著者
Takeo KAWAMICHI Samdannyamin DAWANYAM
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
Mammal Study (ISSN:13434152)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1+2, pp.89-93, 1997 (Released:2005-10-07)
参考文献数
10

We excavated a breeding nest of the Daurian pika, Ochotona daurica, in central Mongolia. Four young were captured within the burrows. Three food storage chambers contained plant fragments and a large amount of fecal matter, indicating that hoarded food had been consumed during the last winter. The nest chamber was spherical and measured 22×18×21 cm. Most of the nest chamber was filled with piles of grasses, and these piles were presumably their resting site. The burrow system had three entrances, and the nest chamber was connected to three burrows. Multiple nest entrances were provided ready access to refuge for pikas active on the ground surface from aerial and terrestrial predators, while multiple burrows also provide refuge against the intrusion of predators such as stoats into nest chambers.
著者
釣賀 一二三
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.119-123, 2008-06-30
被引用文献数
12

これまでに北海道で試みられたヒグマの個体数推定は,その推定値に大きな誤差を含むものであった.現在,より精度の高い推定を行うために,ヘア・トラップ法を応用することが可能かどうかの検討を実施しており,本稿では検討の概要とその過程で明らかになった課題について述べる.ヘア・トラップ法を用いた個体数推定法の本格的な検討に先立って行った3カ年の予備調査では,誘因餌を中央につり下げて周囲に有刺鉄線を張ったヘア・トラップによって試料採取が可能なこと,試料の保管には紙封筒を用いて十分な乾燥をした後に保管する必要があることなどが明らかになった.さらに,分析対象の遺伝子座の選択に関する課題の整理が行われた.その後の3年間の本格調査では,ヘア・トラップ配置のデザインと構造を検討するために,メッシュ単位で29箇所あるいは39箇所に設置したヘア・トラップの適用試験を実施した.この結果については現在解析途中であるものの,ヘア・トラップを設置する場所の均一性を検証することや,ヘア・トラップの設置密度の基準となるメッシュの適切な大きさに関する検討の必要性が課題としてあげられた.<br>
著者
山田 文雄
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 = Mammalian Science (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.99-102, 2006-06-30
被引用文献数
3
著者
高橋 裕史 梶 光一 吉田 光男 釣賀 一二三 車田 利夫 鈴木 正嗣 大沼 学
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.45-51, 2002-06-30
被引用文献数
6

洞爺湖中島において移動式シカ用囲いワナの一種であるアルパインキャプチャーシステム(Alpine Deer Group Ltd., Dunedin, New Zealand)を用いたエゾシカ Cervus nippon yesoensis の生体捕獲を行った.1992年3月から2000年2月までに,59日間,49回の捕獲試行において143頭を捕獲した.この間,アルパインキャプチャーの作動を,1ヶ所のトリガーに直接結びつけたワイヤーを操作者が引く方法から,電動式のトリガーを2ヶ所に増設して遠隔操作する方法に改造した.その結果,シカの警戒心の低減およびワナの作動時間の短縮によってシカの逃走を防止し,捕獲効率(捕獲数/試行数)を約1.1頭/回から3.5頭/回に向上させることができた.
著者
中下 留美子 後藤 光章 泉山 茂之 林 秀剛 楊 宗興
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 = Mammalian Science (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.19-23, 2007-06-30
被引用文献数
2

An adult male Asiatic black bear (<i>Ursus thibetanus</i>), 105 kg in body weight and 130 cm in total length, was captured at a fish farm in Miyadamura village, Nagano Prefecture, Japan in June 2005, due to its nuisance activity. We analyzed δ<sup>13</sup>C and δ<sup>15</sup>N in the hairs and plasma of the bear and in the muscles of rainbow trouts (<i>Oncorhynchus mykiss</i>) at the farm to discern whether the bear was actually involved in the farm damages. Both δ<sup>13</sup>C and δ<sup>15</sup>N values in the hairs and plasma were similar to those in rainbow trout muscles, confirming that the bear indeed ate a considerable number of the farm's rainbow trouts. The δ<sup>13</sup>C and δ<sup>15</sup>N values of serum were closer to those of the trout muscles than those of the hairs, indicating that the bear depended heavily on trouts in the spring of 2005 in comparison with the previous year. Moreover, stable isotope levels in the tips of the hairs were closer to those of trout muscles than those at the bases of the hairs. This suggests that the bear depended much more heavily on trouts in the previous spring than in the previous fall.<br>
著者
湯浅 卓 佐藤 喜和
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.109-118, 2008-06-30
被引用文献数
12

日本におけるクマ類の保護管理にとって,有効な個体数推定法を確立することは急務である.ヘア・トラップを用いた非侵襲性サンプリングおよびDNA分析に基づく個体識別によるクマ類の個体数推定法は,従来の捕獲再捕獲法より効果的な方法として注目されている.この手法は,海外では個体数推定法の一つとして定着しつつある一方で,日本では実用に向けて克服すべき課題が多い.そこで,この手法のより効果的な適用を目指し,サンプリング,遺伝子型決定,およびモデルを用いた個体数推定の3つの過程における検討課題を,国内外の事例に基づき整理した.ヘア・トラップ法を用いたクマ類の個体数推定を成功へ導くためには,生態,遺伝,数理モデルなどの研究者による方法論の議論が不可欠であり,地域個体群の全域を対象とした大規模調査の実施が必要と考える.<br>
著者
本田 剛 林 雄一 佐藤 喜和
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.11-16, 2008-06-30
被引用文献数
4

農業被害を引き起こすイノシシの行動を明らかにするため,被害を受ける農地と森林の境界となる林縁周辺で捕獲した個体を対象とし,季節及び時間ごとの環境選択を解析した.2004~2005年の5~11月にイノシシを6頭捕獲・追跡し,標高及び植生に対する選択性を一般化線形混合モデルにより調べた.このうちの1個体は森林外で一度も確認されず,林縁から1,000 m以上離れた林内まで利用した.一方,森林外を利用した5個体のイノシシの内,4個体は林縁周辺を集中的に利用した.森林外を利用した個体の環境選択を季節及び時間別にみると,春夏期の日中は低標高地と森林内を好み,夜間は低標高地と森林外を選択的に利用した.森林外の利用地は主に農地と耕作放棄地であった.以上のことから,農地を加害するイノシシの捕獲は,林縁周辺で実施することが効果的であると結論した.<br>
著者
森井 隆三
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.219-223, 1978

1971年から1976年にかけて, 香川県内で採集されたアブラコウモリの新産児 (89個体) の乳歯 (di2/3dc1/1dpm2/2=22) の脱落と永久歯 (I2/3C1/1PM2/2M3/3=34) の萠出について調査した。結果は次の通りである。<BR>1. 乳歯の脱落は, 出生後14日令から始まり, 30日令で完了する。<BR>2. 乳歯の脱落順序は以下のようである。<BR>上顎: 第2乳臼歯→第1乳臼歯→ (乳犬歯・第1乳切歯) →第2乳切歯, 下顎: (第1乳切歯・第2乳臼歯) →第2乳切歯→第3乳切歯→第1乳臼歯→乳犬歯。<BR>3. 永久歯の萠出は, 出生後8日令から始まり, 30日令で完了する。<BR>4. 永久歯の萠出順序は以下のようである。<BR>上顎: (第1大臼歯・第2大臼歯) → (第2切歯・第3大臼歯) → (犬歯・第2小臼歯) →第4小臼歯→第3切歯, 下顎: (第1大臼歯・第2大臼歯) →第1切歯→第3大臼歯→ (犬歯・第4小臼歯) → (第2切歯・第3切歯・第2小臼歯) 。<BR>5. 乳歯脱落と永久歯萌出の完了期は巣立日令とも一致する。
著者
森井 隆三
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.248-258, 1976
被引用文献数
1

1973年6月9日に, 香川県善通寺市内で採集されたアブラコウモリ (5個体) の出産状況と新産児 (7個体) および胎児 (8個体) について調査した。結果はつぎの通りである。<BR>1. 出産時期は6月9日~13日であった。<BR>2. 胎児数は2~4であり, 平均3.0であった。<BR>3. 胎児および新産児の外部形態における個々の絶対値は変化しているが, 成体に対する全体的なプロポーションは一定のパターンを示したた。<BR>4. 胎児および新産児の頭蓋骨の発達程度は, 外部形態より大きかった。<BR>5. 胎児および新産児の頭蓋骨の縫合は, 後頭部の方が前頭部よりも完成の度合が高かった。<BR>6. 乳歯の萠出は次の順序であった。上下顎とも最初に2本の切歯と1本の犬歯があり, つぎに前臼歯 (dpm1とDPM1) 1本づつが加わった。そして, 下顎に1本の切歯 (di1) が追加され, つづいて下顎に1本の前臼歯 (dpm2) が加わる。最後に1本の前臼歯 (DPM2) が加わる。<BR>7. 乳歯の形態は, di2, di3, dc, dpm1, DI1とDI2の先端は3葉に分かれ, DCはL字型をしており, dpm2, DPM1とDPM2はくさび型であった。di1は先端が2葉に分かれていた。
著者
森井 隆三
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.151-152, 1971

Recently the author obtained six specimens of <I>Miniopterus schreibersi fuliginosus</I> (HODGSON, 1835) with a white patch of different sizes the body from Yashima-dokutsu Cave, Kagawa Prefecture.<BR>Appearance ratio of the partial albinism of this species was 1.2% in this cave, almost similar to that of Akiyoshidai, 1.0%, reported by KURAMOTO, 1967. Five specimens out of six albinos have the white patch on anterior part of the body as in the most of albino bats.
著者
森井 隆三
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.12-13, 1979

屋久島において, 1978年7月25日~26日にかけてコウモリの採集を行った。キクガシラコウモリの雄1頭とコキクガシラコウモリの雄3頭が採集された。上記2種の採集は, 屋久島における初めての記録である。
著者
森井 隆三
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.117-121, 1980

1971年から1978年にかけて, 香川県内で得られたアブラコウモリ<I>Pipistrellus abramus</I>計167個体の外部形態の発育について調査し, 以下の点が明らかとなった。<BR>1.目は出生後約8~9日で開いた。<BR>2.耳介は出生後約3日で立った。<BR>3.毛は出生後約14日で全身にはえた。<BR>4.飛翔は出生後約19日で開始した。<BR>5.出生後約13日までは, 親が新生児をつれ出していた。