著者
小島 道裕
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.169-183, 2003-03-31

飛騨の国人領主江馬氏は、庭園を伴う館で知られている。まず文献史料で考察すると、南北朝初期から将軍に近侍し、遵行指令を受け、中央と密接な関係を持っていたが、一五世紀後半には自立した地位を持つことが知られ、一六世紀には荘園関係の史料には見えなくなる。一方遺構は、一四世紀末~一五世紀前半に、「花の御所」を模倣した館が営まれるが、一五世紀後半には山城などに機能が分散し、一六世紀には館としての機能が廃絶する。こうした現象は他の国人領主の館にも見られることが知られてきており、国人領主が全国的な体系の中で存在していた一五世紀前半から、領域的な領主として自立する一五世紀後半以降への変化と言える。この変化の中で衰退した国人も多く、逆に一四世紀中葉~一五世紀前半には中央と地方の国人の間の安定した関係があったと言え、これを「室町期荘園制」の一面と見なすことができる。
著者
茨木 正治 Ibaragi Masaharu 東京情報大学総合情報学部 Faculty of Informatics Tokyo University of Information Sciences
雑誌
東京情報大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.75-88, 2019-03-01

政治における言葉の働きを、レトリックに焦点を当てて先行研究を整理し、ネット社会における「政治とことば」の関係を模索する手がかりを求める。伝統的レトリックとその継承が説得の効果を前提としてその技法に重点を当てていたのに対して、20世紀のマス・コミュニケーション理論、および近年の認知革命の影響を受けて登場した「言説」社会心理学は、ことばの「意味」や「効果」は、送り手や受け手の相互作用によって決まるものを強調した。この指摘は議論の余地はあるものの、コミュニケーション内容と表現との関係を見直す契機が生れ、そこにまた政治とことばにみられる権力関係の不透明化を考える手掛かりが生ずるとも考えられる。
著者
新井 克弥 Katsuya ARAI
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 = Bulletin of Miyazaki Municipal University Faculty of Humanities
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-15, 2004-03-20

大平健著『やさしさの精神病理』(岩波新書、95)のテクスト・クリティーク。精神科医、大平は、患者との対応の中から、70年代以降、新しい意味を持ったやさしさ=ヤサシサが出現したと指摘する。70年代、やさしさはモノや人個々の性質をあらわす用語から、他者との連帯を志向することばとなったのである。当初、それは、ことばを介した他者介入型の「やさしさ」として出現するが、80年代に入り、”沈黙”を原則とする相互非介入型の”やさしさ”へと転じていく。すなわち、相手の気持ちを察し、相手と同じ気持ちになってメッセージを共有するスタイルから、相手の領域に入り込まないように気づかい、空間を共有するスタイルへの変容である。本稿ではこのような大平の指摘する新しい”やさしさ”を、情報化社会・グローバル化社会におけるコミュニケーションの新しいスタイルと捉え、その可能性について、中野収のカプセル人間論、およびN.ルーマンのダブル・コンティンジェンシー理論を援用しながら考察。その社会的適応性を評価し、解り合えないことを了解し合うコミュニケーション、および共鳴・共振だけで結ばれるコミュニケーションの重要性を説いた。
著者
単 援朝
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.111-124, 2002-02-28

本稿は芥川龍之介「湖南の扇」をめぐって、作品の構築における体験と虚構化の働きを検証しつつ、玉蘭の物語を中心に作品の成立と方法を探り、さらに魯迅の「薬」との対比を通じて作品の位相を考えるものである。結論としては、「湖南の扇」は、作品世界の構築に作者の中国旅行の体験や見聞が生かされていつつも、基本的に体験の再構成を含む虚構化の方法による小説にほかならない。作品のモチーフは冒頭の命題というよりクライマックスのシーンにあり、作品世界は「美しい歯にビスケットの一片」という、作者の原光景ともいえる構図を原点に形成され、虚構の「事件」が体験的現実として描かれているところに作品の方法があるが、作品の「出来損なひ」はこの方法に起因するものであるといわざるをえない。そして、魯迅「薬」との対比を通じてみると、「迷信」として批判されるはずの人血饅頭の話をロマンチックな物語、「情熱の女」の神話に作り替えられたところに、芥川のロマンチシズムへの志向と「支那」的生命力に寄せる憧れが見て取れる。
著者
塘添 敏文
出版者
亜細亜大学教養部
雑誌
亜細亜大学教養部紀要
巻号頁・発行日
vol.4, pp.138-122, 1969
著者
呂 静 程 博麗
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
Jiangnan Culture and Japan : A Rediscovery of Resources and Human Exchange
巻号頁・発行日
pp.125-137, 2012-03-23

江南文化と日本 : 資料・人的交流の再発掘, 復旦大学(上海), 2011年5月27日-29日