著者
進士 誠一 田尻 孝 宮下 正夫 古川 清憲 高崎 秀明 源河 敦史 佐々木 順平 田中 宣威 内藤 善哉
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.815-819, 2003-07-31 (Released:2010-09-24)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

症例は61歳男性. 1995年8月に十二指腸潰瘍穿孔のため上腹部正中切開開腹下に幽門側胃切除術施行. 1996年5月頃より手術瘢痕部に直径約10cmの半球状に膨隆する腹壁瘢痕ヘルニアを生じ, 近医でフォローアップされていた. 2002年9月4日排便時に腹壁破裂を生じ, 救急外来受診. 小腸脱出を伴った腹壁破裂と診断され緊急手術となる. 腹壁破裂創は約10×20cmで, 脱出した腸管の色調は良好であった. 腹腔内の感染が危惧されたため, 腹腔内を洗浄後, 腸管を腹腔内に戻し, 一時的に皮膚一層のみを縫合した. 術後感染を合併せず順調に回復. 術後26日目の9月30日に待期的に腹壁形成術を行った. 腹直筋前鞘と後鞘はメッシュを用いて補強した. 腹壁瘢痕ヘルニアは腹部手術における比較的多い術後合併症であるが, 破裂に至る症例はまれである. 今回, 腹壁破裂を生じ二期的手術により治療し得た1症例を経験した.
著者
内藤 善 竹林 徹郎 真名瀬 博人 平野 聡
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.781-784, 2023-05-31 (Released:2023-11-30)
参考文献数
13

症例は20歳台,男性。ライフル銃を発砲し当院に救急搬送となった。前胸部に銃弾の射入口を,左側腹部に出血を伴う射出口を認めた。CTでは,左第10肋骨骨折,脾臓下極に境界不明瞭な領域を認めた。外傷性脾損傷の診断で緊急手術を施行した。術中所見では脾臓下極に裂傷を認めるも出血量は多くなかったため腹腔鏡下に脾臓を一部切除し,焼灼止血で手術を終了した。術後6日目には射出口部創より便汁漏出あり腸管穿孔と診断し,再手術で下行結腸に穿孔を認め,結腸左半切除術を施行した。術後は創感染を併発したが他に合併症なく経過し,術後4週目に近医へ転院となった。高速で放たれた弾丸はshock waveを生み出し周囲に損傷を与えつつ移動することが知られている。本症例では弾丸によるshock waveとtemporary cavitationにより結腸壁に損傷が生じ,遅発性の腸管穿孔を発症したと考えられた。
著者
永田 和之 中島 康佑 平岡 有努 有道 真久 大下 智也 村木 亮介 内藤 善隆 姫野 麻菜美 坂口 太一
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.131-138, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
12

【背景】心臓外科手術後に術後高次脳機能障害(postoperative cognitive dysfunction:POCD)が発生することが知られており、その原因の一つとして人工心肺が関係するとの報告がある。【方法】人工心肺を使用した心臓弁膜症手術において術前・術後の認知機能テストを施行し得た連続160例を対象とした。術前後に4種類の認知機能検査を行い、少なくとも1つにおいて術後のポイントが20%以上低下するか評価困難な場合にPOCDと判定した。POCD発症に関連する因子を多変量解析にて検討した。【結果】POCDを発症したのは49例(30.6%)であった。発症群と非発症群を比較検討したところ、発症群は有意に年齢が高く、認知症と高血圧の既往が多く、HbA1c値が高値であった。また、発症群は人工心肺中の復温時間が有意に短く、復温時の灌流指標(Perfusion Index:P・I)、ヘモグロビン値、酸素供給量(DO2i)が有意に低かった。術後経過に関しては、発症群は有意に術後最高血清クレアチニン(Cr)値、術前後血清クレアチニン(Cr)値上昇幅が高く、術後挿管時間、ICU滞在日数、入院日数が長かった。多変量解析の結果、年齢(cut off値=72歳、AUC=0.71、OR=6.09、CI=2.40-15.5、P=0.0021)および35℃復温時のDO2i(cut off値=276mL/min/m2、AUC=0.79、OR=9.28、CI=4.22-20.4、P<0.0001)がPOCD発症の独立した危険因子であった。【考察】心臓手術後のPOCDは認知能力の低下だけでなく、術後経過に悪影響を及ぼす。特に高齢者の人工心肺管理においては、復温時のDO2iを適正に維持することが重要と考えられた。【結語】心臓手術後POCD発症の要因として、年齢および人工心肺復温時DO2iの関連が示唆された。
著者
佐藤 れえ子 山岸 浩之 内藤 善久 村上 大蔵 大島 寛一 高木 久 藤田 茂 佐々木 重荘
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.577-581, 1993-07-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
14
被引用文献数
6 11

1990年5~7月. キャットフードによるビタミンD中毒が疑われた猫4頭について, 血中ビタミンD代謝産物濃度とキャットフード中のビタミンD含有量を測定し, 石灰沈着との因果関係を追究した. また, 4頭の実験猫を用いてそのキャットフードによる給与試験を実施した. 全症例は同一市販キャットフードを主体に飼育され, 症例1と2は尿毒症に陥っていた. 血漿Ca濃度は症例1の初診時を除き全症例で11mg/dl以上を, また25 (OH) D濃度は100ng/ml以上を呈した. 死亡例では全身性の石灰沈着が著明に認められ, 上皮小体の萎縮が観察された. いっぽう, キャットフード中のビタミンD含有量は5, 290IU/100gと異常な高値を示し, キャットフードの給与試験では給与開始後血漿25 (OH) D濃度は著しく上昇しCa濃度も増加した.
著者
岡田 啓司 古川 岳大 安田 準 内藤 善久
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.713-718, 2002-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ホルスタイン種乳牛25頭を適正 (N) 群, 高デンプン (S) 群, 高タンパク (P) 群の3群に分け, 血中乳酸 (LA) およびアンモニア (NH3) 濃度とルーメン環境との関連を検討した. S群のルーメン液中総原虫数は採食後に著しく減少し, 活性度も低下した. ルーメン液中LA濃度は光学活性の異なるD-LA, L-LAともに採食後2時間に増加し, ルーメンpHはその後も低下し続けた. ルーメン液中および血中それぞれのD-LAとL-LA濃度との間には正の相関があった. ルーメン液中NH, 濃度はP群で採食後2時間以降に著しい増加を示したが, N群およびS群では採食後4時間に減少した. 採食後4時間のルーメン液中と血中NH3濃度に相関があった. 以上より, 血中NH, 濃度は, 乳牛が摂取した飼料中のタンパク質のルーメン内における消化の状態を反映していると考えられた.
著者
岡田 啓司 深谷 敦子 志賀 瀧郎 平田 統一 竹内 啓 内藤 善久
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.311-315, 2003-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

黒毛和種母牛5頭を分娩後低でんぷん飼料で飼養し, その後にデントコーンサイレージ3kg/日を追加給与した結果, 全頭の子牛は給与開始後1~3日に軽度の糞便性状の変化 (前駆症状) を示し, 5~7日に水様性白痢を発症した. この時, 母乳の乳脂肪率は前駆症状発現当日および白痢発症当日の朝に増加した. 母乳のpHは白痢発症前日に大きく変動した. 乳脂肪中パルミチン酸とステアリン酸は前駆症状発現前日から増加した. 子牛の血中トリグリセライドと遊離脂肪酸濃度は前駆症状発現当日に低下したが, 白痢発症前日には元の値に復した. このように母牛の飼料の変更は母乳成分を変化させ, それにより子牛の消化管での脂肪の吸収低下が引き起こされて白痢の発症した可能性が示唆された.
著者
内藤 善哉
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学医学会雑誌 (ISSN:13498975)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.159-166, 2009 (Released:2009-07-15)
参考文献数
4

The confocal laser scanning microscope (CLSM) is a device for obtaining high-resolution optical images of immunofluorescent staining. The CLSM can produce in-focus images of thick specimens, a process known as optical sectioning. The images are reconstructed with a computer, using 3-dimensional image software, allowing 3-dimensional reconstructions of topologically complex objects. On the same tissue sections, the CLSM can obtain the images of differential interference contrast. Recently, a special inverted CLSM-the multimode microscopy system-has been used to examine the morphology and functions of cells. A multimode microscopy system can be used to obtain images of CLSM, total internal reflection fluorescence, time-lapse, and micromanipulation. In the present study, we show images of pancreatic cancer cells as an example.
著者
森 陵一 小高 鐵男 添田 聡 佐藤 淳 柿野 淳 浜戸 祥平 高木 久 内藤 善久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1223-1229, 2005-12-25
被引用文献数
2 32

若い大型動物の中には, 葉状骨(laminar bone)で長骨を形成し, 成長に伴い, ハバース骨に置換されることが知られている.今回は, 若いウシ, ブタ, ヒツジの脛骨を, 走査電顕による反射電子像で観察した.ウシの新生子と1ヶ月齢は典型的な同心円状の葉状骨を示し, ブタの新生子と1ヶ月齢は葉状骨による網目状構造を示した.ヒツジの新生子はウシに類似し, それらの骨量の形成速度は, 6ヶ月齢までは同様で, ブタよりは高比率を示した.ウシの骨単位は6ヶ月齢で最内層に少数現れ, 1歳齢では外層に葉状骨が残存するものの骨全体に現れていた.ブタの6ヶ月齢は最外層を除き, 多量の骨単位が観察された.ヒツジの6ヶ月齢に骨単位は認められず, 1歳齢では中層に限り少量観察されたが, その量はウシよりも高比率を示した.ヒツジの1歳齢ではウシと比べ, 骨単位の広い骨吸収領域が観察され, ヒツジの骨量は6ヶ月齢から1歳齢にかけて減少した.その結果, 1歳齢のウシは, ヒツジよりも高い葉状骨の割合を保持し, ブタは, 最も速い骨単位による骨改造を示した.今回観察した3種の成長過程における長骨の組織像と骨量の相違は, 同一の科(ウシとヒツジ)では, 体重や体高の違いに起因し, 科が異なるブタは, 前者と比べ多産系で, 幼体期に母体への依存度が高いためかもしれない.言い換えると, ブタの骨量の低さは歩行の遅さを強く示唆する.また, それぞれの動物間で, 骨単位の初期形成の部位が異なることが推察されたが, この, 点と骨改造の正確な開始時期は, 今後, 連続的な経齢変化を追って検討する必要がある.
著者
森 陵一 小高 鐵男 内藤 善久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.101-106, 1999-02-25
参考文献数
12

真皮膠原線維の代謝回転が早いためと考えられる皮膚脆弱症をもつ11歳齢ホルスタイン雌ウシ(Cow1)の橈骨骨幹の横断切片を用いて, 形態学的および物理化学的な検索を行った. 巨大なCow1は成長の安定した5-6.5歳齢の正常雌ウシの約1.5倍の体重を示した. その骨試料を正常な12歳齢雌ウシ(Cow2)と比較した. 今まで, 若いウシやある草食恐竜の長骨骨幹は, 付加的に形成される同心円状の葉状骨(laminar bone)からなり, また, このような葉状骨は成長の早い家畜や大型犬の成長期の骨に特徴的に見られると報告されている. Cow1とCow2の骨量はほぼ同じであったが, Cow1はCow2と比べて外層1/2で少数の骨単位しかもたず, 全層ではCow2と1歳齢の去勢雄ウシの中間型を示した. Cow1とCow2の間に, CaとP量, Vickers硬さに有意差は認められなかった. しかし, Cow1の骨の膠原細線維は不均一な直径と乱れた配列を示した. このことから, 既に報告された皮膚脆弱症の真皮と骨の膠原細線維の形成に何らかの相関性のあることが推察された. 葉状骨の残存量からは, 11歳齢のCow1はおそらく最近まで成長しており, その結果として, ある草食恐竜の様に巨大化したと考えられた.
著者
山岸 則夫 入江 陽一 能登 はる菜 浪岡 徹 岡田 啓司 大澤 健司 内藤 善久
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
日本家畜臨床学会誌 (ISSN:13468464)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.16-19, 2006-06-10 (Released:2009-04-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

30日齢のホルスタイン種子牛1頭(雄)が、急性に落ち着きなく寝起きを繰り返し、起立時には腹部を蹴り上げるなどの疝痛症状を示した。排便量は少なく、腹部は進行性に膨満し振盪にて拍水音が聴取された。血液一般検査では、白血球数の著しい増加が顕著であった。腹部X線検査では、ガスが膨満しループ状になった小腸が腹腔内全域に観察された。右〓部切開による試験的開腹では、ガスで膨満した小腸が腹腔内に充満していた。触診にて腸問膜根の約180°反時計方向への捻転を確認し、これを用手的に整復した。術後、症例は速やかに回復した。
著者
高木 久 福田 俊 飯田 治三 佐藤 淳 佐藤 れえ子 内藤 善久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.311-316, 1996-04-25
被引用文献数
4

ビタミンAD_3E(V-AD_3E)の合剤, ビタミンA(V-A)あるいはビタミンD_3(V-D_3)の単剤を哺乳期の子牛へ生後7日齢から10日間大量経口投与し, 牛ハイエナ病の発症試験を実施したところ, V-AD_3E剤(日量V-A 300万I.U., V-D_3 30万I.U., V-E1, 200I.U.)を投与したV-AD_3E群(2頭中2頭), その半量を投与したHalf V-AD_3E群(2頭中1頭), およびV-A 300万I.U.を投与したV-A群(2頭中1頭)の計4頭に発症が認められたが, V-D_3 30万I.U.を投与したV-D_3群では観察されなかった. 発症子牛では, V-Aの過剰を示す血中のエステル型のV-A(レチニルパルミテート)が高値を示し, 長骨の成長軟骨板は狭窄や構造の変性などを示した. V-AD_3E群はV-A群と比較して, 発症年齢が早く, 体重増加率の低下および後肢だけでなく前肢の成長不全も重度であった. 以上, 牛ハイエナ病は, 子牛の成長軟骨板に対する過剰なV-Aの作用により発症し, さらにV-D_3によって発症が促進されるものと推測された.