著者
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出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.189-198, 1999
著者
寺岡 慧 高桑 雄一 岩本 安彦 馬場園 哲也 早坂 勇太郎 中島 一朗 唐仁原 全 東間 紘 渕之上 昌平
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

膵虚血、虚血再灌流傷害と微小循環障害の機序について、赤血球脂質膜および膜骨格蛋白の構造解析、赤血球連銭形成、変形能、通過能の面から検討し、以下の知見を得た。1.Ektacytometer法による赤血球、赤血球膜の変形能、膜安定性の検討A群(健常対照群)、B群(非糖尿病透析患者)、C群(非腎不全糖尿病患者)、D群(糖尿病透析患者)の4群間において、Ektacytometerを用いたレーザー回折法により、全血、RBCおよびRed Ghosts(RGs)の変形指数(deformability index:DI)を検討した。(1)赤血球、赤血球膜の変形能の検討:全血ではB群のDIはA群と同等であったが、C群およびD群では低下する傾向を示した。赤血球のDIについてもB群はA群とほぼ同等であり、C群、D群では低下していた。しかしRGsのDIについては4群間で差は認められなかった。また赤血球をフェニルヒドラジンで酸化してレーザー回折法を用いて変形能、膜安定性を検討したが、酸化により赤血球の変形能は低下した。またRGs内に酸化ヘモグロビンを封入すると変形能の低下と膜安定性の亢進が認められ、赤血球膜骨格蛋白間の相互作用が変化したことを示唆すると考えられた。(2)赤血球膜の安定性の検討:赤血球のRGsに一定のshear stress(750dyn/cm^2)をかけ断片化を検討した。DIが0.5(50%)となるT50は、A群15.6±2.3sec、B群20.25±2.63sec、C群17.9±4.02sec、D群16.25±1.44secであり、むしろB、C群で赤血球膜の安定性は増加する傾向が認められた。2.連続減衰負圧式ニッケルメッシュフィルトレーションによる赤血球通過能の検討4群間で、赤血球希釈溶液に-50mmH_2Oまでの連続減衰負圧をかけ、径4μmのニッケルメッシュに対する通過能を検討した。Flow Rate-Pressure曲線はB、C、D群ではA群と比較して右にシフトしており、通過能の低下が認められ、とくにD群では通過能の低下が顕著であった。3.赤血球の膜骨格蛋白である4.1蛋白質の生化学的・構造生物学的解析4.1蛋白質はスペクトリン、アクチンとともに赤血球膜骨格の網目状の水平構造を維持する膜骨格蛋白であるが、カルモジュリン/Ca^<++>との結合により、N末端30kDaドメインを介して、赤血球膜リン脂質の脂肪酸と疎水性に結合することが判明した。4.SDS-PAGEによる赤血球膜骨格蛋白の検討上記の4群においてSDS-PAGE法により赤血球膜骨格蛋白を検討したが、Spectrin、Band3などの蛋白については4群間に差は認められなかった。5.赤血球の形態学的検討4群の赤血球についてGiemsa染色により形態観察を行った結果、B、D群の一部に大小不同が認められたが、顕著な差は認められなかった。6.赤血球膜脂質組成の検討赤血球浮遊液にFITC標識annexin Vを添加し、染色後Flow cytometryでannexin V染色性を検討したが、D群において有意にannexin Vの染色性が増強し、通常は脂質2重膜内層に局在するphosphatidyl-serine(PS)の脂質膜外層における表出が認められた。7.赤血球膜荷電の検討4群における赤血球の膜荷電を、陽および陰イオン吸着樹脂に対する吸着性により検討した。赤血球の吸着性における各群間の差は認められなかった。また赤血球は膜表面に存在する糖蛋自側鎖のシアル酸の陰性荷電により相互に反発しあっているが、endo-β-galactosidase処理により膜表面から糖鎖を除去すると、脂質面が露出し、赤血球相互の集合が認められた。さらに糖鎖に特異的に結合する種々のレクチン処理により、赤血球の変形能の低下が認められた。以上より膵腎複合移植の対象となる糖尿病透析患者では、赤血球の変形能および通貨能は低下しており、さらに脂質膜外層へのPSの表出が認められ、赤血球相互の集合が観察された。また酸化的ストレスにより変形能は低下し、赤血球膜骨格蛋白質の相互作用が変化することが示唆された。