著者
田阪 茂樹 松原 正也 田口 彰一 長田 和雄 山内 恭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.31-38, 2011-01-31

第46次南極地域観測隊において,高感度ラドン検出器を南極観測船「しらせ」に設置し,2004年12月3日〜2005年3月19日まで南極海洋上大気中の^<222>Rn濃度を連続観測した.フリーマントルから昭和基地沖合まで(往路)の15日間,昭和基地沖合からシドニーまで(復路)の38日間を解析した.濃度の平均値は往路が39mBq/m^3,復路が48mBq/m^3であった.日平均した濃度と風速には相関があり,風速が5m/secの場合濃度は32mBq/m^3,13m/secに増加すると62mBq/m^3となった.寒冷前線に伴うラドン濃度増大現象(ラドニックストーム)時の濃度は,往路の事例では70mBq/m^3,復路の事例では114mBq/m^3であった.海洋からの放出量が風速の2乗に比例する条件を与えた全球移流拡散モデルを使ってラドン濃度を計算し,観測された風速依存性の検証を行った.
著者
浦 幸帆 長田 和雄 香川 雅子 三上 正男 的場 澄人 青木 一真 篠田 雅人 黒崎 泰典 林 政彦 清水 厚 植松 光夫
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.234-241, 2011 (Released:2011-09-28)
参考文献数
25

Water-insoluble filtered residue materials of atmospheric wet and dry deposition are composed of mineral dusts and organic materials such as pollens. The number of pollens in the filter residue of deposition samples at Tottori was counted for 2 sizes at about 45 and 30 µm using a confocal laser microscope. Non-destructive X-ray fluorescence (XRF) analysis was used to measure Fe content of the filter residue. Relationship between Fe content analyzed by XRF and insoluble residue weight corrected for pollen weight assuming pollen density of 0.9 g/cm3 showed a linear relationship, suggesting that insoluble residue corrected for pollen weight contains Fe of 3.7 % by weight on the average. The average Fe content is consistent with the values reported for Asian dust (Kosa) events in Korea and China. Because Fe content of insoluble residue in filter samples is easily measured by XRF method, mineral dust amounts in the filter residue samples can be estimated from Fe content of the sample and the average fraction of Fe for Asian dust.
著者
岩坂 泰信 飯田 孝夫 NELLBER R. 藤原 玄夫 SHOW G. 李 敏熈 金 潤信 よん 知本 石 広玉 長田 和雄 林 政彦 松永 捷司 柴田 隆 GONG Shiben 李 敏煕 こん 知本
出版者
名古屋大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

粒子状の硫黄酸化物あるいは窒素酸化物のグローバルな循環は地球環境の変動過程とさまざまなつながりをもっている。火山性の硫酸エアロゾルの極地域への拡散が極成層圏のオゾン消失にあたえる影響などはその代表的なものでる。中緯度地域に発生の起源を持つ物質が北極圏へ輸送される過程、およびそれが全球規模の物質循環にしめる役割を明らかにすることを主たる目的とし、本年度は以下のような観測研究を行なった。中国、韓国、日本、およびアラスカ(アメリカ)で、黄砂(対流圏)や火山灰(成層圏)、あるいは硫黄酸化物や窒素酸化物からなるエアロゾルの高度分布やその時間変化を図ること目的として;アラスカでは成層圏エアロゾルの濃度変動を知るためのライダー観測をフェアバンクス郊外で平成6年から7年にかけての冬期および7年から平成8年にかけての冬期に行なった。これらの研究からは、アラスカ地域においてある期間は北極圏の典型的な様相を示すがある期間は名古屋地方とほとんど同様なエアロゾル分布をしめすなど、きわめて変化の幅が大きいことがわかった。また自由対流圏においては頻繁に中緯度地帯からエアロゾルをはじめとする大気物流が運ばれていることを示している。また一方では、極成層圏の物質が圏界面下から中緯度へ流失したことによると考えられる現象も見いだされている。同時に、この地域において多点試料採集を計画するための予備調査も実施した。生成7年度に行なった観測結果を、ノルウェーで実施されている成層圏観測の結果と比較した結果極渦周辺で極起源の成層圏物質の分布が著しく極渦の動きに左右されていることがわかった。この問題についてはすでに成果報告がなされつつある。中国では、平成6年度の夏期間に北京市郊外において大型気球による対流圏成層圏の観測をおこなった。これらの観測は、この地域において土壌起源物質の活発な自由対流圏への供給が示唆される結果が得られており、東アジアから西太平洋域における大きな大気化学物質の供給源であることを示唆している。またこのような大気の運動に連動して生じていると考えられる成層圏起源のエアロゾル粒子、オゾンなどが成層圏から自由対流圏に流入している現象も見いだされている。これの結果の詳細は現時点では取り纒め途中であり、成果報告されているものはそく法的なものにすぎないが、今後機会をみて合同の国際シンポジュウムをもち成果を世に問う計画である。中国の研究者とのあいだでは、今回使用した放球場所とは異なる場所での気球実験が検討中である。韓国では、多点観測のための予備調査を実施し、関係機関を訪問すると同時に共同の試料採集計画を検討した。韓国での多点観測ネットワークと日本における観測ネットワークを結んだ、大気成分の長距離輸送観測計画を実施することになった。観測結果は、年度末に互いに交換し相互比較することとしている。また、今後の観測の発展には韓半島でのライダー観測が必要との認識を共通にもつことができた。このことに備えて、観測に適する場所の予備調査を行ない漢陽大学キャンパス内に設置場所を第1の候補地とした。中国大陸から偏西風によって運ばれ、韓半島上空を通過して日本へ飛来する大気と直接日本上空へ達する空気塊を比較すると、韓半島を通過したものには韓半島上空で地上起源の汚染大気と混合し変質したと考えられるものが観測された。
著者
植松 光夫 河村 公隆 三浦 和彦 長田 和雄 鵜野 伊津志 向井 人史
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

大気・海洋表層の物質循環過程の定量的解析のため、海洋大気中の気体や粒子の分析法開発・観測・モデル計算を行った。陸起源大気粒子の沈着が含有鉄分により十分に植物プランクトンの大増殖を引き起こす可能性を観測から見出した。西部北太平洋の海洋大気粒子中の窒素や炭素の大部分は有機態であり、いずれも海洋起源であることを解明した。また、モデル、衛星データ等により黄砂が地球を一周半以上も輸送されることを発見した。
著者
長田 和雄 西尾 文彦 樋口 敬二
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.17-24, 1988-03

昭和基地周辺での海氷の状態と海塩輸送の関係を知る目的で, 降雪, 飛雪および海氷上の積雪を採取した。得た試料の融水の電気伝導度の測定結果から, 海塩の輸送機構を推論した。試料の電気伝導度は, 降雪で2.5-18μS/cm, ブリザード時の飛雪および海氷上の積雪で20-(10)^3μS/cm(一部は(10)^4μS/cm以上)で(10)^2μS/cm程度の場合が多かった。海氷上の積雪の存在状況と電気伝導度の関係は, 海氷の露出した地域の存在により, 海氷上の積雪の電気伝導度が高い値を示した。ブリザード時には, 降雪に起因する飛雪と, 塩分の高い積雪層の削剥に起因する飛雪とが混在して輸送されると考えられる。また, 塩分の高い積雪層の削剥起因する飛雪の水分を蒸発させる諸条件が整えば, 海塩粒子の生成する可能性を示した。
著者
長田 和雄 持田 陸宏
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

大気エアロゾル粒子の水溶性成分含有率(ε)は、雲粒・氷晶形成のプロセスに関わる重要なパラメーターである。本研究では、個別粗大粒子のεを知るために、共焦点レーザー顕微鏡と水透析法を組みあわせた計測手法を開発した。この手法により、各種テストダストや黄砂時の粗大粒子の粒径別εを明らかにした。また、連続流型熱拡散チャンバを用いて氷晶化能力を測定するために、数値流体力学解析による検討、実機の整備、大気エアロゾルを対象とした試験を行った。
著者
三上 正男 長田 和雄 石塚 正秀 清水 厚 田中 泰宙 関山 剛 山田 豊 原 由香里 眞木 貴史
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ダストの気候インパクトの定量的評価を高精度に行うことが出来るダストモデルの開発を、(1)発生過程の観測解析、(2)ダスト輸送途上の解析、(3)ダスト沈着量の観測解析と(4)ダストモデルの高度化のための技術開発により行った。(1)では、粒径別鉛直ダスト輸送量の評価法を確立し、ダスト発生モデルの検証を行い、スキームの最適化を行った。また(2)衛星及び地上ライダーの解析から、アジア域ダストがサハラ等に較べて高高度・長距離にわたって輸送される実態や、輸送中のダストでは粒径分布変化よりも内部混合の進行による形状変化が重要であることを明らかにした。さらに(3)乾性・湿性沈着観測ネットワークによる沈着フラックスの観測データを用いて、全球ダストモデルMASINGARの粒径分布とモデルのダスト発生過程の改良を行うと共に(4)高精度データ同化システムと衛星ライダー観測値を組み合わせ、全球ダスト分布の客観解析値を作成し、東アジアのダスト発生量のモデル誤差推定を行なった。また同同化システムにより、モデルの再現性を大幅に向上することが可能となった。これらにより、発生・輸送・沈着各過程を寄り現実的に再現できるモデルを開発することが出来た。