著者
石川 奈保子 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.329-343, 2018

<p>本研究では,オンライン大学で学んでいる学生を対象に,自己調整学習およびつまずき対処方略の使用状況について明らかにするために調査を行った.その結果,以下の3点が明らかになった.(1)オンライン大学の学生のつまずき対処方略は,「学友に質問する」「教育コーチに質問する」「放置する」「自分で解決する」の四つの方略に分類された.(2)ゼミに所属している場合,学習の相談ができる学友がいる学生は,教育コーチや学友に援助要請することでつまずきを解消していた.一方,そういった学友がいない学生は,つまずいたときでも援助要請しない傾向があった.(3)学習の相談ができる学友がいる学生は,より多くの自己調整学習方略およびつまずき対処方略を使用していた.以上のことから,オンライン大学での学習継続においてメンターや学友との交流が重要であることが,自己調整学習方略使用の側面から裏づけられた.</p>
著者
向後 千春 岸 学
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.161-166, 1996-12-20
被引用文献数
3

映像と文字情報の提示についてのデザイン原則への示唆を得ることを目的として,外国映画の字幕つきビデオを視聴するときの眼球運動を分析した.実験材料として,字幕版のビデオ,「JFK」と「マルコムX」を用いた.それぞれから5分間程度のシーン4つを選び,編集したものを,アイマークカメラを装着した被験者に視聴してもらい,そのときの眼球運動を記録した.1行6文字,1行13文字,2行13文字,2行20文字の4種類の字幕パターンに注目し,それぞれにおいて,眼球運動を,字幕への反応時間,先頭への移動時間,実質的な読み時間,(2行字幕の場合)改行時間,に分解し詳細に調べた.その結果,字数が増えれば増えるほど文字あたりにかかる時間が長くなり,そこでは行数の要因と文字数の要因とが効いていることが明らかにされた.
著者
向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.257-263, 2002-12-20
被引用文献数
1
著者
鈴木 克明 市川 尚 向後 千春 清水 克彦
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、教材や授業の動機づけの側面を評価して問題点を見つけ出し、授業や教材の改善作業を支援するためのツール群を開発した。J・M・ケラーが提唱するARCS動機づけモデルに基づいて、ARCSモデルの枠組みである注意・関連性・自信・満足感の4要因それぞれ4項目ずつ、合計16項目からなる「ARCS評価シート」を設計した。それを複数の大学における学生による授業評価で試用し、因子分析などの手法により信頼性と妥当性を検討するデータを収集して改良し、「ARCS評価シート」最終版を提案した。さらに、「ARCS評価シート」をWeb上で実施し、データの回収及び統計的処理を自動的に行う機能を備えた「Web版ARCS評価シート」を開発し、大学における学生による授業評価の実践場面で操作性と実用性を確認した。また、様々な領域で提案されている動機づけに関する教授方略を収集し、ARCSの4要因をもとに分類・整理した「ARCS改善方略ガイドブック」をブックレット形式にまとめた。その内容を「ARCS評価シート」での診断結果と連動させて動的に提示する「Web版ARCS改善方略ガイドブック」を開発し、その簡便性などを調査した。「ARCS評価シート」で得点が低かった項目についての改善方略を選択して表示し、問題点に特化した改善方略を組み合わせて授業の再設計を支援する機能を備えていることが好意的に評価された。以上の成果をWeb上に公開し、教材や授業のデザインに関係する実践者の参考に供した。
著者
向後 千春
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では、オンライン大学に入学した社会人を対象として学習継続要因を調査した結果、以下のことが明らかになった。(1)ポジティブな要因としては、eラーニングでの受講形態、時間管理のスキル、学費の工面や家族の協力がある。ネガティブな要因としては、孤独な学習環境が心理的・物理的距離感に影響を及ぼす可能性が示唆された。(2)オンライン大学の学生は、学友とのつながりが、教員・教育コーチへのコミュニケーションに影響を与える要因となる。これらの結果は生涯学習のためのeラーニングシステムを構築するための示唆となるだろう。