著者
梅田 三千雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.796-804, 1999-03-15

日本の苗字が備えている種々の性質を明らかにすることを目的として 苗字データベースを作成し その計量的分析を行った. ここでは より普遍的なデータの収集をねらいとして 約7.1万個から成る日本の苗字データベースを作成した. このデータベースをもとに 苗字に出現する文字の種類や頻度 文字位置とそこに出現する文字の種類など 文字と文字連接に関する統計データを求めた. これより 日本の苗字には文字位置によって 出現する文字の種類とその頻度に大きな偏りのあることが明らかになった. さらに 実際の使用頻度を考慮した分析として 市販の電話帳データベースを利用した検索により 苗字の使用頻度 苗字ならびに文字と文字連接のエントロピーなどを測定した. これより 苗字のエントロピーは英単語のそれにほぼ等しいことが明らかになった. また ここで得られた苗字の諸性質は 宛名や個人情報の文字認識において 苗字部分の文字切り出しでの知識として利用したり 認識対象文字の種類を決定 限定したりするのに利用することが可能であり 認識精度の向上につながることが期待される.
著者
植村 喜弘 梶原 祐輔 島川 博光
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.2358-2369, 2015-12-15

近年,おもてなしの提供が求められている.おもてなしの提供には,ユーザの状態やパーソナリティを把握する必要がある.本論文では,おもてなしの提供のために,Radio Frequency Identifier(RFID)技術で取得される足取りの特徴から,ユーザの状態やパーソナリティを推定する手法を提案する.15名の被験者における6種のユーザ状態での歩行データを取得した実験で,パーソナリティごとの足取りの特性を本手法で識別できることが分かった.パーソナリティが現れたクラスタごとに機械学習することで,クラスタリングしない場合と比較し,ユーザ状態を把握する精度が4.3%向上した.本論文では,識別結果および足取りの解析から,パーソナリティを考慮することによる精度向上に影響を与える成分について議論する.
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, 2015-12-15
著者
大越 匡
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.82-83, 2015-12-15
著者
重田 勝介
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.74-77, 2015-12-15

知識基盤社会における生涯学習の手段として,インターネットを介したオープンな教育環境の重要性が高まっている.教育をオープンにし学習を促進する活動であるオープンエデュケーションは,OERの制作公開や学習コミュニティの形成,MOOCのようなオンライン講座などの形をとりながら国内外に広がり,教育機会の機会均等や反転授業などブレンド型学習による教育改善への貢献が期待されている.近年MOOCは高等教育との接続が図られ,専門職の人材育成や大学間連携のツールとしても用いられている.実験的な模索期を経て普及期に入ったオープンエデュケーションは,今後教育における課題解決の手段の1つとして定着していくと考えられる.
著者
松山 泰男
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.70-73, 2015-12-15

今日,学生の気質は大きく変化しており,それに伴って新たな教育方法に関する提言が数多くなされている.本稿は,情報処理学会優秀教材賞の受賞により,このことに関する例示を依頼されたものである.ここでは,若い教員と国際大賞受賞者級の教員との対比を第一軸とし,伝統的な講義形態と完全な学生主体型授業の対比を第二軸として設定している.この形で眺めてくると,激変のさなかにある教室風景のそれぞれが,いったいどの辺にあるのかが見えてくる.本稿では,実例を国内外の理系の場合に絞っているが,いずれ各機関がそれぞれの立場に応じた新方式を実現することになり,それが新たな教育産業にもつながると結論している.
著者
斎藤 俊則
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.69-69, 2015-12-15

各地で子どものためのプログラミングワークショップが盛り上がる中,横須賀市でも2014年より同市教育委員会および生涯学習財団の主催により「小学生プログラミング体験教室」が開催されている.正味2時間の間,子どもたちは思い思いに作品作りに没頭しており,その様子はPapertのいう構築主義的学習の生起を直観させる.一方で,参加費無料のこの「教室」に実際に子どもが参加できるまでには,子どもを取り巻くさまざまな社会経済的な条件がその可能性を左右するものと推測される.この問題に関して,筆者らは「プログラミングを学ぶ機会が公平に与えられること」を目ざして同市教育委員会の協力を得ながら調査研究に着手したところである.
著者
五十嵐 悠紀
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.66-68, 2015-12-15
著者
岩間 司
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.52-57, 2015-12-15

現在のコンピュータシステムはほぼすべてがネットワークに接続されており相互に情報のやりとりを行っている.また最近は,IoTによりインターネットを介して多くのデータが生成され,ビックデータが構築される.このビックデータを利活用するためにはどのデータが「いつ」生成されたかが重要である.これを正確に維持するためには,それぞれの情報の発信元が正しく時刻同期されている必要がある.本解説記事では,このようなコンピュータ相互の時刻を正しく同期するための時刻同期技術について,実際の導入方法も含め簡単に紹介する.また時刻同期を阻害する要因である「うるう秒」について今後の動向も含めて解説を加える.
著者
下山 武司
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.44-50, 2015-12-15

最近,準同型暗号と呼ばれる暗号方式が注目を集めている.準同型暗号では,暗号化されたデータ同士の演算結果を復号すると,(暗号化されていない)生データ同士の演算結果と一致する性質を持つ.たとえば,顧客データベースを準同型暗号により秘匿化したまま分析処理を行い,結果のみを復号することで,生の顧客情報に直接アクセスすることなく,顧客データベースを分析し活用することが可能となる.このような利点のため,クラウド上の秘匿処理や生体認証,遺伝子医療などのさまざまな分野で準同型暗号への期待が高まっている.本記事では,準同型暗号の理論的な仕組みと,処理機能,および産業界での活用事例について,分かりやすく解説する.
著者
東中 竜一郎 船越 孝太郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.42-43, 2015-12-15

我々は Project Next NLP対話タスクの営みとして,対話システム,特に,雑談を行う対話システムのエラー分析を行った.具体的には,雑談対話コーパスを収集し,対話破綻個所を特定し,これらの対話破綻個所がどのようなシステムのエラーによって引き起こされたかを分析・類型化した.本稿では,我々が本分析に至った背景や得られた知見について解説する.
著者
水本 智也
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.40-41, 2015-12-15

自然言語処理を用いた応用タスクとして自動英文校正は注目を集めている.英文校正タスクは2011〜2014年と4年連続で訂正性能を競う世界的コンペティションが開かれている.本稿では英文校正の難しさの1つに注目し,2014年に開かれた英文訂正のコンペティションで好成績をおさめた統計的機械翻訳を用いた英文校正システムの結果から分析する.
著者
Neubig Graham 工藤 拓 赤部 晃一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.36-37, 2015-12-15

日本語から英語へと自動的に翻訳する機械翻訳では,最先端の翻訳器は何ができるのか? 何ができないのか? 本章は,この疑問に答えるべく,翻訳の誤り分析を行った結果を報告する.6つの最先端の翻訳システムを用意し,さまざまな分野のテキストを翻訳して,翻訳結果の誤りを分析した.その結果,「単語の削除」「単語の並べ替え」「語彙の訳選択」は今でも大きな課題であることが分かった.特に,曖昧な語彙の訳選択に大きな課題があることが明らかとなり,今後機械翻訳はこの問題を克服していく必要があることが明らかとなった.
著者
松崎 拓也 横野 光 宮尾 祐介
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.34-35, 2015-12-15

「ロボットは東大に入れるか」(以下,東ロボ)は国立情報学研究所を中心とする研究プロジェクトである.「東ロボ」では,大学入試試験問題を自動的に解くソフトウェアの開発を行っている.その狙いは,言語処理および人工知能関連技術を総ざらえし,統合的な知的処理課題をベンチマークとして今後10年の言語処理・AI関連技術の伸びしろと限界を見極めることにある.プロジェクトの公式目標は2016年度にセンター試験で高得点を獲得し,2021年度に東大合格レベルに到達することである.本稿では,物理および歴史の解答システムの結果を中心に,代々木ゼミナール主催のセンター模試を用いた解答システムの評価結果とその分析を紹介する.