著者
小林 和彦 園山 繁樹 戸村 成男 柳 久子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.93-105, 2003-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
6

本研究においては、行動分析学の枠組みとその基本的な技法を応用したベッドから車椅子へのトランスファー介助の方法を、老人保健施設に勤務する経験の浅い介護スタッフに指導し、指導効果の検証を行った。対象は、施設介護職員として勤務する女性2名で、両介護者が介助するのは脳梗塞左片麻痺で痴呆を有する78歳の女性であった。指導は机上での講義形式による行動分析の枠組み、およびそれに基づく対象者へのかかわり方に関する基本的な説明を行った後、実際場面において実践的な指導を行い、適切介助回数および身体接触時間を評価した。その結果、両介護者とも実践指導後において大幅な適切介助の増加および身体接触時間の減少が認められた。しかしながら、講義形式による説明のみではほとんど指導効果が得られなかったことから、実際場面における実践的な指導の重要性が示唆された。
著者
村本 浄司 園山 繁樹
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.111-122, 2010-07-31

本研究では、施設に入所する、多飲行動、自傷や便踏みなどの激しい行動問題を示す自閉症者1名に対して、PECSを用いて代替行動を形成し、形成された代替行動を日常生活に応用することによって行動問題が軽減するかどうかを検討した。機能的アセスメントによって対象者の行動問題の機能が要求や注目の機能を有しているという仮説が導かれた。支援Iにおいて、対象者の代替行動を形成する目的でPECSにおけるフェイズIIIまで実施した。その結果、必要な写真カードによる要求言語行動を獲得することができた。支援IIでは、日常場面において多飲行動への代替行動として写真カードを導入することで相対的に多飲行動が減少するかどうかを検討した。その結果、対象者の多飲行動は減少し、このアプローチの有効性が示唆された。支援を行ううえで職員の注意は常に対象者に向けられる必要があったため、職員の注目が確立操作として作用し、注目の機能を果たす行動問題の強化効力を低減した可能性がある。
著者
村本 浄司 園山 繁樹
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.147-159, 2011-03-31

本研究では、知的障害者入所更生施設に入所する常同行動を伴う自閉症者1名に対して、活動スケジュールを使用した余暇スキルを形成することによって、常同行動の軽減を試みた。さらに、対象者が職員への要求行動を獲得することによって、入所施設において職員による対象者への余暇支援を維持させることを目的とした。訓練室における余暇スキル形成後、居室においても対象者の余暇スキルを形成することに成功した。さらに、職員との協働の余暇支援実施後、外部支援者のスーパーバイズがなくても、余暇支援を継続できていた。この要因として、職員が手続きを確認しながら、外部支援者と協働して支援を実施できたことが、対象者への余暇支援の維持に貢献した要因であると考えられる。
著者
園山 繁樹
巻号頁・発行日
2013

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:挑戦的萌芽研究2010-2012
著者
松下 浩之 園山 繁樹
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.495-508, 2010-03-31

In the present case study, ball-throwing skills were taught to a boy with Asperger's disorder, and secondary benefits for him from that experience were examined. The teaching program was based on applied behavior analysis. After a task analysis that divided overhand ball-throwing behavior into 10 behavior units, training utilized visual stimulus prompts and a chaining procedure, in a changing criterion design. The results showed that, although it took some time to achieve, all the behavior items were learned, so that the boy acquired skills necessary for ball throwing. The present study confirms the effectiveness of prompts using picture cards and behavioral coaching. It was difficult to maintain the boy's motivation for the prolonged training, although verbal interaction may be effective to increase motivation. Secondary effects observed included increased social interaction and a more proactive attitude towards exercise, behaviors that were not goals of the teaching program. Such effects may indicate potential benefits of the acquisition of sports skills as one component of leisure activities of children with developmental disorders.
著者
園山 繁樹
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.195-208, 2017-03-31 (Released:2017-10-06)
参考文献数
12
被引用文献数
7

選択性緘黙を示した小学校1 年生男児について、担任教師、特別支援教育コーディネーターおよび母親に対して大学教育相談室においてコンサルテーションを実施し、 1 年9 か月後に選択性緘黙の症状が顕著に改善した経過を報告した。原則として月に 1 回、教育相談室で合同コンサルテーションを実施した。緘黙症状を改善するために刺激フェイディング法やエクスポージャー法を基盤にしたスモールステップを作成した。各スモールステップで、担任教師とコーディネーターは教室で実施可能な方法を検討・実施し、母親はそれらについて対象児の考えを確認したり、一部を家庭で練習した。その結果、3 年生の6 月には授業で通常の形での発表や、休憩時間での他児との会話も問題がないレベルとなり、終結した。5 年2 か月後のフォローアップにおいても、発話や学校生活について特別な問題は生じていなかったことが確認された。
著者
園山 繁樹
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.195-208, 2017

<p>選択性緘黙を示した小学校1 年生男児について、担任教師、特別支援教育コーディネーターおよび母親に対して大学教育相談室においてコンサルテーションを実施し、 1 年9 か月後に選択性緘黙の症状が顕著に改善した経過を報告した。原則として月に 1 回、教育相談室で合同コンサルテーションを実施した。緘黙症状を改善するために刺激フェイディング法やエクスポージャー法を基盤にしたスモールステップを作成した。各スモールステップで、担任教師とコーディネーターは教室で実施可能な方法を検討・実施し、母親はそれらについて対象児の考えを確認したり、一部を家庭で練習した。その結果、3 年生の6 月には授業で通常の形での発表や、休憩時間での他児との会話も問題がないレベルとなり、終結した。5 年2 か月後のフォローアップにおいても、発話や学校生活について特別な問題は生じていなかったことが確認された。</p>
著者
雨貝 太郎 園山 繁樹
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.47-55, 2015

本研究は広汎性発達障害の診断を受けた11歳の男児1名を対象に、サイコロトークを実施し、いくつかの条件を設定し、発話促進の効果について検証した。初めに「聞く行動」について指導した後、「話す行動」を指導した。「話す行動」の指導においては、「終了モデルの提示」「話すテーマの事前提示」「考える時間の提供」「テーマの選択」「テーマの自由選択」という5つの条件の中で、話す時間と話す文章の量の変化を測定した。その結果、より長い文章を話させる課題を行う際は(1)会話の終わり方のモデルを示すこと、(2)前もって話す内容について考える時間を十分に与えること、(3)話す内容について選択肢を与えること、が効果的であった。また、より長い時間会話をさせる課題を行う際には(1)どのようなことについて話せばいいのか事前に伝えておくこと、(2)選択肢を与えずに自分の話したいことを自由に話させること、が効果的であった。
著者
酒井 貴庸 設楽 雅代 脇田 貴文 金澤 潤一郎 坂野 雄二 園山 繁樹
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.19-28, 2014-11-30 (Released:2019-04-25)
参考文献数
26

発達障害児者への適切な関わりには周囲の理解が必要とされており、教育現場においても国内外を問わず、発達障害の理解が重要視されている。そして、特別支援教育の推進や近年の発達障害への認知の広がりに伴い、発達障害についての講演や研修会が全国各地で開催されている。また、発達障害をもつ生徒に関わる教師に対し、障害特性に関する知識の促進や対処方法についての知識や技術を促進することを目的とした介入研究が報告されているが、研修によって得られた知識を標準化された尺度で測定している研究は、極めて少ない。そこで、発達障害の障害特性に関する知識の程度(知識度)に着目し、自閉性スペクトラム障害(Autistic Spectrum Disorder:ASD)の障害特性知識尺度(LS-ASD)の開発を試みた。なお、本研究では、高等教育機関における発達障害関連の相談の中で相談件数が最も多く、気分障害や不安障害との合併といった二次障害のリスクが特に高いASD に焦点をあてた。LSASD は、能力測定の分野においてさまざまな成果を上げている項目反応理論(IRT)に基づいて開発された。学生、医療福祉従事者、教師の825 名の回答データについて分析し、最終的に44 項目において内容的・基準関連妥当性、信頼性が確認された。IRT に基づいて開発された尺度であるため、LS-ASD は十分な信頼性を維持しつつ、回答者の知識度に合わせた項目を抜粋しての使用やComputer Adaptive Test としての使用可能性をもつ尺度となった。
著者
趙 成河 園山 繁樹
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.227-236, 2018-03-31 (Released:2018-10-06)
参考文献数
31
被引用文献数
1

本研究では、選択性緘黙の有病率に関する先行研究を概観し、有病率の推定値とその根拠資料を把握することを目的とした。対象とする先行研究は英文および和文の学術誌に掲載された選択性緘黙の有病率を調査した論文を選定した。選定基準に適合した16編の論文を分析対象とし、12の項目について分析した。調査研究の対象年齢は3.6~17歳で、有病率は0.02~1.89%であった。また幼稚園および学校で調査を実施した論文が12編、クリニックで実施した論文は4 編であった。選択性緘黙の診断基準としてDSM-III-Rを用いた論文は1 編、DSM-IVを用いた論文は8 編、DSM-5を用いた論文は1 編、記載のない論文は6 編であった。和文誌は4 論文と少なく、最近の日本の選択性緘黙の有病率に関する大規模の調査は見当たらず、今後、日本における選択性緘黙の現状を把握する必要がある。また、今後の研究では選択性緘黙の発症時期について検討する必要がある。
著者
園山 繁樹 柘植 雅義 洪 イレ 酒井 貴庸 倉光 晃子
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、知的障害特別支援学校に在籍する児童生徒の不登校について、主に次の2つのことを目的としている。第1に.知的障害特別支援学校における不登校児童生徒の実態を調査研究から明らかにする。第2に、知的障害特別支援学校において不登校になっている児童生徒の事例検討から、再登校や社会適応に向けた支援の在り方を明らかにするとともに、校内・校外における支援体制作りを提案する。平成29年度は主として以下の研究活動を行った。1.平成28年度に実施した知的障害特別支援学校を対象とした質問紙調査(不登校児童生徒の在籍状況や支援体制を明らかにするために、知的障害特別支援学校すべて(計865校)に質問紙を送付し、回収した)のデータを分析し、平成29年9月開催の日本特殊教育学会第55回大会でポスター発表した。現在、その詳細をまとめた論文を学術雑誌に投稿中である。2.知的障害特別支援学校において不登校になっている児童生徒の事例検討については、上記1の調査協力校10校を対象に実地面接調査を行い、不登校の児童生徒の状況の詳細、支援体制、具体的支援についてまとめた。その結果の概要については、平成30年9月開催の日本特殊教育学会第56回大会でポスター発表する予定である。3.知的障害児童生徒の不登校に関する先行研究のレビューを行い、その結果まとめた論文を学術雑誌に投稿中である。不登校の知的障害児童生徒を対象にした先行研究の数は非常に少ないことが明らかになった。
著者
雨貝 太郎 園山 繁樹
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.47-55, 2015 (Released:2016-07-15)
参考文献数
16

本研究は広汎性発達障害の診断を受けた11歳の男児1名を対象に、サイコロトークを実施し、いくつかの条件を設定し、発話促進の効果について検証した。初めに「聞く行動」について指導した後、「話す行動」を指導した。「話す行動」の指導においては、「終了モデルの提示」「話すテーマの事前提示」「考える時間の提供」「テーマの選択」「テーマの自由選択」という5つの条件の中で、話す時間と話す文章の量の変化を測定した。その結果、より長い文章を話させる課題を行う際は(1)会話の終わり方のモデルを示すこと、(2)前もって話す内容について考える時間を十分に与えること、(3)話す内容について選択肢を与えること、が効果的であった。また、より長い時間会話をさせる課題を行う際には(1)どのようなことについて話せばいいのか事前に伝えておくこと、(2)選択肢を与えずに自分の話したいことを自由に話させること、が効果的であった。
著者
園山 繁樹
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.57-68, 1994-11-30
被引用文献数
2

障害を持つ幼児を障害を持たない幼児の集団の中で保育するという統合保育については、その利点が多くの研究者によって示唆されているが、実際に成功するための条件は複雑である。本研究ではわが国と米国の文献を概観し、統合保育を行う上で考慮すべき要因を相互行動的立場の状況要因の視点から分析した。分析した状況要因は、(1)概念的要因、(2)障害を持つ幼児の要因、(3)プログラムの要因、(4)障害を持たない幼児の要因、(5)保育者の要因、(6)園の要因、(7)療育専門機関の要因であり、これらの諸要因を検討せずに統合保育の有効性を論ずることはできない。また、今後の課題として、実際の統合保育場面での実践研究、保育者と療育専門家との共同研究、統合保育の専門性の確立、統合保育が困難な幼児への対策、保育場面以外での社会的統合を挙げた。
著者
裴 虹 園山 繁樹
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.37-47, 2009-05-30

本研究では、日本と中国における知的障害児童生徒の選択行動形成の指導・支援の現状、および両国の異同点や共通した課題等を明らかにするため、両国の知的障害養護学校の教師(日本2,000名、中国411名)を対象に質問紙調査を実施した。その結果、両国とも選択行動形成の指導・支援が積極的に実施されており、選択行動形成の重要性に関する教師の認識も高いことが明らかになった。また、選択行動形成の指導はさまざまな形で知的障害養護学校に取り入れられており、その内容が個別指導計画に取り入れられている割合も高いことが示された。さらに、選択行動形成の指導・支援は、さまざまな方法によって実施されていることも明らかになった。両国を比較すると、選択行動形成の指導・支援に関する認識や実施の程度は日本のほうが高く、選択行動形成の指導・支援に関する学校・家庭・地域の連携に関する意識や実施状況は中国のほうが比較的高かった。このことから、知的障害児童生徒の特性にそった有効な支援方法、および学校・家庭・地域の連携のあり方について、両国で研究・実践の交流がなされることが望ましいと考えられた。