著者
井上 雄介
出版者
国立大学法人琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

本研究は, 研究分野に応じた研究機関の研究力および研究業績の評価指標の確立を目的として実施した。具体的には, 主に人文社会科学系の研究分野(現在の科研費の「中区分」に相当する研究分野とする)における(1)研究力や研究業績と認められるエビデンスを明らかにすること, (2)それらのエビデンスの客観的な指標化をおこなうこと, の2点を目的とした。まず, 予備的な調査として, イギリスの研究評価制度であるResearch Excellence Frameworkに関する情報収集をおこなうと共に, オランダの評価基準および評価方法であるStandard Education Protocol(SEP)についても先行研究を含めた情報収集をおこなった。その結果, 双方とも, 論文などの客観的に数値化された情報に加え, 政策提言, 社会におけるインパクトなど, 数値化が困難な指標も含まれていることを確認した。しかしながら, 特に数値化が困難な指標をどのように客観的な評価に利用しているかについては明らかにできなかった。そこで, 調査研究事業があり, 研究者が所属しつつ, 標本資料の収集・保管および展示・学習支援事業において社会に対する貢献が必要とされている国立科学博物館の広報担当課長に対し, 博物館の評価において社会への貢献をどのように扱うかを聞き取り調査した。その結果は, 博物館の入館者数, 特別展・企画展の数, 学習支援事業参加者数など, 数値化可能なものでの前年度(あるいは前中期目標期間)との比較であった。次に, オランダの人文社会科学系の総合大学であるティルブルフ大学の評価およびSEP担当者への聞き取り調査をおこなう予定であったが, 都合上, この計画は実施できなかった。そのため, 研究計画を十分に遂行することができなかった。なお, 本研究の結果については, 琉球大学研究集会「日本版研究IRの発展を目指して一統計科学に基づく異分野融合指標を例に-」のパネルディスカッションにおいて一部発表したほか, 学会発表および雑誌投稿の準備中である。
著者
種子島 智彦 池田 信昭 井上 雄介 相原 道子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.207-210, 2014-03-01

要約 26歳,男性.5年前より口唇に疼痛を伴う水疱形成を繰り返していた.2008年8月中旬,左口唇に小水疱が出現した.近医にて口唇ヘルペスを疑われバラシクロビルを処方されたが改善しなかったため,当科を受診した.肛門,亀頭部にもびらんがみられTzanckテストを施行したが陰性であった.その後,自然軽快した.以後2回ほど同様の皮疹が出現し,下顎,両手背に有痛性の紅斑も出現するようになったが自然軽快した.2011年4月中旬,同症状が再度出現し,詳細な問診の結果,トニックウォーターを含むカクテルの摂取後に症状が出現していたことが明らかになった.ジントニック1杯に含まれるトニックウォーターの半量(60ml)による誘発試験を施行したところ,摂取2時間後に症状が出現し,トニックウォーターによる固定疹と診断した.薬剤内服歴のない若年者に同部位に繰り返す皮疹を認めた場合,トニックウォーターによる固定疹も鑑別に挙げることが重要であると考えた.
著者
井上 雄介 今井 幹浩 松原 由和 平出 亜
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.75, pp.sp50-sp59, 2022 (Released:2022-12-09)
参考文献数
11

2019年4月より再エネ海域利用法が施行されたことにより,洋上風力発電施設に係る地盤調査市場は大幅に拡大している。洋上における地盤の支持層分布あるいは工学的基盤深度の把握に必要なS波速度の測定は,ボーリング孔を利用したサスペンションPS検層が一般的に行われてきた。しかしながら,洋上風力発電事業(着床式)は年間平均風速7 m/s以上,水深10~40 m程度の海域を対象としており,厳しい環境下でのボーリング作業は容易ではない。著者らはこのような厳しい環境下でもボーリング調査を必要とせず,短期間でS波速度構造を把握することができる海底微動アレイ探査システムを開発した。本稿では,当手法の開発について概説した後,適用事例及び海底微動の特徴について示した。これらの結果より,得られたS波速度構造はPS検層および音波探査と整合的な結果が得られたことから海底微動アレイ探査の有用性が示された。
著者
和田 正義 井上 雄介 平間 貴大
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.591-598, 2013 (Released:2013-08-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

This paper presents a new wheel mechanism for the active-caster drive system. The active-caster provides omnidirectional mobility with no using free rolling mechanism. The original active-caster equips with an absolute encoder to detect a wheel orientation and two motors for driving wheel and steering axis independently. A computer system needs to detect an absolute wheel orientation and coordinate velocity components for wheel and steering drive to provide wheel motion in an arbitrary direction. To simplify the wheel control system, a new active-caster mechanism is proposed. A proposed active-caster system includes a ball transmission to distribute a traction velocity to wheel and steering axis mechanically without using an angle sensor or coordinated motor control. In this paper, kinematics of the proposed wheel mechanism is analyzed and mechanical condition for realizing the caster motion is derived. A kinematic model of the proposed active-caster mechanism with a ball transmission is analyzed and a mechanical condition for realizing caster motion is derived. Based on the kinematic model and the mechanical condition, computer simulations of the mechanism are performed. In the simulations, the active-caster shows successful caster motions with no sensor or computer system.
著者
阿部 裕輔 磯山 隆 小野 稔 斎藤 逸郎 三浦 英和 鎮西 恒雄 望月 修一 磯山 隆 小野 稔 鎮西 恒雄 斎藤 逸郎 三浦 英和 川崎 和男 望月 修一 井街 宏 バスク ジャロミル ドブザク ペーター 中川 英元 光宗 倫彦 河野 明正 小野 俊哉 時 偉 杉野 礼佳 井上 雄介 岸 亜由美
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

無拍動流完全人工心臓の可能性を検討するために、体内埋込式無拍動流完全人工心臓を開発し、成獣ヤギに埋め込んで研究を行った結果、無拍動流でも生理的制御(正常な状態に維持するための制御)が可能で、ヤギの一般状態、血行動態、肝機能、腎機能や自律神経機能を正常に保つことができることを明らかにした。しかし、無拍動流では人工心臓への十分な血液流入を維持できないことがあったため、体内埋込式完全人工心臓に生理的制御を適応する場合には、ある程度の拍動性が必要であると考えられた。
著者
井上 雄介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

トランスポゾンは生物のゲノム上を転移するDNA配列であり、あらゆる生物種に普遍的に存在する。その転移は遺伝情報を変化させるため、宿主生物種のゲノム進化に寄与していると考えられている。当研究室の先行研究により、メダカDa変異体の原因因子として少なくとも42 kb以上である大型の新規DNAトランスポゾンが見出され、Albatrossと命名された。Albatrossの挿入が原因と推定されるメダカ変異体は他にも複数報告があり、メダカゲノムにおいて転移していることが示唆されていた。しかし、その全配列は決定されておらず、サイズ、内部配列の由来、転移活性の有無などは不明であった。昨年度までに、Albatrossはヘルペスウイルスゲノムと一体化した、長さ180 kbを上回る巨大なpiggyBac型DNAトランスポゾンであり、さらに転移活性を保持していることを示した。これより、Albatrossはトランスポゾンの転移機構を二次的に獲得して宿主ゲノム内に内在化したヘルペスウイルスである可能性が示唆された。今年度は本現象の普遍性を検証するために、他の生物種におけるAlbatross様配列の探索および系統解析を行った。その結果、ゲノムが解読されている約60種の真骨魚類のうち16種について、Albatrossと相同性の高いヘルペスウイルス様配列が検出された。系統解析の結果、これらのAlbatross様配列は互いに近縁であり、魚類・両生類感染型ヘルペスウイルス内で一つのクラスターを形成した。さらに、いくつかの種についてはAlbatross様配列がゲノム内で複数コピー存在していることが示唆され、メダカと同様にAlbatross様配列がゲノム内で増幅している可能性が示唆された。以上より、ゲノムに内在化する性質をもった新規のヘルペスウイルスの一群が存在している可能性が示唆された。
著者
海上 智昭 幸田 重雄・渡辺 美香・井上 雄介・田辺 修一・岡村 信也
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.165-172, 2012-06-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
71

人間のリスク認知は,居住する“環境”や,地理・規範・身体・心理などの要素が入り混じって構成される,広義での“文化”によって大きく左右されることがこれまでの研究で明らかにされてきている.これまでにも,文化や環境を用いて,人間のリスク認知の特徴を説明しようとする研究が行われてきている.たとえば,人種によるリスク認知の差異を扱う研究や,居住する土地への愛着心の程度からリスク認知を説明しようとした研究などが典型的な例である.また,自然災害の被災経験を持つ者や,自然災害リスクの高い地域に居住する者が,次の自然災害に備えるか否かについての議論も,近年では注目されるようになってきている.本論では,文化や環境が,人間のリスク認知に及ぼす影響について,文化心理学的・環境心理学的な研究の動向をまとめ,今後の研究への展望をまとめる.
著者
井上 雄介
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

体内埋込型の超小型顕微鏡装置の基礎的な開発を行い、倍率の異なる3種類の装置を開発した。ポリグリコール酸の不織布を足場として組み込むことで、安定した視野と解像度を確保した。完全人工心臓を用いて短期慢性動物実験を6度行った。最長121日間完全人工心臓で駆動し、その間継続して微小循環観察を続けた。駆出波形や運動負荷、薬物による微小循環への影響を長期的に数日間に分けて観察し、解析を行った。拍動流と連続流では微小循環に流れる血流量には差があることが確かめられた。