著者
柳原 尚之 前橋 健二 阿久澤 さゆり 穂坂 賢 小泉 幸道
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.132-140, 2021-06-05 (Released:2021-06-17)
参考文献数
37

江戸期の料理本33冊から酢料理を抽出し,江戸期の酢の使われ方について調査した。江戸時代を通して酢の総出現数は1,371回であり,醤油の出現数をやや上回っていた。江戸時代前期では,酢の出現数は醤油の1.5倍であったことから,酢は醤油が広まる以前は最も多く使われる調味料であったことが推察された。出現回数が最も多かった酢料理は魚のなますで,全酢料理の43.9%を占めていた。合わせ酢の種類が多く,香辛料,食材,または調味料との合わせ酢が122種類確認され,そのうち61種類は香辛料や食材と合わせた酢味噌であった。酢を用いた加熱調理法として最も多く出現していたのが「すいり」であり,主に煮物で行われていた。これには酢を加えてから煮る場合と,煮た後に酢を加える2種類の方法があった。その他の加熱調理法として,少量の酢を加えて加熱する方法や生魚に熱い酢をかける方法も見られた。現代の日本料理ではほとんど行われない,酢の加熱調理への使用は,江戸期では一般的なものであったと考えられた。
著者
桐原 尚之
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

これまで精神障害者の社会運動に関する歴史研究は、精神医学の一部や社会福祉学の枠内等で検討されてきており、精神医学の進歩史上の一事象や社会福祉の価値の正当化のための歴史として叙述されてきた。そのため、これらの目的に反する実践の記録の大部分は歴史から意図的に除外されてきた。障害学は、障害を医療や福祉の対象とする枠組み――医学モデル――からの脱却を目指す試みであり、上述のような従来の歴史認識を批判し、障害の観点から歴史研究をすることが志向される。しかし、現在の障害学は精神障害者の不利益を捉えられる枠組みにはなっておらず、従来の歴史に批判を加えるための基盤となる理論が存在しないという点で問題がある。本研究の目的は、精神障害者の社会運動の現代史を通じて、そこから示唆される知を明らかにすることである。対象範囲は、1960年代後半から2000年代前半までとし、全国「精神病」者集団の歴史を中心とする。第一に精神障害者の社会運動は発生し活動を続けてきたのかという集団形成の歴史を記述した。そこから運動が発生した理由、集合的アイデンティティの設定過程、設定された価値を分析した。その結果、精神障害者の社会運動は、精神障害者の生命を守り人権を回復すること、協調からの逸脱という精神障害者像に基づき精神障害者同士の助け合うことを志向した運動であったことを明らかにした。第二に精神障害者の社会運動は何を求めたのかという主張の歴史を明らかにした。そこから何を批判対象となる価値規範や不利益と措定し、いかなる負担をどのように分散することを求めたのかを分析した。その結果、精神障害者の社会運動が求めたことは、「関わることを止めないこと」を求めた運動であったことを明らかにした。第三に精神障害者の社会運動の歴史を記述したことによって従来の医学や社会福祉学の歴史認識にどのような変更が加えられるのかを明らかにした。
著者
柳原 尚之 前橋 健二 阿久澤 さゆり 穂坂 賢 藤井 暁 長野 正信 小泉 幸道
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-10, 2022-02-05 (Released:2022-02-08)
参考文献数
31

江戸期及びそれ以前の書物に記載されている酢製造法を調査し,16冊の書物から33件の米酢製造法を抽出した。江戸期の米酢製造法では,現代と比べて汲水歩合が著しく低く,仕込み時期は夏が多く,仕込み期間は1週間から1カ月程度と短いものが多いという特徴がみられた。江戸期書物記載の方法による再現仕込み試験は,江戸期から伝統的製法で壺酢製造を続けている酢製造会社にて行われた。その結果,汲水歩合が現代と同様およそ300%の仕込みでは30日目以降に酢酸発酵を認められたが,汲水歩合がおよそ100~250%の仕込みにおいては,仕込初期に乳酸発酵で 1~2 g/100 mlの乳酸が生成され,9~13 g/100 mlという高いエタノール濃度となって酢酸発酵へは移行しなかった。江戸期には,乳酸を酸味の主体とする発酵物が酢として作られていた可能性が示唆された。
著者
黒瀬 浩文 植田 浩介 大西 怜 小笠原 尚之 築井 克聡 陶山 俊輔 西原 聖顕 名切 信 松尾 光哲 末金 茂高 井川 掌
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.251-255, 2016-10-20 (Released:2017-10-24)
参考文献数
10

後腎性腺腫(metanephric adenoma)は極めて稀な腎良性腫瘍であり,画像診断では悪性腫瘍との鑑別が困難である.今回我々は,2例の後腎性腺腫を経験したので報告する.症例1は57歳,女性.検診時の腹部超音波検査にて右腎腫瘍を指摘され当科受診.造影CTにて右腎上極に造影早期相で造影増強効果は乏しく,経時的に不均一な造影効果を示す26mm大の腫瘤性病変を認めた.右腎細胞癌(cT1aN0M0)の術前診断にて腹腔鏡下右腎部分切除術を施行した.症例2は79歳,女性.両側乳癌術後の腹部CTにて偶発的に左腎腫瘍を指摘された.左腎中極腹側に不均一な造影効果を示す24mm大の腫瘤性病変を認めた.左腎細胞癌(cT1aN0M0)の術前診断にて腹腔鏡下左腎摘除術を施行した.両症例の病理組織診断は共に後腎性腺腫であった.これまでの後腎性腺腫に対する報告においては,術前腎細胞癌との鑑別が困難であり外科的切除が選択されていることが多い.画像検査にて本疾患などの良性腫瘍も疑われる際には,術前の腎腫瘍生検を含めた比較的低侵襲な診断ならびに術式を考慮することが肝要と思われる.
著者
今坂 友亮 福永 智洋 伊藤 章 杉谷 栄規 小西 啓治 原 尚之
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1032-1033, 2014

近年,電力需給ひっ迫に対応するために,ピーク電力抑制を目的としたデマンドレスポンスが注目されている.本報告では,蓄電池の残量と過去の総供給電力に比例した電力価格情報に基づき,各世帯が所有する蓄電池の充電開始時刻を決定する自律分散型のモデルに,多相同期現象を発生させ,ピーク電力が抑制できることを示す.さらに,ピーク電力を抑制するシステムパラメータの領域を,数値シミュレーションで調べる.
著者
西原 尚之
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.87-97, 2006-03-31

本論は経済的不利を伴う家庭で生活する不登校児の実態を明確にし,支援の方向性を示唆した研究である.そのため最初に福岡県筑豊地域の民間フリースクールに通級する子どもたちの現状を紹介した.この地域の生活保護率は全国の10倍以上に上り,通級児たちの家庭もその過半数が生活保護世帯である.また彼らの多くは学力が大幅に低下しており,たとえ学校に復帰してもこのうち7割が通常の授業についていけない状況にある.またひとり親家庭(42%),親が精神または知的障害を伴っている家庭(25%)も多い.本論ではこうした社会的不利をかかえる家庭で生活する不登校児たちの中心課題を教育デプリベーションと位置づける.そのうえで必要な支援として,多層な補償教育システムの配備を提言した.また補償教育システムが有効に機能するためには親との協働が欠かせないという視点から,家族に対するアプローチについても検討している.