- 著者
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吉村 隆
北山 秋雄
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.5, pp.548-561, 2018-01-31 (Released:2018-03-13)
- 参考文献数
- 48
- 被引用文献数
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近年,様々な分野で注目されているソーシャル・キャピタルの概念に注目し,地域特性に配慮した質問紙を用いて量的な調査を行なうことで,中山間地域のソーシャル・キャピタルを探究した。質問紙の項目は,個人の属性10項目,ソーシャル・キャピタルに関連する36項目から構成されている。この質問紙を中山間地域と都市部に居住する40歳以上の男女682名(中山間地域342名,都市部340名)に配布し,記入漏れや記入ミスがない427名が分析の対象となった。分析の結果,ソーシャル・キャピタルに関連する36項目のうち,29項目で中山間地域が有意に高い値を示した。また,因子分析の結果,先行研究で示された因子構造は再現されず,都市部では「近所関係の質」「地域への愛着」「信頼感」「自然との共生」の4因子が抽出された。中山間地域においては,顔の見える親密な人間関係があることが地縁活動への参加を促していると推測され,その背景には自然との相互作用によって形成された中山間地域特有の生活様式があると考えられた。また,中山間地域のソーシャル・キャピタルが,親密性が高い性質を持っているという本研究結果は先行研究を支持するものであった。中山間地域においては,自然環境要因がソーシャル・キャピタルに関連している可能性があると推測された。