著者
佐藤 亨 奥田 良二 稲垣 伸一 佐藤 郁
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は19世紀におけるアイルランド移民について、大西洋をはさんだ4地域(南北アイルランド、アメリカ合衆国、カナダ)を取り上げ、多くの移民を送り出した「移民大国」アイルランドの移民前夜の状況、そして多くの移民を受け入れた「移民国家」カナダとアメリカ合衆国両国におけるアイルランド移民の影響を、さらには移民たちが外国に定住した後に祖国アイルランドに与えた影響を、歴史的・文化的・宗教的に検証し、「移民大国」と「移民国家」の内実を相互関係のうちに探求したものである。具体的には次の3点において明らかにした。(1)南北アイルランドにおける移民排出の歴史的背景についての考察(2)北米大陸にアイルランド移民が及ぼした社会的・文化的影響についての考察(3)移民を通してみたアイルランドと北米大陸の両地域の相互関連性についての考察。本研究の対象は大西洋をはさむ4地域であり、下記のように4人の研究者がそれぞれ一つの地域を担当する。南アイルランドからの移民(奥田良二)、北アイルランドからの移民(佐藤亨)、アメリカ合衆国への移民(稲垣伸一)、カナダへの移民(佐藤郁)。以上が担当地域であるが、研究方法や一次資料として用いたテキストは、統計(数値)をもとにした分析もあれば、詩や小説などの文学テキスト、あるいはソングなど多岐にわたる。なお、各研究者によって地域分担が決まっているものの、地域を横断するものが移民であるゆえ、南・北アイルランド担当者が北米大陸について、そして北米大陸担当者が南・北アイルランドについて言及した場合もある。また、本研究の成否は、各地域の研究を有機的に関連付けられるかどうかにかかっており、次の3点の具体的な作業を前提としたものである。(1)各地域についての先行研究(二次資料)の収集・読解(2)各地域における現地調査、及び一次資料の収集・読解・データベース化(3)研究者間の日常的な情報交換と定期的な研究会の実施。
著者
佐藤 郁哉
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.4-17, 2003-03-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
33

日本における学術出版産業の動向について実証研究を通して分析を進めていく際の概念的枠組みを構築していく.「制度固有のロジック」概念を用いて米国の出版産業について分析した Thorntonの研究(1995,1999,2002)を批判的に検討した上で,学術出版に関わる個人や組織が,複数の制度固有のロジックを組み合わせ,また象徴資本と経済資本を組み合わせることによってみずからの利害関心を追求していくプロセスを記述し分析するための感受概念として「ポートフォリオ戦略」を提案する.
著者
佐藤 郁哉 Ikuya Sato
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.27-63, 2018-07-20

本論文では、2000年前後から日本の高等教育セクターにおいて頻繁に使用されるようになったPDCAという用語の普及過程とその用法について検討を加えていく。また、その事例の分析を通して日本におけるニュー・パブリック・マネジメント(NPM:新公共経営)が陥りがちな落とし穴について明らかにしていくことを目指す。事例分析の結果は、業務の効率化を目指して導入されたPDCAの発想がその本来の意図とは正反対の極端な非効率と不経済をもたらす可能性があることを示している。
著者
佐藤 郁哉 Ikuya Sato
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.341-417, 2017-01-30

本論文では、英国において1980年代半ばいらい数年おきに実施されてきた研究評価事業を主たる事例として取り上げて、研究評価事業及びその結果にもとづく研究予算の選択的資源配分が大学等における研究と教育に対して与える意図せざる結果について検討していく。特に焦点を置くのは、商学・経営学分野における「論文化」の動向であり、本論では、これを「ゲーミング」の一種としてとらえる。
著者
佐藤 郁哉
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.4-15, 1998 (Released:2022-07-22)

ある種のアート組織は,個性と個人レベルの業績を何よりも強調する芸術活動をチームワークを重視する組織という器の中で行なわざるを得ないという点で,根本的な矛盾を内包するシステムである.本論文では,この「不可能なシステム」としての芸術団体の特質について,日本の現代演劇系の劇団の事例を通して検討する.日本の劇団が抱えるさまざまなレベルとタイプの葛藤やディレンマについては,組織環境と組織構造・組織過程をめぐる問題という文脈だけでなく,組織体および組織フィールド・レベルでのアイデンティティの拡散に由来する問題として把握可能であることが示される.
著者
佐藤 郁代 涌井 忠昭 辻下 聡馬 齋藤 英夫 中村 真理子
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.10-18, 2021 (Released:2021-10-08)
参考文献数
57

有訴率女性一位、男性二位の肩こりは、慢性疼痛へ移行し、さらなる症状を生み出す。その原因の1つにスマートフォンの利用によるストレートネックがある。Z世代はスマホ世代と呼ばれるように、その使用率は高い。本研究ではZ世代を対象に、経穴刺激を組み合わせたセルフハンドマッサージを実施することによる肩こり感およびストレスの変化を明らかにすることを目的とした。その結果、肩こり感の緩和、左右僧帽筋上部筋硬度の低下および左右項部肩甲上部皮膚温の低下を認め、肩こりを緩和することが明らかとなった。さらに、血圧値および脈拍値の低下、POMS下位尺度の「怒り-敵意」「疲労-無気力」「緊張-不安」および「活気-活力」の低下を認め、ストレス緩和の一助になることが確認された。また、1日当たりのスマホ使用時間が長い者の場合、セルフハンドマッサージでは肩こりが改善されないこと、マッサージ前の左項部皮膚表面温度が高い者ほど、ハンドマッサージの効果が表れることが示唆された。