著者
喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 川添 航 坂本 優紀 卯田 卓矢 石坂 愛 羽田 司 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.45-58, 2018-04

本研究には平成28年度科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究:課題番号16K13297)の一部を利用した.
著者
卯田 卓矢 磯野 巧
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.277-294, 2019 (Released:2020-03-25)
参考文献数
50

本稿は沖縄県の石垣島を対象に観光資源としての星空の構築プロセスを検討した。石垣島では近年,自治体の観光基本計画に基づいた星空ツーリズムの推進や「星空保護区」の暫定認定,また星空観望専門の観光事業者を含む関連ツアーの増加とツアー内容の多様化などにみられるように,星空の観光資源化が急速に進行した。この要因には以下の3点が関係していると考えられた。第一に石垣島の観光地的性格を基盤とした星空観望ツアー導入の容易さ,第二に南の島の星まつりの開催による星空の価値化とその共有,第三に自治体における星空を対象とした観光振興の取り組みである。また,石垣市による「星空保護区」の申請のような資源の新たな価値づけの作業は,観光資源の競合状況の中で地域を発展させる取り組みとして有用であった。以上の石垣島の動態は「夜間」のような新規性を有する対象の観光資源化を目指す地域において重要な視点になり得ると考えられる。
著者
卯田 卓矢
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2012年 人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.50-51, 2012 (Released:2013-12-17)

本研究では叡山文庫所蔵資料を基に、戦後比叡山の観光化に伴う維持・管理の過程について検討を行う。
著者
池田 真利子 卯田 卓矢 磯野 巧 杉本 興運 太田 慧 小池 拓矢 飯塚 遼
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.149-164, 2018 (Released:2018-04-13)
被引用文献数
4

東京五輪の開催(2020)に始まる都市観光活性化の動きのなかで,東京のナイトライフ研究への注目が高まりつつある。本研究は,東京の夜間経済や夜間観光の発展可能性を視野に,東京における若者向けのナイトライフ観光の特性を,夜間音楽観光資源であるクラブ・ライブハウスに注目することにより明らかにした。まず,クラブ・ライブハウスの法律・統計上の定義と実態とを整理し,次に後者に則した数値を基に地理的分布を明らかにした。その結果,これら施設は渋谷区・新宿区・港区に集中しており,とりわけ訪日観光という点では渋谷区・港区でナイトライフツアーや関連サービス業の発現がみられることがわかった。また,風営法改正(2016 年6 月)をうけ業界再編成が見込まれるなかで,渋谷区ではナイトライフ観光振興への動きも確認された。こうしたナイトライフ観光は,東京五輪に向けてより活発化していく可能性もある。
著者
池田 真利子 坂本 優紀 中川 紗智 太田 慧 杉本 興運 卯田 卓矢
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.207-226, 2019 (Released:2020-03-25)
参考文献数
74

本稿は,隣接諸領域において長らく術語となってきた景観を夜との関係から考察することで,景観論に若干の考察を加えることを目的とする。景観の原語とされるラントシャフトは,自然科学分野にて紹介され,方法論的発展の必要と相まって視覚的・静態的・形態的に捉えられた。他方の人文学領域においては,景観・風景の使い分けがなされてきたが,1970年代の景観の有するモダニティに対する批判的検討以降も視覚的題材がその考察の主体であった。夜を光の不在で定義すると,人間が視覚で地表面を捉えることのできない夜の地域の姿が浮かび上がってくる。これは,視覚を頂点とするヒエラルキ−を再考することでもある。同時に夜に可視化される光と闇に,近代以降,人間は都市・自然らしさという意味を見出してもきた。それは,光で演出する行為であり,星空を見る行為でもある。現代はその双方が自然と都市に混在するのである。
著者
卯田 卓矢 矢ケ﨑 太洋 石坂 愛 上野 李佳子 松井 圭介
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100193, 2014 (Released:2014-03-31)

初詣や初宮、七五三などの年中行事・人生儀礼を通じた地域の社寺との関わりは、日本人の宗教的行動の一つとして位置づけられる。この行動に関しては、主に宗教社会学において各種の宗教意識調査を用いた経年的分析が行われてきた。ただ、既往の研究では日本人全般を分析対象とする傾向が強く、特定の地域に視点を置いた考察は十分ではない。特に、農村部とは異なり地域の社寺との関係が希薄な居住者が多く存在するニュータウン地区については、現代日本の宗教的行動と地域との関係を検討する上で重要な対象地域であるが、これまで本格的に論じられることはなかった。一方、宗教地理学では、特定の宗教の地域受容過程や信仰圏を主なるテーマとしており、地域住民の宗教行動(参拝行動)に主眼を置いた研究は行われていない。 以上を踏まえ、本研究ではニュータウン地区を対象に、住民の年中行事(初詣)および人生儀礼(初宮、七五三、厄除け)をめぐる参拝行動と地域との関係について検討することを目的とする。対象地域のきぬの里は常総市の南西部に位置し、常総ニュータウンの一部として1990年後半ごろより開発が行われた。
著者
松井 圭介 卯田 卓矢
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.6, pp.895-915, 2015-12-25 (Released:2016-01-27)
参考文献数
40
被引用文献数
2 4

This paper examines the relation between traditional pilgrimages to Mt. Fuji and related tourism in the pre-modern era. It takes into account the worship of Mt. Fuji as a sacred mountain and the activities of oshi pilgrim masters (low-ranking Shinto priests) who organized pilgrimages. Chapter II presents an overview of the worship of Mt. Fuji in its original form before modern times, and the historical development of that worship. Like other sacred mountains in Japan, Fuji was worshiped from a distance as a kannabi, a place where gods were believed to be enshrined. It was also worshiped as an area of the underworld, takai, where ancestral spirits rested. In addition, the mountain was thought itself to be a god: both a benevolent god who brings water and an angry god who brings natural disasters through volcanic eruptions. Historically, pilgrimages by ascetics to Mt. Fuji are first found in sources from the Heian era to the Kamakura era. Subsequently, Mt. Fuji gradually became one of the mountains of Shugendo, a Japanese ascetic-shamanist belief system incorporating Shinto and Buddhist concepts. Chapter III examines the establishment of devotional Fuji confraternities, called Fuji-ko, and the popularization of pilgrimages in modern times. The viewpoints of the various types of Fuji-ko, their religious beliefs, and aspects of their pilgrimages are discussed. In general, a Fuji-ko confraternity consisted of three officers—komoto (host of the ko), a sendatsu (guide), and sewanin (manager)—and members. They made pilgrimages in a three-to-ten-year cycle; the journey was usually a round trip of eight days and seven nights from Edo (the former name of Tokyo) to the mountain, arranged by oshi at Kamiyoshida, at the mountain's foot. Although Fuji was the main destination, others were often included. Some of these were sacred places related to Kakugyo (the founder of the pilgrimage to Mt. Fuji) and Jikigyo Miroku (the famous leader of Fujiko in the Edo era), and other sacred mountains such as Mt. Ooyama. Chapter IV examines the characteristics of Kamiyoshida, the village of oshi priests, which provided pilgrims with a range of services, including accommodation and assistance in climbing the mountain. Kamiyoshida was a particularly large settlement among those at the foot of Mt. Fuji, featuring large residences and rectangular zoning with special entrance roads. At its peak, the village had more than 100 houses aligned in a row. It was very prosperous in summer, when pilgrimages were most frequent. Chapter V examines characteristics of the pilgrimage destination and politics of location. The fact that citizens of Edo could view Mt. Fuji even though it was far away gave it a disarming allure and familiarity. Climbing the mountain was regarded as a great accomplishment, and in this way the pilgrimage became a journey of faith. The oshi priests, as the receiving party, created various legends of faith to draw pilgrims to their village rather than other starting points to Mt. Fuji or other shrines or temples. These legends contributed to the rise of Kamiyoshida and the oshi, and ultimately to their downfall.
著者
卯田 卓矢 益田 理広 金 錦 細谷 美紀 久保 倫子 松井 圭介
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.120, 2013 (Released:2013-09-04)

北陸地方は「真宗王国」とも称されるように浄土真宗(以下,真宗)の篤信地帯として知られている.真宗は「講」を基盤とした集団活動を通して教線を拡大させたといわれるが,北陸においても小地域単位での講の組織化が信仰を拡大,あるいは持続させていく上で大きな役割を果たした. 他方で,講のような信仰集団は,精神的な結びつきを生むだけでなく,村落の社会構造を反映し,村落社会の秩序や成員相互の紐帯を維持・強化する機能も有している.真宗の講組織においても,庚申講や山の神講などの信仰的講と同様に,村落社会と構造的に結びつていることが指摘されてきた.宇治(1996)は,村落の社会構造が寺御講や村御講の基盤となり,かつ講組織の維持にも深く関係すると述べている.また,宇治は村落構造を分析する視点として,集落内の階層性や血縁関係,社会組織などに着目している. そこで,本研究ではこの視点を踏まえ,富山県下新川郡入善町の道市地区を事例に,当地区の血縁・同族関係,社会組織との関係性から,講組織の構造とその持続性について明らかにすることを目的とする. 入善町道市地区は市街地の入膳地区から1kmほど西に位置し,人口は241人である(2012年9月現在).住民によると,ここ50年の間に当地区へ転入したのは2世帯のみであり,新住民が僅少であることが地区の特徴の一つといえる. 道市地区の社会組織は班,及び地区を単位とする組織から構成される.班は同族関係を基盤に形成され,冠婚葬祭などの諸行事において顕著に結びつく.一方,地区の組織は自治会と各種団体が存在し,住民は年齢ごとに地区の様々な行事の運営,維持に携わる.こういった活動は地区の伝統や文化を継承することの重要性を自然と吸収し,道市住民としての自覚を養うことに寄与している. 次に真宗の講組織について見ると,当地区では住民のほとんどが大谷派,及び本願寺派の門徒である.講組織は寺御講,村御講,報恩講が存在し,地区内の門徒はいずれの講にも積極的に参加している.その中で,村御講は毎月大谷派と本願寺派の門徒が合同で営み,講の当番は各戸の戸主が担当し,当番と同じ班の戸主の参加が慣例となっている.ここからは,班と深く結びつく形で村御講が営まれていることがわかる. 以上を踏まえ,講組織(村御講)の構造とその持続性について検討すると,村御講は班との構造的な関係性,班及び地区の社会組織の活動を通した住民意識,また真宗門徒が多数を占め,かつ新住民の僅少といった道市地区の地域性が重層的に結びつく中で,現在に至るまで維持されていることが確認できる. 当地区を含む北陸地方では真宗の篤信地帯という特性から,講組織の維持に対して信仰や宗教的側面に関心が向けられることが少なくなかったが,こういった地域の社会構造との関係についても注視する必要があると考えられる.
著者
卯田 卓矢
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>近年,星空を新たな観光資源と捉え,交流人口の拡大を図る自治体を各地でみることができる.例えば,長野県阿智村の「天空の楽園・日本一の星空ナイトツアー」や,鳥取県の「星取県」プロジェクト(2017年開始)は星空を活用した代表的な観光振興策と位置づけられる.日本の都市部の夜空は明るく,多くの星を眺めることができない.それゆえ,満天の星空を観望することは「非日常的な体験」=観光対象となる.とくに,都市から遠く,光源の影響を受けない列島縁辺地域では星空は有用な観光資源になりえるといえよう.一方,星空はこうした地域の住民にとって身近過ぎることで観光対象と認知されず,資源化の取り組みが浸透しない傾向にある.また,星空は暗い夜空を見上げれば「誰もが自由に(無料で)」観望できるという性格をもつため,観光振興を進める際は観望の「付加価値化」を図ることが重要となる.</p><p>本発表は以上の課題を踏まえ,沖縄県の八重山諸島を事例に,列島縁辺地域の離島における「観光資源としての星空」の可能性を検討する.八重山諸島を含む南西諸島は緯度の関係上本土と比して多くの星を観望することができる.その中で,石垣島は先進的に星空ツーリズムを推進し,官民一体となった取り組みを展開している.本発表ではこの石垣島に注目し,発展のプロセスとその特徴を明らかにしたうえで(卯田・磯野 2020),八重山諸島への星空ツーリズム拡大の可能性を「すみ分け」という観点から考察する.</p>
著者
池田 真利子 卯田 卓矢 磯野 巧 杉本 興運 太田 慧 小池 拓矢 飯塚 遼
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.149-164, 2018

東京五輪の開催(2020)に始まる都市観光活性化の動きのなかで,東京のナイトライフ研究への注目が高まりつつある。本研究は,東京の夜間経済や夜間観光の発展可能性を視野に,東京における若者向けのナイトライフ観光の特性を,夜間音楽観光資源であるクラブ・ライブハウスに注目することにより明らかにした。まず,クラブ・ライブハウスの法律・統計上の定義と実態とを整理し,次に後者に則した数値を基に地理的分布を明らかにした。その結果,これら施設は渋谷区・新宿区・港区に集中しており,とりわけ訪日観光という点では渋谷区・港区でナイトライフツアーや関連サービス業の発現がみられることがわかった。また,風営法改正(2016 年6 月)をうけ業界再編成が見込まれるなかで,渋谷区ではナイトライフ観光振興への動きも確認された。こうしたナイトライフ観光は,東京五輪に向けてより活発化していく可能性もある。
著者
喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 川添 航 坂本 優紀 卯田 卓矢 石坂 愛 羽田 司 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.45-58, 2018-04

本研究には平成28年度科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究:課題番号16K13297)の一部を利用した.
著者
卯田 卓矢 矢ケ﨑 太洋 石坂 愛 上野 李佳子 松井 圭介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.282-298, 2016-09-30 (Released:2016-10-11)
参考文献数
40

本稿は茨城県常総市のきぬの里を事例に,郊外ニュータウン居住者における初詣行動について検討した.その結果,きぬの里の居住者の多くは地元外の有名な社寺を初詣対象としているものの,具体的な行動をみると,以前の初詣対象を踏襲する者が一定数存在し,そこでは前住地との近接性や明確な祈願内容,また実家とのつながりから初詣対象を選択しているなど,居住者個々において多様な行動がみられた.とくに,ニュータウンでは様々な地域からの転入者が多く居住しているという性格上,行動の多様性は顕著であると考えられる.したがって,人口移動が進行した戦後の初詣行動を解明するためには,先行研究で論点とされた氏神との関係の変化や有名社寺への初詣の集中化だけでなく,本稿で明らかにしたような多様な行動パターンについても関心を向ける必要がある.