著者
磯和 壮太朗 南 学 ISOWA Soutarou MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.179-189, 2015-03-31

本研究は、クリティカルシンキング(以下:クリシン)を教育する立場に立つ場合、まずはクリシンの社会的側面に注目した「社会的クリティカルシンキング」に対する志向性を刺激することが有効なのではないかという立場のもと、より使いやすい社会的クリシン尺度の作成を目指したものである。2つのクラスに対して、27項目で収集したデータを探索的因子分析にかけた結果、5因子解が得られた。この5因子解に基づいて15項目の短縮版を作成後、先の2クラスに対して改めて実施し、信頼性と妥当性の検証を行った。各クラス各時点での下位尺度のα係数は低かったものの、尺度全体でのα係数は0.8を超えており、それなりの内的一貫性を確保していた。また、Times1とTimes2の因子構造を比較するための縦断因子分析、2つのクラス間での因子構造を比較するための多母集団同時分析を行った結果、高い適合度と妥当なパス係数が得られた。予測的妥当性の検証として、実際にTimes1の社会的クリシン志向性がTimes2の社会的クリシン行動を導いているかについて検討した結果、確かにTimes1の社会的クリシン志向性は、社会的クリシン行動を導いており、それは下位因子単位よりも因子全体で影響力を発揮する可能性が示唆された。また、志向性から能力に対する自己認知を統制した結果、それができると思っているかどうかにかかわらず、社会的クリシン志向性は社会的クリシン行動を促している可能性が示唆された。
著者
南 学
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.718-724, 2017-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
10

冠動脈疾患など心血管病の予防にスタチンを中心とした脂質低下療法が重要であることはいうまでもない.積極的脂質低下療法による,より大きなイベント抑制効果やプラーク退縮効果が報告され,特に高リスク群でベネフィットが大きいと考えられる.スタチン治療後の残存リスクやスタチン不耐性の高リスク症例は,既存治療におけるアンメット・メディカル・ニーズであり,PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害薬などによる今後のエビデンスが期待される.
著者
南 学
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.799-804, 2017-08-15 (Released:2018-08-15)
参考文献数
9
著者
南 学 MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.207-213, 2014-03-31

近年青年の「恋愛離れ」が指摘されている一方で、青年の生活満足度は高くなっている。この現象に関して、古市(2011)は、社会的閉塞感から将来に明るい展望が持てないために、「今、ここ」の幸せに満足しているのではないかという仮説を提唱している。本研究では、この仮説を実証的に検証するため、時間的展望体験尺度と価値観を測定し、検討をおこなう。また、併せて恋愛イメージを測定し、それとの関連を検討した。結果は、「現在の充実感」において女性のほうが高く、「自己沈潜的人生観」において恋愛不要群が高かった。また、恋愛イメージに関してクラスタ分析をおこない、それぞれ2群に分けたところ、恋愛不要低群・男性において「希望」が有意に低かった。これらの結果から、一部の男性においてとくに社会的閉塞感の影響が強いことが示唆された。
著者
長久 功 花北 順哉 高橋 敏行 南 学 北浜 義博 尾上 信二 紀 武志 伊藤 圭介
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.133-137, 2009-02-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

Cervical anginaは,何らかの頚椎近傍の病変に由来する狭心症様発作性前胸部痛と定義されている.今回われわれは,非特異的前胸部痛に対して頚椎手術で症状が改善した症例を経験したので,前胸部痛の発生機序と臨床症状の特徴,治療方法について報告する.症例は72歳女性,不安定性を伴った頚椎症性脊髄症で,経過観察中に前胸部痛が出現したが,心疾患由来のものが否定された.後方アプローチによる治療を行った結果,前胸部痛が改善した.前胸部痛の直接的原因は,C3-4間での不安定性に伴ってC3-7間で髄内への圧迫が増強し,頚椎症性脊髄症を引き起こしたためと考えた.頚椎症の症状を伴い前胸部痛が誘発される場合は,cervical anginaを念頭に置いた頚椎,頚髄の検査が重要である.
著者
南 学 MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 = BULLETIN OF THE FACULTY OF EDUCATION MIE UNIVERSITY. Natural Science,Humanities,Social Science,Education,Educational Practice (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.221-227, 2018-01-04

本研究では、現代の若者がもつ幸福観と価値観との関連から現代の「幸せな若者」像(古市,2013)について明らかにすることを目的として検討を行った。結果は、幸福観によって若者を3 群に分けたところ、「現状満足群」のほうが従来の友人関係を維持することを求めることが示されたが、地元志向に関しては有意な差は見られなかった。また「現状満足群」よりもすべてのことを追求する若者像である「全追求群」のほうが、「主観的幸福感」が高く、友人関係においても「表面的友人関係」、「内面的友人関係」に関しては「全追求群」のほうが高かったことが見出された。これらの結果から、古市(2011;2013)が指摘する「幸せな若者」像はすべての若者にあてはまるものではないこと、その「幸せな若者」群の幸福感がとくに高いわけではないことが見出され、古市(2011;2013)が提唱した若者の価値観の傾向と幸福感を結びつけた「幸せな若者」論は実証性に欠けることがあらためて示唆された。
著者
鮫島 宗一郎 河南 学 平田 好洋
出版者
The Ceramic Society of Japan
雑誌
Journal of the Ceramic Society of Japan (日本セラミックス協会学術論文誌) (ISSN:09145400)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1283, pp.597-600, 2002-07-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
20
被引用文献数
38 51

The thermal expansion of CeO2 and rare-earth-doped ceria (Ce0.8R0.2O1.9, R: Yb, Y, Gd, Sm, Nd and La) was measured in the temperature range from 298 to 1473 K. The coefficients of thermal expansion (CTE) were determined by differentiating the thermal expansion expressed by a polynominal equation of temperature with respect to temperature. The CTE (α1) for Ce0.8R0.2O1.9 was in the range from 10×10-6 to 14×10-6K-1 and increased nonlinearly with increasing temperature. This result was explained by the asymmetric curve of potential energy based on the lattice energy theory. The kinds of dopant gave small effect on the α1 of rare-earth-doped ceria. On the other hand, the average CTE for CeO2 and rare-earth-doped ceria (12.0-12.5×10-6K-1), determined from a linear approximation of thermal expansion with respect to temperature at 298-1273 K, was lower than the α1 and close to the previously reported values.
著者
安藤 直人 花北 順哉 高橋 敏行 深尾 繁治 北浜 義博 南 学
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.11, pp.852-857, 2007-11-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
32

当センターにて約3年半の期間に外科的治療を行った腰部脊柱管狭窄症男性症例206例中4例で勃起症状がみられた.4症例とも歩行に伴う勃起であり,馬尾型の症状を呈し,陰部のシビレを伴うことが特徴的と思われた.腰部脊柱管狭窄症では,歩行時には静脈還流障害に伴い馬尾神経が阻血状態となり,感覚入力系神経に異常な興奮性を生じ,それがシビレなどの過剰な症状を惹起しながら,仙髄勃起中枢に興奮性の入力となりうると推測される.したがって,腰部脊柱管狭窄症での歩行誘発性勃起は,synapticな反射性勃起とする仮説が有力であると考察した.
著者
大竹 安史 福田 衛 石田 裕樹 中村 博彦 花北 順哉 高橋 敏行 兼松 龍 南 学 妹尾 誠
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1198-1210, 2021-11-10

Point・Anterior cervical foraminotomyは最小限の骨削除を行うことで固定を回避しつつ,神経根をピンポイントに除圧する術式である.・可能な限り支持組織を温存することと,最大限の神経除圧を行うことは相反する概念であり,これらのバランスをとるのに習熟を要する.・狭い術野で正確に神経根に至るためには,解剖学的知識,術中の良好なorientationが肝要である.
著者
磯和 壮太朗 南 学 ISOWA Soutarou MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
no.66, pp.179-189, 2015-03-31

本研究は、クリティカルシンキング(以下:クリシン)を教育する立場に立つ場合、まずはクリシンの社会的側面に注目した「社会的クリティカルシンキング」に対する志向性を刺激することが有効なのではないかという立場のもと、より使いやすい社会的クリシン尺度の作成を目指したものである。2つのクラスに対して、27項目で収集したデータを探索的因子分析にかけた結果、5因子解が得られた。この5因子解に基づいて15項目の短縮版を作成後、先の2クラスに対して改めて実施し、信頼性と妥当性の検証を行った。各クラス各時点での下位尺度のα係数は低かったものの、尺度全体でのα係数は0.8を超えており、それなりの内的一貫性を確保していた。また、Times1とTimes2の因子構造を比較するための縦断因子分析、2つのクラス間での因子構造を比較するための多母集団同時分析を行った結果、高い適合度と妥当なパス係数が得られた。予測的妥当性の検証として、実際にTimes1の社会的クリシン志向性がTimes2の社会的クリシン行動を導いているかについて検討した結果、確かにTimes1の社会的クリシン志向性は、社会的クリシン行動を導いており、それは下位因子単位よりも因子全体で影響力を発揮する可能性が示唆された。また、志向性から能力に対する自己認知を統制した結果、それができると思っているかどうかにかかわらず、社会的クリシン志向性は社会的クリシン行動を促している可能性が示唆された。
著者
南 学 Manabu MINAMI
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.337-348, 2013-03-31

従来のクリティカルシンキング教育は、受講生に多大な認知的負荷を求めるため、受講生の一部はクリティカルシンキングを学ぶ動機づけを失いやすいという問題点と、クリティカルシンキングを実践・練習する機会を持ちにくいため自発的にクリティカルシンキングを行いにくいという問題点があった。これらの問題を解決するために、筆者はクリティカルシンキングを実践することをうながすゲーミング教材を開発した。本研究では、この教材がクリティカルシンキング志向性を高めるかどうかを検証した。実験は教材の有効性を示した。考察では、この教材を従来型のクリティカルシンキング教育に取り入れることでいっそうの有効性を発揮するであろうと論じられた。
著者
磯和 壮太朗 南 学 ISOWA Soutarou MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.285-295, 2014-03-31

本研究では、①抑うつと考え込み型反応及び認知的統制に関する先行研究の追試を行うこと、②クリティカルシンキング志向性(以下:クリシン志向性)が考え込み型反応及び認知的統制とどのような関係を持っており、どのように抑うつと関わっているのかを検討した。これらを検討することによって、クリティカルシンキング教育(以下:クリシン教育)の新たな意義と、教育を行う際に留意すべき点を見出すことが本研究のねらいである。結果として、先行研究で見出された考え込み型反応及び認知的統制が抑うつに与える影響については、先行研究の結果がほぼ支持された。また、総じてクリシン志向性を高めるよう働きかけることは抑うつを重症化させるというリスクを持っているものではないことが示された。クリシン教育を行う場合は、クリシン志向性の中でもまずは証拠を重視する志向性、偏ることなく思考しようとする志向性、そして、世の中には様々な価値観や捉え方、視点があり、そのことを意識して考える志向性を高めることが効果的であること、自分についてのクリシンは、ひとりきりでは行わずに、友人に相談したり学生相談を利用するなど、信頼できる他者と共に行うことが大切であると伝える必要があると考えられた。
著者
伊藤 圭介 花北 順哉 高橋 敏行 南 学 本多 文昭 森 正如
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.833-838, 2009-11-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

仙腸関節ブロックを施行した症例の臨床的検討を行った.【対象】2008年3〜10月に仙腸関節ブロックを施行した72例.【方法】保存的治療に抵抗性の腰痛を自覚し,理学的所見により仙腸関節由来の疼痛が疑われた症例に仙腸関節ブロックを施行した.【結果】仙腸関節ブロックは46例(63.9%)にて有効で,VAS平均改善率は52.4%であった.仙腸関節部痛は外来全腰痛患者の14.1%を占めていた.ブロック有効例の46例のうち36例(78.3%)に他の腰椎疾患を合併していた.【結語】仙腸関節部痛は日常診療で多数の患者が存在すると思われた.仙腸関節ブロックは仙腸関節由来の疼痛の診断,治療に効果があった.
著者
南 学 Minami Manabu
出版者
三重大学教養教育院
雑誌
三重大学教養教育院研究紀要 = Bulletin of the college of liberal arts and sciences, Mie University
巻号頁・発行日
no.4, pp.53-59, 2019-03-30

本研究では、現代の若者がもつ幸福観との関連から生活満足度と協調的幸福感を測定することを目的として検討を行った。結果は、幸福観によって若者を3 群に分けたところ、生活満足度と協調的幸福感において「現状満足群」はほとんどの因子で低く、「全追求群」が高い評価となっていた。これらの結果から、古市(2011;2013)が提唱した若者の価値観の傾向と幸福感を結びつけた解釈は実証的根拠に乏しいことが示唆された。
著者
南 学 MINAMI Manabu
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.171-178, 2015-03-31

本研究では、現代の若者がもつ幸福観と価値観との関連から現代の「幸せな若者」(古市,2011)について明らかにすることを目的として検討を行った。結果は、「主観的幸福感」と「くつろぎ追求」とは有意な相関が見られず、「将来無関心」とも相関はなかった。また、幸福観によって若者を3群に分けたところ、「幸せな若者」像に近い「現状満足群」よりもすべてのことを追求する若者像である「全追求群」のほうが、「主観的幸福感」が高いことが見出された。これらの結果から、「幸せな若者」像はすべての若者にあてはまるものではないこと、「幸せな若者」の幸福感がとくに高いわけではないことが見出され、古市(2011)が提唱した若者の価値観の傾向と幸福感を結びつけた「幸せな若者」論は実証性に欠けることが示唆された。
著者
南 学
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.384-392, 1998-12-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
22

Two models-the weighted averaging model and the anchoring and adjustment model-have been proposed to explain the base-rate neglect. In an attempt to test these two models, the cab problem (Bar-Hillel, 1980) was presented in two conditions. In one condition, the probability in case information was presented numerically, and in another, it was presented verbally. According to the weighted averaging model, subjects' estimates under verbal expression condition were predicted to be equal to or lower than the probability implied by the verbal expression, because legibility of verbal expression made subjects afford to consider base-rate. According to the anchoring and adjustment model, on the other hand, subjects' estimates under verbal expression condition were predicted to be higher than the probability implied by that expression (counter base-rate effect), because under a directional hypothesis that “blue cab was in accident”, in anchoring process, ambiguity of verbal expression was dragged. Results of three experiments were found to be consistent with the prediction from the anchoring and adjustment model.
著者
平岩 馨邦 三宅 貞祥 南 学
出版者
九州大学
雑誌
九州大學農學部學藝雜誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.455-459, 1954-03

Northern Kyushu was caught in heavy rains, rivers around overflowed and their catchment areas met unparalleled flood in the end of June, 1953. In August we went to Onga Village, Hinashiro Village and Zend6ji Town, in which the damages were most tremendous, along the Onga and Chikugo rivers in Fukuoka Prefecture, and investigated the effects of the flood on the habitations of the domestic rats, Norway rat Rattus norvegicus, and house rat Rattus rattus, in those areas. Norway rats were captured in Togo Town of unflooded area and in the higher and dried part of Nakabaru Village of flooded area but in the above mentioned villages and town in which water came over several metres, only house rats were got, Norway rats being never met. Therefore it seems that in the flooded areas the Norway rats decreased exceedingly in number, having been drifted or drowned, as the water invaded their dwelling places of ground level, though the house rats survived, escaping to the higher places in the house such as rafters of the ceiling. The peasants observed that abundant individuals of rats were drifted and arrived, being alive or dead, to the foot of the hill situated down the Onga river. Most of them are considered to be Norway rats. Hinashiro Village and. Zendoji Town along the Chikugo river are used to be flooded almost annually in summer, so the Norway rats, living in ground level, are thought to be very few in number or to be lacking absolutely, because they can not dwell habitually in such area.昭和28年6月25日より数日間降り続いた豪雨の為, 北九州特に福岡・熊本両県下に於ける遠賀川・筑後川・矢部川・菊池川・白川の諸河川は氾濫し, その流域地方は未曾有の大洪水に襲われ各方面に甚大な災害を蒙つた. その直後九州大学に於いてはその災害の綜合調査を企画し, 学内の関係諸教室は夫々の専門分野の調査研究に従つた. われわれは動物に関係する部門を分担し, 8月の初旬及び中旬に福岡県下の主として遠賀川・筑後川の流域に於ける水害現場に赴いて調査を行つたが, その内洪水の住家性鼠類に及ぼした影響に関するものをここに報告する.