著者
Mizuho Hirasawa Eiji Kanda Seiki Takatsuki
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
Mammal Study (ISSN:13434152)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.9-14, 2006 (Released:2006-07-08)
参考文献数
19
被引用文献数
44

Food habits of the raccoon dog (Nyctereutes orocyonoides) at a western suburb of Tokyo were analyzed by the point-frame method by use of 344 fecal samples for a year. The food habits were omnivorous, but plants, particularly plant leaves and seeds, were predominant. The seasonal foods were characterized by leaves and flowers in spring, insects in summer, seeds in autumn, and birds/mammals and artificial foods in winter. Dependency on artificial foods was not strong. The raccoon dogs fed on various fruits and nuts, among which those of planted fruit trees like ginkgo and persimmon were particularly important. The raccoon dog seems to have adapted themselves to "satoyama", a traditional Japanese landscape.
著者
浅田 正彦
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.207-218, 2014

千葉県内でアライグマ(<i>Procyon lotor</i>)の高密度地域において行われた捕獲記録を用い,除去法計算過程を状態空間モデルとして構成した階層ベイズモデルによる個体数推定(ベイズ除去法)を行うとともに,CPUEから生息密度へ換算する係数の推定を行った.また,この係数を用い,千葉県内の2012年度の個体数推定を行った.捕獲は,千葉県いすみ市塩田川流域(35.1 km<sup>2</sup>)において,2012年6月22日~2013年3月23日に100台の箱ワナ(平均近傍距離301 m)を用いて実施された.捕獲の結果,オス成獣53頭,メス成獣29頭,幼獣55頭の計137頭が捕獲された.ベイズ除去法による推定の結果,捕獲開始前の生息数はオス成獣が89頭,メス成獣が103頭,幼獣が130頭,計322頭と推定された.捕獲期間の3か月間で,メス成獣および幼獣の76%以上を除去することができたが,オス成獣は生息密度を維持しており,捕獲開始直後に優位オスが除去されたのち,隣接地域からの放浪個体が移入することが推測された.
著者
Chan-Ryul Park Woo-Shin Lee
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
Mammal Study (ISSN:13434152)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.17-21, 2003 (Released:2003-07-04)
参考文献数
29
被引用文献数
18

We developed a habitat suitability model for wild boar Sus scrofa in the Mt. Baekwoonsan region of Korea. We recorded wild boar field signs (dust baths, bedding sites, digging areas, feces and tracks) and habitat variables such as the nearest distance to watercourses (DWATER) and trails (DTRAIL), slope, aspect (ASPECT), forest type and forest age. Field signs and habitat characteristics were assessed within a 25 × 25 m quadrat along seven survey routes from August 1999 to July 2000. We conducted a CATMOD regression analysis based on 416 field signs at 50 points and classified them into 3 levels of habitat importance (high, medium and low) based on the relative importance of field signs. Habitat suitability indices (P) were calculated based on significant relationships between parameters such as DWATER, DTRAIL and ASPECT resulting in the following function: P = 1/(1 + exp – (3.82 × (DWATER) – 1.21 × (DTRAIL) + 1.35 × (ASPECT))). Important habitats of wild boar were distributed near watercourses and far from trails along east and south-facing slopes.
著者
横山 卓志 楠田 哲士 曽根 啓子 森部 絢嗣 高橋 秀明 橋川 央 小林 弘志 織田 銑一
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.207-214, 2012-12-30
参考文献数
12

飼育下キンシコウ(<i>Rhinopithecus roxellana</i>)の新生仔における行動発達を明らかにすることを目的とし,名古屋市東山動物園で2009年4月に生まれた雌の新生仔において,8ヶ月齢までの成長に伴って観察された行動の経日変化を記録した.また,それらの結果を,中国の国立陝西周至自然保護区の半野生集団および他の飼育下個体における報告と比較した.東山動物園の新生仔は,出生後約1ヶ月間は母親に依存していたが,1ヶ月齢から周辺環境や姉に興味を示し,積極的に接近や探索の行動を開始した.2~3ヶ月齢では姉と2頭で過ごしたりグルーミングに似た行動をしたりするなど社会行動が観察された.生後60日目以降,積極的に姉に近づくようになり,姉の存在がその後の新生仔の行動発達に影響を与えたと考えられた.自然保護区と比べ,木の登り降りや餌に興味を示す行動の発現が著しく早く,また5ヶ月齢以降,腹部接着や支持,近接,接近,離反およびグルーミング受容の行動スコアがほぼ一定となったことから,5ヶ月齢が行動発達の1つの区切りであったと考えられた.東山動物園におけるキンシコウ新生仔の行動発達過程は,群れの数や環境が大きく異なる中国の自然保護区の結果と一致していた.しかし,一部の行動の開始時期には大きな差が認められ,木の登り降りや餌への興味といった行動の発達は,成育環境に影響を受けているとも考えられた.<br>
著者
三沢 英一
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.311-320, 1979
被引用文献数
7

環境の異なった, 北海道大学農学部付属苫小牧地方演習林, 札幌市羊ケ丘, 札幌市盤渓の3地域においてキタキツネのフン分析による食性の比較を行った。<BR>1) 各地域ともエゾヤチネズミがキツネの主要な餌であった。<BR>2) 苫小牧演習林, 羊ケ丘では春, 秋にエゾヤチネズミの採食率は増加し, 冬に減少した。それらの地域で昆虫類, 野生果実の採食率は夏と秋に増加した。<BR>3) 冬にエゾヤチネズミの採食率の低下を補うキツネの餌は苫小牧演習林ではノウサギ, 羊ケ丘ではニワトリとトウモロコシがそうであった。<BR>4) 盤渓では冬にエゾヤチネズミの採食率の低下は見られなかった。また年間を通じて人為的食物への依存が見られた。<BR>5) 各地域とも冬に野鳥の採食率は増加した。<BR>6) 人為的影響の強い環境ほどキツネの人為的食物への依存は強かった。
著者
中本 敦 木田 浩司 森光 亮太 小林 秀司 岸本 壽男
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.107-115, 2013-06-30

岡山県全域を対象とした小型哺乳類の捕獲調査を2010年10月~2011年12月にかけて実施した.齧歯目6種,トガリネズミ型目2種の計130個体が捕獲された.小型哺乳類の8種すべてで生息密度が非常に低かった.アカネズミ<i>Apodemus speciosus</i>の捕獲数が最も多く,捕獲場所も県内全域の様々な環境に及んだ.これに対してアカネズミ以外の種では,植生や標高などの生息環境に選択性が見られた.アカネズミの生息密度に最も大きな影響を与えたのはハビタットタイプではなく,年2回の繁殖による個体数の増加であった.岡山県では何らかの理由で小型哺乳類の生息密度が非常に低くなっていると思われるが,特にこれまで普通種と思われていたヒメネズミ<i>A. argenteus</i>とハタネズミ<i>Microtus montebelli</i>の生息数の減少が懸念された.他県においても普通種を含めた小型哺乳類の生息密度の再評価が必要な時期に来ていると思われる.<br>
著者
高田 靖司 植松 康 酒井 英一 立石 隆
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.89-94, 2014

隠岐諸島をはじめ,本州から九州におけるカヤネズミ(<i>Micromys minutus</i>)の12集団について,下顎骨の計測値にもとづき,多変量解析(主成分分析,正準判別分析)をおこない,地理的変異を分析した.その結果,下顎骨について,全体的な大きさ(第1主成分)には集団間で差は認められなかったが,形(第2–第3主成分)には集団間で有意な差が認められた.特に,第2主成分は島の面積との間に有意な相関が認められたので,何らかの要因が形態変異に作用した可能性がある.正準判別分析では,隠岐諸島の集団間で形態変異が認められた.この変異には島の隔離に伴う遺伝的浮動が働いたと考えられた.しかし,下顎骨の大きさ(第1主成分)について集団間で差がみられず,また,遠く離れた地域の集団間で形態的な違いがみられなかった.これは,Yasuda et al.(2005)が明らかにしたように,日本列島におけるカヤネズミの低い遺伝的多様性を反映しているかもしれない.
著者
宮尾 嶽雄 花村 肇 植松 康 酒井 英一 高田 靖司 子安 和弘
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.128-140, 1983

1982年1月23~26日に, 淡路島南部, 諭鶴羽山地北西山麓部の哺乳動物の調査を行なった。翼手類については, 調査できなかった。<BR>1) .生息が認められた哺乳類は, 次の6目16種である。食虫目: ジネズミ, ヒミズ, コウベモグラ。霊長目: ニホンザル。兎目: ノウサギ。齧歯目: ニホンリス, アカネズミ, ヒメネズミ, カヤネズミ, ハツカネズミ。食肉目: タヌキ, テン, イタチ (チョウセンイタチ, ホンドイタチ) 。偶蹄目: イノシシ, シカ。<BR>2) .ムササビ, スミスネズミ, アナグマなどを欠いている点に, 島のファウナの特徴を示している。キツネも絶滅している。<BR>3) .ヒミズは, 腹部を中心に体毛の白化傾向が著しく, また, ヒミズの尾部にカンサイツツガムシの多数寄生例がみられ, 寄生率も高かった。<BR>4) .アカネズミの耳介にネズミスナノミ (<I>Tunga caecigena</I>) の寄生がみられた。淡路島に本種が分布していること, ならびにアカネズミが宿主になっていることは, 新しい知見であろう。
著者
高槻 成紀
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.183-191, 1983
被引用文献数
3

1973年10月から1977年10月まで, 金華山島において, シカによる群落に対する選択性を調べた。<BR>1.神社周辺のシバ群落を利用するシカは餌づけされており, 密度は800頭/km<SUP>2</SUP>にも達する。<BR>2.これ以外の野生・半野生状態のシカによる群落に対する選択性は, アズマネザサ群落とシバ群落で最も大きく, ススキ群落やワラビ群落ではその半分から3分の1程度であった。イヌシデ群落やブナ群落などの落葉広葉樹林ではさらに小さく, モミ群落, クロマツ群落, スギ群落などの針葉樹林で最も小さかった。<BR>3.この結果とその季節変化から, シカのハビタット選択には群落のエサ供給量が最も主要な要因であると結論した。ただし, この他に微気象要因やシカ内部の社会・行動的な要因が重要になることもあった。
著者
福井 大 前田 喜四雄 佐藤 雅彦 河合 久仁子
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.39-43, 2003-06-30
被引用文献数
3

北海道函館市において,これまで青森県以北には分布しないとされていたアブラコウモリ Pipistrellus abramus を捕獲した.捕獲個体は妊娠しており,本種が北海道内で繁殖をしていることも確認された.また,外部形態やエコロケーションコールの構造は本州産の本種とほぼ同じであった.今後,本種の北海道内における分布の拡大が注目される.
著者
南野 一博 明石 信廣
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.19-26, 2011-06-30
被引用文献数
1

北海道西部の多雪地域に生息するエゾシカ<i>Cervus nippon yesoensis</i>の冬期の食性を明らかにするために,2006年11月から2007月4月及び2007年11月から2008年4月までの2冬期間,越冬地において定期的に糞を採取し,その内容物を分析した.さらに,越冬地の積雪深を測定し,糞中の割合と積雪深との関係について解析した.糞分析の結果,無積雪期にはクマイザサ,イネ科草本などのグラミノイド,広葉草本類,落葉など多くの食物が利用されていたが,積雪後は内容物のほとんどがクマイザサ及び小枝・樹皮などの木本類の非同化部によって占められていた.越冬地の最大積雪深は2冬期間ともに100 cmを超え,2008年1月上旬には152 cmに達し,2007~2008年における100 cm以上の積雪期間は約2ヶ月半に及んでいた.糞中に占める木本類の割合は積雪の増加とともに高くなり,積雪深が100 cm以上になると大半を占めるようになった.一方,クマイザサの割合は無雪期や積雪が増加した厳冬期には低く,初冬期や融雪期など積雪が中程度のときに最も多く利用されていた.以上のことから,多雪地で越冬するエゾシカの食性は,クマイザサと木本類が主要な餌となっているが,その割合は積雪深に大きく影響を受けており,積雪が増加してクマイザサの利用が制限される期間は,餌のほとんどを木本類に依存していることが明らかとなった.<br>
著者
今泉 吉典
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.76-79, 1970

Correlations between mean values of tail length in respective local populations of <I>Dymecodon pilirostris</I> and medial latitudes of localities of the latters revealed the presence of two distinct linear clines among them (Fig. 2) . The mean values of tail length in respective populations belonging to the clines can then be expressed by a formula <I>Y<SUB>c</SUB>=a+bX</I>. As 'a' and 'b' remain always constant in any population within a cline, it may be reasonable to conclude that such populations differ one another only phenetically at least in this character and may constitute a single taxon as there are no other differences discovered among them. The 'a' and 'b' values, however, are evidently different in accordance with clines and probably with degrees of evolution of the group. So that a cline of this kind seems to represent a 'lineage' of the author's concept which is equivalent both to the species and subspecies of the most of authors. A specimen recently discovered by the Crown Prince of Japan from Mt. Asama, Central Honshu, obviously belongs to the lineage B composed by Shiga, Nikko, Zao, Goyo and Hayachine populations. This lineage is characterized by relatively shorter then probaly more progressed tail than that of the lineage A which contains populations from Fuji, Minami Alps, Chichibu, Yatsugatake and Kita Alps and has relatively longer and primitive tail.