著者
飯塚 和也 相蘇 春菜 大久保 達弘 逢澤 峰昭 平田 慶 石栗 太 横田 信三 吉澤 伸夫
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

福島原発事故により広範囲わたり飛散・拡散した人工放射性核種の中で重要な放射性セシウム(Cs)は,同族のアルカル金属であるカリウム(K)と化学的性質が類似しているため,植物体において,Kの輸送系により吸収されていると考えられている。Kの同位体である天然放射性核種であるK40の一部は,γ崩壊をする。そこで,樹体中に取込まれた放射性セシウムの挙動を調査するに当たり,K40に着目して,放射性核種ごとにCs134,Cs137とK40の比放射能(Bq/kgDW)の測定を行なった。材料は宇都宮大学演習林(空間線量率0.2~0.3μSv/h)のスギ,ナラ類,コシアブラである。供試材料の比放射能は,U8容器を用い,Ge検出器(SEIKO EG&G)で測定した。測定時間は,木材で6000S,葉で2000Sまたは4000Sとした。若齢木において,コシアブラの葉はナラ類のそれと比べ,非常に高い比放射性を示した。また,コシアブラの核種ごとの比放射能の季節変動では,晩秋は夏に比べ,Csは1.8倍の増加を示したが,K40では1.5倍の増加であった。
著者
石田 泰成 逢沢 峰昭 大久保 達弘
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-8, 2013-06-25

栃木県奥日光山域において,明治期の1905年に撮影された山火事跡の古写真がデジタルアーカイブスとして公開されている。本研究は,この写真の撮影地点の探査と樹齢構造の調査から,山火事が発生した林分を特定し,そこで炭化片分析を行うことで,同分析によって山火事発生が実証可能か検討した。その上で,山火事発生に関する文献記録のない同山域の1915年の古い地形図上にみられる広域的なササ地が,山火事によって成立したものであるかを炭化片析によって明らかにすることを目的とした。踏査の結果,山火事発生林分を特定することができた。山火事発生林分は, 1915年の湯ノ湖周辺の地形図ではササ地となっている場所と,その近くの広葉樹林であった。また,文献および樹齢構造の調査,この場所では約120年前(1890年代)に山火事が発生したこと,この周囲のカンパ林およびミズナラ林の樹齢は120年以下であることがわかった。この林分での炭化片分析の結果,いずれの林分においても炭化片が検出され,同分析によって,山火事発生の実証が可能と考えられた。次に, 1915年にササ地であった別のミズナラ・シラカンバ林において同様の調査を行った結果,すべての地点から炭化片が検出され,樹齢は最大で101年であった。以上から,奥日光山域では明治期に広域的な山火事が発生しており, 1915年地形図のササ地およびその周囲の広葉樹林にみられる現在の森林植生は山火事後に成立したものと推察された。
著者
岡崎 千聖 逢沢 峰昭 森嶋 佳織 福沢 朋子 大久保 達弘
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.116-123, 2018-08-01 (Released:2018-10-01)
参考文献数
56

群馬県では県北部のみなかみ町において2010年に初めてナラ枯れが発生した。このような飛び地的被害を起こしたカシノナガキクイムシ個体群の由来について,隣接県から近年自然または人為的に移入した,遠方から人為的に移入した,在来由来の三つの仮説が考えられた。もし,移入個体群であれば遺伝的多様性の低下や遺伝的に遠い系統がみられると予想される。本研究ではこれらの仮説を遺伝解析に基づいて検証した。みなかみ町およびナラ枯れの起きている近隣6県において,カシノナガキクイムシ試料を採集し,核リボソームDNA,ミトコンドリアDNAおよび核マイクロサテライト(SSR)を用いて遺伝解析を行った。核リボソームDNAおよび核SSRの遺伝構造解析の結果,群馬個体群は福島や新潟と同じ日本海型の北東日本タイプに属したことから,南西日本から人為的に移入したものではないと考えられた。また,ミトコンドリアDNAと核SSRを用いて各個体群の遺伝的多様性を調べた結果,群馬個体群の遺伝的多様性は低くはなく,他個体群と違いはなかった。よって,群馬個体群は近年の移入由来ではなく,在来由来と考えられた。
著者
金子 信博 中森 泰三 田中 陽一郎 黄 垚 大久保 達弘 飯塚 和也 逢沢 峰昭 齋藤 雅典 石井 秀樹 大手 信人 小林 大輔 金指 努 竹中 千里 恩田 裕一 野中 昌法
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第124回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.394, 2013 (Released:2013-08-20)

福島原発事故により汚染した森林の除染には、伐採や落葉除去だけでは十分でなく、処理した木材と落葉の処分も問題である。森林土壌から、安全に放射セシウムを除去する方法を提案する。落葉分解試験を、二本松市のコナラ林で2011年12月から2012年12月まで行った。6月には、落葉の放射性セシウム濃度は土壌の2倍から3倍となり、土壌の約12-18%が上方向に落葉へと移動した。この移動は、糸状菌が有機物上で生育する際に土壌からセシウムを取り込むためと考えた。落葉の代わりに伐採した樹木をウッドチップ化し、土壌のセシウムを糸状菌によってチップに集める方法を考案した。汚染地域の木材中の放射性セシウム濃度はまだ高くないので、森林を伐採し、現地で幹材をウッドチップ化しメッシュバッグに入れ、隙間なく置いて半年後に回収することで、低コストで安全に除染が可能である。半年程度経過したウッドチップはまだ分解が進んでいないので、安全な施設で燃焼し、灰を最終処分する。単に伐採して放置するのでなく、この方法で森林施業を積極的に継続しつつ、汚染木材をバイオ燃料として活用し、復興に活用することが可能である。
著者
大久保 達弘 深澤 瑛一 鈴木 紘子 逢沢 峰昭 飯塚 和也
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p>リターフォールは、森林生態系の林冠から林床への放射性セシウム(RCs)の移行媒体、腐葉土製造の原料であるが、両者を関連づける情報は少ない。本研究は、福島第一原発事故後の栃木県のRCs初期沈着量の違う3ヶ所のコナラ林において、リターフォール、林床堆積有機物層(A<sub>0</sub>)および土層(A)のRCs濃度の7年間の変化、樹上生枝葉との比較、将来の腐葉土製造再開の可能性を考察した。リターフォール内の葉のRCs濃度は、事故直後はRCs初期沈着量の順に低くなったが、いずれの場所も林床のA<sub>0</sub>層濃度と比べ低かった。これはRCs初期沈着量に応じて林冠でのRCs沈着量が増加したが、事故当時コナラは展葉前で直接林床に降下沈着したためである。コナラ樹上枝葉のRCs濃度の季節変化(2015)は、当年枝葉は開葉直後の4月、5月が最も高く、その後はともに減少し、落葉期は葉で減少、当年枝は上昇した。以上の結果は開葉落葉に伴う枝葉のRCsの移行が枝内で限定していることを示唆する。将来的な腐葉土製造再開の可能性を知るためのA<sub>0</sub>層中のRCs濃度の減衰曲線は負の指数関数で近似され、初期沈着量の違いに応じて暫定許容値(400Bq/Kg)を超える期間が延長すると予測される。</p>
著者
谷本 丈夫 劉 岩 里道 知佳 大久保 達弘 二瓶 幸志
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-12, 1996-09-15
参考文献数
23
被引用文献数
5

奥日光における森林衰退の実態とその原因を明らかにする目的で,空中写真と踏査により衰退地域の確認や地形との対応,代表的な枯死域から健全域に移り変わる場所の毎木調査を行い,枯死の形態や樹形と地形,土壌などの立地環境要因との関係を検討した。衰退・枯死の発生時期と原因を特定するため,枯死木に近接する生存木の年輪成長経過を調べ,主に台風との関連を解析した。酸性雨・霧の樹木や土壌への影響についても枝葉の変色などを観察した。これらの要素から森林衰退・枯死現象と立地環境との関係,衰退をもたらした原因について考察した。その結果,調査域で観察された枯死木はいずれも小枝が枯れ落ち幹や大枝のみが残る白骨状あるいは倒木になっており,ほぼ同じ形態であった。枯死木の存在する地形は,南東斜面で風の吹き抜ける場所,あるいは北西斜面でも尾根上部で南東風の吹き抜ける位置で,環境条件が類似していた。年輪解析の結果,奥白根山のダケカンバ,赤城のカラマツでは強風域において完全枯死,やや風の弱くなった場所においては枝の折損時の成長減少,その後,枝の再生によると思われる回復が見られた。念仏平,皇海山などの亜高山性針葉樹林では上層林冠の破壊にともなう前生稚樹の成長促進時期が同調し,とりわけ1982年の台風の襲来と一致していた。これに対し山頂風衝部では矮性化したシラベ類が枯れており,旗棹のように変形した樹形から常風的な季節風が枯損の原因と判定された。薙,崩壊地の周辺では季節的な常風に加えて土壌の崩落にともなう根浮き,倒木などでの枯損がみられた。これら以外ではコメツガやシラベ類に寒風害によって葉裏が褐色に変色した個体や落葉現象が認められたが,樹木全体が枯れる現象はなかった。したがって,奥日光の森林衰退は立地環境に対応して発生する風害を引き金とする,亜高山の森林における更新形態の一つであると判定された。
著者
出口 明子 関口 有人 大久保 達弘
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.113-116, 2015

本研究では,持続可能な開発のための教育を指向した環境学習の支援を目的として,里山林の植生遷移,及びその管理や利活用についての理解を支援する環境学習教材を開発した . 本稿では栃木県内の里山林を舞台に開発したすごろくゲーム教材「里山 Life・アドミンズ」の概要を解説するとともに,森林生態学の基礎を修得している農学部の学生及び大学院生を対象とした実験的評価の結果を報告する.
著者
関口 有人 川島 芳昭 出口 明子 大久保 達弘
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.99-102, 2016

本研究では,里山の植生遷移,及び管理・利活用の双方について統合的に学習するためのデジタルすごろくゲーム「里山 Life・アドミンズ」を開発した.本稿では,国内における科学教育を支援するデジタルゲーム教材に関する先行研究を概観するとともに,本研究で開発したデジタルすごろくゲーム「里山 Life・アドミンズ」の機能の概要やインターフェイス,学習支援における意義を解説する.
著者
出口 明子 関口 有人 大久保 達弘
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.416-417, 2015

<p>筆者らは里山林の植生遷移,及びその管理や利活用についての理解支援を目的とした環境学習教材として,栃木県内の里山林を舞台にしたすごろくゲームを開発した.本稿では開発したゲームの概要を解説するとともに,大学生及び大学院生を対象とした予備的評価の結果を報告する.</p>
著者
出口 明子 関口 有人 川島 芳昭 大久保 達弘
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.475-476, 2017

<p>筆者らは里山林の植生遷移,及びその管理や利活用についての理解支援を目的とした環境学習教材として,栃木県内の里山林を舞台にしたすごろくゲームを開発しており,そのデジタル化に着手している。本稿では開発したデジタルゲーム教材の概要を解説するとともに,大学生を対象とした実験的評価の結果を報告する。</p>
著者
関口 有人 出口 明子 川島 芳昭 大久保 達弘
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.205-208, 2017

<p>筆者らは, 持続可能な開発のための教育を指向した環境学習の支援を目的として, 里山の植生遷移, 及び管理・利活用の双方について統合的に学習するためのデジタルすごろくゲーム「里山Life・アドミンズ」を開発している.本稿では, 本ゲーム教材を用いた授業デザインと中学生生徒を対象とした実践的評価の結果の一部を報告する.</p>
著者
出口 明子 関口 有人 川島 芳昭 大久保 達弘
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.199-204, 2017

<p>筆者らは環境学習を支援するためのデジタルゲーム教材「里山Life・アドミンズ」の開発・評 価研究に取り組んできている。本研究では,ゲームを構成するパーソナル・シミュレータの有効性を明らかにするため,大学生を対象に評価実験を実施した。3 つの調査・分析の結果,パーソナル・シミュレータはプレイヤーによって活用されるものであり,ゲームが提供する学習内容の理解,特に里山の管理の仕組みに関する理解支援に有効であることが示唆された。</p>
著者
出口 明子 川島 芳昭 大久保 達弘 相沢 尭和
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.626-627, 2019

<p>筆者らは環境学習のためのデジタルゲーム教材として,里山の植生遷移及びその管理や利活用についての理解支援を目的とした「里山Life・アドミンズ」の開発・評価研究を行っている.本研究ではその機能拡張として,「My里山画面」の実装と「里山シミュレータ」の改良を行った.本稿ではこれらの機能拡張の概要を解説するとともに,大学生を対象とした予備的評価の結果を報告する.</p>
著者
福沢 朋子 新井 涼介 北島 博 所 雅彦 逢沢 峰昭 大久保 達弘
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.1-6, 2019-02-01 (Released:2019-04-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

カシノナガキクイムシ(以下,カシナガ)によるナラ類集団枯損被害(以下,ナラ枯れ)は標高300 m以下で多く発生するが,富山県などで標高1,000 mを超える被害が確認されているため,被害が高標高域へと拡散している可能性がある。カシナガの繁殖成功度などは標高の上昇・気温の低下と負の関係があり,今後ナラ枯れの拡大予測や予防を行う上で,高標高域におけるカシナガの脱出・飛翔に関する生態的知見は重要である。本研究では,標高傾度に沿ったカシナガ成虫の脱出消長や数,林内における飛翔数とその季節変化を明らかにすることを目的とした。2015年6~12月,2016年6~11月にかけて,標高600~1,000 mの標高100 mごとに衝突板トラップと脱出トラップを設置し,カシナガ成虫を捕殺した。本研究の結果,標高600 m以上の高標高域では低標高域に比べてカシナガの繁殖成功度は極めて低く,標高600~900 mの範囲では,標高傾度の影響はなかった。さらに標高900 m以上では,樹種組成の変化で主な寄主であるミズナラが減少する影響を受けて,飛翔成虫が極めて少ないと考えられた。
著者
石田 泰成 逢沢 峰昭 大久保 達弘
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-8, 2013-06-25 (Released:2017-04-03)
参考文献数
33

栃木県奥日光山域において,明治期の1905年に撮影された山火事跡の古写真がデジタルアーカイブスとして公開されている。本研究は,この写真の撮影地点の探査と樹齢構造の調査から,山火事が発生した林分を特定し,そこで炭化片分析を行うことで,同分析によって山火事発生が実証可能か検討した。その上で,山火事発生に関する文献記録のない同山域の1915年の古い地形図上にみられる広域的なササ地が,山火事によって成立したものであるかを炭化片析によって明らかにすることを目的とした。踏査の結果,山火事発生林分を特定することができた。山火事発生林分は, 1915年の湯ノ湖周辺の地形図ではササ地となっている場所と,その近くの広葉樹林であった。また,文献および樹齢構造の調査,この場所では約120年前(1890年代)に山火事が発生したこと,この周囲のカンパ林およびミズナラ林の樹齢は120年以下であることがわかった。この林分での炭化片分析の結果,いずれの林分においても炭化片が検出され,同分析によって,山火事発生の実証が可能と考えられた。次に, 1915年にササ地であった別のミズナラ・シラカンバ林において同様の調査を行った結果,すべての地点から炭化片が検出され,樹齢は最大で101年であった。以上から,奥日光山域では明治期に広域的な山火事が発生しており, 1915年地形図のササ地およびその周囲の広葉樹林にみられる現在の森林植生は山火事後に成立したものと推察された。
著者
佐原 奈々美 中村 俊彦 逢沢 峰昭 大久保 達弘
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.102-109, 2018-08-01 (Released:2018-10-01)
参考文献数
43
被引用文献数
2

亜高山帯落葉樹林の実生の発生・定着におけるコケ群落の役割について明らかにするため,日本中部の亜高山帯において常緑針葉樹林の伐採約60年後に成立した落葉広葉樹優占林の森林構造および実生・稚樹の発生・生育状況についての調査を行った。その林分ではダケカンバ等の落葉広葉樹が高木層・亜高木層に優占し多量の種子を生産しているにもかかわらず低木層以下では落葉広葉樹よりシラビソやオオシラビソ等の常緑針葉樹が優占していたことから,今後この林分の常緑針葉樹林への遷移が示唆された。林床では地表面でカニコウモリ型とコミヤマカタバミ型の草本群落,また倒木上ではキヒシャクゴケ型とタチハイゴケ型のコケ群落が存在した。倒木上の2種類のコケ群落では多くのシラビソとオオシラビソの実生・稚樹がみられ,その高さと年齢はキヒシャクゴケ型よりタチハイゴケ型で高かった。シラビソとオオシラビソの実生・稚樹の成長を調べ,またシラビソの種子落下および播種試験を実施した結果,コケ群落による落下種子の捕捉および発芽床としての効果が確認され,亜高山帯林での常緑針葉樹の実生・定着に倒木上のコケ群落が大きな役割を果たしていることが明らかになった。
著者
大庭 喜八郎 荒木 真之 糸賀 黎 大久保 達弘 永野 正造 須藤 昭二 前田 禎三
出版者
筑波大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

本研究は下記の目次(分担)によって研究成果のとりまとめをした。1.研究目的:アイソザイムを利用したブナ天然林の集団遺伝学的解析、それらの林分の立地環境の評価を行い、天然下種更新、萌芽更新の実体を明らかにする。ブナ林の体鶴分析を行い、動植物の保護、生態遺伝学の見地から総合的にブナ林の保全と育成管理の条件を論究する。2.日本のブナ林の概況:ブナ属の種数、ブナ・イヌブナの分布、現存ブナ林面積、地史的なブナの分布と伝播の概要についてまとめた。3.ブナ林の既往の生態遺伝学的研究成果:葉の大きさが南から北へ大きくなり、個体の寿命が本州のブナに比べ北海道のブナに比べ北海道のブナの方が短い。4.ブナ天然林なアイソザイムによる遺伝解析1)調査林分の気象環境・土壌環境と現存量2)(1)ブナ天然林集団間の遺伝解析:11酵素種、14推定遺伝子座の総計47対立遺伝子の分析を行い、集団遺伝学的解析をした。ブナ自体のアイソザイム遺伝変異は他の樹種と比べると相対的に大きいが、林分間の差異は小さく、全変異のわずか1.4%で、残りの98.6%は林分内にあった。(2)ブナ林分内小集団内の遺伝解析:アイソザイムによる家系分析(3)ブナ天然林集団内の形態的変異:成葉、幹足部幹形、樹皮型、萌芽性5.ブナ天然林の維持機構1)ブナ天然林の種子による維持機構:植生と更新稚樹、ギヤップ更新2)ブナ林の萌芽による維持:ブナとイヌブナの萌芽更新の実態6.ブナ天然林の景観分析7.ブナ天然林の保全と育成管理の方策の総合検討1)ブナの遺伝資源保存:アイソザイム分析とブナ保護林の実態の検証2)ブナ林景観保存