- 著者
-
古屋 晋一
- 出版者
- 関西学院大学
- 雑誌
- 若手研究(スタートアップ)
- 巻号頁・発行日
- 2008
本研究は,ピアニストとピアノ初心者の打鍵動作における上肢関節の動力学特性の違いについて調べた.ピアニスト7名と同数の初心者にスタッカートでのオクターブ打鍵を行なってもらい,その際の上肢の運動を高速カメラおよび表面筋電図によって記録した.逆動力学計算により,肩,肘,手首,指関節に生じる筋力依存性のトルク,運動依存性のトルク,重力依存性のトルクを算出した.その結果,ピアニストは初心者に比べて肘と手首により大きな運動依存性トルクを作り出し,筋トルクを軽減していた.さらに,肘の筋トルクを生成する際,ピアニストは重力に抗する筋である上腕二頭筋を弛緩させていたのに対し,初心者は上腕三頭筋を収縮させていた.したがって,ピアニストは長期的な訓練を通して,筋力以外の力を利用することで打鍵時の筋肉の仕事量を軽減する運動技能を獲得していることが示唆された.