著者
小野寺 勇雄 上條 康幸 宮西 孝則
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1655-1661,017, 2003-11-01 (Released:2010-10-27)
参考文献数
14
被引用文献数
2

スギは国内に豊富に存在する樹種であり, 建築材や家具等, 様々な用途に利用されているが, パルプ原料とした場合, リグニンや樹脂成分を多量に含み, 容積重が低いことからKP原料としては適していないとされている。しかし, 容積重が低いというスギの特徴はKP原料ではなく, 機械パルプの原料として適性があると考えられたことから, 本研究では実験室スケールでスギを原料としたTMP製造技術について検討を行った。ラジアータパインに対するスギの配合率を種々変更した原料チップからCTMP法を用いて機械パルプを調製し, パルプ物性の評価を行った。その結果, スギ配合率の増加に伴って, パルプの比散乱係数が増加した。各パルプにおけるファインの性質について調査を行ったところ, スギ配合率が増加するにつれて, 光学的性質に寄与するフレーク状ファインが多く生成することが明らかとなった。従って, スギを配合することにより比散乱係数が増加したのは, 生成するファインの性質が変化したためであると推定される。また, 過酸化水素を用いた漂白実験において, スギを20%配合した場合は, 配合しないものに比べて到達白色度が約3ポイント高いという結果が得られた。以上の結果から, スギを原料として製造した機械パルプは, 光学的性質に寄与するフレーク状ファインが多く生成することから比散乱係数が高く, 紙の不透明度向上に対して有望な原料であると考えられる。さらに, 今回評価を行ったスギCTMPは白色度が高く, 漂白性にも優れていることがわかった。
著者
橋井 一雄
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.538-550, 1985-06-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
16
被引用文献数
1

This article relates to some technical aspects of oxygen application and handling safety based on the fundamental chemical and phisical properties, phsiolosical effect, analytical procedures, production processes, and shipment to a customer.
著者
鈴木 卓
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.9, pp.896-908, 1984-09-01 (Released:2009-11-19)

The Japan machinery federation established the institute for interchanging studies on industrial microbe utilization as a part of its efforts for interchanging industrial studies among the three parties related to it i. e. the industrial world, the official world and the learned world, and was carrying on studying microbe utiligation for pulp and paper manufacturing processes hence. Recently, the institute made a summarized report on the results of this study. The present writer, who continued to participate in the process of this study as on observer, would like to outline this report for readers and add a few personal views of mine to it.The contents of this article may be summarized as follows.1. On utilization of microbes.2. On bio-pulping.3. On the possibility of utilization of microbes.1) Scheme of appilication of microbe utilization to pulp and paper manufacturing process in general.2) Their utilization for wood chip yard.3) Their utilization for deodorizing spent liquor.4) Possibility of applicating their utilization to methane fermentation.5) Their utilization for raising efficiency of removing COD.
著者
山崎 秀彦
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.1481-1492,012, 2000

弊社の第1号ヤンキーの図面は1891年に作製され, その3年後に原型となる製品がGoteborg製紙工場に納入された。このヤンキーはその後1980年代まで運転され, 最後に北アフリカのある製紙工場に売り払われた。以後, 現在まで450台のヤンキーシリンダーがKarlstad (スウェーデン) より出荷されている。材料, 製造法の改良に加えて, コンピューターによる工業デザイン化, 鋳造プロセスの精密化, コンピュータ制御による研削が行われている。今や, 抄速2,000m/min以上のティシュマシンにおいてもジャンボサイズのヤンキードライヤを目にすることができる。<BR>ティシュマシンでは, 乾燥部はヤンキードライヤとフードが主役であるが, これらに加えて, 近年は革新的なTAD (Through Air Drying) 技術の導入も行われ, 大幅な品質向上がもたらされる。<BR>一方, 板紙マシンにおいてもヤンキードライヤは, 従来ヨーロッパでMGドライヤとして乾燥部に設置されている例がよく見られた。近年の傾向としてはマシンの改造によりMGドライヤは除かれる傾向にあり, 目的の表面品質はカレンダーにより付与するというコンセプトに移ってきている。<BR>本稿では, ヤンキードライヤ, フード, TADの技術を紹介するとともに, 斬新なドライヤ技術として, 紙・板紙用のインピンジメントドライヤ, 板紙用の独創的なストレートスルーのブレスドライ方式であるコンデベルトを紹介する。
著者
杉山 正夫
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.88-93,018, 1998
被引用文献数
1

従来, コート紙, 上質紙等の不良部分は人手をかけて選別しているが, 昨今平判の自動選別装置が開発されている。<BR>既製の装置については価格, 内容等で採用しにくい点もあり, 南千住製作所と共同でストリーク, スポットを主対象とする装置を開発した。主な特徴は,<BR>(1) 給紙部には, 紙折り機のノンストップ高速フィーダー採用。<BR>(2) 検出部は透過型1基 (スポット, 汚れ), 反射型2基 (ストリーク, シワ他-表・裏) の全幅CCDカメラ使用。<BR>(3) 検出ソフトは独自に開発, 集積度を高め検出力アップ。<BR>(4) 搬送部はSラップ方式, ベルトガイド採用。平坦面で検出可能。<BR>(5) オーバーラップ部には, スタートアンドトップ装置取付。<BR>稼動開始以降, 紙の安定走向と検出精度をアップさせ, 現在では64-157g/m<SUP>2</SUP>四六判が, 常用10.000枚/Hの高速で選別が可能となり問題なく稼動している。<BR>計画された数量を達成, 選別要員の削減効果もあげている。
著者
白石 昌春 室伏 力
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.399-405, 1980-06-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
1

1. 悪臭対策以前の状況鈴川は, 北に富士山, 南は駿河湾に面した静かな農村であった。昭和12年, 内地で最初のクラフト工場が建設されたが, 工場の規模は拡大され, 他の産業も立地し, 工業地帯と変った。公害問題は, 当初粉じん, 次いで田子の浦港のヘドロ, そしてクラフト工場の悪臭が問題となった。2. 新施策鈴川工場は, 1971年に新たなポリシイを決めた。(1) 鈴川工場は公害を出していることを認識する。(2) 隣接住民との対立を最小にすべく努力する。(3) 最も効果的な部分より設備改善を進める。(4) モニターを置いて潜在的な公害原因を探知する(5) 公害の発生源, 量と, 住民に対するインパクトを調査する。3. 工程の改善(1) 悪臭ガスの集合と, キルンとRBでの燃焼。(2) 排水の蒸気加熱真空型ストリッピング。(3) RB関係の改善。モードースクラバーの設置, 無臭化ボイラーの設置。大昭和一荏原 (D-E プロセス) の設置。4. 隣接住民の工程改善に対する反応ガス集合は, 悪臭減少の評価が出たが, 3~6カ月後には, 悪臭が元にもどった, と言われた。鼻が鋭くなったためである。ストリッピングも評価が高かったが, 同じく3~6カ月後には元にもどった, と言われた。回収ボイラーについては反応が出なかったが, 工場の態度は好感が持たれた。重要なのは緊急時に濃い悪臭物質が流れた場合, 無臭に馴れた住民にインパクトが大きい点である。鈴川工場は, 1971年以来, 40名のモニターを配置し, 粉じん, 騒音, 悪臭, 振動のデータを集めている。工場はこれをもとにして, 設備改善を進めたが, その結果が良くモニターの記録に表われた。悪臭に対する感覚は, 悪臭物質が1/10になって, 1/2になったと感ずると言われる。鈴川工場の悪臭物質は, 1972年と比較して, 8.7%以下であるが, 未だ隣接居住者は, 悪臭が消えたとは思っていない。
著者
若林 靖史
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.254-260, 2014

我が国が宇宙開発に取り組んでから半世紀が過ぎようとしている。生活の利便性を向上させたり,地球環境を把握する人工衛星のミッション,生命の起源・宇宙の起源など大きな知識の獲得を目指す科学探査のミッション,国際プロジェクトの一端を担う有人宇宙ミッションなど幅広い宇宙活動が展開されている。<BR>人工衛星の分野では,精度1m以下の位置決めや,大規模災害の状況把握や地球環境変動の観測の有用性も確立されてきた。科学探査の分野では,"はやぶさ"のチャレンジが国民の共感と世界の注目を集めた。先進各国が協力して作り上げた国際宇宙ステーション(ISS)は史上初の人類的プロジェクトで,我が国は日本モジュールの開発や物資補給機"こうのとり"の開発・運用,宇宙飛行士の活躍などで国際的な信頼を得ている。<BR>本稿では,これまでの技術開発がどんなステップで進められてきたかを概観した。<BR>現在の技術開発は,ロケットのシンプル化・ローコスト化,人工衛星の小型高機能化を目指して進められ,次世代への飛躍を準備している段階にみえる。世界では,中国やインドなどが嘗ての米ソのような国威発揚のための有人宇宙開発を展開し,欧米では宇宙港が建設され『黒い宇宙の深淵に輝く星座と足元に浮かぶ青い地球を実体験できる宇宙観光飛行』が開始されようとしている。
著者
羽角 和正
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.1328-1338,037, 2003

近年, シェード変動と製品外観に対し, より厳しい品質要求が高まってきており, 製紙業界は品質と効率向上を求めて, カラー変更に要する時間とそれによる損紙発生とを削減する方法を探究してきた。カラー変更の手動制御では変更の複雑さに応じて所要時間が1時間にもなることがある。近年は在庫削減と顧客への迅速納品の要請が強く, 製紙メーカはこれまで一般的であったシェードを徐々に変えていくという贅沢が許されなくなり, 各シェード製造の生産工程を短くせざるを得ず, 難しいシェード変更が頻繁に行われるようになってきた。<BR>加えて, カラー制御のソリューション内容にも進化が見られている。カラー制御の新しいアプリケーションとして蛍光増白剤の存在下でのカラー制御が可能となり, 染料効率の変化と損紙によるカラーの乱れを把握出来るようになり, 紙の表裏差を処理できるようになった。また, 同一グレード内のシェード安定性の向上を目的とする制御ストファンにも前進が見られた。こうした新しい制御技術により, 応答性に優れ, かつ色座標をこれまでになくターゲットに近く保つことの出来る堅牢なモデルが実現されるに至った。<BR>イギリスにおいて弊社の次世代カラー制御システムについて, 四工場 (ファインペーパー抄紙機2台と新聞用紙抄紙機2台) で試験評価を実施した。その結果, 上質ファインペーパー抄紙機ではシェード変動が30%削減され, カラーチェンジ時間が50%削減された。再生新聞用紙抄紙機ではデルタE変動が45%劇減され, その結果シェード変動は肉眼で識別できないまでに改善された。<BR>この新しい劉御システムには, 多変数スーバーバイザリ・カラー制御機能, 染料ゲインの自動決定機能, 染料効率の補償機能, 染料レシオのマスター/スレーブ制御機能, カラー変更の自動制御機能等が備わっている。本報では, 次世代カラー制御システムの機能とその結果について紹介したい。
著者
花野 茂
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.1067-1071, 2010-09-01

当社は,スウェーデン国コアーリンク本社とコア関連設備及び損紙ロールハンドリング設備について技術提携をしている。コアーリンク社は,過去数十年に亘りその革新的な技術で,製紙業界での生産性の向上や経費節減につながる廃棄物の削減を可能にしており,50カ国以上の国・数百以上の工場においてこれらの設備を納入し,製紙業界でその地位を確立している。今後,更なる信頼向上・ロジスティック・人間工学・環境持続性とコスト削減のため,市場の要望に応えるべく開発を行っている。<BR>コアー及び損紙ロールハンドリング設備に導入された新しい革新的な製品の例として,ロールカッター・クリックス・コアグルーバー・コアー再生システムを紹介する。
著者
新井 勝
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.1047-1053,015, 1997

最近では白色度70%を超える高白色新聞DIPが製造され, 中級印刷紙, PPC用紙, フォーム用紙, 微塗工印刷紙などに使用されている。<BR>高白色新聞DIPの品質としては, 白色度が70%以上であるということの他に, DIP中の黒ひげ (未剥離のインキ) およびチリが極力少ないことが要求される。<BR>一般的な新聞DIP, 白色度55-60%を製造する技術と, 高白色新聞DIPを製造する技術を比べると, 基本の原理としては大きく変わることはない。基本の原理とは大きく分けて, 離解, 除塵, 脱墨, 漂白である。高白色新聞DIPを製造するためには, 一般の新聞DIPの処理工程に比べ, 特に除塵, 脱墨, 漂白を強化する必要がある。<BR>(1) 離解工程: 異物除去効率向上のため, 補助のパルパースクリーンやドラム型のファイバーフローが使用される。<BR>(2) 除塵工程: 粗選工程, 精選工程でスリットスクリーンが使用され, 精選工程のスリットスクリーンのスリットサイズとしては0.15mmが使用されるようになってきている。<BR>(3) 脱墨工程: インキの剥離方法には大別して機械的処理方法と化学的方法があり, この二つの方法を上手く組み合わせることが重要である。機械的処理を主にした方法にはディスパーザー処理がある。化学的処理を主とした方法には熟成処理がある。この剥離したインキを工程内から除去する手段の一つとしてフローテーション処理を行うが, より効率がよく, 電力原単位の少ないフローテーターを採用する必要がある。フローテーターで除去し難い微細なインキ粒子を除去するには洗浄機が使用される。<BR>(4) 漂白工程: 新聞古紙を脱墨後, さらに白色度を高めるには酸化漂白または還元漂白を行う。酸化薬品としては過酸化水素が最も一般的である。還元薬品としてはハイドロサルファイトやFASなどが使用される。
著者
但木 孝一
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1391-1397, 2008
被引用文献数
3

近年の抄紙マシンの高速化,中性化等の影響でウエットエンドの最適化は,大変重要になってきている。特に大きな問題として古紙に由来するピッチ成分やアニオントラッシュ等の夾雑物による抄紙マシンの汚れトラブルの増加が顕著になっている。また填料の高配合化の影響により歩留りが大きく低下し,操業上問題が生じるケースも増えている。このように抄紙条件は,年々厳しさを増しており,ウエットエンドでの各種添加薬剤の本来の効果を発揮するのが難しくなっている。<BR>弊社では,厳しい抄紙条件下で各種添加薬剤の効果を最大限に引き出すために高機能化した凝結剤として,「リアライザーAシリーズ」を開発してきた。更に微細繊維や灰分の歩留りに効果的な高機能歩留り剤「リアライザーRシリーズ」,「レクサーFXシリーズ」の開発にも最新のポリマー合成技術を導入して取り組んできた。これらの薬剤から構成されるウエットエンド改質システムが「アクシーズシステム」である。今回は,この「アクシーズシステム」による抄紙マシンの汚れトラブルの低減や歩留り,濾水性等のウエットエンド物性の向上について報告する。
著者
長尾 義行 朝田 知子 加藤 美穂 黒瀬 茂
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1152-1160, 2006
被引用文献数
6

近年,製紙業界では生産性,操業性,品質の向上だけでなく地球環境への配慮が大きな課題となっている。そのため抄紙系内では,工場排水に起因する環境への負荷低減のためのクローズド化が急速に進んでいる。また地球資源及び環境面から古紙配合率が高まり,抄紙系内のピッチ成分やアニオントラッシュ等の夾雑物が増加している。このように抄紙条件は,年々厳しさを増しており,ウエットエンドでの各種薬剤の本来の効果を発揮するのが難しくなっているため,これまでに無い高機能な薬剤が必要とされてきている。<BR>弊社では,厳しいウエットエンド条件下で各種添加薬剤の効果を最大限に引き出すために高機能化した凝結剤として,ウエットエンド改質剤「リアライザーAシリーズ」を開発してきた。更に微細繊維や灰分の歩留りに効果的な高機能な歩留り剤「リアライザーRシリーズ」,「レクサーFXシリーズ」の開発にも最新のポリマー合成技術を導入して取り組んできた。これらの最新の薬剤から構成されるウエットエンド改質システムが「アクシーズシステム」である。更に長年に亘り培ってきた抄紙工程でのスライムコントロール技術を集約した微生物コントロールシステム「キュアサイドシステム」を構築し,ウエットエンドのトータル的な最適化を検討している。これらは,最小限の添加量で最大限の効果を発揮し,同時に各種ウエットエンド添加薬剤の削減も可能であるため環境負荷低減に貢献できるシステムである。
著者
日比野 雄志
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.1375-1378, 2012-12-01

王子グループでは,1997年1月に環境憲章を制定し環境経営に取組んできた。<BR>今回は,特に地域住民との情報交流や社会貢献活動といった環境コミュニケーションに積極的に取り組んでいる都市型工場である,王子製紙春日井工場の取組み事例を紹介する。<BR>王子製紙春日井工場は,主力のコート紙をはじめ上質紙,中質紙,クラフト紙,ティッシュ,紙おむつ等を生産する総合紙パルプ工場である。名古屋市の北東部に位置する人口31万人の春日井市の中心に位置し,社宅地区を含めた敷地面積は約84万m<SUP>2</SUP>と,春日井市の全面積の約1%弱を占める。名古屋市近郊の発展とともに急速に都市化が進み,工場を取り巻く環境が大きく変わってきた。<BR>環境コミュニケーション活動は下記がある。<BR>1)地域住民との情報交流として,<BR>(1)製紙工場周辺地域連絡会(環境情報の説明)<BR>(2)庄内川中流部整備問題研究会(庄内川水系の改修計画や環境保全計画等の情報交換)<BR>(3)環境モニター会(地域住民の方へ依頼している環境モニターとの情報交換)<BR>(4)かすがい環境まちづくりパートナーシップ会議(市民,春日井市,企業が共同して環境の改善を図る組織)がある。<BR>2)地域社会活動として,<BR>(1)工場見学(周辺地区の学校,自治体等による工場見学)<BR>(2)王子バラ園(工場社宅地区のバラ園を開園し地区住民の方々のふれあいの場を提供)<BR>(3)少年野球大会開催(工場敷地内の野球場の提供,野球教室)<BR>(4)社宅地区における桜祭り,納涼祭り<BR>(5)庄内川・地蔵川清掃<BR>(6)使用済み割り箸のリサイクル活動<BR>(7)その他行政主催のイベントへの参加がある。<BR>王子グループではさらなる環境改善を目的に,2015年に向けた環境への取組み目標として新たに「環境行動目標2015」を掲げた。
著者
宮西 孝則
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.1186-1196, 1999-09-01

埋め立て地が不足するという危機感から, 米国では1990年前後に多くの外販古紙パルプ工場が建設された。しかし, 抄紙機で粘着物トラブルが発生したこと, 消費者が古紙パルプを配合した紙を高い価格で購入しなかったこと, バージルパルプの価格が低下したこと, 外販古紙パルプが過剰になったことなどにより, 古紙パルプの価格が低下し, 工場の倒産が続き, 紙, 板紙への古紙配合率は低迷している。一方, 高品質DIPを生産するためにますます機器の数は増え, DIPプラントは複雑になってきた。デスパージョン, ニーダー, フローテーション, 漂白は多段になり, 設備, 保守, 運転エネルギーの費用が増加している。技術論文の多くは理論ではなく, トライアンドエラーの経験に基づいて書かれており, 機器を増やす傾向がある。そこで機械設備だけでなく, 界面化学の観点から, 白水中のインクと粘着物の挙動についての基礎的な理解が求められている。DIP工程から抄紙機ウエットエンドへのアニオントラッシュのキャリーオーバーを防ぎ, DIP工程とウエットエンドにおいて界面化学の観点から最適な処方を行うことが肝要である。
著者
小菅 雅徳 森尻 哲央 藤井 基治 小川 正富
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.468-477, 2004-04-01
被引用文献数
3

製紙工程においてコロイド状ピッチ粒子の存在およびその状態は操業性,及び紙の品質に大きな影響を与える。古紙の利用率が高まるに伴い,ピッチに起因するマシントラブルは増加傾向にあり,特に近年,板紙系では宅配便等のラベルに用いられるポリアクリル酸エステル系粘着剤に由来するピッチが顕著となっている。このポリアクリル酸エステル由来のピッチは主にドライヤーロールやカンバスにて認められる。<BR>弊社は,ポリアクリル酸エステル由来のピッチトラブルを抱えるライナーマシンにてタイプが異なる4種類の凝結剤の現場試験を行なった。その結果,これらの凝結剤は,ドライヤーへのピッチ付着量の低減,紙中欠点の減少,及びパルプ濾液中の濁度,アニオン化度の低減に有効であった。<BR>パルプスラリー中におけるピッチ粒子の挙動と凝結剤の作用メカニズムを解析するため,モデルピッチによる実験を試みた。モデルピッチとしては,市販粘着テープをテトラハイドロフラン(THF)にて抽出して調製したポリアクリル酸エステルのTHF液を用いた。<BR>このモデルピッチを用いた実験の結果,凝結剤がピッチ粒子の粗大化防止に有効であることを確認した。さらに収束ビーム反射測定法(Focused Beam Reflectance Measurement;FBRM)による粒度分布の測定結果から,凝結剤のタイプによりパルプスラリー中でのピッチ粒子の分散,吸着に及ぼす作用メカニズムが異なることを見出した。
著者
豊福 邦隆
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.570-580, 2010

2009年10月26日~29日にブラジルのサンパウロで,第42回ABTCP(ブラジル紙パルプ技術協会)年次大会・展示会がPI(フィンランド紙パルプ技術協会)との共催で行われた。2006年の年次大会以来,2度目の参加である。<BR>ABTCPの積極的な海外活動とブラジル紙パ産業の成長を反映して,結構,海外(欧米)からの参加者も多いが,さすがに経済危機の影響を受けた今年は,例年に比べて半減している。<BR>特別セッションで世界各地域を代表した5件の発表が行われ,環境,パルプ,自動化,紙,回収・設備,エンジニアリングの6分野で65件の一般講演が行われた。特筆は,併設される展示会の巨大さであるが,2006年に比べるとこれも半分に近い5,600m<SUP>2</SUP>という広さに減少し,165社の展示が行われた。<BR>大会終了後には,フィブラ社のジャカレイ工場とその苗畑や植林地を見学した。また,サトウキビからのバイオエタノールの生産工場も見学した。
著者
石村 大輔
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.73-76, 2013-01-01

今日,CO2削減と省エネルギー,環境保全への関心が高まっている。このような中,レンゴーグループでは,地球環境の保全に配慮した経営を実践することが,企業の持続的発展に不可欠であるとの認識に立ち,グループをあげて環境保全活動に継続的に取り組んでいる。<BR>レンゴー利根川事業所では,バイオマス焼却設備(ボイラ)を導入した。これまでの既設ロータリーキルン焼却設備では,産業廃棄物燃焼による廃熱回収は行っておらず,エネルギーが有効利用されていなかった。バイオマス焼却設備(ボイラ)では,蒸気でエネルギー回収できるようになった。これにより自家発電用ボイラのLNG燃料を削減でき,CO2の排出量を大きく削減できた。<BR>また,ロータリーキルンでは製紙汚泥ならびに排水汚泥を処理していたが,事業所内で発生する全量を処理しきれず,弊社八潮工場(埼玉県)や処理業者へ処理を委託していた。しかしバイオマス焼却設備(ボイラ)導入後は,事業所で発生する産業廃棄物(可燃物)の全量焼却処理をできるようになった。<BR>この結果,産業廃棄物量は,飛灰・焼却灰の排出量については増加したものの,廃棄物全体量は削減できた。<BR>バイオマス焼却設備(ボイラ)の導入から約半年程経過し,現在順調に稼働している。今後はさらに安定運転に励んでいく所存である。