著者
佐藤 郁哉 サトウ イクヤ Sato Ikuya
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = The Doshisha business review (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.201-258, 2018-09

研究(Article)本論文では、2000年前後から日本の高等教育セクターにおいて頻繁に使用されるようになったPDCAという用語の普及過程とその用法について、特にこの用語が行財政改革の切り札として注目され、また高等教育界に導入されていった経緯に着目して検討を加えていく。その分析の結果は、業務の効率化を目指して導入されたPDCAの発想がその本来の意図とは正反対の極端な非効率と不経済をもたらす可能性があることを示している。また、(疑似)経営用語の借用それ自体がもたらす弊害について指摘した上で、PDCAなる用語の禁止語化を提案する。
著者
佐藤 郁哉 Ikuya Sato
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.857-874, 2021-03-12

鈴木良始教授古稀祝賀記念号(Honorable issue in commemoration of Prof. Yoshiji Suzuki's 70 years of age)
著者
佐藤 郁哉 川嶋 太津夫 遠藤 貴宏
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

2017年度は特に、2014年に英国で実施された研究評価事業であるReserach Excellence Framework(REF 2014)を踏まえた制度の改訂点とそれが大学機関の対応行動に与えた影響に焦点をあてて分析を進めた。あわせて、英国の研究評価制度を重要なモデルにしながらも独自の発展を遂げてきた豪州の評価制度である、Excellence in Research for Australia(ERA)を第3の検討対象事例として、聞き取りを資料調査による分析をおこなった。REF 2014に関する第三者委員会による検討の結果は、2016年7月にいわゆる「Stern Review」として公表され、その結果を踏まえた次回のREF(REF 2021)における評価制度の大枠は2017年11月に示されることになった。その骨子となる評価対象となる研究者の幅の拡大と1人あたりの業績点数の柔軟化は、いずれも大学側での策略的対応を抑制することを主な目的としていたが、聞き取りや資料調査の結果は、それらの改訂が別種の策略的対応を生み出す可能性を示唆している。豪州のERAについては、英国のREFとは対照的に公的補助金の選択的配分とはほぼ脱連結された評価制度が大学および研究者個人の対応行動ひいては研究の質に与える影響を中心にして検討を進めた。その結果明らかになってきたのは、豪州の場合には、補助金の獲得というよりは、むしろ評価結果が各種大学ランキングへの影響等を介して間接的に授業料収入(とりわけ留学生の授業料)に結びつくという点が大きな意味を持っていることが確認できた。以上の知見は、今後日本で本格的な研究評価がおこなわれる場合の制度設計にとって大きな意味を持つと思われるだけでなく、日英豪の大学の収益モデルについて再考を迫るものだと言える。
著者
佐藤 郁哉 Ikuya Sato
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.1-26, 2023-06-30

同志社大学商学研究科において2018年度いらい開講されてきた「研究基礎」の概要について、これまでの授業実践の内容を中心にして解説するとともに、同授業科目の今後の方向性について検討していく際に参考になると思われる幾つかの論点を、講義担当教員としての体験を踏まえて提出した。
著者
佐藤 郁哉 Ikuya Sato
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.201-258, 2018-09-30

本論文では、2000年前後から日本の高等教育セクターにおいて頻繁に使用されるようになったPDCAという用語の普及過程とその用法について、特にこの用語が行財政改革の切り札として注目され、また高等教育界に導入されていった経緯に着目して検討を加えていく。その分析の結果は、業務の効率化を目指して導入されたPDCAの発想がその本来の意図とは正反対の極端な非効率と不経済をもたらす可能性があることを示している。また、(疑似)経営用語の借用それ自体がもたらす弊害について指摘した上で、PDCAなる用語の禁止語化を提案する。
著者
渡邉 英一 古田 均 佐藤 郁
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木情報利用技術論文集 (ISSN:13491040)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.53-64, 2003-10-28 (Released:2011-12-20)
参考文献数
20

ADSLに代表される高速で安価なインターネット接続が急速に普及しているが, 建設現場の現場事務所 (作業所) と本支店等とのネットワーク接続はISDNが主流であり高速化が図れていない. まず, 作業所のネットワーク接続の特性を分析し, 一般消費者向けインターネット利用に必要とされる要件をまとめた. 次に, セキュリティーや安定性が不足しているため企業には不向きとされていたIntemet VPNをセキュリティーと安定性を確保した方策について説明する. 約200拠点の接続を実施した結果, 通信速度を従来のISDNの5倍以上に, コストを従来の28%に削減することを可能とした.
著者
佐藤 郁哉
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.456-475, 2008-03-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
17

1990年代いらいの急激な量的拡大にともなって,日本における大学院教育は,大幅な質的変容を余儀なくされてきた.「戦略なき大衆化」とも形容できるその動向にともなって頻繁に取り上げられてきたのは,米国における大学院教育のプログラムとカリキュラムであった.しかしながら,その「アメリカン・モデル」の導入は,多くの場合きわめて不正確な情報と安易な発想にもとづいており,それがひいては,現在日本の高等教育システム全般を空中分解の危機にさらしているとさえ言える.本稿では,最初に大学院教育の量的拡大の実態とそれをめぐる比較的よく知られた事実と問題点について改めて確認する.ついで,著者がかつて共同研究者とともにおこなった社会学の分野における大学院教育に関する日米比較研究から得られた知見にもとづいて,大学院における教育プログラムとカリキュラムを改革していく際にアメリカン・モデルを安直に適用することによってもたらされるさまざまな問題について検討していく.
著者
佐藤 郁哉 サトウ イクヤ Sato Ikuya
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = The Doshisha business review (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.341-417, 2017-01

研究(Article)本論文では、英国において1980年代半ばいらい数年おきに実施されてきた研究評価事業を主たる事例として取り上げて、研究評価事業及びその結果にもとづく研究予算の選択的資源配分が大学等における研究と教育に対して与える意図せざる結果について検討していく。特に焦点を置くのは、商学・経営学分野における「論文化」の動向であり、本論では、これを「ゲーミング」の一種としてとらえる。
著者
川嶋 太津夫 平田 光子 小方 直幸 白鳥 義彦 両角 亜紀子 山本 清 米澤 彰純 福留 東士 丸山 文裕 佐藤 郁哉 渡部 芳栄 吉川 裕美子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

大学が自立した学術経営体として環境変化に迅速かつ柔軟に変化に対応するためには、大学のガバナンスとマネジメントの改革が喫緊の課題となっている。本研究は、マネジメントの側面に注目し、国際比較を行い、主として学術面のマネジメントに従事する「学術管理職」と財務や総務といった間接部門のマネジメントに従事する「経営管理職」の相互作用の分析を行った。その結果、日本の大学に比して、海外大学では二つの経営層の一層の職位分化と専門職化が進行していること。にもかかわらず、二つの経営層が機能し、影響力を及ぼしているドメインには共通性が見られること。しかし、職能形成には大きな相違が見られることが明らかになった。
著者
佐藤 郁哉
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.346-359,481, 1991-03-31

本論文は、もっぱらトマスとズナニエツキのテクストに沿って、状況の定義概念の初期の定式化とその後の変遷をあとづけ、この概念が、行為主体と「構造」の関連を明らかにする上でもつ「感受概念」としての潜在力を明らかにする。<BR>社会学におけるスタンダードな用語の一つである「状況の定義」は、これまで主に社会的行為の主意主義的な側面を表現する代表的な概念として取り扱われてきた。しかしながら、この概念の初期の定式化の歴史をたどってみると、「状況の定義」は、行為に対する社会文化的な構造の規定性を示す際にも使われていることがわかる。とりわけトマスは「状況の定義」を多義的に使用しているが、これは、様々な行為主体と多様な状況との関連を実証研究を通して明らかにしていく上で彼が用いた効果的な戦略の一つであると考えられる.この「状況の定義」の一見相矛盾する多義的な用法の解明は、現在さまざまな形で試みられているマイクロ社会学とマクロ社会学の統合を進める上で、一つの有力な手がかりを与えてくれる。
著者
佐藤 郁哉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.164-170, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)

本稿では,公的研究資金の選択的配分の前提としておこなわれる研究評価事業によってもたらされる意図せざる結果について検討する。英国の研究評価事業を事例として取り上げ,同事業が研究活動テーマや方法論の均質化に結びついていく可能性について見ていく。焦点をあてて検討するのは,商学・経営学の領域における論文化の傾向である。この領域では,研究評価事業に際して提出される研究成果においてジャーナル論文の占める比率が急速に増加していった。これは,同領域が偏狭な業績主義によって席捲され,「ジャーナル駆動型リサーチ」が優勢になってしまう可能性を示唆するものである。
著者
佐藤 郁哉
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.20-29, 2019-06-20 (Released:2019-10-30)
参考文献数
32

研究論文の質という問題について英国の研究評価事業を「反面教師」的な事例として検討していく.研究の質を論文の掲載誌の格付けと同一視するような風潮は,世界大学ランキングへの関心の高まりや研究業績に基づく各種補助金の傾斜配分政策などにともなって,日本でも近年傾向としてあらわれている.本稿ではこのような「論文掲載至上主義」的な傾向が,学術研究の劣化をもたらすだけでなく次代の研究者を育成するシステムの基盤をも掘り崩してしまう可能性について指摘する.
著者
佐藤 郁哉
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.20-29, 2019

<p> 研究論文の質という問題について英国の研究評価事業を「反面教師」的な事例として検討していく.研究の質を論文の掲載誌の格付けと同一視するような風潮は,世界大学ランキングへの関心の高まりや研究業績に基づく各種補助金の傾斜配分政策などにともなって,日本でも近年傾向としてあらわれている.本稿ではこのような「論文掲載至上主義」的な傾向が,学術研究の劣化をもたらすだけでなく次代の研究者を育成するシステムの基盤をも掘り崩してしまう可能性について指摘する.</p>