著者
DouangchakSithixay 佐藤未来子 山田浩史 並木美太郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013-OS-127, no.8, pp.1-10, 2013-11-26

本稿では,仮想化環境における省電力化を目的とし,消費エネルギー予測に基づいた省電力化を行う仮想マシンモニター (VMM) の設計,実装と評価について述べる.従来手法では,OS やアプリケーションを修正する必要があるが,本研究では VMM レイヤにおいて動的電圧・周波数制御 (DVFS) 時の仮想マシン (VM) ごとの演算性能,消費電力,ネットワーク I/O,ディスク I/O の予測に基づいた省電力制御を行うことで,VM のゲスト OS やアプリケーションに対して透過的に省電力を実現できるのが特徴である.本手法では,VM 実行時のキャッシュミス率やプロセッサ全体のメモリアクセス頻度などのハードウェアパフォーマンスカウンタの情報と仮想 NIC,仮想 I/O の情報を用いて,多変量回帰分析手法により求めた最適な演算性能,消費電力またはスループットをもとに DVFS 制御を実施する.実装には,Linux カーネルを用いた VMM である KVM を用いた.評価より,コア単位で DVFS 制御可能なマルチコア環境において,演算性能とスループットの条件の範囲内で VM が 1 台ある場合,最大でメモリバウンドベンチマークにて 38.3%,ディスクベンチマークにて 35.1%,ネットワークベンチマークにて 46.0%,VM が複数台ある場合,最大で 44.3% のプロセッサの消費エネルギーの削減率を確認した.
著者
本村 哲朗 近藤 雄樹 山田 哲也 高田 雅士 仁藤 拓実 野尻 徹 十山 圭介 斎藤 靖彦 西 博史 佐藤 未来子 並木 美太郎
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013-EMB-28, no.28, pp.1-6, 2013-03-06

今日の組込みシステムは,リアルタイム制御と情報処理のような独立の複数の機能を扱う必要があり,マルチコア上への搭載が有効である.この時,リソース保護のため,仮想化の一技術であるリソースパーティショニングが必要となる.我々は,リアルタイム性の実現に向けリソースパーティショニングのオーバヘッドを削減する,ハードウェア支援技術ExVisor/XVSを開発した.その主要技術は物理アドレス管理モジュールPAM*で,組込みシステムのメモリ利用方法の特徴を活かした階層のないページテーブルによるダイレクトなアドレス変換で高速化を図る.RTLシミュレーションとFPGA実装で評価を行った結果,シングルコアと比較してリソースアクセス時のオーバヘッドは高々5.6%であることを確認した.*PAM : Physical Address Management module
著者
松尾 和弥 佐藤未来子 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.36, pp.39-46, 2007-04-05
被引用文献数
1

OS をはじめとするシステム構築において、実際の計算機の動作データ、資源利用データは有用な情報となる。そこで本研究では各種アーキテクチャ対応の高速な命令、メモリアクセストレーサを構築した。構築したトレーサによって x86、ARM アーキテクチャでの実行命令列、アクセスされた物理アドレス、物理アドレスに対応する仮想アドレス、アクセス時・命令実行時の CPU 特権レベル、実行中プロセスの PID といった情報がトレースできる。構築はフリー、オープンソースの CPU エミュレータ QEMU に300行程度のコードを追加することで実現した。また、有用性を確認するために、構築したトレーサの性能評価を行い、さらに実際に構築したトレーサを省電力手法の考察に応用した例を示す。In development of computer systems such as OS, actual data about behaviour and resource usage of a computer is important. So we developed high speed tracer of executed instruction and main RAM access for various architecture. By our tracer, we can trace data about executed instructions, accessed physical and virtual memory address, CPU mode and PID on x86 and ARM. To develop our tracer, we remodeled QEMU, free and open source CPU emulator. In addition, to show the usefulness of our tracer, we evaluated the performance of our tracer and applied our tracer to the research of low power computer system.
著者
仁科 圭介 佐藤 未来子 並木 美太郎
雑誌
第53回プログラミング・シンポジウム予稿集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.29-36, 2012-01-06

Flash SSD(Solid-State Drive, 以下SSD)は、HDD(Hard Disk Drive)に比べランダムアクセス性能が高く、省電力であるという特徴を持つが、SSDの容量単価はHDDに比べて高く、SSDをコスト効率よく計算機システムの高速化や省電力化に李用する方式が課題である。本研究では、HDDのみで運用されている計算機のディスクアクセスを高速化するために新たにSSDを追加する場合を想定し、SSDをHDDのディスクキャッシュとして用いる方式を提案し、この方式を実現するLinuxデバイスドライバの設計・実装を行った。本稿では本デバイスドライバにこれまでに実装した機能について概説するとともに、新たに実装した、SSD内にキャッシュされた書き込みデータ(ダーティデータ)の追い出しによる性能低下に対処する改善策の設計、実装と評価を示す。評価では、ダーティデータの追い出しを遅延し、ストレージデバイスへの負荷を分散させることでアクセス性能の改善を実現した。
著者
柴田 巧一 浅井 光男 佐藤未来子 井川 勝 金 允起 滝安 美弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.85, pp.33-40, 1994-10-07
被引用文献数
1

ビデオオンデマンドサーバの基本モデルを開発したのでその仕様と測定結果を報告する。この試作サーバは2Mbit/s程度の圧縮画像を同時に4チャネル配送可能である。圧縮符号化された画像と音声は単一の3.5inch SCSIディスクに格納される。ユーザ端末とサーバはFDDIネットワークで接続され、TCP/IP,UDP/IPプロトコルを用いて通信を行う。ユーザはサーバ上の映像を自由に選択可能で、ビデオテーププレーヤと同等の特殊再生が可能である。我々はさらに、将来のビデオオンデマンドシステムの構成、および拡張性を持つスイッチバス構造を持つサーバアーキテクチャを提案する。We have developed a primary prototype of Video on Demand Server. This prototype system have four simultaneous random access capability. Compressed audio data and video data are stored into single 3.5 inch SCSI disk drive. User terminal and the Server are connected by TCP/IP and UDP/IP on FDDI. Users can select and view programs (movies, news, etc.) independently from another user. And some VCR-like trick-plays (FF, REW, PAUSE, etc.) are available via network. We also proposed the scalable switch-bus architecture. It has extendibility for supplying video streams number and storage capacity.
著者
笹田 耕一 佐藤未来子 河原 章二 加藤義人 大和 仁典 中條拓伯 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.215-225, 2003-08-15
参考文献数
11
被引用文献数
10

近年,マルチスレッドプロセッサアーキテクチャの研究が盛んである.このアーキテクチャの性能を引き出すためには,システムソフトウェアのサポートが不可欠であるが,従来のモデルでは,カーネルが計算実体を管理するため,このアーキテクチャの利点を十分に活用することができなかった.そこで本研究では,マルチスレッドアーキテクチャ上で効率的に機能するユーザレベルスレッドライブラリの実現方法を検討し,実際に作成した.ライブラリは,1チップが複数持つ実スレッドを管理し,スレッドの並列実行をサポートすることで性能を向上させる.また,プロセッサのスレッド制御命令を利用することで,高速なスレッド制御を可能にする.ユーザレベルでスレッドを管理するうえで困難な問題はOSと協調動作することで解決する.シミュレータによる評価の結果,スレッドの並列実行により最大1.5倍の性能向上を確認した.また,軽量なスレッド制御を実現した.Recently, there are many studies on multithreaded processor architecture. In order to get the higher performance of this architecture, support of system software is indispensable. However, from the view of performance, the advantage of the architecture has not been utilized enough without kernel supports for Architecture (Physical) Threads. In this research, we have designed and developed a thread library that works efficiently on a multithread architecture. Architecture Threads of a processor are managed on a user level library supports to parallelize threads and improve performance. Using the thread control instructions of the processor enables high-speed thread control. Inefficiency when managing threads on a user level would be improved by cooperation with OS. As a result of simulation based evaluation, up to 1.5 times higher performance has been gained by parallel execution. Moreover, we have accomplished a lightweight thread control.
著者
小倉佑太 佐藤未来子 並木美太郎
雑誌
研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.2013-ARC-205, no.7, pp.1-8, 2013-04-18

マルチコアプロセッサを用いた組込み向けハードウェアの性能向上において,リアルタイム処理と IT システムを並列動作させる要求が高まっている.本発表では,マルチコアプロセッサ上の VMM である Optimus Virtual Machine (OVM) を提案する.OVM では,リアルタイム制約のない汎用 OS,ソフトリアルタイムの OS,ハードリアルタイムの OS ないし OS のないハードウェアを直接制御するプログラムの三種類のパラダイムに対して,EDF によるデッドラインスケジューリングによる VM,またはコア固定による最高優先度の VM などを VMM で管理することにより,異種のリアルタイムに対する要求を適切に調停する.本 VMM を ARM マルチコアプロセッサをハードコアとして有する Xilinx 社の Zynq 上に実装し,遅延やオーバーヘッドを抑えつつ動作することを検証できた.今後の課題として,VM のメモリ管理が挙げられる.
著者
小柴 篤史 和田 基 坂本 龍一 佐藤 未来子 並木 美太郎
雑誌
研究報告システム・アーキテクチャ(ARC) (ISSN:21888574)
巻号頁・発行日
vol.2015-ARC-215, no.7, pp.1-8, 2015-05-19

本研究では,Just-In-Time コンパイラによる生成コードを対象に,コンパイラによる静的な解析だけでは考慮することが難しい分岐命令の挙動を VM 内で動的に解析し,実行命令列をより適切に把握することで電力削減効果を高めることのできる Geyser 向け細粒度パワーゲーティング制御手法を提案する.提案手法を Dalvik VM に実装し,CaffeineMark,SPECJVM ベンチマークを用いてエミュレータ上で電力性能の評価実験を行い,監視する分岐命令数に制約を設けない理想条件で平均リーク電力を最大 17% 削減した.
著者
和田基 塚本潤 小林弘明 高橋昭宏 坂本龍一 佐藤未来子 天野英晴 近藤正彰 中村宏 並木美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.5, pp.1-8, 2013-04-18

細粒度 PG (Power Gating) 制御を行うプロセッサでは,温度やキャッシュのヒット率などの動的なスリープ要因を適切に反映した命令列を実行することが重要である.本発表では,JIT コンパイラの生成するコードに対して,動的要因として実行時のチップ温度を考慮した細粒度 PG 制御を最適化する方式を提案する.筆者らが研究している Geyser アーキテクチャの細粒度 PG 方式を QEMU ベースである AndroidEmulator によってシミュレートした評価実験において,PG 制御を行わない場合と比較し,VM と JIT コンパイラおよび生成されたコードを実行するプロセス全体で平均 6%,最大 22% でリーク電力を削減することができた。
著者
坂本 龍一 仁科 圭介 佐藤 未来子 並木 美太郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.1389-1403, 2014-04-15

SSD(Solid-State Drive,以下SSD)は,HDD(Hard Disk Drive)に比べランダムアクセス性能が高く,省電力であるという特徴を持つが,SSDの容量単価はHDDに比べて高く,SSDをコスト効率良く計算機システムの高速化や省電力化に利用する方式が課題である.本論文では,SSDをHDDのディスクキャッシュとして用いるSSDディスクキャッシュシステムにおいて,省電力化のためにHDDの電源制御を行う手法を提案する.SSDをHDDのディスクキャッシュとして用い,SSD上のディスクキャッシュヒット率が高く,HDDをアクセスしないときの待機時間を検出して,自動的にHDDをスピンダウンし省電力化を行う.本ディスクキャッシュと電源制御機構をLinuxのブロックデバイスドライバとして実装し,評価を行った.各種ファイルシステムにおいて,本手法を評価し,HDDのスピンダウンによりエネルギー効率が改善されることを確認した.Solid-State Drive (SSD) takes higher performance at random accesses and consumes lower power than Hard-Disk Drive (HDD). However, SSD is more cost per bytes than HDDs. Therefore, implementing the cost-effective method using SSD is needed. This paper proposes the power control system of HDD added to SSD disk-cache system. The system uses SSD as HDD disk block. The system detects idle time of HDD and spindown HDD automatically. The disk cache system implementation uses block device driver in Linux. The evaluation results in the SSD cache on some filesystems show that if the SSD cache is working effectively, energy efficiency is improved.
著者
宮田 宏 並木 美太郎 佐藤 未来子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.6, pp.1068-1081, 2014-06-01

これまで独自の技術により実現されてきたプロセスオートメーションにおいてもネットワーク化の要求が高まっており,その中で実時間通信を行うためにQoSの利用が求められている.本研究ではプロセスオートメーションに特有な攻撃であるパケットの偽装によるQoS阻害攻撃に着目し,その対策としてOpenFlowを用いたQoSのセキュリティ確保技術を開発した.提案する方式はOpenFlowに対して新規にパケット認証プレーンという,OpenFlowでは提供しないパケット単位での認証を行うための機能を導入することで実現している.OpenFlowの提供するアドレス,ポート番号,DSCP値等のさまざまなパケット内の情報を自由に組み合わせて定義できるフローに対応したフローの偽装防止機能をもち,フロー単位の帯域制御を安全に利用可能にする.本研究ではパケット認証プレーンを用いた偽装検出機能を試作し,提案する技術がプロセスオートメーションに求められる遅延時間内で,パケットの偽装や正しいパケットの再送等の攻撃を検出し,帯域を保護できることを確認した.
著者
吉原陽香 笹田耕一 佐藤未来子 並木美太郎
雑誌
第73回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.1, pp.173-175, 2011-03-02

本研究はオブジェクト指向スクリプト言語であるRubyでOSの資源管理機能を実装することを目標とした.Ruby処理系をOSのないハードウェア上で直接実行し,その内部でRubyスクリプトをを実行するVMや,Rubyの言語仕様を利用して,安全性が高く見通しの良い構成のOSを目指す.現時点までに,Cで書かれた既存のRuby処理系をベアマシン上に移植した.さらにOSの記述に必要となる実メモリ・I/OポートへのアクセスといったRubyの言語仕様にない機能を拡張ライブラリにて実装した.またキーボードとテキストVRAMのドライバを作成し,それらを利用するスクリプトを記述して実行を確認した.
著者
佐藤 未来子 辻田 祐一 堀 敦史 並木 美太郎
雑誌
研究報告 システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.6, pp.1-6, 2011-07-20

ハイパフォーマンスコンピューティング (HPC) の分野では,ペタフロップス級のスーパーコンピュータ開発が現実のものとなり,エクサフロップス,ゼッタフロップスという単位のシステム開発が次の技術課題となっている.本研究では,エクサコンピュータの実現に向けて,今後 HPC の主流となるメニーコアアーキテクチャを有効活用するための基盤ソフトウェアの研究開発を行っている.従来のマルチコアアーキテクチャを汎用コアとして活用しつつ,演算性能や並列性を強化しているメニーコアアーキテクチャを混在させたシステムアーキテクチャを想定し,アプリケーションプログラムからはメニーコアとマルチコアの特性を活かした単一システムとして見せられるメニーコア OS カーネルの実現を目指す.本論文では,メニーコア OS カーネルの検討課題を述べ,プロセス管理,メモリ管理,I/O 管理についての基本設計を述べる.In the field of high performance computing (HPC), the super computer development of the PetaFLOPS class becomes the one of the reality. The development of the ExaFLOPS system is the following technological opportunity. In this study, the infrastructure software to use Many-core architecture that will become the main current of HPC in the future effectively is researched and developed aiming at the achievement of ExaFLOPS system. We are assuming the system architecture to use past Multi-core architecture together with Many-core Architecture. We aim at OS Architecture that can use Many-core and Multi-core from the application program as a single system. In this paper, we show the overview of the OS and discuss on problems of the OS for Many-core architecture system. Moreover we describe the management of processes, threads, memory and also inter-OS communication handling.
著者
木村 一樹 近藤 正章 天野 英晴 宇佐美 公良 中村 宏 佐藤 未来子 並木 美太郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアと オペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.7, pp.1-8, 2011-01-17

演算ユニットにランタイムパワーゲーティング (PG) 技術を施した省電力プロセッサコア Geyser において、OS により PG 動作を制御することでハードウェア単体での PG より電力削減効果を高めることが期待されている.本研究では,PG 実施時のオーバヘッドと電力削減量の損益分岐点がコアの温度により変化することに着目し、ランタイムにコアの温度情報を取得して OS により PG 実施ポリシーの決定を行う制御方式を提案する.またこの方式について FPGA ボード上に構築した評価システムに実装し評価を行い,演算ユニット全体の平均リーク電力を最大約 11% 削減した。'Geyser', the processor core with a fine grain power gating technique, requires further power savings by controlling the behavior of power gating with OS support. This paper describes an approach to improve power saving efficiency of Geyser that is the method by runtime temperature information of CPU core to decide the behavior of power gating, focusing on the fact that the breakeven point of power saving efficiency varies with the temperature. The leakage power consumption of 4 computing units has been reduced by up to 11% with the method on the FPGA evaluation board.