はたった 30, 40 年の間にそうなったという事でこれからという所であります。こういう問題と同時に, 経営環境をどうしたら良いかといろんな意味の戸惑いがあると思いますので, 今後の大きな戦略的なものの中から少しでも皆様方の参考になればと思って, このような題目でお話をしてみたいと思うわけであります。
著者
太田 宏 上野 敬
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.262-268, 2011-03-01

製紙工場等の生産現場において,電気制御システムと計装制御システムはあらゆる設備の運転に必要不可欠なものとなっている。制御対象が大きく異なることから両者の仕様と用途は区別されている。この異なる2つのシステムが融和し,協調できる部分の可能性と電気・計装の統一プラットフォームである(株)東芝製ユニファイドコントローラnvシリーズ及び高速オンラインデータ収集装置(ODG)の適用について説明する。また,電気・計装の操業データを一括監視・管理することを可能としたリアルタイムデータベース(PLANETMEISTER)の電気・計装システム融合に適用できるGUI新機能の紹介を行う。<br> 一般産業分野では,電気担当と計装担当の部門統合が近年推進されているが,産業システムの電気・計装監視・制御のエンジニアリングを業務の範疇としている当社(東芝三菱電機産業システム(株))では,電気・計装監視・制御,エンジニアリングの営業・技術・設計・品質管理が業種毎に組織構成されており,電気・計装・計算機技術者が集結しているため,融合システムの検討・提案に適した環境が整備されている。この環境により電気・計装統一エンジニアリング及びエンジニアの統合についての取組みを紹介する。電気・計装制御システムが互いの特長を共有することにより,特徴ある融合システムを構築することが可能となり,新設,増設,更新等あらゆる場面にマッチするシステムソリューションを提案することができる。加えて,統一されたハードウェアプラットフォームであるユニファイドコントローラnvシリーズは,従来機種と比較して性能が向上しており,電気・計装両分野での適用範囲拡大の可能性が今後も期待される。
著者
小出 寛之
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1611-1614, 1999

Reducing CO<SUB>2</SUB> emission is the global key word. Concerning motor drive system, AC inverter system contributes energy saving & reduction of CO<SUB>2</SUB>. To achieve more reduction, new motors and new inverters are developed. We introduce the new products with latest technology and show the examples of application for them.
著者
近藤 唯弘
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.405-423, 1994

ここに一つの折れ線グラフがある。カナダの紙パ専門の業界誌「Papcr Tree」に掲載されたもので, ノースキャン5力国の市販化学パルプ出荷量とNBKPの価格を月別に表している。縦軸の左端は数量で70万tから200万tまで, 縦軸の右端は価格で300ドルから900ドルまでの目盛りとなっている。横軸は1975年から93年までの18年問で, 200カ月以上取ってある。この表を見てすぐ気づくことは, 出荷量が多少の増減を繰り返しながら少しずつ上昇し, 90年前後には毎月170万tラインを行き来しているのに対し, 価格の方は大きく上下にぶれながら推移していることである。そして75年以降93年までの間に5回の底値と5回の天井値を記録していることが分かる。パルプの価格は好・不況といった景気の循環に左右されることはもちろんだが, それが増幅されて非常に神経質な動きをすることはかねてから良く知られている。その理山の一つは, 市販パルプメーカーの中にスウィング・プロデューサー (Swing producer) と呼ばれるメーカーがあるからである。つまり, 製紙一貫のメーカーの中には, 紙の市況が良い時にはパルプを自家用に消費して外販しないが, 紙市況が悪くなると紙の生産を減らして余ったパルプを市販に回すところが出てくるからである。紙の市況がもっと良くなると, 日頃パルプを外販している一貫メーカーが, 外販をやめるどころかパルプの「買い」に回るケースすら出てくる。またカナダなどの生産地で時折りストが発生して需給を逼迫させたり, あるいはストに備えた仮需が出たり, これに投機的要素の加わった思惑買いが出て価格が急騰することもある。<BR>このようなスウィング・プロデューサーの行動がパルプの需給バランスを大きく左右し, 結果として価格の変動幅を増幅させてきた。その構造は現在も基本的には変わってない。しかし, 上例のグラフをよく見ると, 90年後半からの価格の下落が従来になく激しい。この原稿を書いている93年12月現在, 西欧におけるNBKPの価格は, 北部産一級品で400ドル前後であるが (12月から各社40ドルの値上げを打ち出し, 440ドルにすると言っている), この価格は85年の大底とほぼ同じレベルである。名目価格は同じでも, インフレを考慮した実質価格は当時よりも下がっている。価格は85年の底値からにわかに急転し, 以後はほとんど毎四半期ごとに上昇, 実に4年もの間, 棒上げ状態を続けたのである。しかし, 90年第1四半期には天井の840ドルを打った。それからは概ね反落の一途をたどる。4年間で今度は価格が半値以下に落ち込み今日に至った。とりわけ90年末から91年末にかけての落差が大きく, 1年問で40%も下落して500ドルになった。暴落といって良いであろう。その後やや持ち直して92年後半には600ドル近くに上がるがそれ以後再び下降した。メーカー側は操短によって需給の改善を図ろうとしたが効果はほとんど出なかった。このような暴落の背景には, 従来の定説とされてきた不況期の需要不振やスウィング・プロデューサー論では説明し切れないものがあるように思われる。何がこのような異常な事態を招いたのであうか。
著者
大竹 桂司 山田 祐司
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.1290-1299, 2014

近年,包括安全指針・労安法・安衛則等の改正によりにユーザーとメーカーの安全意識は高まってきている。しかしながら,規格法令が複雑化したことと安全機器が技術の進歩により多種多様化されたことから,求める内容を正しく理解して「何が本当に危険なのか」「何が最適な保護方策なのか」を見極め,「安全性・経済性を考慮」したうえで適切な安全防護を行っているケースは少ない。特に,紙パ市場の設備においては,ローラ部を稼動させながら作業者が接近しなければならない。また不用意に停止を行うことは再稼働に要する手間から避けたいと言う思いが強く,機械設計者や現場の安全担当者は常にどこまで対策すれば許されるのかのジレンマと戦っている。<BR>究極の安全とは,人と機械が同じ空間に存在しないことである。そのためには,全ての工程において完全自動化の機械とするか,人型ロボットが全ての作業を行なってくれるかのどちらかであるが,その時代はまだ遠い先である。従って,今は今の時代の最善の技術をもって空間または時間による区分けで,可能な限り,人と機械が交わる機会を正しく減らすことが求められる。<BR>本稿では,機械安全の根幹となる『隔離と停止』『安全確認型システム』の考え方を,いくつかの事例を交えて機械アプリに合わせた安全機器の展開方法を説明していく。
著者
矢野 順一
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.770-773, 2014

GL&V/川之江造機(株)が提供する,マシン前クリーナーリジェクトからの添料及び繊維の回収装置―ATREX装置について紹介する。<BR>塗工紙や塗工板紙抄造用抄紙機のアプローチ系に設備される,所謂マシン前クリーナーのリジェクトには多くの有用な添料やコーティングフレーク,繊維が含まれている。このコーティングフレークを再利用するためには,そこに含まれるサイズの大きなフレークを粉砕して小さくする必要があるが,塗工量が多くなるのにつれて,再利用した際にトラブルを起こさないレベルまで小さく粉砕することは,これまでの技術では困難であった。<BR>GL&V/川之江造機のATREX―リジェクト回収装置で処理すると,塗工顔料や添料の大きさは,ほぼ塗工前のオリジナルサイズに戻すことができる。それと同時に,絡みついた繊維の塊も分散され,繊維原料として再利用できる。その結果,リジェクトに含まれる有用な原料分の大部分を回収再利用することができる。一旦リジェクトとして排出された原料の大部分を回収し再利用することで,添料や繊維の使用量を減らすことができる。<BR>抄紙機工程でのトラブルを未然に防止しながら,95%を回収再利用する。そのまま再利用した場合に発生する,各種マシントラブルを未然に回避するのと同時に製品品質の低下も防ぎながら,それと同時に添料やパルプ繊維の回収及び再利用を実現する。また,自然にも優しい技術である。<BR>ATREX装置の効果を実際に,工場現場において運転して性能を確認していただけるように,テスト機による実機レベルの効果確認運転も可能である。
著者
ラグナー マーティン 手塚 知行
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.1149-1153, 2005
被引用文献数
1

クラフトパルプ工場において環境保全に対応した操業を考慮した場合, 最も注目すべきところは漂白工程であることは周知の事実である。過去25年間の漂白技術に関して振り返ってみると, その技術開発には目覚しいものがあり, また, 今後も更なる進歩が実現されるものと考えられる。<br>2003年春, クヴァナパルピングが開発した最新のファイバーラインが, 南米ブラジルRIPASA工場で操業を開始した。このファイバーラインには, 今日の最新技術すなわち高温二酸化塩素漂白 (DUALD™, D<sup>*</sup>), 加圧過酸化水素漂白 (OP), コンパクトプレス洗浄機―COMPACT PRESS™などが含まれており, 言わば今日の代表的な最新ファイバーラインであると言うことができる。一方, その基準で25年前の代表的な古いファイバーラインを評価すると, 環境保全及び操業効率の面で遅れているところがあると認めざるをえない。しかし, 継続的な投資を通じて, 最新技術に向かって一歩ずつ小刻みながらも改善のステップを積み重ねれば, Aracruz fiberlineAのように既存のファイバーラインを最新技術の特徴を有するものに改善することができる。<br>本稿では, まず最新のファイバーライン技術を簡単に紹介し, 次にこの技術を参照しながら, 制限された予算内での小規模なプロセス改造の実施により, いかに既存のファイバーラインを環境に優しいプロセスへ改良させるか, その方法について考察する。
著者
高木 浩志
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.236-240, 2013-03-01

高さ634mで電波塔として世界一となる東京スカイツリーは,多くの関係者の英知と技術の粋を集めて,様々な困難を克服しながら2012年2月29日に無事竣工し,5月22日にグランドオープンを迎えた。建設途中の建物が世間一般からこれほどの注目を集めたことは前例がない。着々と高くなっていくタワーを仰ぎ,今しか見ることができない姿としてその様子を熱心にカメラに収める人も多く,完成が近くなるにつれて,工事が終わってしまうことを惜しむ声すら聞かれるほどであった。オープン後も大変な話題となっているのはご承知の通りである。<BR>しかし,その建設にあたっては,これまでに無い高さに挑むということに加え,地震や強風,制約の厳しい敷地条件など,様々な技術的難題を解決する必要があった。安全性・効率・品質・工期などのあらゆる面で,従来の経験を確実に踏まえながらも,それを超える革新的な発想も盛り込みながら,一つ一つ課題を解決していくことが求められた。<BR>本稿では,大地震にも耐え,「巨大であること」と「精密であること」という対極にある二つの目標を両立し,誰も行ったことのない領域での工事を計画通りに進めることを可能にした様々な技術の紹介を通じて,日本のものづくりの総力を結集したこのプロジェクトの全貌を明らかにする。
著者
振角 圭一
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.54-57, 2014

春日井工場のT―4マシンは1993年の設置以来,約20年に亘ってティシュペーパー用の原紙を生産して来たが,ヤンキードライヤー(以下YD)胴面の減肉が進み,蒸気内圧に対する強度的な限界が近づいていた。そこで,YDの延命対策として耐摩耗性に優れる溶射被膜をコーティングする工事を実施した。<BR>YDは直径4.2m,幅5.8mの巨大なドラムで,内部に蒸気を充満させて,胴面に巻き付けた湿紙を乾燥させ,乾いた紙をドクターで剥がす際にクレープ(縮みじわ)を付ける機能を持つが,材質が鋳物の為,ドクターとの摩擦により荒れた面を定期的に研磨する必要があった。<BR>そこで,YD表面に硬度が高く耐摩耗性に優れる溶射皮膜をコーティングしたところ,ドクターとの摩擦による摩耗が非常に少なくなり,YD表面が荒れないようになった。これにより,定期研磨が不要となったため,YDの減肉が止まり延命に繋がった。<BR>また,T―4マシンではYD表面の摩耗の進行に伴って表面に露出した鋳造欠陥(鋳巣)がスクラッチ状に成長し,これが原因で紙面に穴が発生する問題があり,定期研磨前には抄速を落として対応していたが,工事後にはYD表面が荒れなくなったので,この問題を解消する事ができた。YD溶射後は,エネルギーコストの増加はあるものの,メンテナンスコスト削減と生産性向上により,全体としてコストダウンとなっている。<BR>近年はメーカー各社の溶射技術の向上により,鋳物YDの現地溶射は安価で高品質な施工が可能となっており,今回の工事の結果からも,減肉した鋳物YDの延命化策として全面溶射が有効な対応策となる事が確認出来た。
著者
松崎 直 上沼 雄一
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.376-379, 2014

当社の製品は特殊印刷用紙,機能紙,特殊板紙,フィルム製品に大別されるが,食品業界のほか,建装業界を含めた印刷業界,自動車産業や電気・電子産業向け等に各種機能性素材を提供している。<BR>本稿にて紹介する食品業界向けには,非フッ素系耐油剤を使用した「耐油紙」,グラシン紙などにシリコンを塗布した「食品セパレート紙」等を生産している。<BR>これらは各顧客ニーズに応じた容器包装用素材としての機能を発揮させる必要がある。それと同時に顧客に安心して使用して頂くためには,製品の安全性確保が不可欠であり,使用原材料を厳密に管理していくことが重要である。<BR>当社では食品用途製品の製品安全性管理において,各種法規制や業界自主管理に対する適合性の遵守はもちろんのこと,王子グループの「製品安全憲章」が示す方針に基づきより厳しい基準を設定している。また,異物混入防止対策,異物流出防止対策,衛生管理体制,防虫管理体制については操業現場,工場品質保証部門が一丸となって日々よりよい製品つくりを行うとともに本社品質管理監査部門による管理体制の定期監査を通じて,安全性の管理レベル向上に日夜取り組んでいる。
著者
外岡 豊
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.1420-1431,019, 2003-10-01 (Released:2010-10-27)
参考文献数
13

20世紀後半は巨大資本のビジネス競争により世界的な大量消費がなされ世界的な資源の枯渇と環境の破壊を招いた。オゾン層破壊, 気候変動, 化学物質汚染など地球史的にも異常体験といえる時代であった。持続可能的発展と簡単に言うが20世紀後半の延長上には持続可能社会への入り口さえ見つからないであろう。持続可能社会への再出発点として3千年紀の人類社会の方向性を考え, 20世紀後半の異常性を再確認して21世紀前半の日本のあり方を考える。地球温暖化問題はその再出発への合図となる。