著者
小林 和彦 辻下 守弘
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.201-213, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
20

本研究においては、行動分析学の視点から理論および介助の方法論を解説したパソコン上で作動する教材を開発し、介護職員3名に自己学習とセルフチェックを行ってもらい、介護老人保健施設入所者に対するベッドから車椅子への移乗介助技能への効果を、単一事例実験計画法を用いて検証した。その結果、3名とも適切な介助の頻度が増加(平均46.2%)し、彼らが日頃介助している入所者も、より少ない介助で移乗が行えるようになった。また、移乗介助指導の効果が同じ入所者の脱衣介助に反映されることも確認された。さらに、指導プログラムの内容や意義に関しても比較的良好な受け入れや評価が得られた。以上のことから、従来の指導方法によるデメリットを補完する役割を果たすことができ、本教材が介護職員指導における効果的な方法論として位置づけられる可能性が示唆されたが、対象の選択および追跡調査の問題、操作性や内容などに関する課題も残された。
著者
小林 和彦 園山 繁樹 戸村 成男 柳 久子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.93-105, 2003-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
6

本研究においては、行動分析学の枠組みとその基本的な技法を応用したベッドから車椅子へのトランスファー介助の方法を、老人保健施設に勤務する経験の浅い介護スタッフに指導し、指導効果の検証を行った。対象は、施設介護職員として勤務する女性2名で、両介護者が介助するのは脳梗塞左片麻痺で痴呆を有する78歳の女性であった。指導は机上での講義形式による行動分析の枠組み、およびそれに基づく対象者へのかかわり方に関する基本的な説明を行った後、実際場面において実践的な指導を行い、適切介助回数および身体接触時間を評価した。その結果、両介護者とも実践指導後において大幅な適切介助の増加および身体接触時間の減少が認められた。しかしながら、講義形式による説明のみではほとんど指導効果が得られなかったことから、実際場面における実践的な指導の重要性が示唆された。
著者
中村 浩 小林 和彦 山田 英一
出版者
農林省野菜試験場
雑誌
野菜試験場報告 A (ISSN:03875407)
巻号頁・発行日
no.8, pp.p33-51, 1981-11
被引用文献数
1
著者
小林 和彦 辻下 守弘 岡崎 大資 甲田 宗嗣
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.825-830, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
16
被引用文献数
5 3

〔目的〕介護老人保健施設に勤務する介護職員が,日頃のどのような移乗介助を行っているかを調査し,その介助方法が対象者の課題遂行行動に与える影響について行動法則に照らして検討した。〔対象〕3箇所の施設の介護職員29名と入所者3名とした。〔方法〕入所者がベッドから車椅子へ移乗する機会を利用して,「介護職員が行った介助」および「入所者の移乗課題遂行後における介護職員の対応」の種類とその回数,「介護職員がそれら介助施行前に入所者の行動生起を“待機”したか否か」を約3週間にわたり調査した。〔結果〕総回数260回の介助の87%で直接“全介助”が行われ,“全介助”が行われる前に“部分的身体介助”もしくは“声がけ”が行われたのは各々8%と5%,“待機”が行われたのは総介助回数の4%であった。また,介助により入所者が移乗課題を遂行した後の介護職員の対応は82%が入所者に対し“無反応”で,“賞賛”や“承認”が与えられたのは3%であり,15%の“中途介助”が行われていた。〔結語〕入所者の依存行動を増加させ,自立行動を減少させる介助が行われている可能性が高いことが示唆された。
著者
小林 和彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-16, 2001-03-05
被引用文献数
8 5

FACE(Free-Air CO_2 Enrichment = 開放系大気CO_2増加)は,何の囲いもしない圃場の空気中に直接CO_2を吹き込んで,植生の周りのCO_2濃度を高める実験手法である.FACEにより,大気CO_2濃度が上昇した時の植物や生態系の変化を,現実の圃場で観察できる.1987年にアメリカで始まったFACEは,今ではアメリカとヨーロッパを中心に世界中で,農作物,牧草,樹木,自然植生を対象にした研究に用いられており,日本でもイネのFACE実験が1998年から行われている.大気CO_2濃度の上昇が植物に及ぼす影響については数多くの研究があり,初期の温室や環境制御チャンバーでのポット実験から,近年のオープントップチャンバー等のフィールドチャンバー実験に至っているが,いずれもチャンバー自体が植物の生長を変化させ(チャンバー効果),それがCO_2濃度上昇に対する植物の応答を変化させている可能性がある.これに対してFACEは,チャンバー効果が無い上に,大面積の圃場を高CO_2濃度にできる特長があり,今や実用的な実験手法として確立しつつある.FACE実験の結果は,農作物の収量増加率については従来の実験結果をほぼ支持しているが,さらに収量増加に至る生長プロセスの変化やメカニズム,生態系の変化について,多くの新しい研究成果を生み出しつつある.今後は,FACE実験結果のモデリングへの利用,複数地点でのFACE実験実施と実験結果の比較解析,そして特に発展途上国でのFACE実験の展開が期待される.
著者
溝口 勝 山路 永司 小林 和彦 登尾 浩助 荒木 徹也 吉田 貢士 土居 良一 鳥山 和伸 横山 繁樹 富田 晋介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

SRI 農法が東南アジアの国々で爆発的に普及しつつあるが、その方法は国や農家ごとに異なり、適切な栽培管理技術は未だ確立できていないのが現状である。そこで本研究では、日本で気象や土壌・地下水位等の科学的なパラメータを測定するための最新のモニタリング技術を開発しつつ、主としてインドネシア、カンボジア、タイ、ラオスの東南アジア4 カ国にこのモニタリング技術を導入して、農業土木学的視点からSRI 農法の特徴を整理し、SRI栽培の標準的な方法について検討した。加えて、現在懸念されている気候変動に対する適応策として、各国の農家が取り得る最善策を水資源・農地管理に焦点を当てながら考察した。
著者
小林 和彦 園山 繁樹 戸村 成男 柳 久子
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.93-105, 2003-09-30

本研究においては、行動分析学の枠組みとその基本的な技法を応用したベッドから車椅子へのトランスファー介助の方法を、老人保健施設に勤務する経験の浅い介護スタッフに指導し、指導効果の検証を行った。対象は、施設介護職員として勤務する女性2名で、両介護者が介助するのは脳梗塞左片麻痺で痴呆を有する78歳の女性であった。指導は机上での講義形式による行動分析の枠組み、およびそれに基づく対象者へのかかわり方に関する基本的な説明を行った後、実際場面において実践的な指導を行い、適切介助回数および身体接触時間を評価した。その結果、両介護者とも実践指導後において大幅な適切介助の増加および身体接触時間の減少が認められた。しかしながら、講義形式による説明のみではほとんど指導効果が得られなかったことから、実際場面における実践的な指導の重要性が示唆された。
著者
小林 和彦 辻下 守弘 岡崎 大資 甲田 宗嗣
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.303-308, 2011 (Released:2011-06-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1

〔目的〕担当入所者への過剰介助から廃用性の機能低下を促進させる可能性の高い看護職員1名に応用行動分析学の技法を用いたベッドから車椅子への移乗介助の方法を指導し,その効果を分析することで行動論的な介助指導の意義と課題について検討した.〔方法〕対象は介護老人保健施設に勤務する介助経験豊富な正看護師で,彼女が日頃実際に介助や介助指導を行っている高齢障害者に対するベッドから車椅子への移乗介助に際し,応用行動分析学の技法を適切に用いた介助が行えるようになることを指導目標として講義形式による指導と実践指導を4ヶ月間にわたり施行し,指導効果を単一事例実験計画法により分析した.〔結果〕実践指導後において適切な介助が増加した.また,介助対象者自身もベースライン測定時には大幅な過剰介助での課題遂行であったのが必要最小限に近い介助での課題遂行に移行し,これらはフォローアップにおいても維持された.〔結語〕より少ない介助で入所者の行動を引き出せるようになり臨床的に意義ある指導効果が得られたと考えられるが,指導内容の理解度の判定や指導効果の長期的維持等,今後における課題も残された.